大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.54 対決!ドラえもんチーム対ラクリーマ

……互いが警戒だけで動こうとしない。エミリアは奴の動きを探ろうとするが全く掴めない。余裕たらして棒立ちしているものだから何を考えているやも分からない。

 

「……なにが目的でこんな残虐非道の悪事を重ねる……宇宙征服か!?」

 

彼女は彼に今までの悪行の動機について尋問する。それに対し、ラクリーマは口を開かないが、すぐに笑みと共に『クックック……』とあざ笑うのような小さな声を漏らした。

 

「宇宙征服……クックックックッ……ワハハハハっ!!」

 

「なあ!?」

 

「宇宙征服とかそんなたいそうなこと考えるワケがねえだろ!!教えてやろうか?楽しいからに決まってるだろ」

 

「たっ……楽しいからですって……」

 

「侵略するとき、略奪する時、相手を殺す時、俺はナニを考えてるか……?クックック……この手を加えることで相手の全てを奪えると考えるとゾクゾクするんだよ」

 

「……………………」

 

「殺される奴の断末魔や苦しみ、悲しみ、それが全て俺の身体にまるで雷が突き抜けるように駆けわたるんだよ、快感となってなぁ……」

 

牙をむき出しにしてそう語り――、

 

 

《俺は人殺しが楽しくて楽しくてしょうがねえんだよ!!それがワリィかよ!?ええっ!?》

 

 

その傲慢な表情、その高らかな笑み……まさしく『外道』であった。4人はもはや弁解の余地なしと悟った。コイツこそ悪の権化、快楽殺人鬼、そして――平和を愛する者にとって、最大の障害であると――。

 

「おい、そこの青いタヌキ!テメェの言ってるのはあの地球人達のことか?」

 

「ぼっ……僕はタヌキじゃないっっ!!ネコ型ロボットだァ~~!!」

 

またタヌキ呼ばわりされて腹を立てるドラえもん。 しかし耳があってもなくても確かにタヌキにしか見えない容姿ではあるが。

 

「あの二人なら生きてるぜ」

 

と、彼はそう答えた。

 

「えっ!?無事なの!?」

 

「ああ、俺は嘘つかねえよ」

 

嘘か誠か、のび太達の生存を伝える。しかし、何の意図があってみすみす答えたのか……。

 

「じゃあ、どこにいるんだ!?」

 

「さあな、どこにいるかまでは分からん。俺の部下が連れていってるんじゃねえかな?それに――」

 

彼の顔は豹変、急に殴りかかる体勢になり、

 

 

《テメェらはここでくたばるから二度と会うことねえぞォーーっ!!》

 

 

「「「いいっ!!?」」」

 

何の予兆なしに全力でドラえもんに向かって突進し襲いかかった。

 

「くたばりやがれェーーーーっっッ!」

 

あの『鉤爪』を突出させ、降り下ろす――しかし、

 

「「「エミリアさん!?」」」

 

彼女は鉤爪をなんと2丁拳銃を盾にして受け止めて鉤爪の餌食になるのを阻止した。だが男と女の力の差か、持ちこたえているも顔を歪めていた。

 

「くぅ……あっ、あなた達は危ないから後ろに下がってぇ!」

 

ラクリーマは余裕溢れる様子で左拳を押し出そうとさらに力を入れた。

 

「やるじゃねえか。あのガキ共の盾になるとはさすがは正義感溢れる連邦よのォ」

 

「…………子供相手に……本気なんて……最低ねぇ!!」

 

「くっくっく……けどな!!」

 

左手首からビーム砲が4門が同時に出現、銃口が自動的にエミリアへ全て向けられた。

 

「な!?」

 

4発のビームが一斉発射され、彼女に全発命中するもシールドの作用で光の膜が光線をかき消した。

 

「バリアだと!?」

 

「あんたみたいな極悪党にはこのくらい準備が必要なのよ!!」

 

すぐに彼女は2丁拳銃のグリップをまるでトンファーのように逆手に持ち、素早い打撃と蹴り技を繰り出した。

 

「はっ、はあ!」

 

「ほう、女のクセになかなかやるな」

 

それに合わせてラクリーマも応戦、まるでアクション映画さながらの白兵戦の応酬を重ねる。女性でありながらここまで軽い身のこなしとその素早い格闘術をくり出すとは、さすがは『戦闘ランクA+』保持者である。

 

対するラクリーマは戦闘の鬼。幾多の敵を葬ってきたその常人を遥かに超える身体能力と戦闘センスを併せ持つ『闘犬』。

まるで軽くたしなむように余裕で彼女の動きに対応している。

正直言えば彼の方が実力は遥かに上なのだが、今の二人は互角のように思えるのはどうしてだろうか――。

 

「そらよっとォ!」

 

右手で彼女の打撃をいなし、左義手の指全てが高速回転。ドリルと化して彼女に不意打ちを浴びせる。

 

「!!?」

 

ガリガリと削りに削り、バリアを意図も簡単に破壊。しかし彼女の優れた反射神経でその場でしゃがみ、胴体が貫かれる難を逃れ、休む暇もなく彼の腹部に右手に持つ銃を突きつけた。

 

「観念しなさい!!」

 

「けっ、それで勝ったつもりか!!」

 

銃を右手で払い飛ばし、後退。彼女もすかさず銃を拾い上げ、ラクリーマへ向けた――。

その様子を後ろで見てたドラえもん達は唖然としていた。瞬間的な動きが多すぎて動体視力がついていけなかったのである。

 

「すげぇ……エミリアさん」

 

「あの男と対等だ……」

 

エミリアも息を切らしながらも、少しずつ整えようとする。

 

(……おかしい。この男、手を抜いているように思えるけど……あたしの勘違いかしら?)

 

そしてラクリーマは無表情である。息を切らしている様子もなく。

 

『ジリっ……』と足に力をいれると彼女に向かって一気に駆け出した。彼が突き出した右の張り手が彼女の顔に向かってくる。避けようと後ろへ後退するが、

 

「えっ!?」

 

なんと右手が伸びたように後退したはずの彼女の顔を捉えて、直撃と共に一撃で押し離した。

乾いた音が鳴り響き、後ろに弾き飛ばされるエミリア。しかしラクリーマはすぐに追撃を開始、吹き飛ばされた彼女の腹部を狙って強烈な右拳で殴打。地面に叩きつけた。

 

「げえっ!!ゲボッッ!!ゲホッ!!」

 

泡を吹き悶絶、咳き込んで苦しそうであるが、容赦することなく彼は彼女の腹部を足蹴にした。

 

「なあ、俺って優しいだろ?誰だろうと差別しねえにしたこともないぜ」

 

全てのビーム砲を悶絶する彼女の顔に向けたーー。

 

「殺す時は老若男女、種族関係なく平等だ」

 

絶体絶命のエミリア。ドラえもん達は手持ちの武器をすぐにラクリーマへ向ける。だが気づかれているのか横目で睨まれる。

 

「手助けしたかったら早くこいよ。どの道お前らを二度と朝日拝めねえようにしてやっからよォ」

 

完全に殺気を丸出しにしている彼に全員が圧倒されるも、彼女を助けないワケにはいかない。

 

「え……エミリアさん死んじゃうよ!ドラえもん、ひみつ道具!!」

 

「ああっ、待ってあれでもないこれでもない!」

 

「こんな時に焦んなよもう!」

 

またポケットからたくさんの道具を手当たり次第に出すが、全く今の状況で役立つ物が出てこない。あの時に出た、『マイク』や『コショウ』など日用品なども飛び出した。

 

「そっ、そうだ。ジャイアン、今こそマイクを取って歌うんだ!!」

 

「こんな時に何いってんだよ!!」

 

「ジャイアンの美声を聴かせるんだ!!そうすればアイツも心を奪われるハズだ!!」

 

苦しまぎれの提案だが、一か八かの大勝負である。

 

「そうだよ、ここなら心起きなく歌えるよ!!早くジャイアン、歌って!!」

 

スネ夫も便乗し、二人でジャイアンを煽ると段々その気になり、すぐにマイクを手に掴んだ。

 

「分かった。一か八か、あの男に俺の声で心を掴んでやるぜ!!」

 

ドラえもんとスネ夫は直ぐ様耳を塞ぎ、その場で伏せた。そして彼はマイクを口元へ持っていき、大きく息を吸った。

 

 

《ホゲ~~っっ♪ボエ~~~っ♪♪♪》

 

 

ついに放たれたジャイアンの最大の武器、歌声。音量、ダミ声が凄まじい程の超音波となりブリッジ全域に響き渡った。その影響下にいたラクリーマも無事ではなかった。

 

「ぐああああーーっ!!何だこの声はぁ!!こ、鼓膜が破れそうだァァ!!」

 

明らかに効いている。耳を押さえてもはや攻撃どころではなかった。

 

「ジャイアンもう止めて、効いてるよ!!」

 

「そっ、そうかっ!?」

 

すぐに止めに入り、ジャイアンは歌うのをやめる。ドラえもんはまたポケットに手を突っ込み、取り出すはまるで釣竿のような棒と糸の先には巨大な白い手袋がついていた。

 

「『ノビールハンド』、エミリアさんに届け!!」

 

それを倒れている彼女に向かって勢いよく振ると糸が伸びて一瞬で到着。手袋が彼女を掴み、そのままドラえもんの元へ引き寄せた。しかし、ドラえもんは休むことなくポケットに手をやり、今度は小さなアンテナのようなモノとラジコンの送信機を取り出した。

 

「『ラジコンアンテナ』、スネ夫、頼むよ!」

 

『ラジコンアンテナ』をコショウに取り付け、スネ夫に送信機を渡す。

 

「よおし、僕だって!」

 

その卓越したラジコン操作でコショウが宙を舞い、ラクリーマへ向かっていった。

 

「なっ……なんだこれは!?」

 

ジャイアンの歌を聞いてフラフラとなった彼の真上に見たことのない形の容器が制止、逆さまにして振ると中から黒い粒々……すなわちコショウが振り撒かれた。

 

「なんなんだ……ゲホッ!!ゲホッ!!ゲホッ!!ハハハ……ハックショイ!!!」

 

コショウ攻撃により、目や鼻に入りクシャミや咳きが止まらなくなる。

 

「効いてる……」

 

この凶暴な男でも、所詮人の子であった。

 

「エミリアさん!!大丈夫ですか!?」

 

「ぐっ……ええっ……お腹を殴られただけよ……大丈夫……っ」

 

起き上がるも腹部を押さえて苦しそうである。

 

「いっ、今すぐみんなであの男に攻撃して!!」

 

「ええっ!?」

 

「……あなた達の武器なら気絶で済むハズ。攻撃してこない今がチャンスよ、早く!!」

 

ジャイアン、スネ夫はショックガン、アタールガン、ドラえもんは空気砲で ラクリーマに狙いを定めた。

 

「くそぉ……謎な攻撃ばっかしてきやがって……?」

 

やっとクシャミが収まった時、彼が涙目をこらしてよく見ると三人が武器を向けている。

 

「いくよ二人とも!ドッカーーン!!」

 

その声に反応し、巨大な口径から圧縮された空気圧、そしてジャイアンとスネ夫の銃口から放たれた光弾と何やら目のついた丸い弾がまとめてラクリーマに命中。

しかしショックガンの光弾は瞬間、左胸部のレンズが起動し、全て吸い込まれたが空気圧と丸い弾だけは吸収できず、直撃。後ろへ吹き飛ばされて豪快に倒れこんだ――。

 

「つ、ついにやったわ……」

 

彼は仰向けに倒れて全く動く気配がない。それを様子を見た全員は段々、高揚し――。

 

《やったァァ――!!》

 

大声を張り上げて全員で手を繋ぎ、歓喜を上げた

 

「……みんなよくやったわ、ありがとう!!」

 

「エヘヘっ!!」

 

「どうだ俺様の強さ思いしったか!!」

 

「ぼ、僕も頑張ったんだよ!!ねえっ!!」

 

勝利に酔いしれる4人。あの最強最悪の男をついに自分達の手で打ち負かしたのである、嬉しくないワケがない。

 

「ただ、あれほど猛威を奮った男がこんなにあっけないのは少し気がかりだけど、倒したことに変わりないわね。さあ、あの男が起きない内に急いで捕縛するわよ、手伝って!」

 

全員、急いであの男の元へ走って向かう。が――、

 

「「「「! ! ?」」」」

 

寸前に近いたその時、さっきまで倒れて動かなかったラクリーマが瞬時に立ち上がる。まるで何事もなかったように……。顔から鼻血と口からも少々血が流れている以外は。

 

「お前ら最高だな。こんなに俺を楽しませてくれんのは……ククク」

 

身震いしながら笑っている。まるでさっきの攻撃が効いていないかのように。そして彼らに見せたその表情とは……。

 

「今度は俺がてめえらを楽しませてやんぜ!!」

 

殺気以外は何も感じられない笑み。それは十分に彼女達に伝わった。

 

「「「う、うわああああッ!」」」

 

「みんなはっ離れて!!」

 

再び後退し、身を構える。するとラクリーマは右手で左腕を握りしめると、戦闘訓練の時のようにブラティストームをまた強引に引きちぎった。

 

「ひ……左腕が……うわあ……っ」

 

初見の者にとって、あまりにも驚愕な光景。全員、同じことを思っていた。

 

「ほれ、行くぜ。せいぜい可愛がってくれよな!」

 

ラクリーマは引き離した『左腕』を全力で振り投げた時、内蔵された自立回路が起動、ビーム砲、鉤爪、ドリル、使用できる内蔵武装全て展開、まるで先ほどのラジコンのように空中に飛びながら4人へ向かって突撃。まるで生きてるかのように次々と攻撃を繰り出すブラティストーム。

 

4門の手首から突き出たビームで一斉掃射、高周波振動の鉤爪、ドリルで突撃……シールドがみるみる内に削られてドラえもん達は怖れおののき逃げるに必死だ。エミリアは攻撃を掻い潜り、二丁拳銃で撃ち落とそうと必死で発砲するが、空しく光線を簡単に弾くほど頑丈だ。今はなんとかシールドで守られているも、そろそろエネルギー切れが起こりそうでそうなれば……先ほどまでの戦況が一変した。

 

「こうなったら、これでもくらえ!」

 

ドラえもんはすかさずストップウォッチのようなひみつ道具、『時限バカ弾』を取り出して、タイマーを5秒に設定してラクリーマに目掛けて投げつけた。しかし彼は何かが飛んでくるの察知してすぐさまとんぼ返りで後ろへ移動したと同時に爆発。不思議な煙に包まれた。

 

(のび太曰く未来から来たロボットだっけか……どんなもんかお手並み拝見といくか!)

 

まるで獲物を追い詰めた猛獣のような恐ろしい顔で戦闘訓練に見せたような軽やかなサイドステップと野猿のような小刻みな機動でドラえもんを中心にしてぐるぐる回り始めた。ドラえもん達はそれぞれの武器で狙いをつけるが全く定まらず、撃っても当たらない。スネ夫の持つアタールガンの弾は百発百中のハズなのだがラクリーマの強力な回し蹴りで空しく払われてしまった。

 

「は、速い……!」

 

「ほ、本当に人間かよコイツ!!?」

 

高くジャンプし、着地したらまたまたジャンプし交差したりなどその常人を遥かに逸脱したスピード、身のこなしは全員を翻弄する。そもそも彼はもはや死に体であるにも関わらずまだこのような素早い動きが出来るとはもはや驚愕ものである。

 

突然、左腕が攻撃をやめて彼の元へ移動、引きちぎった箇所と連結。

 

「はっ!」

 

ラクリーマは鉤爪を突出させて再びドラえもんへ突進する。

 

「こうなったら……!」

 

ドラえもんはすかさず四次元ポケットに手を突っ込み、取り出したのは金色にキラキラ輝く日本刀のような武器。

 

「『名刀電光丸』、来るならこい!」

 

覚悟を決めてぐっと構えるドラえもんと鬼のような形相で襲いかかるラクリーマはついに激突。高周波振動により強力な切断力を持つ鉤爪ととてつもなく頑丈な電光丸が火花を散らしてぶつかり合う。

 

「くっ、はあ!」

 

「ほお、なかなかやるな」

 

まるでチャンバラ映画の殺陣のような、ラクリーマから繰り出される疾風怒濤の攻めに追従し捌いていくドラえもん。これは電光丸の中にある高性能センサーとレーダーが相手の攻撃の軌道を読んでいるためである。

 

するとラクリーマは突然攻撃を止めて、咄嗟に後ろへ素早くステップし距離をとる否や再び突撃。ドラえもんは身構えるーーが、

 

「えっ?」

 

向かってきたはずのラクリーマがふっと消える。あたふたするドラえもんだったが、

 

「ドラえもん、後ろにヤツが!」

 

ジャイアンの声にハッとなり振り向くとそこには自分を飛び越えていた彼がぐっと右足を引き込みーー、

 

「おぅるらあ!!」

 

全力の後ろ蹴りを繰り出し、ドラえもんの顔面に直撃。物凄い勢いで吹き飛ばされた。

 

「うわああ!!」

 

サッカーボールのように激しく転がり地面に叩きつけられてやっと静止。だがラクリーマは着地した瞬間に休む間もなく倒れ込むドラえもんへ突撃。

 

「ドラえもんっ!!」

 

「ドラちゃん!!」

 

エミリア達が叫んだ時には既に遅く彼の振り込んだ左義手の拳がドラえもん目掛けていたーーが、

 

「たああっ!!!」

 

かろうじて離さなかった電光丸がそれに反応して瞬時に盾となり腕が伸びきる前に拳を受け止めて事なきを得る。どっちも一進一退せずまるで引かない様は鍔迫り合いのようだ。

 

「ぐう………!」

 

「へっ、甘めえぜ!」

 

だがラクリーマは咄嗟に左足を軸にして超低空からの素早い足払いをかけてドラえもんを地面に転ばせた。

 

「うわあ!」

 

倒れた彼の目の前にはラクリーマが握り締めた金属の左拳を振り下ろしていた。

 

「死ねやあっ!!」

 

しかしそこは雷光丸、センサーの作用で咄嗟に腕が動き、刃が自動的に振り下ろしてきた拳を止めた。

 

「くう……………!」

 

互いに力ずくで押し合う二人ーーだが、徐々にラクリーマの方が力が勝り押し込んでいく。

 

「ほう、それがあいつの言ってた未来の道具ってのか」

 

「!?」

 

ドラえもんは耳を疑った。何でひみつ道具のことを知っているのかと……すると。

 

「面白れえ。尚更殺しがいがあるなあ……!!!!!」

 

「あ、ああ……………っ」

 

ドラえもんの目に映ったのは殺気に満ちた赤い螺旋状の瞳、顔中に浮き上がった血管、猛獣の牙を思わせる歯を剥き出しにして楽しんでいるそれはまるで阿修羅のような羅刹のような……とても人間とは思えないおぞましい形相をした大男がいた。

 

「グアアアアアア!!!!!」

 

野獣の叫びも相まって、それを目の当たりにしたドラえもんは強烈な寒気を襲わせる恐怖を感じて圧倒され、段々と押されていくーー。

 

「「ドラえもん!!」」

 

「ドラちゃん!!」

 

外側ではジャイアン、スネ夫、エミリアが手持ちの銃を構えて、ラクリーマに向けている。それに気づいた彼は焦ることなくその場から並外れた脚力によるバックステップでかなり離れた安全地帯へ下がる。

 

「大丈夫か!」

 

「う、うん!」

 

駆けつけてきたジャイアンの差しのべた手を掴んで起き上がるドラえもん。

 

「あいつ……本当に危険だ。みんな気をつけて!」

 

ドラえもんは先ほどの対峙で感じ取っていたーーあんな凄まじくそして狂気じみた殺気は今まで味わったことがないと。

 

彼らはこれまでにも様々な悪人と対峙し、戦った。世界征服、私利私欲、復讐、世界統一、救済……それぞれが道は外れどまだ人間味のある自身の目的のため、正義を掲げて立ち向かってきた。

 

しかしこの男は……だれであろうが無差別で殺すことを快楽としている、これまでとは一線を画した目的の男だ。明らかに人間性など感じられない『悪魔』であったーー。

 

「……えっ!?」

 

ラクリーマはいきなりエミリアの元に飛びかかり急接近。その瞬間、着用していたサングラスを強引に奪い取った。

 

「きゃあああああっっ!!」

 

視力の弱いエミリアにとって最大の弱点。普通の人なら平気であるここの明るさでも彼女にとってはあまりにも眩しすぎたのである。

 

「エミリアさん!!」

 

彼女はもはや目を開けられず、自分の場所を失っている。何も見えなくなるほど怖いものはない。

 

しかしあの男は情け容赦なく彼女の髪を乱暴に掴むとその丸太のような太く、固い脚で蹴り飛ばした。彼女は床に叩きつけられ転がり倒れた。

 

「なんでそんなもん着けてンのかと思ってたがやっぱり視力が弱いのか。クカカ、兵隊のクセに目が悪いのは致命的だぜ」

 

ラクリーマはサングラスを一瞬で握り潰し、彼女の元を移動。彼女はその場に倒れ伏せて、蹴られた痛みと何も見えぬ恐怖からかひどく怯えているようであった。

しかし相手は敵と見なしたら誰だろうと何も思わない男。平然とした顔で、無抵抗の彼女を蹴りまくる。

 

「ひぐう!!あがっ!!」

 

痛みのこもった悲鳴を上げるエミリア。それを見たドラえもん達に絶望と恐怖、それ以上にこの男に対する憤怒が込み上がった。

 

「やめろォォーーっっ!!」

 

蹴るのを止めて彼女の胸ぐらを掴み、右手で一気に持ち上げた。

 

「まずは女から殺すか。楽に殺してやるから安心しな!」

 

「エミリアさんを離せ!!」

 

「このヤローっ、俺がぶん殴ってやる!!」

 

ジャイアンは突撃しようとするが、ラクリーマは何と彼女の離さず持っていた銃の一つ『ユンク』を左手で奪い取り、ジャイアンに向け――発射。

 

「うわぁ!!」

 

「ジャイアン!!」

 

命中するもシールドのおかげで身体の直撃は免れたが、被っていた光の膜が完全に消えた。三人は立ち止まる。

 

「ほう、この銃もの凄く軽いな。使いにくいがまあいい、借りるぜ」

 

三人は各武器を向けるがラクリーマはエミリアの背を彼らの方へ。それは彼女を盾として使うつもりである。彼の汚いやり方に三人は激怒し、

 

「ひ、卑怯者――っ!!正々堂々と戦え!!」

 

「そうだそうだ!!」

 

怒号と非難を浴びせるが、本人は全く憤怒する様子が全く余裕そうな表情であった。

 

「卑怯者か……ククク……いい響きじゃねえか!」

 

「なっ何だと!?」

 

「卑怯とか正々堂々とか言えるのはまだキサンらがマトモな闘いをしてない証拠よォ。正々堂々てのも響きはいいがそれで死んじまったらそこまでじゃねえか、勝負にあるのは勝つか負けるかなんだよ」

 

 

《卑怯だろうがなんだろうが敵を殺せればなんだっていいんだよ!戦いってのはどれだけ相手をブチのめしてナンボなんじゃあ、わかったかガキ共、ギャハハハハハッ!!》

 

 

……まさに外道という言葉が彼に似合う。だが、間違ってはいないところもいくつかある。

悪くいえば所謂『卑怯者、外道』だが、『戦闘に関してはシビアで合理的』とも言える。それは彼が今まで経験した幾多の戦闘から学んだことなのかもしれない。

 

「ところでどうすんだコイツ?てめえらが撃てば俺がトドメ刺さずに済むんだがな?」

 

「くう……」

 

「これじゃあ……手が出せないじゃないか……」

 

早くしなければ奴のエジキに。今すぐにも助けたいが、ラクリーマが彼女を完全に盾にしている。

先ほどのドリル攻撃によりシールドは完全に破壊されているため発砲すれば確実に被弾し、ショックガンと空気砲は殺傷能力はないのだが、彼女に苦痛を与え、気絶、ケガをさせるかもしれない。そうなれば奴の思うツボである。

 

「あ……あたしは……どうなっても……いいから……あの子達だけは……っ」

 

震える声で嘆願する彼女に彼の反応は……。

 

「無理だな」

 

迷うことなく即答であった。

 

「ガキだろうが俺は敵と見なしたら絶対にブチ殺す。あいつらも楽に殺してやるから安心しろよ♪」

 

「この……外道がぁ……」

 

涙を流し始める彼女にラクリーマはニヤリと笑っている。

 

「外道ね、誉め言葉として受けとるわ。クックック……、じゃあ死ねや!!」

 

ラクリーマは彼女から奪い取った銃の口を頭の横に押し付けた――。

 

「ああっ、やっやめろ――!!!」

 

叫びも空しく、銃のトリガーに指をぐっと引――。

 

(…………っ!!)

 

――ラクリーマの指が引かれなかった、なぜ?それは彼の身体に今起きているあの『症状』であった。

 

(また――血が込み上がってきやがった……だがこんなことに時間を取られるワケには……っ)

 

必死にこらえ、震える指で再び引き金を引こうとした――その時だった。

 

 

「そこまでだ!!」

 

 

彼の後ろには赤い軍服を着用した威厳の持つ中年男性とその周りにはその数、百人は超える連邦隊員の集団がラクリーマに向けて、全銃口を向けていた。ヴァルミリオン艦艦長であり提督の階級を持つ男、カーマインの登場であった。

 

「リーダーっっ!!」

 

別の方向からレクシーと残り百人程の戦闘員、その中にはオペレーター達とジュネ、ユノン、そしてのび太としずかもいた。

 

彼らの後ろからさらに連邦隊員の集団がぞろぞろ現れて、アマリーリス員全員はラクリーマのいるところに追いやられ、怒涛の数の連邦隊員に囲まれる状況となった。

 

「お……お前ら無事か!?」

 

ラクリーマはエミリアをその場で離し、彼らの元へ駆けつけた。

 

「本当にすまん、助けにいけなくて……っ」

 

「リーダー、俺らよりユノンさんを!!」

 

すぐさま彼女をその身で抱き抱えた。そして本人も彼の声に反応し閉じていた重い眼を開けた。

 

「ユノン、大丈夫か!?」

 

「ら、ラクリーマ……ごめんね…………最後の最後で役に立てなかった……っ」

 

謝る彼女に彼は必死で首を横に振った。

 

「そ……そんなことねえよ!無事で何よりだ、本当に、本当によかった!!」

 

彼女をこれでもかと言うくらいに抱き締めるラクリーマは先ほどの凶暴さはどこへいったのか、戦闘以外の時のような熱い青年で溢れていた。

 

一方、エミリアもカーマインとクーリッジ、そしてミルフィに駆けつけられて庇護を受けていた。

 

「エミリア、すまない。早く駆けつけていれば!!」

 

「大丈夫エミリア!!?」

 

「しっかりしろ!!」

 

カーマインはこのことを想定していたのか、所持していたスペアのサングラスを彼女の目に取り付けた。

 

「提督……ミルフィ……クーちゃん…………わたしは……」

 

「よくがんばったな……エミリア。生きててなによりだ……」

 

「ああっ……」

 

再開を喜ぶ三人。そして本命の再開はここにあった。

 

「の……のび太君、しずかちゃん……」

 

「だよね……?」

 

ドラえもん達の声にのび太達も三人に眼を奪われた。

 

「ドラえもん……スネ夫……ジャイアン!!」

 

「みんな!」

 

ついに5人は再開し、互いに寄り合い、喜ぶ。

 

「無事だったかぁ~っ!!心の友よ!!」

 

「心配したんだからもお!!」

 

「ケガしてない!?ヒドイ目遭わされなかった!?」

 

「うっ、うん……」

 

「大丈夫よドラちゃん……」

 

過剰に心配するドラえもん達にのび太としずかは苦笑いした。

 

「けど、どうして3人共ここに?」

 

「どうしてって!?二人を助けにきたんじゃないか!?」

 

「え?助けに?」

 

何故か話が噛み合わない五人がそうしている中、カーマインはついに追い詰めたラクリーマ達に注目した。

 

「お前達はもう逃げられまい。先ほど仲間も大勢捕まり、彼らと同じくこのまま大人しく逮捕されることを私は願う。

お前達を……このような悪の道から救えればと、心から願っている。だがそれでもまだ抵抗するというのなら――」

 

彼の重みの効いた最後の警告が静かな空気に響き渡った――果たしてついにアマリーリスに終焉の時が訪れるのであろうか……。

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