しかし、さらにそれだけでは終わらなかった。
「て……提督!!」
「どうした!!」
震える声、体。オペレーター、副長の様子を見る限り、ただごとではないことが感じられた。
「あの男……アマリ―リスの総司令を名乗る男が艦隊へ突っ込んできます。それも正体不明の巨大な砲兵器を携行しながら!」
ラクリーマがついにこちらへ迫ってきていた。サイサリスのもうひとつの作品であり、決戦兵器である『セルグラード』を携えながら。カーマイン含む、全隊員を震撼させた。まだ隠しだまを持っていたのかと――。
そして、セルグラードへ繋いでいた供給チューブが自動的に解離した。
『ラクリーマ、ついにセルグラードのエネルギーが満タンになったぞ!これでいつでもぶっ放せるぜェ!』
「行くぜ銀河連邦さんよ!いっぱい味わってくれよ、サイサリスのもうひとつの傑作をよぉ!!」
それを聞いた彼はこの時を待ちわび、本当の意味で熱く、そして狂気を帯びた満面な笑みを繰り出した。
◆ ◆ ◆
そしてついに発進したエミリア達は、突撃する寸前にメレウルの戦死したという事実が通信機から流れていた。
「そんな……メレウル班長が……」
「………っっ!!」
五人は想像を絶するほどの衝撃が稲妻のように身体中を一気に突き抜けた。しかしエミリアは歯を食い縛り、操縦桿をさらに強く握りこんだ。
『……行くわよみんな!!ツインエネルギー最大、エンジンフルスロットル!!』
操縦桿を力の限り前へ押し倒した――。
《ズ ド オ ォ ォ ― ― ― っ っ ! !》
「「「ムギィィァァ―――っっっ!!!」」」
エクセレクターへ向けて発進したイクスウェス。
しかしその加速力、速度、全てが異常であった。あのログハートでもこのスピードは追いつけないほどで、限りなく『光速』に近づいていた。テキオー灯を浴びていたため、何とか体は無事であるが余りの速度で今、自分達がどこにいるのか窓からでは何がもう分からない。全てはエミリアの前にあるモニターが頼りであった――。
「ん?」
その時である。ラクリーマは何かが横を通りすぎたような気がした。それがエミリア達であることを彼は知るよしもなかったが――。
だがそんなことに気を取られて暇などない。そして銀河連邦の旗艦ヴァルミリオンについにセルグラードを……………いや、なぜか向けず右側の艦隊へ向けるラクリーマ。
『ラクリーマ、右腕に力いっぱい握りしめろ、それで発射だ、頼むぜえ!』
そしてついに――。
《いっぺんあの世から出直してこいやァァ――――っっ!!》
彼の轟きと共に巨大な大砲『セルグラード』から放たれたのは蒼白色の極光。だがそれがまるで宇宙を覆うが如く、それが何百キロ……いや何千、何万キロ、それ以上という桁違いの範囲内全てを覆い尽くし、消し飛ばしていった。
「ぐおおーーーっっ!!」
宇宙空間であるにも関わらず、発射による凄まじいという言葉が可愛く思えるほどの反動がラクリーマの身体に襲いかかった。体の骨が全て粉砕される感覚だ。こんなバカらしい超衝撃は生まれて初めてであった――。
『ミキ……ベキ……』
ログハートも悲鳴を上げている。装甲が段々削られて剥がされていき、まさかこれほどまでとは……。
そして射線、影響範囲内にいた全ての艦隊は……。
「エネルギーの塊がこちらへ向かってきます!!質量は……計測不可能!!?」
「なんだと!!?」
一瞬であった。右側全てがそのエネルギーの光に飲み込まれていったのは。
もはや破壊という言葉では収まらない。本当の意味で消滅していった。跡形もなく。
その一撃のどれほどの数を命を消し飛ばしたであろう。勢いが止まらずその射線軸、射角、そのエネルギーの射程範囲に存在した物体、それどころか衛星、惑星、恒星、何百光年先に存在した全ての物がその光によって飲み込まれ、粉々に消し飛ばしていく。
まるで――宇宙創世の爆発『ビッグバン』を再現したようであり――セルグラードの射線上から広範囲にかけて全てが無と化した瞬間であった。
「ほ、本艦の右側の全ての艦隊が……………消滅…………しました」
ヴァルミリオンの右側全ての艦隊全てはもう宇宙に存在していない。本艦もスレスレで直撃は免れていたがその影響も色々出ていた。
「……その射線軸、全方位に存在した物体全てが消滅……また本艦のバリアを一切無視し、かすめていった左側全ての外装甲が消滅した模様……被害は不明です……。戦闘はとりあえず継続可能ですが、こちらのバリア展開が一切不可能となっています……それから――」
次々に叩き出される被害報告。見たことのない光景、そしてそれがもたらされた現実により、ほぼ全員が茫然自失に陥っている。カーマインだけが何とか自意識を保っていたが本人でさえこう思っていた。
(さ……最悪の事態だ……っ)
――アマリ―リスがここまで強大だとは誰も考えつかなかった。今作戦に参加した隊員誰もが次第にこのような考えに陥らせた。
『本当にこんな化け物相手を捕まえられるのか……』
……と。
しかし一番可哀想なのは先程の攻撃で自艦を無くし、帰る場所を失った隊員達である。問いかけても何の返事もない、返ってこない。
その隊員から涙が溢れている者、放心している者、激しい怒りが沸き上がる者――だが、
「提督、アマリ―リス艦から膨大なエネルギー反応確認、S級質量を観測!!」
「しかしバリアを再展開せず、さらにエネルギーだけ上々しています!!」
「……どういうことだ!?」
予期せぬ出来事である。これは一体……。
◆ ◆ ◆
一方、開発エリア。セルグラードの生みの親であるサイサリスは大歓喜……いや、それどころかその光景に顔が青ざめており口を押さえて絶句していた。
(な、なんだこの威力は……っ)
目の前のパネルにはセルグラード発射による影響、状況が表示されている。
(想定外だ……あたしの計算ではランクS級はともかく単一惑星を破壊できるかどうかだったが……射線上1000光年先の全ての物体が消滅……だと?)
サイサリスでさえ、予想だにしなかった結果だった。
(そういえば……前々からNPエネルギーの出力関連でラクリーマが単独で他の奴らより圧倒的に出力が上回ることがよくあったな。あまり気にしてなかったが……なんだ、単純にNPエネルギーとアイツは相性がいいのか……それとも――)
以前、スレイヴ、ツェディックのNP炉心の出力調整テストの際、ラクリーマと部下達がそれぞれ乗り込み行っていたのだが部下達は特に問題なく順々に出力が上がったのに対しラクリーマは一瞬でNPエネルギー量が跳ね上がり、出力計が振りきれ、炉心がオーバーロードを起こして爆発しかけたことがあった。
その他にもブラティストーム、彼の左肩の中にある小型NP炉心も同じことを引き起こしたことが取りつけた初期には何度もあった。今ではラクリーマは何とか自分の意思で制御しているのでそのようなことは起こらなくなったが……。
しかし、今のセルグラードの想像を遥かに越えた破壊力を見て彼女はそれらを思いだし、そしてこう考えた。
『NPエネルギーにはまだまだ自分達の知らない未知な部分がかなりあるのでは?』とーー。
◆ ◆ ◆
そしてラクリーマは宇宙空間に力なく漂っていた。先程のセルグラードによる攻撃の凄まじさは連邦に与えただけではなかった。
「……くくっ……サイサリスの野郎……俺を殺す気か……」
その超衝撃が彼自身に甚大な被害を与えていた。セルグラード本体は衝撃に耐えきれず完全に大破、ログハートも先程の一撃が決定打となり、完全にボロボロと化していた。
『リーダー、大丈夫ですか!?』
レクシーから通信が入り、彼はその乾いた唇を静かに動かした。
「……ああ……ちいと無理しちまった……迎えにきてくんねえか?どうやら少し休まねえと動けそうにねえ……はは……」
『了解!!今すぐ向かいます!』
通信が終わり、ラクリーマはこんな状態にも関わらず『ニィ……』と笑う。
「ユノン、トリはお前に任せるぜ……」
そしてエクセレクターのユノンも同じく笑っていた。
《リバエス砲発射用意。目標、銀河連邦、ランクS級艦……》
連邦側でも副長から放った一言がさらなる恐怖を絶望を与えた。
「アマリーリス艦、主砲きます……」
――全てはこの時のために。ユノンの狙いはこれであった。主砲展開に移るエクセレクター。NPエネルギーの粒子が砲門へと収束されていく。
「なぜだ!?なぜバリアを消滅したのにこんなに早くエネルギー上昇率が高いんだ!?」
――ヴァルミリオンの主砲を放つ前にエクセレクターは形態を変えていた、あの『タイプ2』に。
あの形態では前方にしかバリアを展開しないため、その分炉心にエネルギーを節約でき、リバエス砲へのエネルギーに回せる。これも変形を利用した応用技である。
連邦はまんまとそれに引っかかったのであった。
そしてイクスウェス。その事実が5人にも……。
『エミリア、アマリ―リス艦の主砲攻撃が来るぞ!!』
「なっ……何ですって!!?」
「聞いてないヨ――!!?」
パニックに陥る機内。しかしそれだけではなさそうだ。
「第1動力炉出火!!これ以上の……スピードでは……」
本人でさえ上げたことのない最大速度が本機全てを軋ませ、それが原因で一気に速度も低下していた。
「ドラえもんどうするんだよぉ!!?」
「どっ、どうするって言ったって――っ!!」
「このままじゃ――」
イクスウェスの今の位置では確実にリバエス砲の射程範囲内にいた。発射させれれば確実に消滅は避けられない。
「バリアを展開できないのか!?」
「無理です。機能しません!!」
「残った艦隊の主砲攻撃は!!」
「間に合いません!!ただいま冷却が終わったばかりです!!」
「たっ、直ちに艦内全員に退避命令!!早くしろ!!」
「ど、どこに逃げるんですかぁ!!それに退避している間に主砲が直撃しますよ!!」
追い詰められた連邦。もはやカーマインも平常心を保っていられなかった。
「負けるのか……我々は……善が負けるというのか……」
その間にもリバエス砲内のエネルギーの塊がさらに巨大になっていく。それがヴァルミリオンからでもよく見え、破滅への道が一歩一歩迫っていた。
《リバエス砲……発射まであと10秒……本艦、衝撃態勢をとれ》
もはやヴァルミリオン、すなわち司令艦破壊は今作戦の基盤を失い、連邦の大敗を意味していた。
イクスウェスもエクセレクターまであと少しという距離に近づいていたが、これでは間に合いそうにない。……機体ももはやバラバラになりそうなほどにまで軋んでいる。
証拠にエンジンルームから火災が発生していた。止まろうとも今さら止まることなど出来なかった。
「せ……せめて時間が止まってくれればぁ――!!」
エミリアの現実であり得ないほどの願いがスネ夫に頭に何かを閃かせた。
「そうだドラえもん!時間を止めるひみつ道具あったでしょ!」
彼の発案にドラえもんはすぐに目を輝かせて、すぐにポケットにいれた。
「サンキュー、スネ夫!!えっと……今回『タンマウオッチ』はドラミに預けてあるから……これで……」
「早く出してよ!!」
急かせるスネ夫とジャイアン。そしてポケットから取り出すは丸い形をしたストップウォッチのような物であった。
「『ウルトラストップウオッチ』!!僕、外に出てくる!!」
「ドラえもん!!?」
なんと高速航続中のイクスウェスの上部ハッチを開けて宇宙空間に飛び出したドラえもん。
外装甲にへばりつきながら前部に行こうと少しずつ前に前進する。吹き飛ばされそうになるが何とか自力で耐えしのぐ。
目を凝らして前をよく見るともう目の前にはエクセレクターの砲門から蒼い光の塊は放たれようとしていた――。
「チャンスは今しかない!!時間よ止まれ~~っ!」
ドラえもんはストップウオッチの真上にあるボタンを押した。
ドラえもんを中心に機体含む少しの範囲外は全て動きは止まっていた。
人は全く動こうとしない、硬直したままだ。宇宙から全く何も伝わってこない……。声も何も通信機から聞こえてこない……戦火も光っている途中で止まっている。……そして主砲が全く発射されていない。光の輝きすら放っていない。
――そう、機体以外の全ての時間は全て止まっていた。
しかし、ドラえもんはそれだけでは終わらず直ぐ様ポケットからあの地球で使った『通り抜けフープ』と赤い懐中電灯を取り出した。
「一か八かだ、だけどやるしかない。『ビッグライト』、『通り抜けフープ』!!』」
ドラえもんは即座に立ち上がり、迫るエクセレクターの装甲に向かって走り、通り抜けフープをかざしながらビッグライトをそれに照らした。通り抜けフープは一気に巨大化し、イクスウェスが入り込める大きさまでに拡大された。
「うああああっーー!!」
そして……見事に通り抜けフープはエクセレクターの装甲へくっつき、空間の入り口が発生、イクスウェスはついにエクセレクターへ突入した。しかし、その速度で突っ込んだせいで機体は大破しながら長い直線通路をずり走っていった。
その時にドラえもんの持っていたあの『ウルトラストップウオッチ』が壁にぶつかり、頭上のボタンがもう一度カチリ、そしてこれも大破。また時間が動き出したのだが……。
《ぎぃゃあああああぁぁ――――っっっ!!!》
オペレーターセンター内。ユノンから巨大な悲鳴が響き渡った。
「ユノンさん!?どうしました!?」
「くっ……苦しんでる……」
恐れていたことが起こった。イクスウェスが内部に突入した時の直撃で、それらの損傷が全て彼女に一気に襲いかかった。
《あがががぐげえぇぇ……ぎきぃ……!?》
聞いたことのない叫び共に彼女の顔は醜いほどに歪み切っていた。
「一体何があった!!」
「……艦内、第一エリア近くの通路に謎の物体が……」
モニターにその場所を映すとそこには見たことのない戦闘機『だった』ものが大破し、煙を上げて朽ち果てている。
「なんだこれは……?」
明らかにこちらの技術で造られた物ではない、だがのび太達以外の全員がすぐに気付いた。それが銀河連邦の機体であることを……。
「ああ……ユノンさん……!?」
その光景をのび太、特にしずかは口を押さえて瞳を震わせていた。今にも泣きそうなほどに――。
《ぐえぇ……ぐぼおゲェっっっ!!!》
彼女の口から血が吹き出した。恐ろしい程のどす黒い液体がまるで雨のように降りかかる。しぶき音が響き渡り、それを見た全員の顔色が蒼白となる。
彼女は危険な状態だ、早く助け出さないとあのシステムの副作用が……そして死んでしまうことを……。
「うっ……!!」
「すぐにユノンさんを助けるんだ!!」
すぐに彼女の元に駆けつけようと行動する艦内員、そこにオペレーションそっちのけで行く者、中にはジュネも混じっていた。しかし、彼女を取り込んでいた機械や金属が不安定となった精神と拒絶反応を起こし、またもやおびただしい程の数で彼女の体を取り込み、蝕んでいく――。