――そしてイクスウェスの格納庫内。水色のピチっとしたパイロットスーツを着込んだエミリア、ミルフィ、ドラえもん、ジャイアン、スネ夫の5人は互いに向き合っていた。
「いよいよ執念場ね。みんな準備は良いかしら?」
「…………」
エミリアがそう言うが4人は沈黙していた。
「ホントに……助けられるのかなぁ……」
スネ夫がいつものように弱気である。彼ならまだわかる。
「あ、あんな無茶苦茶すぎる奴の前を通っていかなくちゃダメだし、もし追ってきたら……」
ドラえもんまで不安の声が……。しかし、目の前であの男、ラクリーマの恐ろしさをモニター越しではあるが直に見せられて何も思わないが寧ろおかしかった。
「み、みんなしっかりしろよ!のび太達を助けたくないのかよ!?」
「じゃ……ジャイアンだってそんなこというわりに凄く震えているじゃないか!?」
強気で励まそうとするジャイアンもやっぱり怖いのであろう。
「大丈夫。このイクスウェスの最大速度なら無事振りきれるハズよ」
「けど……エミリアさんは怖くないの?もしかしたら死ぬかもしれないんですよ!?」
スネ夫の問いにエミリアは口を塞いでしまう。
「……スネ夫君の言う通り、確かに怖いわ。正直な話こんな悲惨なことになって……わたしも逃げ出したいくらいよ。
けどね、あたし達の任務が出来るだけ成功しやすいように沢山の隊員達が犠牲になったの。いかなければ死んでいった仲間達の苦労が水の泡よ」
「エミリアさん……」
「あなたたちだってやっと友達二人が無事だってことがわかった。ならあとは救い出すだけよ、そのために今まで頑張って来たのならここでやらなければいけないのよ。チャンスを棒に振ることだけはやめて、いい?」
「…………」
「ミルフィ、アマリ―リス艦内に侵入の際、サポートをお願いね」
「うん……」
ミルフィまであまり元気ではなさそうだ。そんな四人に見かねたエミリアはついに……。
《い、いつまでもウジウジしてんじゃないわよォ!!》
「! ! ?」
キレて怒鳴り声を張り上げる彼女に全員がビクッと応えた。
「……シールド持った?ちゃんと各装備を所持した?ちゃんと自分で確認してから搭乗してね!」
ぶっきらぼうに口調で言うさま、すぐにイクスウェスの方へ向おうとするエミリア。しかし彼女は背を向けたままサングラスを外し、腕で目をゴシゴシ擦る仕草をする。
それを見た四人は感ずいた。彼女は泣いているということを。
……よく考えたら彼女は一番苦労している。自分達の面倒、そして護衛と、この特別編成隊の隊長である彼女は今、どれだけの重圧、責任感を感じているのか計り知れない。さらに先ほども隊員達の最期を前にしながら涙する姿もあった。
彼女はもう精神的に限界なのかもしれない。しかし、それを無理矢理押し潰して任務を遂行しようとしている。彼女でさえ辛いのに自分達が不安ばかりいっていれば責任者である彼女も怒濤するのも当たり前だ。
(なんか……酷いことしちゃった……)
四人とも反省している。
……そんな気まずい雰囲気のまま、全員がイクスウェスに搭乗し、各座席についた。
「各人、ベルトを固定。ミルフィ、今すぐ安全なルートを検索して!!」
「了解」
あの偵察機より空間が広く感じる操縦室では操縦席にエミリア、助手席にミルフィ、後ろの各席には当然、あの三人が着席する。
「NP炉、プラズマ反応炉、正常稼働、ツインハイブリッド・ドライヴ起動開始。リアクターエンジン、各機能、各武装……問題なし……」
とてつもなく険しい目付きで各ボタンとパネルを作動させるエミリアとその横で必死でコンピュータを動かすミルフィ。とてもじゃなく声が駆けられない。ついに機体が起動。室内がライトアップし、彼女は天井から出現した専用ヘルメットを直ぐ様被り、中央の四角い操縦レバーをグッと握り込み。息を大きく吸った。
「あとは主砲発射を待つだけ。それまで待機……」
機内は静まりかえり、来るその時に向けて緊張が走っていた――。
《本艦前方より膨大なエネルギー反応感知。ランクS級攻撃と予想。直ちにエクセレクター・タイプ2へと移行する》
ユノンはすぐさまヴァルミリオンの主砲攻撃を感知、すぐさま分離、合体変形へ移行を開始。甲羅状態を解除して、元の形態に戻すと三等分に分離を始め、今度は一番後ろの部分が最前列へ移動、そのまま合体へ。
最前列に移動した部位の側面がまるで液体化したかのように左右へドロドロ伸びて、あたかも両方とも500キロメートル以上はある巨大な主翼のような形状へ変化させて硬直。後部も同じように巨大な尾翼に変化させ、その異様な姿を連邦に見せつけた。
《前方にエネルギーを収束、ランクS級攻撃の防御態勢に移る。速やかに敵攻撃射線上から味方を退避させよ。もう一度繰り返す、これは敵艦のランクS級攻撃である》
「りょっ、了解!!」
オペレーターはすぐに戦闘員達に退避命令をかける。
『S級攻撃だと!?なら早く離れねえと!!』
『全機、出来るだけ遠くまで離れるんだ!!でないと通過時の余波だけでも消滅するぞ!!』
戦闘員が迅速に八方へ散開し、離れていく。
「敵艦、また別形態へと変形。さらにエネルギー質量がさらに増加、全敵部隊が次々と射線上から四散して離れていきます」
「……気付いたか。しかしこちらにとっては好都合だ。よし、ユピテルス砲発射用意!!」
「了解、ユピテルス砲発射態勢に移る。主砲内増幅炉内のエネルギー供給率100%、セーフティ解除!!」
ヴァルミリオンの前部から展開された巨大な砲身内からリバエス砲のように、エネルギーの粒子が少しずつ前へと押し出されている。
エクセレクターでも来るべき連邦最大の主砲撃に備えて、各員が衝撃体勢に移る、それはのび太としずかもまたしかり。
しかし鼻から上すべてが金属機械と化し、あの特徴的な緑色の長い髪さえも完全に機械に組み込まれてもはや、異形と化しているユノンは歯を剥き出して不気味と……笑っていた。
《クックックっ……さあこい。我が策に落ちていることも知らずに……》
エクセレクターの艦首……いや、巨大な円クレーター状の砲門から高密度のエネルギーの粒子を放出、壁の形に展開した。連邦の予測通り、バリアを展開し、こちらの主砲を待ち構えいる模様だ。
「……敵艦、NPエネルギー障壁を前方に展開。予測通りです!!」
カーマインは一呼吸置き、高らかに叫んだ。
「行くぞ!!ユピテルス砲発射!!」
彼が叫びと同時にその封印が今、解かれた。砲身から放たれた、グラナティキ級、ヴァールダイト級をも遥かに上回る莫大な質量のエネルギー粒子が全て放出された。
マスカットのような薄い緑色の、あたかも大津波が押し寄せる如く、直線的に怒涛の勢いで突き抜ける粒子がエクセレクターに迫っていた。
《敵艦S級主砲接近。なおバリアを展開しているが各員、衝撃体勢及び、失明を恐れにより直視を避けよ》
気の利いた彼女の指令にモニターを見ている全員が目を瞑り、身体を固定させ、ついにエクセレクターの展開したバリアにS級エネルギーの塊が直撃。同質量の同エネルギー同士にぶつかり合いが空間自体を深く歪み、そしてその余波で周辺に漂流する何キロと言う巨大な隕石郡が次々に粉砕されていく。
「くっあああーーっ!!」
生じた強烈な衝撃波が艦内全てに襲いかかり、左右に大きく揺れ、翻弄されるも彼らは必死で耐えしのぐ。
「きゃああっ!!」
「うわああっ!!」
のび太としずかは揺れに耐えきれずに共に倒れこんだ。しかし、
「キャア!!エッチィ!!」
「ぶはっ!!」
彼の手はなんとしすがの胸に押し当てていた。ワザとではないのだが、取りあえずビンタをかまされた。
――互いの膨大なエネルギーは相殺され、ヴァルミリオンから放たれたエネルギーは消え、エクセレクターに何の決定打をつれれなかったが、同時にバリアも相殺されて完全に消滅した。
《……バリア相殺……エクセレクター……タイプ1へと……移行する……ううっ……》
ユノンの様子がおかしい。今にも倒れそうなほどに疲労しきって表情が歪んでいた。のび太達を異変に気づき、彼女の真下へ向かった。
「ああ……ユノンさんが……キツそうな表情だ……」
「どうしたのかしら……」
すると何人かが二人のいるところへやってきて心配そうな顔で上を見上げた。
「ユノンさん!大丈夫ですか!!」
「ここは解除した方が……」
しかし、ユノンは歯ぎしりを立てて彼らをぐっと睨み付けた。
《黙れ、そんな心配は無用だ。オマエ達こそ何をしている……?すぐに自分の持ち場に戻れ!》
怒りを込めた声が辺りに響きわたり、彼らに体に突き抜けた。
「ああ……っ」
彼らは彼女の言われた通りにすぐに自分の席に戻っていく――。
「ユノンさん、一体どうしたんですか!?」
しずかが近くにいた女性オペレーターに尋ねると、重い口を開きこう解いた。
「実はね、デストサイキック・システムは使うだけでもユノン自身に大きな負担がかかるんだよ」
「え…………!?」
「あのシステムはかなり危険でね。少しでも精神が乱れると機械が拒絶反応を起こしてユノンを取り込んで二度と元の姿に戻れなくなってしまうんだ。精神崩壊まで起こしかねないという『いわくつき』で……」
その言葉がしずかの体に電撃が走ったような衝撃が襲い、一瞬、寒気がおそった。
「……だからこのシステムは事実上、アマリ―リスの中で扱えるのはユノンただ一人だけなの。冷静で……作戦時はまるで人形のように無感情で、何事にも動じない彼女ならこそ為せることなのよ」
彼女はため息をつき、目を瞑る。
「かなり前、一度だけ彼女が試験的に使ったことがあって初めてってこともあったけどあまりにも負担がかかりすぎて解除したらその後、丸2日ぐらい寝込んじゃって。今回は助かっても一週間ぐらいはいきそうね」
「いっ……一週間っっ!!?」
これではもし地球へ帰れても彼女と別れの挨拶すらできない。
――しずかは悲しくなった。やっと彼女と仲良くなれたのに…… 落ち込みかけたしずかに彼女は気を察して、静かに肩を置いた。
「あんた達、リーダーとユノン、そして全員に感謝しなさいね。命をかけてまで二人を地球に帰そうとしてるんだから落ち込んでちゃ失礼よ」
しずかはモニターを見つめる。ラクリーマはもちろん、戦闘員達はただそれだけのために、自分達を地球に送り帰すだけに命をかけて戦ってくれている光景を。
――はっきり言って馬鹿な話だ。あらゆる悪の限りを尽くす組織がこんな善行をすること自体あり得ない。
しかし、現実に彼らがこうしてくれているのだ。もしかしたら、彼らの唯一の良心が生んだ行動なのかもしれない。しずかはコクッと頷いて決心した――。
エクセレクターは休む間もなく分離を開始。各部位が繰り上げる形でまた直列へ並び、合体態勢へ。
《エクセレクター、タイプ1へと移行する。すぐさまエネルギーチャージへ移行する……》
すぐさま合体。最前部がモーフィングで美しき女性な顔へ変形、両舷からレーザー砲の役目を担う手の形をした砲門へと変化させた。
一方、ラクリーマは主砲で離脱した敵機を追いかけ回し、撃墜するという無茶ぶりをしていた。
しかし連邦はもはや敵わないと察知し、ラクリーマを振り切り、エクセレクターへ突貫を開始。
バリアが解除された以上、あとはまたバリアを再展開されるまえに近づくだけであった。しかし、目にした獲物は絶対に逃がさない思考の彼はすぐに追い抜くクイストの大軍をUFO機動で追跡し始めた。
「いかせるかァーーっ!!」
クイストの大群は従来の推進力より大きく上回っている。脚部が無く、代わりに巨大な推進ブースターが取り付けられていて、背中にも戦闘で見られなかった大型の推進機関が取り付けられている。これはクイストのバリエーションの一つ、『長距離航続兼、高機動型』であり、戦闘よりも戦線突破を目的とした形態だ。
その機動力だけならシルバリオンに匹敵するかもしれない程だが、リミッターを解除したログハートの超スピードには勝てるハズもなく一瞬で追い抜かれてしまった。そのスピードのまま彼はクイストの方へ向き、両手を高く掲げ、それぞれ手の平を平行に合わせた。するとその間に高エネルギーの塊が発生、徐々に大きくなっていった。
「ムオン!!」
膨大なエネルギーが収束、それを巨大化させた。
「蒸 発 さ せ て や ら ァ ! !」
《ド ワ オ ! !》
ラクリーマは莫大な球状の光を全力で投射し、前方の軍団を無惨にも薙ぎ払いながら飛んでいく。一見、光子ミサイルに似ているが、これは弾道が直線型である。
光子ミサイルは曲線型であるため分類できない。『エネルギー弾』であった。しかし、そのエネルギー弾は消える事なく超高速で突き抜けていき、
「前方から巨大なエネルギーの塊が飛んできます!!」
「なに!!?」
エネルギー弾の弾道先にはヴァルミリオンの右端に配置していたグラナティキ級11番艦『ヤーマル・シュルリ』、ヴァールダイト級5番艦『メィーフィー』、そしてローレライス級1番艦『クレストリア』が。
「すぐにバリアを展開!!急げ!!」
艦全体にNPエネルギー粒子で構成させた障壁が覆う。どうやら連邦で使用されるNPエネルギーの粒子は全て緑系統色で発生するみたいだ。これも使用する装甲材、金属とエネルギーの化学反応で生じることなのである。
――エネルギー弾は一定の大きさに保ったまま、超高速で飛来し、艦のバリアに衝突。瞬間、金色の閃光と共にエネルギー弾が炸裂、強烈の光と衝撃波が隣接する3隻の艦へと拡散、襲いかかった。
「あ、ああ……………」
まるで衛星のような大きさの光の球体に膨れ上がり、真っ暗な宇宙にまるで日中のような明るさを放ってこの宙域を照らした。そして直撃を受けたこの3隻は………。
「……ぐ、グラナティキ級11番艦……ヴァ、ヴァールダイト級5番艦、ローレライス級1番艦、反応消滅……っ」
またしてもこの男にこの3隻を宇宙の海蘊と化してしまい、連邦隊員全員を絶望のドン底に叩き落としたーー。
一方、直撃を免れた他の艦ではブリッジにいた艦長含む、その他の乗員はその光を直視してしまったために目を押さえてうずくまった。
そして周辺に艦の護衛していた各戦闘ユニットの部隊も衝撃と閃光が襲い始め――。
『何も……見えない……』
ヘルメットをかぶっているが役立たず、パイロットの目を容赦なく襲い、開けられなくした瞬間、
『ひゃあっっ………』
二次被害として衝撃が襲い、機体が次々と爆発、大破されていった。次第に衛星級サイズのエネルギー弾も段々縮小していき――消滅。離れていた他の艦には何の影響がなかった。が、実はそれよりブリッジにいた全員が異常をきたしていた。
「助けて……何も見えない……」
ブリッジ内は悲惨であった。あの閃光にもたらされたのは未だ、目を開けられずその場にひれ伏せる者、痙攣を起こしその場に倒れる者、強烈な吐き気を催し、その場で嘔吐する者、頭痛を発しうなだれる者……ほぼ全員が異常を訴えていた。
ーー劣勢かと思われていたアマリーリスがラクリーマの鬼神の如き活躍に事実上の逆転現象が起きた。だが当の本人は次第に苦渋の表情となっていく。その理由とは。
「ちい……そろそろ右腕がやべえ気がする……」
いくら無重力だからといってもログハートを酷使し続けた彼の右腕が限界に近づいていた。
(多分……肋骨何本かはもういっちまってる……身体中が変な感覚だ)
『BE-58』を打ち込んでいるので痛みや感覚などないが、本当なら彼はもはや闘うどころか動くことさえも危険な状態であった。
常軌を逸脱した高速戦闘が初めから彼の傷ついた体に負担を掛けすぎていた当然の結果である。
しかし、ついに待ちに待った連絡が通信機から受信された。
『ラクリーマ、セルグラードの調整が終わったぞ!!今、スレイヴに積んで持って行かせている!』
「やっとか、遅いぜ!!」
『待ってな!!奴らにもっと絶望を与えてやれぇ!!』
――そして、一機のスレイヴが彼に近づき、軽く握りこんでいた巨大な手から、コンテナを取り出しラクリーマへ差し出した。
『リーダー、持ってきやしたぜ!!』
「おう!!ありがとよ!!」
スレイヴは去っていく。コンテナが自動的に開き、中から姿を現したのは開発エリアでログハートの隣で同じく巨大なガラス菅で封印されていた巨大な大砲で、人間ではとてもではなく扱えなさそうな代物であった。
「……改めて近くで見るとでっ……でけえ……こんなのを俺が扱えってか……」
ラクリーマでさえ困惑している。そんな中、サイサリスから通信が……。
『届いたようだな。早速使い方を教えるぜ。まずセルグラード本体の後部に回れ。そこに接続口があるからログハートを差し込め。砲身にあるグリップをブラティストームで握って身体と砲身を固定しろ!!』
ラクリーマは言われた通りにセルグラードの後部へつくなり、『接続口』に右腕を突入させ、左の『とって』を同時にグッと握り込んだ。ブラティストームから飛び出した触手のようなチューブがログハートの炉心部に伸び、直列に連結した。
『セルグラードはブラティストーム、ログハートの炉心、そして本体の増幅炉2基の4基直列連結することにより初めて使える。チャージに少し時間がかかるが我慢しろ』
各炉心が一気に活性化、全エネルギーをセルグラードへ送りこんでいく――。
果たしてこの砲兵器はどれ程の威力を持つのだろうかーー。