大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.34 決戦前夜

「うわああっ!!凄い!!」

 

「これが……エミリアさんの……」

 

「専用機かぁ!!カッコいい~~っ!」

 

エミリアはドラえもん達に艦内の隔離された格納庫の上空にて、とある戦闘機を見せていた。

 

それは彼女達が乗っていた偵察機とは違い、全体が綺麗なサファイア色のカラーが施され、左右に展開された折り畳まれた、まるで鳥のような特徴的な両主羽翼と尾翼、スラスター。まるで無駄な部分を省いたすっきりした胴体。燕そのもののフォルムだ。全長は、見る限り20メートル前後はありそうだ。

 

「これはあたしの専用機『イクスウェス』よ。あたし達はこれに乗って作戦に参加するわ」

 

三人はこのイクスウェスの勇姿に見とれていた。

 

「ふえっ~~。これはどのくらい速いんですか?」

 

スネ夫の質問に、何故か彼女は苦笑いしていた。

 

「これね……はっきり言って最高速は不明なのよ……っ」

 

「ええっ!!どうしてですか!?」

 

「……実はね、あたし半分の出力しか上げたことないの。機内にとてつもない衝撃がかかってね、テストした際にあたし……半分だけの出力でもあまりの衝撃で血を吐いちゃって……気絶しちゃった」

 

「「「…………」」」

 

その事実に三人の顔は生気を失ったように白くなった。血を吐く……傷から血が出るとかそんなもんじゃない。文字通りの意味で口から血を吐き、それは内臓に傷つけてしまい、下手をしたら潰れてしまう危険性が高いということである。

 

そんなことを引き起こす代物に自分達が乗り込むなんて……エミリア本人も耐えられないのにいくらなんでも無茶苦茶だ。命を捨てるようなモノである。

 

「けどね、今作戦にはこれを使う必要があるの。もし戦闘になれば確実に激戦は避けられないから、こちらもより強力な機体を使わないといけないのよ」

 

ジャイアンとスネ夫はその場でへたりこんだ。

 

「あっ~あ……。これで俺たちの短い人生も終わりかぁ……」

 

「最後に……最後にママの手料理たべたかったなぁ~~」

 

「だ か ら、ここでドラちゃんの道具を使うのよ。ねえ、何かないかしら?」

 

「何か道具は……そうだ、『テキオー灯』を使おう。これなら多分、衝撃に耐えられると思うよ」

 

ドラえもんはポケットからテキオー灯を取り出た瞬間、さっきまで落ち込んでいた二人は急に立ち上がり、キラキラした瞳をした。

 

「おおっ、あるじゃねえか!!」

 

「さすがはドラえもん!!」

 

落ち込んだり立ち直ったりと全く、忙しい奴らである。

 

「ただ問題は……あなた達の友達の安否が心配だわ。最悪の場合も充分考えられるし……」

 

そう言えば忘れていた。のび太としずかの生存状況を。二人のいるところは幾多の惑星の全てを奪う、凶暴で残虐性を特化した極悪宇宙海賊の本拠地である。

 

「そっそう言えばのび太としずかちゃんは……。ドラえもん、『タイムテレビ』は!」

 

「ちょっと待って……ええと、ええっと……ん?ああっ!!」

 

ドラえもんはポケットの中に手を入れたが、数秒後に大声を上げたがこれは……。

 

「どうした?」

 

「ああっ、ない、ない!!タイムテレビがどこにも見当たらない!!裏山に出しっぱなしだったぁーーっ!」

 

「「ええ~~っっ!!?」」

 

これでは二人の安否を確認しようにもできないではないか。

ジャイアンとスネ夫は怒りを炎のように燃え上がらせてドラえもんに突っかかった。

 

「このポンコツタヌキロボット~~っ!!」

 

「こんな時に役に立たないんだからぁ!!」

 

「うるさぁい!!なんで僕ばかり責任を押し付けるのさぁ!」

 

「…………」

 

モメ合いとなったとドラえもん達を尻目にエミリアは呆れるように「はあ~~っ」とため息をつき、

 

「いい加減にしなさいっっ!!」

 

「「「! ?」」」」

 

彼女の一喝にシーンと静まりかえった。

 

「ここに来る前に言わなかったかしら?『もしもの時は覚悟してね』って。あなた達はそれを理解した上でここに来たんでしょう!?」

 

「けど……のび太達に何かあったら……っ」

 

心配し、うつむくジャイアンにエミリアは。

 

「はっきり言って、その友達が生きている確率は非常に低いと思う。奴らは命を奪うことを、まるで作った積み木を崩すかのように何とも思っていない極悪集団よ。

あの時『タイムテレビ』を見る限り……その子達は侵入者扱いされてると推測できるわ。

あんな状況で助かるってよほどの運か勝算がない限り無理よ」

 

「…………」

 

彼女から無情な現実を突きつけられて三人は多大なショックを受ける。最もな正論である。まだ子供であるジャイアン、スネ夫にとっては精神的にキツい言葉であった。

 

「……だけど、『確率が非常に低い』だけで全くないわけじゃないからね。もしかしたら人質にされてるかもしれないし、または捕らわれているかもしれない……ということもあるから」

 

「エミリアさん……」

 

「とにかく希望は絶対捨てないこと。あきらめたらそこで終わりよ。一緒にその友達が無事であることを祈りましょう」

 

彼女から諭され、励まされ、落ち込んでいた三人は次第に表情が明るくなっていく。

 

「……そうだね、エミリアさんの言う通りだ。少ない可能性でも信じてみよう、二人とも!!」

 

「だな!!」

 

「エミリアさんはいいこと言うなぁ!」

 

「フフっ、そうよ、元気を出して前を見ましょう。私もあなた達を全力で守るつもりだから安心して」

 

ようやく活気が出始めて、雰囲気がよくなった三人はエミリアと共に希望を見いだした。のび太達が生きていることを信じて……。

 

「…………」

 

しかし、エミリアはどこか浮かない表情をしていた……。

 

(とは言うものの、現状況で作戦が上手くいくかしら。あまりにも戦力的にキツいし……)

 

……それはドラえもん達がヴァルミリオンに到着した日、何故かこちらに向かっているアマリーリスの銀河系進行阻止作戦の会議が開かれた。

 

――作戦室。本艦の各部隊の隊長と特殊任務を付与されたエミリアは、艦長カーマインを中心に中央部に配置されている作戦モニターを見ていた。

 

「アマリーリスがこちらに向かっていると言うことで我々が対処しなくてはならなくなったのだが……」

 

「本隊に連絡したところ、こちらに『ヴァールダイト級宇宙戦闘艦』5隻、『グラナティキ級宇宙巡洋艦』12隻、『ローレライス級宇宙運送艦』2隻、そして新型試作機と共に援護に向かわせたとの報告が……」

 

隣にいた副艦長の報告にカーマインはなんとも渋い表情をとり、顎をつまんだ――。

 

「一体本隊は何を考えているのだろう……。それだけの数で万が一戦闘になればアマリーリスを食い止められると思っているのか……」

 

援護支援にくる宇宙戦闘艦『ヴァールダイト級』はランクA級、宇宙巡洋艦『グラナティキ級』はランクB級のエネルギー質量しかもっていない。『ローレライス級』は主に戦闘機や戦闘ユニットの運用や積載目的の輸送艦船であり、武装は施されておらずS級の質量を持つアマリーリス艦、エクセレクターに真っ向から挑むには明らかに戦力不足であった。

 

「本隊の連絡によると、別の作戦によりランクS級宇宙艦は全て使用中ということで、これだけで対処してくれ……と。提督、これをどう考えます?」

 

「多分嘘も混じっている。上層部は“まあなんとかだろう”としか思ってないんだろう」

 

「それではまるで……」

 

「我々にどれだけ被害が出ようが代わりはいくらでもいると思っている」

 

全員が沈黙したままだった。これでは多大な被害と犠牲は避けられない。

アマリーリスは連邦にとってあまりにも未知数な勢力であり、どういう兵器、武装を装備し、どういう戦術で攻めてくるのかわからない。

ただわかっているのは……奴らの本拠地である宇宙艦が本艦と同等のエネルギー量と火力を有することだけであった。

 

「あまりにも理不尽かもしれないが任務は任務だ。現状況で作戦を遂行しなければならない。それでみんなの意見を聞きたい、何かいい案がないか?」

 

「はい。こちらの戦力が少ない以上、短期決戦に挑むのが望ましいと思います。相手の艦に集中砲火して撃沈させるのは……」

 

一人の隊員が提案するが、カーマインは納得いかない顔をしている。

 

「短期決戦は私も同意だが、話によるとなんでも地球から来たあの子たちの友達が手違いがあって、そこに乗り込んだらしい。安否が不明な以上、むやみに手を出せない、第一、撃沈というはあくまで最終的な手段だ」

 

「…………」

 

それから色々な意見が飛び交うが、どれも決定に至らず、難航をきわめていた。そんな中、一人の隊員が恐る恐る手を上げた――。

 

「案ではないのですが……その宇宙艦のエネルギー質量がS級ならば現時点でNPエネルギーしか考えられないと思うので超新星爆発に耐えうるほどの強力なバリアを展開すると推測できます。艦に配備されている機体で近づこうものならバリアに衝突し、一撃で消滅してしまうと思われるんですが……」

 

「うむ……っ。そのことなんだが、本司令部直属の科学部隊の実験があったのだが……どうやら同質量のNPエネルギー同士が衝突すると中和されると結果が出ている。なので、本艦の主砲を使用すればバリアを一撃で消滅させることができる」

 

「しかし、消滅させたとしてもNPエネルギーは半永久的に増加します。またバリアが復活するのは時間の問題です!」

 

「副長、バリアが解除された場合、再展開される時間は分かるか?」

 

「……本艦の科学部隊長によりますと、本艦と同性能であるならば、無から艦全体を覆うまで約5分かかります」

 

「ということは……主砲が直撃した瞬間から5分以内でアマリーリスの本拠地に突入しなけばならないわけだ。そう考えると『ホルス』、『アルスタシア』では不安だな。エミリア、イクスウェスの調整は?」

 

「はっ……はい、一応は。ですがテスト以来全く使用していません。情けないことですがあたしには到底使いこなせない代物でして……」

 

「そこでだ、あの子たちの道具を使用する。脱走で見せた、あの摩訶不思議な現象を起こせるのなら、必ず役立てるだろう」

 

「……そうですね。ドラちゃん達の力を借りれば……何とかなりそうですわ」

 

……そして様々な提案を組み、カーマインは両手を後ろに組み、コクッと頷いた。

 

「……なら、作戦はこうだ。こちらが警告し、降伏、投降に応じなければ今作戦を決行する。

まずは本艦が主砲の発射準備に移る。そのエネルギー収束中はこちらが無防備になるので、攻めてくるアマリーリスには支援する艦と戦闘ユニットで壁になってもらい時間を稼ぐ。

そして主砲発射し、アマリーリス艦のバリアを消滅させ、そこからエミリアとミルフィ、そしてあの子達の特別隊が5分以内でアマリーリス艦に突入し、生きていれば友達を救出、保護。そして奴らの行動阻止及び、機能停止させる。そこから我々が次々と突入し、組織員を逮捕する――。この作戦が賛成ならば拍手をしてくれ」

 

『パチパチっ……』と大勢の隊員の手を叩く音が聞こえた。

 

「よし。なら作戦はこの内容で可決する。なお、細部詳しい内容や情報はまた後ほど伝達する。以上だ。各自解散し、各隊に戻ってくれ」

 

全員はカーマインに一斉に敬礼した後、ずらずらと去っていく。エミリアもそれに乗って作戦室を出ようとした時、

 

「エミリア?」

 

カーマインはエミリアを呼び止め、彼女はすぐに彼の方へ振り向いた。

 

「さっきも言ったがお前にはアマリーリス艦に突入してもらう。自分とあの子達の分のシールドと予備のカートリッジを所持して参加してくれ」

 

「了解です」

 

「それに、あの子達の力を借りるといったが、あくまで保護対象の子供達だ。お前ばかり無理な事を押し付けて本当にすまないがあの子達を守ってやれ、いいな!」

 

「はい!!命に変えてもあの子達を守ってみせます!!」

 

ぱっちりとした瞳とハキハキした口調からやる気は十分感じられる。だが、彼の方は何か心配そうな表情をしていた。

 

「……そしてお前も絶対に無理をするな。もしも万が一、何かあったら私は……」

 

「提督?」

 

「いや、なんでない。早くあの子達の所へいってやれ」

 

「はっ……はい」

 

彼女は首を傾げて作戦室を後にした。

 

◆ ◆ ◆

 

エミリアとドラえもん達は武器倉庫に向かっていた。

 

「今からあなた達にシールドの使い方を教えるわ。これで大概の対人用エネルギー兵器、実弾兵器を防げるようになるの」

 

「シールド?」

 

「詳しくは武器倉庫内で教えるわ。私とあなた達は奴らの本拠地に直接乗り込むことになったから、死なないためにも身を守る物を持ちましょう」

 

「乗り込む?そのアマリーリスの艦にですか?」

 

「ええ。詳しい内容はあとでみんなに伝えるわ。危険だけど力を合わせて頑張りましょ!!」

 

「「「…………」」」

 

急な不安と恐怖に駆られる三人。死なないためと聞かれたら、やっぱり下手したら死ぬんだ……。

危険てのはわかってたけどいざそう言われたら平然といれなくなる。

 

「と、ところでミルフィちゃんはどこに?」

 

「さあ……そういえば見かけてないわね」

 

彼女達は前方の幅広い十字路に差し掛かった時、

 

「ちょっ……どうゆうことヨ!!」

 

四人の耳に聞き覚えのある甲高い女の子の声が入ってくる。

左側の通路にそっと覗き見るとそこにはミルフィとあの男、コモドスの二人が会話をしていた。しかし二人の様子を見るかぎり、どうやら楽しい会話ではなさそうだった。

 

 

「コモドス……あなた……っ」

 

「…………」

 

コモドスは顔色一つ変えないで黙っている。

 

「コモドス、あなたはあんな人の言いなりになる必要なんかないヨ!!」

 

「……しょうがないんだ。でないと……」

 

二人の会話は意味深しげなことばかり聞こえてくる。

 

「すまない、ミルフィ……」

 

「ああっ、待ってヨ!!」

 

去っていく彼にミルフィはその場で立ち尽くしていた。

 

「ミルフィちゃん……どうしたんだろ?」

 

「さあっ……」

 

「……今は話しかけられる雰囲気じゃないわね。行きましょう」

 

四人はミルフィとは反対方向へ曲がり、その途中でエミリアは彼女の方へチラッと振り向いた。

 

(ミルフィ……)

 

その後、宙に浮きフラフラ漂いながら去っていく彼女の後ろ姿は、どこか悲しさがにじみ出ていた。

 

……武器倉庫。艦内の全隊員の装備品一式が保管されている場所である。拳銃やライフル銃、光学兵器や重兵器などの武器系統は勿論、、ガスマスクや弾装、弾薬やエミリアの言っていたシールドといった装備品なども保管されている。彼女の専用武装『テレサ』、『ユンク』も普段はここに保管してある。ドラえもん達が彼女に連れてこられた場所は、何やら高さ、幅……はわからない位に広くそびえ立つ金属の箱だ。

 

よく見ると、『とって』がないが引き出しのような四角い区切りがあるのが分かる。彼女はリフトを使い、約4メートル程の高さに上り、その『引き出し』部分に手を当てた。

『ウィィーン……』と静かに引き出しが開き、中にはまるで昔のレコード盤の似た、分厚く幅広い円盤と四角い電池のような金属物質が納められていた。それらを取りだし、引き出しを閉めて三人の元に戻る。

 

「これがシールドよ」

 

その2つを三人に見えるように掲げた。

 

「これがシールド……ね」

 

「どうやって使うんですか?」

 

「使い方はいたって簡単よ。まずこれをお腹の部分につけて固定する。そして、真ん中のボタンを押すだけ」

 

彼女がその通りに動作するとその円盤の四方から淡く蒼白い光が放出し、彼女を取り巻いた。

 

「これでシールドは展開されたわ。試しにタケシくん、あたしにパンチしてみて?」

 

「いいんですかホントに……」

 

「ええっ、本気でもかまわないわ」

 

「なら……うおりゃあ!!」

 

彼は本気で彼女に拳を振り込んだ。が、エミリアの周りにエネルギーの膜が展開されて、拳が膜に衝突した瞬間に弾け飛んだ。

 

「うわあっ!!バチバチしたぁ~~っ」

 

「すごぉい!!」

 

三人はシールドの効果に目を奪われた。

 

「これで大体の対人兵器は防げるわ。けどあまりにも威力が高い攻撃や連続で攻撃を受け続けるとエネルギー切れでシールドが破壊されて効果がなくなるから注意が必要よ。もしエネルギーがなくなったらこのカートリッジで回復させることが可能よ」

 

突然、ドラえもんは急に大きく息をはいた。

 

「よかったぁ、『バリヤーポイント』は点検でドラミに預けてたからどうしようかと思ったよ」

 

「たくぅ。こういう時に限っていい道具を持ってきてないんだから……」

 

そうスネ夫は本人に気付かない声で愚痴っていた……。

 

「それであなた達も何か武器を持った方がいいわ。けどあなた達には殺生をさせたくないから、なんか気絶させられる程度の武装があれば……」

 

「それならえっと、『ころばしや』、『ショックガン』、『空気砲』、『アタールガン』、『コエカタマリン』、『時限バカ弾』、『ふわふわ銃』、『ペンシルミサイル』、『ひらりマント』…………『マイク』……『こしょう』……?」

 

ドラえもんはポケットから色々な道具を引き出したが中には変な物も混じっている……。

 

「二人とも、好きな道具を選んで。これで気絶か一時しのぎぐらいならなんとかなるはずだ」

 

「サンキュー、ドラえもん!」

 

ジャイアンとスネ夫はそれぞれの道具を選び持っだ。が、

 

「おお、マイクがあるじゃねえか。何か歌いたくなってきたなぁ。ならここは景気づけに一曲……」

 

「「うわあああっ!!」」

 

ジャイアンがマイクを手に取った瞬間、ドラえもんとスネ夫は急に慌てふため始めた。

 

「ジャイアン!!今は抑えて!!ねっ!?」

 

「ここじゃなくてもっと良いとこで歌いなよ!!」

 

「そうか……」

 

二人に説得され、彼は手を下ろす。止めたことで二人は内心ほっとしていた。それもそのハズである。

ジャイアンは歌うのが好きなのだが、肝心の歌のほうは壊滅的に音痴であった。

たまに空き地でリサイタルを行うが、そのたびに呼んだ人を恐怖と絶望のどん底に叩き落す。中には『これだけで人を殺せる』と言った人がいるほどであり、二人が止めたのは正解である。

 

「…………?」

 

そのやりとりを事情の知らないエミリアはただポカーンと見ていた。

 

「ようエミリア!」

 

一人の男性隊員が彼らの元に現れた。皮膚が赤く、髪の毛がない代わりに鬼のような角が生えてる以外はジャイアン達地球人とほぼ同じであった。顔立ちは凛々しくはつらつとしており服装はエミリアと同じで違う所は襟元の職種を表す職彰の形が違う所である。

 

「あらクーちゃん。装備品の整備?」

 

「ああ、エミリアは?」

 

「この子達にシールドの使い方を教えてたのよ。みんな紹介するわ。彼は……」

 

「俺が自分で紹介するよ。俺はクーリッジ。ヴァルミリオン艦所属の第82光特科小隊長を勤めてる。君らは例の地球人だな、どうか今後ともよろしく!」

 

特科とは砲兵器主体で戦闘、後方支援攻撃を任されている部隊のことである。『光』と言うのは光学兵器のことであり、つまり、光学系の砲兵器を使用する部隊である(ちなみにエミリアとミルフィは偵察部隊であり、カーマインは艦長兼偵察部隊長である)。

 

その好男性の第一印象を持つ彼、クーリッジは爽やかな笑顔で手を差しのべた。

 

「「「はじめまして!!よろしくお願いします」」」

 

「元気でいい声してるな。それができれば上出来だよ」

 

笑顔で握手を交わす三人。あのサルビエスのように性格が悪くなさそうだ。現にエミリアの表情は和やかである。

 

「それにしても大変な任務を任されたな、エミリア」

 

「ええっ……」

 

クーリッジは彼女の肩に優しく置いた。

 

「無理すんなよ。俺はお前に死んでほしくない。友達を失うのは嫌だからな……」

 

「クーちゃん……」

 

「三人とも、どうかエミリアと今はここにいないがパートナーのミルフィの助けになってやってくれ。心から頼むぞ」

 

「「「はい、任せてください!!」」」

 

「君らならあまり心配なさそうだな、安心したよ!」

 

三人は仲良く話すエミリアとクーリッジの二人を見て、和むであった。

 

「いい人みたいだね」

 

「うん。エミリアさんもいい顔してるね」

 

それもそのはず、彼はエミリアの同期生の一人で且つ、ボーイフレンドの中でも一番仲の良い人物であった――。

 

◆ ◆ ◆

 

一時、探知していたアマリーリスの動きが止まり、勘づいて進路変更するかもと騒がれたが、それもなく2日後にはこちらの方へ動きだしたのを確認され、一応の作戦が狂わずに済んだのであった。

 

……そして、奴らがあと1日でこちらの宙域に到着するとミルフィ達オペレーターによって確定され、それぞれ迎え撃つ準備に取りかかった。

中央デッキでは、カーマイン以下、直属の兵士達がモニターに映る、この宙域周辺の映像を見ていた。

 

「各艦、配置完了しました」

 

「了解、だが油断するな。進路変更する可能性は十分考えられるからな」

 

モニターを見ると、ヴァルミリオンを中心に左右にヴァールダイト級5隻、両端側にはグラナティキ級12隻、両最端にはローレライス級の計二十隻がお互いが衝突しないように距離を空けながら弧を描くように並んでいた。A級、B級クラスであるヴァールダイト、グラナティキの全長はヴァルミリオンよりサイズは小さいがやはり超巨大である。

日本列島と同等であるのだから、普通の人間からしてみればとても想像できるわけがない。ローレライス級に至ってはこの二隻よりも大きく、積載出来る戦闘機、ユニットの数は約二万機と途方もない。

 

銀河連邦はそれらを無数に所有しているため、全宇宙でも屈指の戦力を持つのである。

 

「本艦の各兵器、戦闘ユニットの方は?」

 

「ほぼ全機、整備完了とのことです」

 

「そうか、このあと艦内で簡単な壮行会を開こうと思ってる、多少の料理と酒を出そうかなと、どうかな?」

 

「いいと思います。きっと隊員達の気晴らしになると思いますよ」

 

「わかった。これない者も何か差し入れでもしよう」

 

その場にいる隊員達はそれを聞いて大いに喜んでいる。

……しかし、微笑ましい話の最中、彼は目を瞑り、こう言った。

 

「犠牲は避けられないな……今作戦を決行すれば……」

 

「…………」

 

明るい声が聞こえる中、彼と副長は無言になる。

本当なら犠牲者を出したくないがS級の攻撃を受けたらこちらもただでは済まないのはわかっていた。ましてや相手は極悪組織だ、戦闘になれば情け無用の攻撃を仕掛けてくるだろう。

今作戦の総司令を務めるカーマインからすれば、所属隊、種族は違えど仲間である隊員たちの命をここで散らせたくないのである。

 

「……大丈夫ですよ。どんな結果になろうとあなたについていきます。少なくとも私や本艦全員は善を尽くせれば本望ですよ」

 

「副長……」

 

副長の励ましに彼は目を開いて小さく頷いた。

 

「頼むぞ、副長。私に力を貸してくれ」

 

「はい!」

 

二人は心を一つにして心に決めた。必ずやアマリーリスを逮捕、壊滅させることを――。

 

◆ ◆ ◆

 

その頃、アマリーリスはワープホール空間へ移動していた。

訓練エリア、座学室内では。

 

「……お前、本気か?」

 

「ああっ」

 

中でレクシーとユーダがなにやら話をしていた。

 

「なんで脱走なんか……?」

 

「ここの奴らが気に食わん。気持ちワリィぐらいに馴れ合いなぞしやがって……リーダーからしてあんなんだ。ここは俺の居るべき場所じゃない」

 

ユーダはどうやら脱走を企てているらしい。

 

「……けどお前、今まで生きてこれたのもアマリーリスのおかげだぞ!脱走がバレたら今度こそリーダーに抹殺されるぞ!!」

 

「へっ、隙を見てバレねぇようにすんだよ。レクシー、誰にもいうじゃねえよ。もし言ったら真っ先にお前を殺してやるからな」

 

「……仮に脱走に成功したとして外に行ってももうお前に居場所なんかねえよ。俺らみたいに大罪を犯しまくった奴はどこにいっても、仲間外れにされて惨めな思いになって……最終的にまた捕まって死刑になるのがオチだよ、特にお前みたいに人を絶対に信用しないヤツはな」

 

「けっ、余計なお世話だ」

 

「それに比べたらここは天国みたいなもんじゃねえか。悪い事は言わねえ、脱走なんかやめとけ!」

 

レクシーが必死で説得するが、ユーダは全く聞いていない。

 

「もういい。お前と話しても意味がない、俺は行くぜ。誰にもいうんじゃねえぞ、分かったな?」

 

脅し口調で言った後、ユーダは去っていった。

 

「あのバカが……。なんで分からねえんだ……」

 

レクシーはすっかり落胆して深くため息をついていた。

 

◆ ◆ ◆

 

数時間後、ヴァルミリオン内では艦内の者だけで即席の壮行パーティーが開かれた。

 

酒は一杯くらいしか飲めなかったが、今まで作戦準備で気を張り続けていた隊員達にとって、幸せの一時であった。

もちろん、エミリア、ドラえもん達も参加し、色んな隊員達と話したりと大いに楽しんでいた。

 

……そしてパーティーも終わり、なにもない隊員達は明日に向けた休眠をとりはじめていた頃――艦内の中央フロア。

エクセレクターの休憩広場のように広く、天井一面に張り巡らせたウィンドウから見る宇宙はなんとも壮大で幻想的である。

その中の隅のソファーではエミリアが何か思い詰めた表情しながら座っている。

そこはあまり明るくないため、彼女はサングラスを外していた。

 

「……エミリア?」

 

「あっ、提督……?」

 

偶然、カーマインが姿を現し互いに目を向き合う。

 

「眠れないのか……」

 

「ええっ……」

 

彼女の声に元気がないことを彼は感じ取っていた。

 

「となりに座っていいか?」

 

「どうぞ……」

 

彼は彼女の横に座るとゆっくり息を吐いた。……沈黙の時間がただ流れる。二人ともなぜか口を開こうとしなかった。が、

 

「提督……」

 

「どうした?」

 

エミリアは悲しそうな表情で彼の方へ向いた。

 

「私……自信がないんです。あの子達をちゃんと守りきれるどうか……それに……」

 

「それに?」

 

「私は奴らを、アマリーリスをものすごく憎んでいます……。

レイドを……同胞を……わたしの全てを奪ったあの悪魔達を……わたし、絶対に憎しみに負けて殺してしまうかもしれないです……。提督はそれを望んでいないでしょう……?わたし、どうしたら……」

 

彼女は打ち明けた。口に出さなかったが彼女は今までそれを悩んでいた。彼女は奴らの被害者。犠牲になった人達、そして殺された恋人の敵討ちをしたくてたまらない。だが、彼女は軍人であり、警察の役目を持つ役職でその考えはあまりにも個人的な報復行為である。

 

「……実はな、私もお前をこの任務につかせることに今も悩んでいる」

 

「……どういうことですか?」

 

「この任務は一番危険だ。命を失う危険性が非常に高い。

まして、あの子達の命までも危険にさらさせるなんて……私は提督失格だな。現に私はこの作戦が終われば全ての責任を背負って辞表を出そうと思っている、人によっては逃げたと思われるがそれでもいい。だが万が一、お前達にもしものことがあれば、私も一緒にお前のあとを追う覚悟だ」

 

「えっ……そんな……っ」

 

「実はもう妻と子に遺書を書いて遺してる。私はそれほどまでに覚悟を決めている。だからエミリア達を信じてこの任務をつかせたのだ」

 

「提督……」

 

彼はエミリアの肩に手を触れて、優しい笑顔をとった。

 

「奴らを殺すか殺さないかはお前の判断だ、私はもう何も言わない、自分で決めろ。

私の願いはただひとつ、絶対に死ぬな、そしてあの子達を守りぬいてくれ

あの子達と心を一つにして協力すれば、善は絶対にお前達を導いてくれるハズだ」

 

「提督……ううっ……」

 

彼の優しい言葉に彼女は涙を流していた。

 

「エミリア……頼んだぞ」

 

「はっ……はい!!」

 

その返事は十分に気合いのこもった発音であった。彼女は気持ちを入れ直し、来るべき明日へ心を決めたのであった――。

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