大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.52 別れ、そしてーー。

ラクリーマとサイサリスが向かっている場所、ブリッジ内では……。

 

「副リーダー、脈数低下……このままでは……」

 

絶望的な報告に次第に騒いでいた声が静かになり始め――。ついに、

 

「しずかちゃん!!」

 

ついに見るに耐えかねたしずかが駆け出した、行き先は……ユノンのところである。

 

まるで野次馬とかしている司令塔に自ら入り込んでいく彼女。人を必死にかき分け、やっと思いでユノンの元へ辿り着くしずか。しかし彼女がそこで見たものとは……。

 

「ゆ……、ユノンさん……」

 

おぞましいものであった。最初は半分以上が露出していたユノンの身体が最早、異形と化した機械類によって全て取り込まれて、残っていたのは彼女の顔の部分、即ち目と鼻と口がうっすらと見える程であった。だがその時の表情はもはや無。まるで死んでいるかのように生気が全く感じられなかった。

しずかは大粒の涙を浮かべて、彼女の両頬に位置する部分を優しく触れた。

 

「ユノンさんしっかりして!!ユノンさぁん!!」

 

大声で必死に呼び続けるしずかに後ろで見ていた全員がただ呆然と見ているだけであった。

 

「ユノンさん死んじゃいやよ!あなたやっと孤独じゃなくなったのにこのままじゃあ!」

 

しずかは我を忘れ、無我夢中でユノンを叫び続けた。

 

◆ ◆ ◆

 

「はっ!!?」

 

ユノンは突然、目覚めた。しかし周りは真っ暗で何も見えない、何もいない。

 

「ここは……」

 

次第に恐怖に駆られる彼女。そして走り出す。息を切らしながら、あてもなくただ走り出す。しかし全く何も見えてこない。あるのは暗闇だけである。

 

「あ、あたしは一体……」

 

頭がズキズキする。身体が焼けるように痛む……こんな気分は生まれて初めてである。

 

「みんなは……どこ?ラクリーマは……ラクリーマは!?」

 

必死で誰かにすがりたい。特に、特にアマリーリスのみんな、そして自分の彼氏であるラクリーマとまた会いたい、抱きしめられたい。その気持ちでいっぱいであった

 

(いったいどこなの、なんで誰もいないのよ!!あたしをたすけてよォ!!)

 

そんな思いで走っていると前方に突然、まばゆい光が……。ユノンは一目散にそれを目指して一気に駆け出した。だが!!

 

「! ! ?」

 

後ろから気持ちの悪い何かが彼女の腕を掴み止めた。

それはあの金属の触手である。

 

(ああ……あっ!!)

 

次第に彼女の体を捕縛し、また暗闇へ引きずりこもうとしていた。

 

(いやっ!!いやよイヤァァっ!!)

 

脱出しようと必死にもがくがさらに彼女に絡み寄せて、どんどん引きずり込んでいく。

 

(だ、誰か助けてえ、もう独りになるのはいやよ……ラクリーマ……)

 

彼女は涙を流し、あの光に手を差し伸べようとしたが距離は遠くなっていく。しかし、

 

(……さん、ユノン……さん)

 

突然、光から自分を声が呼ぶ声が。それは暖かく、優しさの籠った聞いたことのある女の子の声である。

 

(だっ……だれ……)

 

ユノンのその光に刮目した。その中からは……。

 

《ユノンさん!!》

 

(し……しずか!?)

 

そう、しずかが自分を懸命に呼ぶ姿が見えた。

 

「ユノンさん!!戻ってきて!!お願い!!」

 

瞬間、触手の絡みは弱まりユノンはその隙に抜け、無我夢中に光へ走り出した。

 

(しずか!!助けて、助けて!!)

 

しずかも手をこちらへ差し伸べ、ユノンも手を出し、互いに掴もうと必死であった。少しずつ、少しずつ近づいていきそしてついに――互いの手を取り合った。

 

◆ ◆ ◆

 

ついにデストサイキック・システムが解除され、機械が次第に元の場所へ戻っていく。それに伴いユノンの身体も少しずつ現れている。そして全部が見えた時、その場から落下、慌てて近くにいた一人が彼女を受け止めた。

 

「ユノンさん!」

 

全員が彼女の元へ集まる。裸であり、剥ぎ取られた服を上から被せる。

 

「ユノンさん……」

 

次第に彼女の目は開き、虚ろであったがすぐに駆けつけたしずかに手を差し向けた。

 

「し……しずか……また、あなたに……助けられたわね……っ」

 

優しい笑顔で迎える彼女にしずかは手をギュッと握り、涙を浮かべてウンウン頷いた。

 

「ユノンさん……ホントによかった……」

 

「しずか……」

 

のび太も駆けつけて全員が彼女らを囲む。

二人の触れ合いを見て、一時の安息と喜びに酔いしれていた。

 

◆ ◆ ◆

 

一方、サイサリスとラクリーマは。

 

「うらあっ!!」

 

「死に腐りやがれェ!!」

 

行く先に現れる連邦隊員を全て蹴散らしていく。あのサイサリスも手持ちの大型ライフル二丁でド派手に撃ちまくり、直撃を受けた者は字の通り粉々に粉砕されて辺りに肉片と血飛沫が飛び散る。

はっきりいって本当に四十路の女性なのかと疑いたくなるほどの勇猛ぶりであった。

 

「ちい、キリがねえぜ!!」

 

「くそぉ、一体何があったんてんだ?あの時までは本当にあたしらの完全な優勢だったってのに……」

 

二人は傾きつつある形勢にだんだん不安となっていく。

 

「しかしまあ、あのコらどうだった?」

 

「ああっ……あんな化け物兵器を造るたぁ大した奴だよオメェはよお……」

 

「よせやい、照れるじゃねえかよ!!」

 

「…………」

 

サイサリスは高圧的な笑みな対し、ラクリーマの表情は笑っているがどこか無理しているようであった。

 

そんな中、二人の通信機に連絡が入る。

 

『サイサリスさん、リーダー、ユノンさんの救出に成功しました!しずかのおかげです!』

 

「ホントか!」

 

それを聞いたサイサリスは拳をグッと握り、ガッツポーズをとった。

 

「ラクリーマ、聞いたか!!ユノンちゃんが救出……ん!?」

 

しかし、本人は喜んでいるどころかフラフラ壁に寄りかかるなり……。

 

「ぐえぉぇェーーっ!!」

 

その場で嘔吐。しかしただの嘔吐ではない、大量の血も含んだおぞましい光景であった。

 

「ラクリーマァァ!?大丈夫か!?」

 

仰天した彼女はすぐに駆け寄ると彼の身体には紫色の斑点が所々浮かび上がっているのが見えた。

 

(こいつまさか……?)

 

サイサリスは彼の顔を掴み、すぐさま顔を合わせる。

 

彼の顔は疲れ、窶れきっていた。そして口の中を見ると、歯茎からも出血し、今にも歯が抜けそうな状態であった。

 

今の彼は……苦しそうであった。サイサリスの額に冷や汗が流れる。この症状はまさか……。

 

「ラクリーマ、今すぐメディカルルームにいくぞ!お前を治療しに行く!」

 

サイサリスは無理矢理引っ張ろうするがラクリーマは力ずくで拒否。

 

「い……っ、今はそんなことしてる暇なんぞねえっ!!ユノンが無事なら今から心起きなく徹底抗戦だ!!」

 

《テメェふざけたことぬかすじゃねえよ!!》

 

真剣の口調で鳴り響く怒号の後、辺りが静寂した。

 

「……お前、連邦の核ミサイルが爆発してすぐに、あの爆心域通ってきただろ?髪の毛簡単に抜け落ちなかったか?」

 

「……」

 

彼女の問いに黙り込むラクリーマ。彼女は確信した。

 

「今、お前の身体は何がどうなってるか教えてやろうか!?連邦の放った核弾頭が爆発した時に生じた放射線を急激に受けて……お前、ヤバいレベルで被曝してんぞ!!」

 

「……だからどうしたってんだよ!!そんなの今じゃなくても治せんだろ!!」

 

彼は頑なに治療を否定するがその瞬間、サイサリスに叱咤された。

 

「おい、なにやせ我慢してんだよ!!お前、このままだと精々持って数日がいいとこだ!今すぐ治療すればもしかすれば助かるかもしれないんだぞ!」

 

「だから、そんなことしている間に連邦の奴らがここに乗り込んでんだぞ!?このままじゃアマリーリスはここで――」

 

「しかも貴様、ログハートを駆使しまくったおかげで身体中がヤバい状態なんだ。いくらなんでもここまで来ちまうともう治せねぇかもしんねえ。

そんな状態でもまだ動けるっつうことはまだ『BE-58』の効果切れてねえんだな……副作用でさぞかし地獄すら生ぬるいほどのとんでもない苦痛が全て襲いかかる――いくら体力バカのお前でもその時はどうなるか分かるだろ?

そうならないよう今のうちに痛みを軽減させてやろうというんだ、素直にあたしの親切を受けやがれ!!」

 

サイサリスは深く息を吐いた。

 

「……確かにお前のアマリーリスに対する愛情や守りたい気持ちは物凄く分かる。お前の家、家族そのものだからそれが今や壊滅されるかもしれないんだ、命にかけて守りたくなるのはあたしだってそうだ。

だがそんなじゃあエルネスやランちゃん、今まで死んでいった仲間達は絶対に喜びやしねえぞ。お前あってのこの組織だ、お前が本当に無理した挙げ句に死んでここの奴らや特にユノンちゃんはどうするつもりだ?

彼女をまた傷つけるつもりか、幸せにするって約束はその場だけのデマカセだったのか?」

 

「……」

 

「そろそろいい加減にしやがれラクリーマ。お前に前言わなかったか、『自分自身をいたわれ』とな。これでも嫌だというならお前を今すぐボコボコにしてでも連れていくぞ!」

 

彼女のその冗談とは思えない断言に、彼の口からは、

 

「……わかった。なら早く行くぞ!」

 

「ラクリーマ……分かってくれたか。なら急ぐぞ、あたしが先頭に行く。連邦野郎はまかせな!」

 

「……」

 

二人は進路を変えて、メディカルルームの方へ向かった。その途中、いくつかの通信が二人に耳に入った。

 

『ラクリーマさん、こっちもヤバいっす!敵の数が多すぎて、仲間が段々減っていくばかりでこれじゃあ持ちこたえれません』

 

『リーダー、劣勢と聞いてオペレーションセンターにいる者も戦闘に加わろうと思いますが、よろしいですか!?ユノンさんは衰弱してるのでのび太としずか、他数名に託して今艦内の安全な場所へ移動させています……何か指示を……』

 

『リーダー、何か命令を!』

 

『リーダー、リーダー!!』

 

彼に必死にすがろうとする声が耳元で鳴り響くたびにラクリーマの表情はさらに苦渋となっていく――。

 

「ラクリーマ、気にすんな。そんなもんあいつらが甘えているだけだ。今はお前の治療が先決に決まってる、お前らだけで持ちこたえやがれとでも伝えろ!」

 

さすがはサイサリス。こんな状況になってもこのような判断ができるのは素晴らしいものである。

 

――そしてメディカルルームに辿りつき、ラクリーマをベッドに寝かす。サイサリスは早速コンピュータで彼の身体状態を調べ上げる。

 

「…………っ」

 

彼女の顔は段々と渋い表情となりつつあった。

身体中の細胞があの放射能により、大部分が破壊されてガン細胞に変化。

白血球の数も膨大になり、リンパ腺の異常、そしてあの症状……急性白血病と免疫低下により、何らかの合併症を引き起こしている可能性が高かった。

さらに元々安静にしなければいけないほどに怪我をおった身体をさらに無理させたため、もはや身体中の骨格、肉体共々致命的なダメージを被っていた。やはり動けるのはあの麻酔のおかげでありその効能は凄まじいものがあるが、当然しっぺ返しもどれほどのモノか想像がつかない。

 

正直な話――もはや手の施しようのない、いつ死んでもおかしくない状態であった。

 

「ちくしょォっ、あたしを誰だと思ってやがる!!こんなぐらい治せねえで何が天才科学者だよ!!」

 

彼女は僅かな可能性を捨てず、彼を治すことに全神経を集中させている。その時の彼女からは凄まじいほどの覇気がジンジンと伝わってくる。

 

その時、近くから爆発したような轟音が鳴り響き、走る音が一つ、二つ、三つ……複数聞こえた。

 

「ちい、こんなときに敵か!?」

 

コンピュータキーから手を離し、再び火器のグリップを掴む。

 

「サイサリス!?」

 

「寝てな、あたしが始末してやる!!」

 

そう言い残し、彼女は颯爽とメディカルルームから飛び出していった。

 

彼女が通路の音のした方向へ向くとそこには六人ほどの武装した集団がいた。

しかし、アマリーリスとは違う銀色のパイロットスーツ姿でピストル、ライフル等の銃火器を携行している……彼らは連邦隊員であった。互いに対峙し、連邦側は彼女に銃口を向けた。

 

「今すぐその火器を地面に置いて、手を上げろ!我々は無益な殺生はしたくない。しかし抵抗するならば排除対象と見なす!」

 

その警告に対し、サイサリスはこんな状況にも関わらず笑みを浮かべている。

 

「……るせえよ。あたしは元々死ぬ気でいるんだ……例えこの身が吹っ飛ばされようとも一人残らずテメェらを地獄へ道連れにしてやんよぉ」

 

彼女はその憤怒した顔で携行火器を彼らに向けた。

 

《わたしは伊達に四十年生きてきたわけじゃねえんだコラァーーーっっ!!》

 

……大多数の銃声が通路内が鳴り響く。その結末は。

 

「がっ……」

 

サイサリスの腕に光弾と実弾が数発擦り、その場にうずくまった時、連邦隊員は彼女の元に駆けつけ、強引に取り押さえ、その場で倒し伏せた。

 

「逮捕だ!」

 

しかし彼女はこんな状況にも関わらず、相手に弱さを見せなかった。

 

「へへっ…貴様らに捕まるくらいならここで……」

 

彼女はすぐさま舌を出すと歯に挟んだ。これはまさか……彼らはその場で慌て出した。

 

「やっやめろーーっ!!」

 

「アバヨっ!!」

 

彼女は歯に力を込め立てたその時、

 

 

《サイサリス!!》

 

 

後ろから自分を呼ぶ声が聞こえる。全員が振り向くとそこにはラクリーマがまるで鬼のような顔つきでこちらに殺気を送っていた。

 

「お、お前はまさか!?」

 

「あの男だ!!」

 

全員が警戒の余地なくすぐにこの男に銃口を向けた――。

 

「キサンら、俺の大事な仲間に手ェ出しやがってェ!!かち殺したるわァァァァっ!!」

 

だがラクリーマは一気に飛びかかり、反撃させることなく次々と相手を血祭りに上げた。まるで狂っているかのように暴れ、八つ裂きにし、高らかに奇声を上げるその様はまさに『狂人』そのもの。自分の視点から見た彼に対し、彼女はそう思った。

 

「はあ……はあ……くっ……」

 

……そして残虐行為が終わり、辺りはまるで血の池と化し、肉塊が辺りに散乱する通路内でラクリーマは一呼吸を置いて、サイサリスに駆け寄った。

 

「おい大丈夫か!?」

 

「……腕に弾丸がかすっただけだ。寝てろといったのによくもまあ……」

 

しかし、ラクリーマも今度は彼女に胸ぐらを掴み、こう言い放った。

 

「何死のうとしてんだよ!!てめえも人のこと言えねえじゃねえか!!」

 

「ククク……」

 

彼女は突拍子で笑っている。

 

「……何だ?ついにお前、頭狂ったか……?」

 

「……ラクリーマ、あたしはお前と同じで悪行でしか生きられん。捕まって死ぬまで退屈な人生送るくらいならってな……」

 

「サイサリス……」

 

「心配すんな。お前はあたしが命に変えても守ってやる。お前はエルネスの……あのバカ野郎の大事な忘れ形見なんだからな……それに……」

 

「それに……」

 

「あたしにとっても……かわいくて誇らしい息子(チビ)だーー」

 

本人はその想いに無言になる。どう思っているのか分からない。

 

――その時、レクシーや部下が通信が入る。

 

『リーダー、次々に敵が攻めてきてもう戦力的にも体力的にも限界です!どうすれば!』

 

『リーダー、もう持ちこたえれません!!場所はエリア2通路付近です、助けてください!』

 

それを聞いてラクリーマは立ち上がるが、サイサリスは腕を掴む。

 

「まて!まだお前を治療してねえんだ。行くならせめてその後だーー」

 

「サイサリス、すまねえ……」

 

突然謝る彼は、流れるように彼女の腹部をその拳で強打した。

 

「ぐぅ…………ラク……リーマ……」

 

顔を歪め、その場に倒れ伏せるサイサリス。全く動かない様子を見ると気を失っているようだ。彼は彼女をゆっくり担ぎ、軽く跳ねてしっかり固定した。

 

「お前みてえな奴がそんなこと言うとかどうかしてんぜ。だがな、お前は本気で命を捨てかねん女だ」

 

ラクリーマはゆっくりとその場から歩き出した。

 

「……ワリィな。お前まで死なれたらそれこそエルネスに顔向けできねえよ」

 

――しばらくして到着したのは近くの戦闘ユニット専用格納庫。その最端に配置してある小型宇宙挺へ移動し、ボタン操作で扉を開放。中に入り、サイサリスをその床に寝かせ、手前のコンピュータパネルのキーを器用よく打ち込む。

 

動作が終わると、機械化した左肩のハッチが開放し中から何やらコンピューターチップのような物が姿を現してそれを取り出すと気絶しているサイサリスの手の平に握らせた。

 

(……お前にエクセレクターに関する全ての技術、ノウハウが詰まったデータを託す。お前ならそれを参考にエクセレクター以上のモノが造れるはずだ……)

 

ラクリーマはそこから出て、また扉を閉める。

 

「もう二度とお前と会えねえ、生きろサイサリス。いちいちうるせェ奴だったが一緒に仕事できて本当に心から感謝している……じゃあな!」

 

彼はその場から離れたその瞬間、サイサリスを乗せた小型宇宙挺は起動。ターンテーブルが上昇し、壁のハッチが開放したと同時にその奥へ移動していった。ラクリーマはそれを見届けて感傷に浸っていた、その時。

 

「ぐぼぁっ!!」

 

口を押さえるも血が吹き出してボタボタ滴る。息が荒れるも深呼吸し、落ち着かせて息を吐くーーしばらくして、彼はギロッとした視線をある方向へ向けた。

 

「……おい、隠れてねえで出てきやがれ。いるのは分かってんだぞ」

 

「……バレたなら仕方ねえな」

 

視線の先にある小型挺の陰から現れたのは……先ほどアマリーリスを裏切ってどこかへ去っていったあの男、ユーダであった。そして彼は今の彼を見て弱みを握ったかのように、自信ありげにへらへら笑っていた。

 

「へへっ、あんた大丈夫ですかい?やけに弱々しいですぜ?」

 

「へ、心配無用だ。俺は柔な身体じゃねえのは前から知ってんだろ?」

 

ーーついに二人は対峙する。互いから伝わるのは……殺気しか感じられない。

 

「アマリーリスを裏切ったお前がなんでここにいる?誰がエクセレクターの敷居を跨いでいいっつった?」

 

「そりゃあ食糧とか武器とか逃亡に必要な物を取りにきたんでさあ。その途中偶然あんた達を見かけたもんだから後をつけて来たんですよ。サイサリスさんを逃がして他の奴らは逃がしてやらないんですかい?」

 

「…………」

 

一呼吸置き、ユーダは卑屈な笑みを浮かべてラクリーマを見下す。

 

「今だからはっきり言わしてもらうがリーダー、俺はアマリーリス、特にあんたが気にくわなかった。バカみたいに馴れ馴れしくて人のテリトリーにズカスカと踏みよってくるのが苦痛だった……本当にヘドが出そうによお!」

 

「ほお、そいつはすまねえな。だがそれは俺の元からの性分だ」

 

「けっ、俺はまだまだ悪さできると思ったからアマリーリスに加入したまでで友達作りをするためじゃねえ、こんな気持ち悪いぐらいに甘ったるいとこに拾われたのが間違いだったーー」

 

「……なら俺は、刑務所から脱走して射殺寸前のお前を助けて悪かったか?」

 

「別に助けてほしいなんて俺は言った覚えはない。あんたが勝手に手を差しのべてきたから俺はそれに乗っかっただけだ。まあ命は助かったという意味では感謝してるがな」

 

するとユーダは腰のベルトから大振りのナイフを取り出してラクリーマに向ける。

 

「……ユーダ、本気か?」

 

「前まではどうやっても勝てそうになかったが、今の弱りきったアンタになら勝てそうだ。数日前の戦闘訓練の時に言ったよな?『俺を討ち取ったらリーダーの席を譲る』って。アマリーリスのリーダーの肩書きなんぞいらんが、最強のアンタを討ち取ったとなるとかなり男を上げれるからな」

 

そんなユーダにラクリーマは馬鹿馬鹿しいのかフンと失笑する。

 

「……確かに俺はもう身体がしんどくて今にもやべえんだわ。だがそんな男を討ち取って勝ち誇れるとでも思うのか?」

 

「アンタがかなり弱っているなんて知ってるのは今は俺しかいねえしいくらでも理由がつけられるしな。俺は勝つためならどんな手段も選ばん、そこはアンタだって同じだろ?」

 

「確かにな。そこだけはお前と気が合うなーーだがまあ、結局分かり合えなくて残念だぜ。お前は能力は他の奴らより優秀だとは認めてたんだがな」

 

ユーダはぐっと構えて戦闘態勢に入ったーー。

 

「あと、最後に教えてやるぜ?確かに俺は侵略時、戦闘時にピンチになったあいつらを容赦なく見捨てたぜ。この世は弱肉強食の世界だ、生き残れない奴が悪いんだよーー」

 

「……………」

 

自分から自白する彼にラクリーマは何を思っているのか。無表情のままであるがやはり良からぬ感じなのはすぐに感じ取れたーーすると、

 

「こいよユーダ」

 

「は?」

 

ラクリーマは戦闘態勢に入るどころか棒立ちになり、余裕そうにニヤッと笑った。

 

「別にお前にナメられるのは構わんが、裏切り行為を働いた以上は俺はお前を生かしておけねえ。あの時に言ったよな、『俺がお前の裏切りを知った時は八つ裂きどころじゃすまない』と。

だが何がなんでも俺を討ち取ろうとする心意気には感動した、だからチャンスをやるよ」

 

「チャンス……だと?」

 

「俺はここから一歩も動かねえからどこからでもかかってこい、なんなら銃を使っても構わねえよ」

 

「な……なんだと?」

 

自身が弱っているにも関わらずさらにハンディキャップをつけるラクリーマに彼は動揺している。

 

「どうした、攻撃しねえのか?俺を討ち取りてえんだろ?せっかくチャンスをやったのに先ほどの威勢はどうした?」

 

「……………」

 

「ほれ、早くしねえと俺から行くぞ」

 

と、ラクリーマはブラティストームからビーム砲を展開してすかさずユーダの足元にビームを撃ち込んだ。彼は反射的に後ろを後ずさった。

 

「俺は動かねえが攻撃しねえとは言ってねえからな。流石のお前も俺の射撃の腕知ってるだろ、次はてめえの脳天をぶち抜く、クククッ!」

 

「~~~~~!!!」

 

「逃げたり隠れようとしてもいいがその時はブラティストームを飛ばして地獄の果てまで追わせるからな」

 

彼はニヤニヤと笑っている。完全にナメられているユーダは燗に触られ業を煮やして「うああああっ!」と雄叫びを上げながらナイフを振りがざして突撃した。

 

物凄い速さで走り抜け、瞬く間にラクリーマに接近し右手の大型ナイフを振り下ろしたーー。

 

「死ねえええ!!!」

 

凶刃がすぐそこまで迫ってきているが彼は全く焦っていない。むしろ笑っていたーー。

 

「残念だったな、ユーダ」

 

「!?」

 

すかさずラクリーマは右手でその怪力から生まれる握力を全力で彼の細い右腕を掴み、そして全力で骨ごと握りつぶした。激痛のあまりユーダは「ギャアアアアア!」と絶叫を上げてのたうち回った。

 

「あれだけ大口叩いといてこの程度かよ。つまんねえぜ」

 

「こ、この野郎!!!」

 

「まだ左手残ってんだろ?来いや」

 

しかしそれだけでは諦めず歪んだ表情の彼は無事の左手にナイフを持ち構えて決死の反撃を繰り出した。今度はついにラクリーマの右胸元にナイフをグッと突き立てた。

 

「っ!」

 

「このまま奥まで突き刺してやる!くたばりやがれェーーっっ!」

 

そのまま力を入れていき、ナイフがどんどん深く胸を貫いていくーーいや、全然進んでいない。彼の膨れ上がった固い胸筋と力を入れているおかげでその場で止まっていた。

 

「あ、ああ………」

 

どれだけの力を入れているか左手に力を入れても全く奥まで押せない、引こうとしても全く微動だにしない。

 

「ぬんっ!」

 

さらにラクリーマは胸に力を入れるとなんとナイフに鈍い光を放つ刃に縦筋のヒビが入り、そしてそのままバリィッと言う耳につく金属音とともに折れてしまった。それを目の当たりにした次第にユーダの表情は絶望へと変わっていく。

 

「おうどうした?もう終わりかーーなら俺の番だな」

 

まるで鬼のような顔をした彼はユーダの顔を両手で掴むと親指を両目に押し当て……ぐっと押し込んだ時、ブチッと言う音と共に血が吹き出て両目が完全に潰れてしまった。

 

その瞬間、右腕が潰された時以上の痛々しい悲鳴がこの格納庫に響き渡った。

 

「クカカカ!!!まだまだ終わりじゃねえぜ、たっぷり楽しめよユーダさんよお!」

 

まるで狂気的に高笑う彼の声に続けて、聞くのも痛々しい打撃音、引きちぎる音、潰される音の恐らくこの世で最も深いな音のオーケストラが響き渡った。それらが数分間続くとシーンと静かになり、しばらくすると格納庫から全身血塗れのラクリーマがまるで悪魔のような顔で出てきたのであったーー。

 

 

(ユーダの言う通り、もはやアマリーリスは終わりだろう……自分でまいた種は、自分で枯らせる。だがその前に……)

 

 

その時の彼は例えるなら『リーダー』としてでなく『一人の戦闘員』として、『一人の極悪人』としての雰囲気を漂わせていた。

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