――その頃、ヴァルミリオンの右隣に位置するヴァールダイト級1番艦『セラーミア』のブリッジでは……。
「艦長、新型試作重戦闘機一号機『リヒテラ』、二号機『リテレメ』発進準備完了しました!」
「よし、直ちに発進させよ!!」
「了解!!」
すぐにヴァルミリオンへと通信を繋ぎ、カーマインへこう言った。
「カーマイン殿、これより新型機の実戦投入を行います。直ちに前方の部隊を退避させて下さい!」
『新型機か……しかし、なぜ退避させる必要があるのです?』
「それには少し理由がありまして――」
ついに連邦は新鋭機を投入するが、その訳(ワケ)とは一体……。
――連邦部隊が次々と後方へ去っていく。その様子をアマリーリス員は見逃すハズがなかった。
『どうしたんだ?奴ら、また下がっていくが……』
『また……敵の主砲攻撃か……?』
様々な憶測が飛び交う中、突然オペレーターから通信が。
『全機、前方約7000ギャロ……ランクA級艦から新たな敵影感知、こちらへと前進してきます。その数は二機』
『二機……たったの二機か!?』
『二機ぐらいなら俺らで仕留めてやるぜ!!』
『待ってください……これは……』
『どうした?』
『今までの敵機と異なった形状……新型機です。エネルギー質量は……『ランクC級』!?』
その事実が全戦闘員に衝撃が走った。従来の戦闘ユニットでは到底辿り着けないエネルギー量で、連邦の惑星内運用艦級の質量だ。シルバリオンでさえランクE級である。
『し、C級だと!?』
『オペレーター、映像を送ってくれ!!』
『了解!』
――そして送られてきた映像内に映る二つの機体……どうやら戦闘機のようなフォルムのようだが……。
『戦闘機に見えるが……確かに見たことねえフォルムだ』
『けどここに向かって来てんならどの道倒さねえいけねえ!!速攻で潰しにかかるか!!』
『……だな。戦闘機なら全員で束にかかりゃいい!!ただ新型ってのが気になる。十分警戒して行くぞ!!』
『おう!!』
全機が一気に総攻撃をかけようとその二機の元へ飛び立っていく。だが近づくにつれて戦闘員の表情を一変、絶望させることとなる。
『う……うそだろ……これが戦闘機なのか……』
『でっ……でかすぎる……』
彼らが目にしたモノ、それはまさに巨大であった。全長は……少なくとも50キロメートル以上はある、だがどうみても戦闘機にしか見えない流暢な形状……戦闘機と言うより巨大な機動要塞と言っても違和感のない存在感を放っていた。
そう……これが連邦の新型試作重戦闘機、『リヒテラ』、『リテレメ』である。
ちょうどそこにレクシー達シルバリオンと数十機のスレイヴとツェディックも駆けつけてくる。
『な、なんてデカブツだ!!』
『気をつけろ。あの二機、なんかイヤな予感がする』
その二機がこちらに近接した時、機体の全装甲面から無数の発射口のようなものが出現、しかし全てがこちらに向けているのではなく、様々な方向に向いていた。
『来るぞ!!全機警戒せよ!!』
レクシーの掛け声で各機がその場から散開、すぐに警戒体勢に入った――刹那、一瞬でこの宙域は閃光で埋め尽くされる地獄と化した。
その二機の無数の発射口から放たれるモノ――それは巨大な光弾、ゆっくりとそして曲線を描きながら四方八方へ降り注がれた。
「こ、光子ミサイルだとォォーーっっ!!?」
約1000発以上の光子ミサイルが全方位に、そして無差別に一斉に放たれ大爆発。
それが二機合わせて約2000発以上の光子ミサイルがアマリーリスの戦闘ユニット郡に猛威を振るい、その火力の前に次々と消し飛ばされていく機体と戦闘員達。
「ここは一時退避だ!!」
レクシー達は近づいて攻撃を与えるのは困難だと察知、すぐに四方へ退避。
しかしその二機『リヒテラ』、『リテレメ』はそれを逃がすハズがなかった。
両側面と中央部、そして主翼上下に搭載された砲台が二機共50門、計100門が彼らに狙いを定めた。
――放たれるは両側面と主翼の計35台の砲台から連射性の高い緑色の巨大光弾、中央部の計15門の極太の高エネルギーの光線。彼らに退避させる時間など与えず追撃を開始。
『くああーーっ!!なんちゅう火力じゃァァ!」
シルバリオンの機動力でなんとか集中砲撃を回避しているがいつ直撃するやも分からない。
「レクシー、あんな奴らに背を向けんじゃねえ!!やられるぞ!」
「ふざけたことぬかすなユーダ!」
スレイヴ、ツェディックはもはや格好の的であり、この砲撃で次々に落とされていった――。
『ちい、こうなったら……直接操縦席に狙いをつけてやる!!オペレーター、敵パイロットのいる位置をスキャンしてくれ!俺らがやってみる、他機はこのまま後方へ下がれ!』
レクシー達の駆るシルバリオンがまた二機のいる方向へ戻っていく。
『リヒテラ』、『リテレメ』はどうやら同武装しかしていないようであるが超火力であることは間違いない。
しかし、シルバリオンの機動力、レクシーの操縦技量も相まって集中放火をかいくぐりながら接近していく――。
「よっしゃっ!!パイロットにドぎつい挨拶をしてやらぁ!!早くしやがれ!!」
「ユーダ、そんなに興奮すんな!こっちは避けるのに精一杯だってのにイイ気なモンだぜ!」
あと数百メートルにまで接近した時、オペレーターからついに通信が。
『スキャンした結果なんですが……』
「どうした?」
『エネルギー質量は感知できるにも関わらず、あの二機ともパイロットの生体反応を感知出来ませんでした……っ』
「なんだと……?じゃあまさか……」
――この両機自体が自律回路によって動く所謂『無人戦闘機』であったのだ。
レクシー達は慌ててまた退却していく。
「ちいっ!ならあの両機体自体を破壊しなけりゃあいけねえじゃんかよ!」
「こうなったら光子ミサイルの集中放火で消し飛ばしてやらぁ!!」
「……それしかねえな。今、リーダーは新型武器のエネルギーチャージ中で手が離せねえしエクセレクターの射程範囲外だ。ツェディック全機集合せよ!これより光子ミサイルで総攻撃をかける!」
レクシーのかけ声でツェディック群が集結。敵機の射程範囲外から各砲門を前方の一機『リヒテラ』に向け、照準を合わせた――。
『いくぜ!!全弾一斉発射っっ!!』
シルバリオン、ツェディックから無数の光輝く光弾、光子ミサイルが前方へ飛んでいく。
それらが皆、まるで流星群のように目標である機体へ向かっていった。
肝心の『リヒテラ』はと言うと回避する動きもなくゆっくりと前進している。さすがにこの巨体では機動性は高くないようだ。
――そして着弾。リヒテラはバリアらしき障壁を展開していないようだ。
光弾は爆発により膨張、機体を瞬く間に包み被っていく。広範囲にかけて全てを破壊する光子ミサイルをこれだけ撃ち込めばタダではすまないだろう――。
「よし命中した。これで消滅してくれたらいいが……ん?」
膨張する輝かしい光の中からゆっくりと何かが出てきた。
それは戦闘機の前部であった。あれだけの集中放火を受けたにも関わらず破壊どころか傷ひとつもついていなかった。
光の弱まり、まるで何事もなかったかのような新品同然のキレイな装甲が姿を現したのであった。
『きっ、効いてない……』
唖然とする戦闘員達。戦闘ユニットの中でも高威力であるこの武装をもってしても効かないとなると最早茫然である。
再びオペレーターから通信が受信された。
『解析しました。あの二機共はどうやら特殊装甲が使われている模様。敵大型戦闘ユニットにも使われていない装甲です!』
「特殊装甲だと!?」
『その装甲は光学兵器どころか物理攻撃による熱、衝撃全てを吸収、それをエネルギーに変えて装甲をさらに活性化させる効果を持っています!』
恐るべき事実である。つまりこちらの攻撃は全てその装甲をさらに強力にさせる糧となってしまうのである。
これこそ連邦が開発した試作装甲『リベジュダース』。この二機に使われている装甲がまさにこれであった。
――今度は後方にいた『リテレメ』の底部から多数の何かがこちらに飛来。
『何か来るぞ!!』
モニターで確認するとそれは実弾のミサイルであった。しかし、一つ一つがクイストに装備されていた物よりかなり大きい。それは戦闘ユニットと同じサイズであった。
すぐに各機は散開するが、それと同時に両機は再び砲攻撃を開始。この宙域を戦火で染めた――。
多数のミサイルはどうやら追尾性があるらしくツェディック、スレイヴ群に直撃し爆発、機体はことごとく大破。逃れても今度は集中砲撃の魔の手が、そして光子ミサイルの全方位無差別攻撃もあり、戦闘員達は打つ手がなかった――。
その両機の活躍に連邦側は僅かながら希望を取り戻し、段々と士気が上がっていった。
ヴァルミリオン艦の中央デッキでもこの二機の性能に驚愕とともに歓喜の声を上げていた。しかし、カーマインたた一人だけが何故か苦渋の表情を浮かべていたのだった。
(違う……こんなのは違う!なぜ警察の役目を果たす我々がこんな代物を造る必要があるのだ?
これは我々銀河連邦の理念を異なるもの、『殺戮兵器』ではないか……本隊は一体何を考えておるのだ……?)
なぜ前方部隊を退避させたかを彼はやっと理解できた。
この二機はもはや無差別に攻撃を行い完全に『殺戮兵器』と化しているため、
確実に隊員までを巻き添えにしてしまうためである―。
――二機の集中砲火により次々に撃墜されていくスレイヴとツェディック。この攻撃で約1000機以上は破壊されただろう。レクシーとユーダももはや顔が尋常ではないほど余裕を失っていた。
「くそっっ!!打つ手はねえのかよォ!!」
「おいオペレーター!!なんとか弱点を探しやがれぇ!!」
シルバリオンの機体にも限界が訪れていた。炉心部がオーバーヒートを起こしかけ、このままでは炉心が暴走し機内から爆発するのは時間の問題であった。
『……何とか打つ手はあります』
「あるのか!?教えてくれ!!」
『この装甲の衝撃吸収にも許容があります。どこか一点に莫大なエネルギーや衝撃を連続に与えれば、吸収しきれずに装甲の結合分子が崩壊を始めます』
「つまり……装甲の一ヶ所に何か奴より上回る攻撃をしまくければ装甲は破壊されるってことか!?」
『その通りです!』
さすがはレクシー、戦闘員の中でも頭がいい。あの時だけとは言え、ラクリーマが副リーダー候補で指名してただけのことはある。
「だが……俺らにそんな攻撃力を持った武装がない。現時点で遥かに上回るのはリーダーかエクセレクターぐらいだが……」
すると今度はオペレーターとは別にサイサリスから通信が入る。
『よう二人とも、生きてるか?』
こんな状況にも関わらず、焦っておらず寧ろ楽しんでいるような表情をとっていた。
『話は聞いたぜ。どうやら連邦のヤバイ新型機に手こずってるようだが?』
「サイサリスさん!!なんかいい手はないんですか!?」
その問いに彼女はいかにも待ち望んでいたようにニヤっと笑った。
『クックック、『そんなこともあろうかと』ちゃんと用意してあるよん♪二人とも、一旦エクセレクターの近くまで戻ってこい。いいプレゼントをくれてやる!!』
「プレゼントって!?それを使えばあの化物を倒せるんですかい!?」
『当たり前だろ?あたしを誰だと思ってやがる?』
彼女の自信満々気の返答にレクシーとユーダは徐々に不敵な笑みへと変わっていく……。
「よし。全機、俺は一端エクセレクターへ戻る。サイサリスさんが何かいいモノをくれるらしい。それまで時間稼ぎを頼む」
『おうよっ!!早く戻ってこいよ二人とも!』
『楽しみにしてんぜレクシー。全機、これよりあの二機を撹乱させるぜ。二人が戻ってくるまでの辛抱だ!』
彼らの心強い言葉を聞いてシルバリオンは猛スピードでエクセレクターへ飛んでいった。
「頼むぜお前ら!!」
……そしてエクセレクター付近に到着するシルバリオン。辺りをキョロキョロ見渡した。
「サイサリスさん、つきやしたぜ!」
『レクシー、今『プレゼント』がそっちへ向かっているから待ってな!』
するとエクセレクターから一つの機影がシルバリオンへ近づいてくる。コックピットのモニターでも段々姿がはっきり見えてきた。
「なんだありゃあ……っ」
それはまるでツェディックのような縦に二分割したような機首部、それも先に砲門らしき穴がある。しかし胴体の幅はツェディックより広い。
中央胴体は四角い箱形のようであるが、その四方は角がなく、なんと巨大なドリルのような物体が計4機取り付けられていた。そして流けいな主翼、尾翼と、ツェディックとは似てことなる銀色の戦闘機であった。
こんなヘンテコな不思議な形状はまるで見たことのない。全長はツェディックより一回り大きい。
『これはあたしが開発したシルバリオン専用強化兵装パーツ『セルゲイナス』だ。レクシー、後ろを向け。『セルゲイナス』を合体させる』
「合体って……これ付けるんですかい!?」
二人とも驚いていた。スレイヴとツェディックの二機を合体させたシルバリオンをさらに合体させるのかと……いくらなんでもやり過ぎなのではと思ってしまう。
『つべこべ言うな。ほら、さっさとしやがれ!!』
二人とも黙りこんでしまう。まあ、あの彼女ならやりかねないことだから仕方がないことだが。その『セルゲイナス』に背を向けるシルバリオン。
その機体はそのまま接近し――セルゲイナスはまるでツェディックのように金属粒子を増幅させて別形態へと変形、シルバリオンの巨大な紅い翼の間に下から取りつくようなガツンと合体した。
「なんて……出力だ……っ」
「嘘だろ……ランクC級以上にはね上がりやがった……っ」
レクシーたちはモニターに映る自機のメカニズムを確認。その内容を見て驚愕した。
『当たりめえだろ?なんせ、シルバリオンの搭載した炉心二基、そしてセルゲイナスには計五基の、あわせて七基のNP炉がこの機体に全て共有、循環してんだからな。
名付けて『シルバリオン・セルゲイザー』だ。ただ武装と機能の詰め込みすぎで機動力が若干下がると思うがなんとなるだろうぜ。追加武装については移動中にちゃんと教えてやるからよ♪』
レクシー達はブルブル震えている。しかし恐怖からではない、『なんとかなる』という希望と興奮から来る震えであった。
「これはァ……いけるぜェ!!」
「よっしゃーっっ!!レクシー、早く行け!!早くコイツの武器をお見舞いしたいぜ!!』
「なら行くか!!頼むぜ、『シルバリオン・セルゲイザー』!!」
こうしてレクシー、ユーダの新たなる力、シルバリオン強攻型『シルバリオン・セルゲイザー』はまたあの二機の元へ向かっていった。今までのツケを全て払わせるためにーー。