レクシー達が新たな力を得たその頃、他は戦闘員達は力を合わせてなんとか二機の撹乱に尽力していた。
しかしその圧倒的火力と隙間のない四方八方の砲撃により次々に機体を破壊されてその作戦が無意味になりつつあった。
『ちい、このままじゃ全滅すんぞ!!』
『ちょっとまて!?あれはレクシー達じゃねえか!!?』
その時であった。モニターにはあのシルバリオンらしき機鋭が映り、段々こちらへ近づいてくる。
しかしその姿は異なっていることを近くなるごとに段々ハッキリ見えた。
『よっしゃーっ、戻ってきたぜ!!お前らよく頑張ったな!!』
ついに彼らが戻ってきた。その強化された機体の勇姿を全員を見せつけている。
『レクシー、これがシルバリオンか……?』
『ああっ、サイサリスさんからのプレゼントで強化された【シルバリオン・セルゲイザー】だ!』
見る者全てを圧倒させる。重装化したこの機体は一回り大きくなり左右の腰部付近に折り畳み式砲身の追加により、両肩、両手首、両腰の計6門の砲身となり背中にはツェディック、追加された『セルゲイナス』の動力炉のある胴体に生えた主翼と尾翼がまるで『X』を描くかの如く。
そしてその形に合わせるかのように設置された一番存在感のある四基の大型ドリル、これ一つでも貫通されたら間違いなく戦闘ユニットでもミンチになりかねないほどの威力はありそうだ。
『今までの俺らではないことを見せてやる!!ユーダ、存分に暴れてくれ!!』
『お前に言われなくてもそうするつもりだァァ!!』
そう言うとシルバリオンはなんと何も考えていないかのように単機で両機に向かって突撃していった。レクシーとは思えないような無鉄砲な行動だが秘策があるのか、それほどこの機体は強力なのか……。案の定、『リヒテラ』、『リテレメ』はレクシー達を素早く感知、全砲口を向け――一斉発射。
しかし、レクシー達は避ける様子もなくもはや直撃することを前提に猛スピードで突撃していた。
『ひゃっはァーっ!!地獄への超特急ってか!?』
『レクシー、お前にしちゃあノリノリじゃねえか!』
明らかに彼らの顔は笑っていた。諦めからなのかそれとも……。
その様子をモニター越しで見ていた戦闘員達は……。
『あいつらバカか!!?死ぬ気かよ!!』
『レクシー、はやまるなーーっっ!!』
この行動が理解できず、引き止めようと必死で叫ぶが二人はもはや聞いてはいなかった。
そして直撃……。シルバリオンはその砲火の光の中へ消えていった――。他の者は射程範囲外の遠くからモニターを通じてその光景にワナワナ震えていた。それは『絶望』である。
『あのバカ共……ん?』
彼らはすぐにレーダーを確認する。機体の姿はないがその位置には膨大なエネルギー反応が一点残っていた。
『おい、この反応は……』
――彼らは目を疑っていた。これはまさか……。
《そんなんじゃあ俺達を消せねえぞーーっ!!!》
光の中から機体が颯爽と出現。
『レクシー!!?』
シルバリオンであった。機体には淡い青色の光を纏い、それが機体を保護していたのだ。強化前には装備されてなかったあのログハートと同じNPエネルギー障壁である。
『よし、なら反撃開始といきますか!!』
ユーダの操作で四方に装備された大型ドリル全てが宇宙空間に射出された。
『次に攻撃する箇所は……あの位置だ!!』
ユーダの操縦に連動して左手首の砲身を定めた方向へ指した。するとその砲口から細い光線が一瞬で伸び、『リヒテラ』の広大な装甲面の一部分に到着した。
それと同時に射出された4基のドリルがブラティストームのように、意思を持つかのように高速回転と共に一斉に行動を開始、光線が指している部分の装甲面に向かってブースターを点火して一気に突撃を開始した。
――この光線は地球における『レーザーポインター』の役割をはたすもので、ドリルを誘導させることが出来るのである。元々、空間認識能力が高い者が使用すればドリルを上手く活用できるが、低い者でも誘導できるようサイサリスによって組み込まれた救済機能である。
ついに4つのドリルが『レーザーポインター』の位置へ衝突。装甲を強引に突貫しようとするがそれを堅固に防ごうとする特殊装甲『リベージュダース』。結合分子がさらに活性化、削れるどころか傷ひとつもついていない。やはり効かないのか……。
だがシルバリオンは今度は右手首の長砲身を突撃しているドリルへと向けた。
『まだ終わったワケじゃねえぜ。ホレ、たっぷりとエサを味わえ!!』
ユーダは右操縦レバーの横にあるボタンをグッと押した。
すると砲口から今度はレーザーとは違い、まるで懐中電灯のように広範囲へ蒼白光を照射、ドリル全機に万べんに浴びせた。
各ドリル内回路に組み込まれたチップが反応し、同じ内部に搭載した小型NP炉心の増幅装置が始動、光を吸収してさらにエネルギー量は大幅にはね上がった。それに連動してトルクがさらに高速回転、ドリルの回転数を劇的に増大させ、ついに装甲の衝撃吸収が追いつかずに少しずつ、また少しずつと削れていくではないか。
シルバリオンから発しられる光は止めることなく照射され、ドリルにさらなる恩恵をもたらす。
次第に直撃している装甲面に小さな穴が発生、ドリルの強引さで押しこんでいく――。
『もう少しだ!ユーダ、手を緩めるなよ』
そしてその攻撃が功をなし装甲面が破壊され、ドリルが次々と内部へ突入していく。そうなってしまえばもはやドリル達の独壇場。勢いに任せてドリルはまるで寄生虫のように内部のありとあらゆる回路、機械を全て貫通、粉砕……『食い潰して』いく。これにより『リヒテラ』に異常が発生。行動、攻撃が停止したのであった。
「動きが止まったぞ!」
「ではトドメといきますか!」
セルゲイナスの内部のウェポンラックから折り畳み式の長い砲身を取り出して右腕のビーム砲に差し込むように連結、それをその場で止まったリヒテラに向けた。
「エネルギー充填、180%!」
「NPバスターキャノン、発射ァーー!!」
20メートル以上はあろう長い砲身の先にある砲門から青白い膨大なエネルギーの塊が怒濤の勢いで吹き出し、それが極太の光線となってリヒテラに直撃、リベジュダース装甲の活性化が追い付かず崩壊を始めて剥がれていき、原子レベルまで分解されていく。
「ウオアアァーーー!!」
ユーダの気合いの入った雄叫びに呼応してNPエネルギーのビームの範囲が広くなり、ついには50キロメートルある超巨大な胴体を覆いつくしてしまい、装甲、内部全てを原子分解していきーーついに完全消滅した。
「よっしゃァァ!!なら次は……」
「あいつか」
二人は残る後方のもう一機『リテレメ』に狙いを定めた。
『リテレメ』はシルバリオンに向けて、先ほどの実弾ミサイルを一斉に発射。全てが彼らへ向かっていく。しかし強化したシルバリオンに搭乗している彼らに怖いものなどなかった。
シルバリオンの後部にあるセルゲイナスの主翼の装甲面が突然、スライド式で上下に開門し――無数の小型ミサイルが発射された。
その数はリテレメのミサイルよりも遥かに多く、怒涛のごとく宇宙空間に飛び交った。
互いのミサイル同士は衝突、次々に爆発していく。
撃ち落とせなかったミサイルはそのままシルバリオンへ向かっていくが、両腰部の位置にある折り畳み式の砲身部が展開、追ってくる大型ミサイルへと向け――まるで『機関砲』のように小さなエネルギーの弾丸を連続掃射。
今度はレクシーもレバーを動かし、行動を開始。アクロバットさながらの華麗な軌道を描きながら攻撃、ミサイルを撃ち落としながらリテレメへ接近していく。
『うひょーっ♪さすがはサイサリスさんだぜ!!』
『よくもこんな素晴らしい武装をつけてくれたもんじゃァァァァ!!』
二人はまるでラクリーマのように面白いオモチャを手に入れた如く歓喜している。
そして『リテレメ』はこちら接近させまいと各砲で応戦するがもはや勢いに乗った彼らを止められなかった。そしてリヒテラを食い潰したドリル達が元の位置へ戻りシルバリオンと連結。そのまま今度は左腕をリテレメへ差し出した。
左腕から直結した長い砲身の先にある丸い『穴』に膨大な量の粒子が収束した。
「くらいやがれ、全炉心のエネルギーを集約したその威力を!!」
ユーダが叫び、レバーをグッと前に押した。それは凄まじい威力であった。砲口から放たれた『リテレメ』のエネルギー砲より遥かに極太で高出力の光線があの特殊装甲に活性化させる余地なく一撃で貫いた。光線は機体の底を突き抜けるも途切れることはなかった。
「これで終わりと思うなァァ!!」
何ということであろう。光線放射を維持し、そのまま砲身を上を突き上げた。光線は動きに合わせて上に向かってゆっくりと進んでいく。装甲と内部を焼き切りながら――。
「だ あ あ り ゃ ァ ァ ー ー っ ! !」
ユーダの力強い叫びと共にレバーを全力で押し出した。まるで巨大な剣を振り上げるが如く――切り裂いた内部から次々と爆発、それが徐々に波紋のように拡大しながら。
シルバリオンはすぐさま攻撃を止めてこの宙域から脱出。リテレメ全体は爆発箇所が増加、機体そのものを覆い始めその宙域はすべて吹き飛ばす光と衝撃に埋めつくされた。
「やったな……」
「ああ」
レクシー達はその光景を幾分離れた場所で見ていた。二人とも喜びと余裕の表情を取っていた。そして他の者もすぐに彼らの元へ移動、集まってきた。
『二人ともすげえな!!あんなヤバいデカブツをいとも簡単に破壊しやがったぜ』
『全くだ。お前らがあの時くたばってたら完全に俺らも消し飛んでたぜ』
仲間達から感激されて照れているのかレクシーは頭をポリポリ掻いていた。
「いやあ、サイサリスさんのおかげだぜ。……にしてもこれといい、リーダーの武装といい、サイサリスさんってあれだな……」
『ああ……俺でも絶対に敵に回したくねえぜ、あの人だけは……』
ほぼ全員、ラクリーマと同じことを述べていた。しばらくすると爆発が弱まり、肉眼でも確認出来るほどに見えるようになった。二機のあった宙域には爆散した際に弾けた装甲の一部、内部回路、機械類がただ浮遊しているだけであった。
「よし、休んでる暇などねえぜ。また奴らが戻ってくるハズだからまた各チームでそれぞれ迎撃に行くぞ、危なくなったら近くの仲間を呼べ!!」
『おう!!』
レクシーの合図で各機はまた各チームを編成、それぞれの戦場へ向かっていった――。
銀河連邦側は唖然としていた。先ほど戦果を上げていた試作機が突然現れた謎の敵機によって破壊されたのだから……。
後退していた連邦各部隊が戦線に復帰、各敵機密集地帯へ戻っていく。しかし連邦の戦闘ユニット達に大きな行く手を阻む機体が存在した。
レクシー、ユーダの駆る機体『シルバリオン・セルゲイザー』である。
この機体は戦闘ユニットとしては規格外、オーバースペックであった。
あの超巨大な機体の集中砲火攻撃までも耐えた強力のバリアを装備、新たなる追加武装、そしてそれに見合う一撃の超火力。どれをとっても他の追随を許さなかった。
ただサイサリスの言った通り、重装備化したことに機動性は鈍くなったようだがレクシーの操縦技量で補えられる。
この機体は『単機で戦況を覆すことができる』ほどであった。
「ユーダ、一気に前方の敵を消し飛ばすか!」
「おうよ!」
シルバリオンはゼウシウスのように両肩、両手首、両腰に装備された計六門の砲身をすぐに展開し前方に照準を合わせた。狙いは遥か前方に位置する連邦部隊。
コックピット内ではユーダがモニタリング照準し、不気味と笑みを繰り出していた。
――画面には紅い丸がそこに映る敵影全てを囲んでいる。
「行くぜ、光子ミサイル全弾一斉発射!!」
全砲門から濃縮させた高エネルギー球を同時に発射。一瞬で狙いの定めた位置まで向かっていき、爆発。爆発範囲が桁違いであり、前方宙域全てを消し飛ばしたのであった。
さらに連邦機体の密集域に突撃。集中攻撃を受けるもシルバリオンを取り巻くNPエネルギー障壁の前には通用せず、中央にたどり着く否や、両手を広げる。
すると二本蒼白の極太の光線を発振、一キロメートル以上はある異常とも云える長さを持つ光の刀身と化して、四方八方に無差別斬撃。一瞬で周辺の機体がバラバラに散った。
「なっ…………………」
連邦側はさらなる脅威である。
――銀河連邦とサイサリスの戦闘ユニットにおける概念は違っている。
連邦側は兵器としての量産性、汎用性を主とした性能を重点に置いている。各機の性能は平均並みであるが隊員の操縦性と安全性を考えた構造で誰でも扱いやすいように開発されている。パイロットには好かれやすい設計である。
それに対し、サイサリスは『単機で状況一転』を主とし、性能面を追求した設計、開発している。
合体変形で強化されるあたり特異性が目立つが、シルバリオンである通り非常に扱いづらい操縦性であるためパイロットからは嫌われやすい。つまり戦闘ユニットありきのパイロット面ガン無視であるため非常に強力であるが使いこなせなければそれまでであり所謂『ピーキー機』である。
レクシーとユーダがそのシルバリオンというピーキー機を使いこなしているため、連邦製ユニット全般の上を行く性能を持ち、さらにセルゲイナスという重装ユニット装着により、さらに強化された本機の性能はまさに『異常』であった。
あの大型ドリルが自由自在に宇宙空間を動き回り、敵機を次々と貫通、ズタズタにしている。
ゼウシウスのように多角方向の強力な長距離射撃が可能となり、ランクB級艦の主砲並の威力を持つ『NPバスターキャノン』、無数の実弾ミサイルを装備、そして白兵戦ではより強力になった高出力のエネルギー剣を発振できるなど、その姿は『人型武器弾薬庫』。大火力且つ高性能と言う彼女の戦闘ユニット概念の『一つの完成形』とも言える機体なのである。
連邦部隊はこの機体により次々に撃破され、更なる劣勢を強いられることとなった――。
だが、ついに作戦を決行する時がきたエミリア一行。モニターには全てを託すような眼差しを送るカーマインの姿があった。
『エミリア、アマリーリス艦のバリアが消滅した。奴らがまたバリアを展開する前に今すぐ発進だ!!』
「了解、これよりエミリア・シュナイダー大尉以下、5名の者はアマリーリス艦の侵入任務を開始します!!」
『……よし。全員、作戦前に私の話を聞いてくれ!!』
ミルフィとドラえもん、ジャイアン、スネ夫はすぐにモニターを注目した。
「……まず、地球からきた君たちに謝りたい。こんなことに巻き込んでしまった私を許してくれ……いや許されるハズなどない。……これは命がけの任務である。下手をすれば君たちまでもが……」
彼の暗い表情を見る限り、かなり責任を感じている様子だ。
「しかし……どうかエミリア達に力を貸してやってくれ。
これは私の、いやここにいる全員の頼みだ」
「「「カーマイン提督……っ」」」
「これは今作戦最大の任務だ、失敗は即ち今作戦全ての失敗を意味する。だがドラえもん君、君の未来の道具があれば……必ずや任務遂行できると信じている。
そしてその使い方を一番よく知っているタケシ君、スネ夫君、君達の力も必要なのだ!!」
とてつもなく信頼を置かれ、段々自分達の心が奮い起こされていく。
「……分かりました!!僕達に任せて下さい、必ずエミリアさん達の役に立てるよう頑張ります!」
「ここまで来た以上、やるしかないぜ!!のび太達を救って、あの悪党を懲らしめてやろう、なあスネ夫!!」
「うん!!」
三人の力強い声が決意を固くまとめる証拠となった。
「……頼んだぞ君達、それにエミリアとミルフィ、これは直属の上官としての話だ。そしてこの子達をカバーしてやってくれ、そして必ず生きて帰ってこい。いいな!」
「「了!」」
「なら……健闘を祈る。全員生きて……また会おう!」
その言葉を最後にモニターは途切れた。
「発進するわ。各人用意……」
「エミリアさん!!」
突然ドラえもんが彼女を呼び止め、すぐに振り向く。
「エミリアさん……さっきはごめんなさい。あんなに不安な声ばかり洩らしたり、ショボンとしたり……。だけどもう泣き言なんか言いません!」
彼は深く謝罪し、それにつられてジャイアン、スネ夫も、
「俺たち、絶対にエミリアさん達を守ってみせる。そしてエミリアさんの辛い思いから救ってあげたいんだ!」
「ジャイアンの言うとおりだよ。ドラえもんの道具があればどんな奴でもイチコロさぁ!」
エミリアは軽く頷き、いつものような優しい笑みで三人を見つめた。
「……あたしこそごめんなさい。あなた達は本当なら関係ないのに無理矢理付き合わちゃった上にあんなに怒鳴って……。大丈夫、あたしもあなた達を全力で守ってみせるわ、私からすればあなた達は守るに値する大切な人達よ!」
「アタシも突入したらこの機内から全力でサポートするヨ!!これ以上、奴らの好き勝手にさせないんだから!!」
これで5人の意思は再びまとまり、頑なに強い決意をモノとする――。
「発進するわよ!!各人ベルト固定しっかりできてる!?」
「「「大丈夫です!」」」
「ミルフィ、安全な進路を算出した!?」
「OKヨ!!もう既にイクスウェスにインプットしてあるわ!!」
「了解!!」
エミリアはモニターを開くと画面上にはヴァルミリオンからエクセレクターまでの確定された進路を詳しく表示されている。それを確認した後、自動的に前方がハッチが開放、目の前に宇宙空間が広がった。
「『NPエネルギー』チャージ完了、『プラズマエネルギー』チャージ完了、『ツインハイブリッド・ドライヴ』、『リアクターエンジン』オールグリーン!
エミリア・シュナイダー大尉以下5名の特別編成隊、及びイクスウェス、発進します!!」
ついにカタパルトから射出され、宇宙空間に飛び出したイクスウェス。
「対衝撃保護用NPエネルギーフィールド展開。目標……12000ギャロ、XX88方向のアマリーリス艦!」
急旋回で方向を確定させ、主翼部を鋭く展開、機体全体に緑色のエネルギー膜が発生、包みこんでいく――。
「イクスウェス、ただ今発進しました」
「うむ……」
カーマインにその旨を伝え、モニターに移る彼女らの乗るイクスウェスをまるで我が子供のように温かい目で見守っていた。
(頼んだぞ。最後の希望である五人の勇者たちよ……)