『お前らみたいな社会のゴミはこの世から抹殺してやるぜ!』
アデリーンが上方へ飛翔。約70メートル程で急停止し後部にある9つの尾を模した金属筒を前方まで伸ばし、それら全てがまるで銃口のような丸い穴を展開、緑色の光線を一斉放射。
それは撃った瞬間、光ったとしか見えないほどの、肉眼では認識仕切れないほどの速度で一気に前方のスレイヴ数機を撃ち抜き、行動不能にさせていった。
『……俺……撃たれたのか……ああ……っ』
『おいっ、しっかりしろ!!早く脱出しろっ!!』
撃たれた戦闘員はワケが分からず震えながら自分自身に問いかけていた。
しかしその時、アデリーンの後方にいたゴリラを模したマッシヴな機体が背部のブースターを噴かして急発進、一気にその戦闘不能と化したスレイヴにコックピットに向かって、その握り込んだ剛拳で殴り潰した。
『…………』
見事にコックピットがぺちゃんこに潰れてついに返答がなくなった。それにレクシー含む、彼らの機体がその場に立ち尽くす。
『ケッケッケ、無様だなぁ。コモドスよくやった』
『…………』
その機体の乗っているのは彼であったーー。
『コモドス専用中型戦闘ユニット『エンリケ』。白兵戦、近接近戦に特化した機体。アデリーンの護衛を目的に開発された兄弟機』
『行くぞ全機!奴らを皆殺しにするぞ!!』
そして襲いかかるサルビエス率いる第110戦闘ユニット部隊。レクシー達はすぐにそこから退避するが、
『こいつ速ええ!!大型ユニットのクセにスレイヴと同等だと!?』
アデリーンの機動力はレクシー達の想像より上であった。
機動性が売りであるスレイヴと互角であったのだ。同じ速度、同じ制動、同じ旋回能力でこちらに動きについてきている。
こんな一回り大きいのに全く劣ってない。寧ろ、あちらのほうが全てにおいて性能が上であった。
『お前らにいいものを食わせてやる!!』
サルビエスは右操縦レバーの横についていたボタンを押した瞬間、後ろの『尾』が一斉に宇宙空間に放たれた。
有線式。エネルギー供給線が伸びる限り九つの尾が各敵機へ追いかけ回し、的確に狙いを定め、機体を撃ち抜いていく。
『ちい、隙がねえ……』
レクシーは敵の猛攻を必死に避けていた。彼は戦闘員の中でも操縦能力、判断力が特に優れているが、厳しい状況であった。
一方、コモドスと部下も第一線で戦っていた。まるでアデリーンを護衛する家来のように。
『サルビエス大尉には触れさせん!』
コモドスの駆るエンリケはまるでボクシングのピーカブースタイルのように両手を構えて、敵機に密接して拳を人間で言う脇腹、頭部、そしてコックピットのある胸の部分をその強力な金属拳で素早く強打。
一撃で装甲が凹み、コックピットに直撃した戦闘員はものの見事に押し潰される。
スレイヴの一機が離れた場所からエンリケの真後ろから右手首から突き出ている砲門を向けて、発射。
光線が突き抜けエンリケに直撃しようとするも緑色の光の膜が機体全体に覆い、光線をいとも容易く吸収、消滅した。
『なにぃっ!アイツもバリアを』
するとコモドスもその機体に気づき振り向くと右拳を向けて、なんと拳を発射。ブースターがうなりを上げて飛んでいく。
『拳がこっちに飛んでく……ぐわああっ!!』
避けられずに直撃。貫通はしてないが胸部を当たり陥没、機内はグラグラ揺れた。コックピットは……何とか無事みたいだ。
『……ただ殴るだけが取り柄じゃねえってか……』
飛んだ拳はちゃんと元の場所へ戻り、連結。
それはまさにアニメに登場するロボットが装備している定番の武器『ロケットパンチ』を再現しているようであった。
『一旦ここから抜け出す!!』
仲間が敵の密集地帯から離れようと上方へ退避したその時、一瞬だった。コックピット部分に大穴が開き、機体は完全に動かなくなった。これが戦闘員達をさらに混乱させることとなる。
『おい、どうしてやられたぁ!!』
『分からない!!ヤバイぜこれは……』
その中、
『レクシー、大丈夫!?』
「ジュネか!」
レクシーのモニターに最愛の恋人ジュネが映る。
『気をつけて、奴らの後方に約500機の狙撃手がいるニャ!』
サルビエス達の後方100キロメートル地点では長銃身の銀色で施された身の長程の長さを持つ巨大なスナイパーライフル、取り付けられた専用の照準スコープに目を傾けて息を潜めるクイストの姿が……。
ライフルの銃底から繋がる供給線が背中に搭載されているランドセルのようなジェネレータへと繋がっている。
『早く出てこい、早く出てこい』と言わんばかりに銃を構えたまま不動であった。
『むやみに四方へ逃れるのは危険だニャ、その瞬間的にされるよ!』
『クソ、ならホントに逃げ場なしかよ……』
……次第に追い詰められる戦闘員。
立て続けに連邦は次々とホルスとアルスタシアを投入していく。
ホルスの動力源はNPエネルギーではなくグラナティキ級と同じプラズマエネルギーで動いている旧式の宇宙戦闘機である。だが性能面、操縦性に優れた傑作機であり、どの隊員でも扱いやすいためクイストやゼウシウスと同じく第一線を張る機体である。
それに対してアルスタシアはホルスよりもサイズの大きく攻撃面に重視した次世代機で機首部の大型プラズマビーム砲、両主翼下のミサイルポット、胴体の底部に搭載された巨大なミサイル……対艦ミサイルを携え二機が左右に散開、各敵機に攻撃を仕掛け始めた。
『くうっ、ちょろまかと動きやがって……』
ホルスの優れた機動力、両主翼に装備された実弾ではなく、エネルギーを弾丸として撃つ機関砲、胴体の真下に装備された速射式エネルギー砲を駆使した一撃離脱戦法を得意とする、後方支援が主のツェディックとはまた違った戦術だ。エネルギー上、戦闘ユニットと比べたら少し頼りない気がするが、すでに疲労しきったアマリ―リス勢相手には数押しで有効な手段である。
一方のアルスタシアはプラズマビームとミサイルポッドで弾幕を張りながら混乱するスレイヴに接近して対艦ミサイルを次々に直撃させて破壊させる単純な爆擊で押し通していく。
『本当にまずいぞこれは!』
『一旦引くか!?』
『バカ、奴らに背を向けたらそれこそ蜂の巣にされるぞ!』
その戦力を前にアマリ―リスの機体は次々に撃破され、もはや数十機……百機以上の機体が破壊された。
警察の役目を果たす銀河連邦の理念に反するのではないかと思うが、彼らアマリーリスは襲いかかってくる。つまり、自分自身を守るための最終手段……いわゆる正当防衛、という体で行っている。
『……もうだめかもしれん……』
レクシーもあきらめかけて気が緩み、機体の動きが鈍くなった。
それをサルビエスは見逃すはずもなく、狙いをレクシーへ向けた。
『へへっ、諦めたか。それにしても貴様達の機体には華がないな。いくら性能が高かろうが武装が標準装備のクイストと同レベルじゃねえか。クックック……全く拍子抜けだぜ!!』
サルビエスは不気味な笑みと共に勝利を確信。
『俺がトドメを指してやらぁ!!』
ついに突撃し、九つの尾全てをレクシーの機体に向けた。
『南無三……』
万事休す、レクシーは向かってくる巨大な狐の前に瞳を震わせていたーーが。
《ド ワ ッ ! !》
突如、アデリーンの前方が爆発、機体の動きが止まった。
『くっ、なんだ!!どうした!!』
サルビエスがモニターを前方を確認すると、狙いを定めていた機体の後方には紅い戦闘機の群が。
『紅い……戦闘機……?』
アマリ―リスのもうひとつの機体である『ツェディック』のお出ましである。
『おいレクシー、腐ってんじゃねえよ!!』
彼の通信から聞こえてくるのはあの問題男、ユーダであった。
『ユーダ!助けに来てくれたのか!!』
『勘違いすんじゃねえよ。お前らがあまりにも不甲斐なさ過ぎるから腹が立ったんだ。あんな奴ら、今すぐぶっ飛ばせねえのかよ!』
『……できたらとっくの間にやってるよ!』
『……まあいい。レクシー、仕方なくだ。『アレ』するぞ!!』
『アレってまさか……』
『早くこい。俺だってあんましたくねえんだが……やらねえと倒せねえんだろ?』
『…………』
二人の言う『アレ』とは一体……。
『ちい、よくも邪魔しやがったな!!俺がまとめて相手してやらぁ!』
サルビエスは待ってくれるはずもなく、すぐにまた尾をレクシーと今度はそのツェディック達の方へ向けた。
『レクシー、来るぞ!!』
「おうっ!」
そして九つの光線が一気に放たれたが、軌道上にいたレクシーとユーダはすぐに退避、そして二人の乗せた二機は合流した。
『行くぞレクシー!!』
『……わかった。こうなったらどこまでイケるかやってやる!!』
《合 体 だ あ っ ! !》
ーースレイヴとツェディックの真価はここである。それは連邦からしてみれば信じがたい光景であった。
ツェディックの二分割りした機首部が分離し、それそれがスレイヴの両手首に装備されているエネルギー砲の砲身と連結。
そして残ったコックピットと主翼、動力炉がある主胴体の金属分子が増殖して別形態へ変形、スレイヴの背中にあるV字型の推進器に合うように下から合体、残った二つの尾翼は角のように頭部の真ん中に連結。コックピット内では、レクシーの座席が上に上昇し、その下からユーダが潜り込んだ形で設置。
単座式から複座式へと変わり、スレイヴとツェディックの本領の姿が今ここに出くわした。
『二機が……合体しただと!?」
前に立っていたのは両腕部に突き出た10メートルの真紅の長砲身、背部にはスレイヴ、ツェディックのを複合させた巨大な羽翼とスラスターのバックユニット、そして頭部は天を刺すよう突き出た角はまるでおとぎ話に登場する『鬼』のようであった。
スレイヴの白色の胴体、ツェディックの紅いパーツ、その姿は目立つくらいの存在感を放っていた。
『久々だなこれ……上手く扱えっかな?』
『そんな心配はいいから早く操縦しろ。俺は早くあいつらを殺したくてしょうがねえんだ』
『へいへい、ユーダさんは怖いでっせ。なら行くぜシルバリオン!』
レクシーが勢いよく操縦レバーを前に押した時、瞬く間に目の前のクイスト一機がすでに真っ二つに胴体が分断されて、その後方には、右手を振り切った『シルバリオン』の姿があった。
『何だとォ――!!』
先ほどの動きとは全く違う。その機体は疾風の如く、モニターやレーダーが捕らえきれないほどの超高速で駆け巡り、翻弄し、連邦の機体を一機、また一機とバタバタ薙ぎ倒していった――。
「見せてやるぜ、音速を超えた闘いって奴をな!!」
NP炉心を二基、直列連結で搭載したシルバリオンの性能たるや、先ほどの苦戦が嘘のようであった。
『このアデリーンが……捕らえきれないだと!!?コモドス、あいつをどうにかしろォ!!』
『…………っ』
シルバリオンの機動力はスレイヴと比べて桁が違うほどで接近しなければまともに攻撃できないエンリケからすれば、非常に相性の悪い相手である。
「今までの分を倍返しで返してやるぜ!」
ログハートを装備したラクリーマのように、スレイヴ、ツェディックの複合型ブースター、スラスターで縦横無尽に動きまわりながらツェディックに搭載されたミサイルを雨のようにばら蒔き、次々にクイストの大軍へ直撃、爆散させる。
「400機撃破!ユーダ、バテるなよ!」
「それはこっちのセリフだレクシー!」
二人の息のあった連携プレーで次々とクイスト部隊を大破させるシルバリオン。高出力のNPエネルギーのビームで容易く撃ち抜き、多連装ミサイルランチャーで弾幕を張りながらエネルギーソードで片っ端から切り捨てていく……スレイヴとツェディックの二機から引き継ぎ、更に出力が大幅に強化された全ての武装を駆使して瞬く間に殲滅していく。
――突然、シルバリオンはその場で停止し、ある方向へ向くて両手を前方へ突き出した。
「ユーダ、頼むぜ!!」
「てめえに言われるまでもねえ!!」
ユーダの嬉々と攻撃用レバーを握りしめ、モニターを確認する。その方向とはあのスナイパー機の確認された方向であった。
「行くぜ、高出力光子ミサイル発射!」
左右の腕部から長く突き出た紅い砲身から巨大光弾が同時に発射、平行に並び弧を描きながら遥か前方へ飛んでいった。一方、狙撃部隊も上方からこちらに何か光る物体が二つ確認され……。
『光子ミサイル!?』
『いかん!!すぐに退避するんだ!!』
時すでに遅し、二発の光子ミサイルは回避する間もない程の速度で向かってくる。
『避けきれません!!』
爆発し、一気に膨張。その範囲は各ミサイルに直径数百キロメートルに及び、そこに存在した機体、小型隕石郡とは膨張した光に巻き込まれ、消滅した。それはレクシー達からの距離からでも十分確認できるほどであった。
『よっしゃ、もう狙われる脅威はなくなった。あとは……』
二人はニィと笑いなから振り向き、残ったサルビエスの部隊を睨み付ける。
『レクシー、ユーダ、あのユニットの弱点が分かったニャ!!』
再びジュネから通信が入り、モニターに注目するレクシー達。
『あいつの弱点はあの九つの尾だよ。あれ以外に武装はないから、つまりあれさえ破壊すればもはやバリアだけが取り柄のウドの大木だニャ!!』
「そうか、なら……」
「あのしっぽをなんとかすりゃあいいってわけだな!」
先ほどの両砲門のからスレイヴよりも10m長く幅も増量した刀身……まるで太刀な長さを誇る光を放ち、攻撃態勢に移る。
「早くしっぽを伸ばしてこい、クククッ……」
対するサルビエスはと言うと自分の部隊を先ほどの攻撃を受けて怒りに満ちていた。勿論、仲間を倒されたことによるワケでなく、自身の持つ崇高なプライドを汚されたという意味である。
『このぉ、調子に乗んじゃねーーっ!!』
『たっ……大尉!!』
頭に血が上り、単機で突進。実に愚かだ、二人の策など知るよしもなく、九つの尾を伸ばしてシルバリオンに狙いをつけ、射出した。
それらは古事記に登場する大蛇の化物『ヤマタノオロチ』のようで、そして生物のようで醜態な金属達の怒涛の勢いであった。
しかし、レクシー達はそれらを目の前にしても、臆するどころか逆に嬉しそうな表情であり、グッとレバーを前に押した―――。
「なん……だとっ……」
それは閃光のような一瞬でその九つの尾に繋がっていた供給線全てが狙った敵の前で切断され、尾のような物体が辺りに散乱し浮いている。さすがのサルビエスもこればかりは血の気が引いていた。
「トドメと行きますか、先ほどのツケを倍に返してやんぜぇ!!」
瞬間、シルバリオンは急発進。数秒後にはなんとアデリーンの右腕や両足が切断されていたのだ。
『バリアが貫通されただと……!?』
『大尉!!』
急いでエンリケが向かうも彼らの機体の前にはもはや赤子同然、アデリーンと同じく反応できぬ間に左腕と脚部を斬り飛ばされてしまった。
シルバリオンは姿を現すと両手を組み、アデリーン率いる部隊のいる前方へ腕を伸ばした。
その瞬間、両肩の砲身も敵のいる前方へ自動的に調整。そして、あの両手首の紅い長砲身同士が平行に重なった時、『バチバチ』とスパークのようなものが砲身にほとばしった。
『ヤバイ、おいコモドス!!今だ、あれを使え!!』
焦りに焦っている彼は、コモドスに何か命令を出すが、本人は何かを畏れているのか急に顔色が悪くなった。
『大尉……っ、やはり自分には無理です……』
『キサマァ!!ホントにお前、絶望のドン底に叩き落とされたいんだな!!』
『……………っ』
コモドスはガタガタ震える手で、コンピュータパネルの右手前にある『ツマミ』を触り、グッとつまんだ。
『やれぇぇーっ、コモドス!!』
……そしてツマミの方向は真下から真上へ変わった。
『なっ、なんだぁ!?』
『制御が効かない!!ナゼだぁぁ!!』
近くにいたクイスト達が突如、ガチガチに固まったと思いきや、とっさに移動を開始。 アデリーンの目の前に行くと、一機、また一機とまるで盾になるかのように多数の機体が覆い被さっていったが。
「ユーダ!!奴らの動きはおかしいぞ!」
「構うこたあねえ、あんなに固まってもらえりゃかえってやりやすいぜ。行くぞ、全砲門一斉発射!!」
シルバリオンの展開した両肩、そして平行にした両腕部の砲門から莫大なエネルギー質量を持つ極太の蒼白の光線が前方に向けて解き放たれた。
それが拡散しはじめ、広範囲を包み、喰らいながら、ついにはあの謎の固まったクイストの大群までも……。
《ぎゃああ………》
まともに直撃し、外側にいた機体は全て完全に粉々に……それが段々内側にも襲いかかり、装甲が消し飛ばされ内部もさらされ粉々になっていく。
………出力が弱まり、段々前方の視界が見えるようになった時、残っていたのはかろうじて残ったクイストの残骸、あの二機、エンリケとアデリーンと射程範囲から逃れたクイスト数機のみであった。クイストの『塊』で何とかアデリーンとエンリケだったがもはやどちらも戦闘できる状態ではない。
『くくぅ……、本部隊は戦線離脱する。各機、帰艦せよ!!コモドス、俺を引っ張ってくれ……おい、コモドス!!聞いてんのか!!』
……しかし本人はそんなところではなかった。眼から涙をポタポタ落ち、これでもかと言うくらいに手を握り込んでいた。彼は自分のしたことを悔やみに悔やんでいる……。
「俺は……最低で残忍な男だ……っ」
しかし、もはや取り返しのつかないことであった。自分の上官の命令とはいえ、あまりにも非人道的で非道な行為。
エンリケに仕組まれたそれはサルビエス部隊に機体限定で極秘に内蔵された制御装置であり、使用するとパイロットの制御全てが一切遮断されてしまいサルビエスの身代わりとなって動くという卑劣極まりないシステム。当然部下には伝えておらず、知るよしもない。これはサルビエスがメカニックマンに『コネ』を使って行なった行為であった。
……そして残った機体は急いで後退していく。かろうじてまだ推進装置が無事であったエンリケはアデリーンを身体で押すように去っていった。
「ちい、逃げやがった!!追いかけろレクシー!!」
「いや、単機で追いかけるのはやめよう。リーダーが言ってた通り、孤立はホントに危険だ」
「けっ、これを好機を逃すってんだよ。このまま逃してまた態勢立て直されたらどうすんだ?」
「あんなボロボロにさせてやりゃあしばらくは出撃無理だ。それに俺らの目的は全機を相手にすることじゃねえんだぞ、あくまでエクセレクターを突破させることだ」
「ちっ……」
周りを見渡すと、味方の数が少ない。先ほどの強襲でこちらも大打撃を受けた証拠だ。
レクシーは額の汗を腕で拭い、安心の息を吐いた。
「ありがとよ、お前が来てくれなかったら全滅だったぜ……」
「へっ、だからお前がしょうもなさすぎたから見てられなかったんだよ」
「……にしても今回、合体してよくここまでいけたよなぁ。いつもなら絶対噛み合わないでわやくちゃになるのによォ」
シルバリオンはスレイヴとツェディックの二機が揃えば合体できる。寧ろこの二機の本領であり、そのポテンシャルが凄まじい。ではなぜ全機がこの形態にならないその理由はその操縦システムである。
シルバリオンは見た通り複座式であり、スレイヴの搭乗者は機体の操縦管制、ツェディックの搭乗者は火器管制を担当するため、二人の技量と同調で性能が左右される機体なのである。
つまり乗る二人によっては全く使いこなせないため、戦闘員は使いたがらないのであった。
ちなみにこの機体を開発したのはあのサイサリスであり、いかにもパイロットより性能面を重視したがる彼女らしい発想である。
「もう合体なぞ二度とやりたくねえぜ。人に力を貸すってのがあんま好きではないんでな」
「ふふっ、ユーダらしいぜ。まあ、こんな長話しててもしゃあねえや。不利な仲間のどこに助太刀に行く。分離するか?」
「けっ、とかいって分離してまた危なくなったらどうすんだ?俺はもうゴメンだぜ」
「キヒヒ、だな。近くにいる全員、今から圧されている仲間の援護にいくぞ」
「わかった、後れをとるなよ!」
案外仲の良さそうなレクシー達は次なる別の戦場へ向かっていった――。