大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.9 追憶

――エリア10、訓練エリア。

 

ここでは各戦闘員が侵略や戦闘に備えて体力や戦闘技術などを向上させ、生き残るために日々鍛練している。様々な訓練ルームがあり、射撃場、座学施設、トレーニング場、アマリーリスの所有する戦闘機、戦闘ユニットの操縦シミュレーション場などがある。

 

「よお、レクシー!!」

 

その中の一つ、トレーニング場へ足を踏み入れる三人。中で必死にトレーニングしている者が活動を停止して声をかける。

 

「うわぁ……」

 

「スゴい熱気……」

 

辺りは男達が密集してトレーニングしているものだから、汗臭いわ暑いわで、体験のない二人にとって暑苦しくむせる。

 

「二人は見たとこ、こんな風景は初めてそうだからある意味いい体験だろ?」

 

「えっええ……」

 

二人は苦笑いする――その時、

 

「いいっっっっ!!!?」

 

のび太の真天井から何者かが落下、瞬間にのび太に首を掴みナイフを彼の顔にチラチラかざす。

 

「てめえらが例の地球人だなぁ。許可があればこのオレが八つ裂きできたのによお!」

 

その男はまるで昆虫のような複眼の持ち主で、全体の皮膚は緑色の体は痩せ型。雰囲気には巨大な蟷螂のようだ。

 

「キャアアアアッ!!」

 

しずかはとっさに悲鳴をあげる。当ののび太も何がなんだか分からず身体がぶるぶる震えている。あと刃物を顔にちらつかせているのも恐怖意外の何事でもなかった。

 

「おいユーダ、お前リーダーの言葉を忘れたのか?こいつらに手を出したら反逆罪で即死刑だぞ!」

 

レクシーの忠告にユーダと言う男はのび太を放し、不気味な笑みを浮かべてこう言った。

 

「……冗談だよ冗談。けどリーダーが何でこいつらを生かしているのか疑問だったんでな。いつもなら侵入者は即排除だろ」

 

「それはリーダーにも考えがあったからだ。ともかくのび太達には手を出すなよ?」

 

「へいへいっ、わぁったよ!」

 

そう捨て台詞を吐くと、ユーダは三人から去っていった。そんな彼をもの悲しい目で見るレクシー。

 

「あわわわわわっ……」

 

「のび太さん大丈夫っ!?」

 

力が抜けてへたりこむのび太に声をかけるしずか。すると、レクシーはのび太に手を差しのべた。

 

「驚かせて悪かったな。あいつはユーダってんだ」

 

のび太は彼の手を借りて立ち上がる。しかしレクシーはどこか悲しい雰囲気を漂わせていた。

 

「あいつは俺達、戦闘員の中でも一番の問題人物なんだ。

殺しに対しての躊躇のなさはリーダーと匹敵するかそれ以上だ。

けどあいつはすぐに仲間を裏切る癖があってな。今まで数々の侵略で仲間の窮地をどれだけ見捨てたことか……リーダーにはまだバレてないんだけどいつかあいつはまじで消されるぜ……」

 

それを聞いた二人は複雑な気持ちになる。

 

「俺らアマリーリスは互いの仲間意識が非常に強い。だからどうしようも得ない時は除いて仲間を見捨てる、裏切る行為は反逆罪で犯せばリーダー自らがそいつを殺すんだ。オレはその場面を一度だけ見たことがある」

 

「…………」

 

二人の暗い表情をして沈黙はさらに続く。しかしレクシーはそんな二人を再び笑顔になり、こう励ました。

 

「お前らは何気にすることがあんだ?これは俺達のことだ。お前らはただ無事に地球に帰ることだけを考えればいいのさ!!」

 

彼の表情を見て、少しずつ笑顔に戻っていく。レクシーは二人に背を向き、明るい声でこう言った。

 

「次は射撃場だ。どうだのび太、俺と射撃で競わないか?リーダーに勝った腕前を見たいんでな!」

 

それを聞いたのび太は得意分野である射撃がやれるのが嬉しいのか、心が奮え上がってくる。

 

「うっうんっ!!」

 

笑顔で返すのび太にレクシーも満面の笑みを浮かべる。そんな二人をまるで兄弟に見えたのか、しずかもニコッと笑った。

 

そして三人は射撃場に足を踏み入れる。ここでは実弾銃用射撃場とレーザー銃などのエネルギー銃用射撃場の二つあるが、片付けや破壊した的の回収がある実弾銃用射撃場は面倒な為か、あまり使われない。のび太達は当然、エネルギー銃用射撃場に移動する。

 

「ええっと、使うのは威力が弱いタイプにしないとな……」

 

レクシーはエネルギー銃射場の中心に設置してあるパネルのようなデバイスをカタカタ動かす。するとこの場の全照明がライトアップし一気に明るくなった。

 

「まっ的が全く見えないよぉっ」

 

一直線に続く的への射程距離は300、いや500メートルはゆうにありそうだ。するとレクシーは二つの小型銃を持ち、その一つをのび太に投げ渡した。

 

「ほれ、お前の銃だ。目の前にレールがあるだろ?あそこに立って射撃するんだ」

 

二人は各射場に立って的のある方向に目を向ける。しかし、あまりにも遠いのか全く見えない。

 

「レクシーさん?的が遠すぎて全く分からないんだけど……」

 

しかしレクシーは何を言っているんだ?と言わんばかりに不思議そうな表情でのび太にこう告げた。

 

「はあっ?的はまだ出てないぜ」

 

「えっ?じゃあもうすぐ出てくるの?」

 

するとレクシーは遥か向こうの左右の壁に指を指してのび太に説明した。

 

「あそこの発射口から的が飛び交うからそれに狙いをつけて撃ち落とすだけだ。簡単だろ?」

 

それを聞いて安心するのび太。上を見上げると何やら時間表情された機器が0に向けて数字が動いていた。

 

「あれが0になったら、開始アラームと共に、的が飛び出す仕組みだ。時間は1分間だ、終わりもアラームで知らせてくれる。そろそろ始まるから準備しろ」

 

そう言うと二人をレールを前に立ち、神経を集中する。あの時と同じ雰囲気が辺りに漂い始め、その中でしずかが後ろで手を合わせて二人の安全に願いを込めている。

 

「ビーーーーーッ!」と甲高いアラームが鳴り響くと同時に二人は一気に所持している銃を構えた。が、アラームが鳴ったにも関わらず的が全く見えない。

 

「えっ!?えっ!?」

 

のび太はわけが分からず、ただあたふたしているだけだ。一方、レクシーは全く見えないにも関わらず平然と発砲している。発射された何発もの光弾が瞬く速度で遥か先の的場へ飛んでいく。もしかして的はもう発射されているのか……?

 

「も、もう発射してるの!?」

 

あたふたしている内に終了アラームが鳴り、二人は手を下げる。しかしのび太はきょとんとしていた。一体なんだったのか全く理解出来ていない。

 

「ハハハッ、全く見えてなかったか?あれでも戦闘員の標準レベルだ。まあのび太にはちとキツかったかな……んっ?」

 

レクシーはモニターを見て、何かに気づいたのかすぐに駆け寄った。すると彼は徐々に汗が流れはじめ、身体が震えている。すると彼は二人の方へ戻り自分の頭を撫でて、苦笑いしながら二人にこう言った。

 

「わっ……わりぃっ。どうやらこれ自体が故障してて的が発射されてなかったわ……っ」

 

「「あららっ……」」

 

どうやら的の飛び交うスピードに慣れていたレクシーは勘違いして撃ち続けていたようで二人はたちまち脱力して肩を落とした。

 

「誰だ壊したのはっ……、直しとけってんだっ!!」

 

機器に愚痴をつけて、二人をホイホイ射場から押し出すレクシー。

 

「まっまあ……次のとこに行こうぜ!!ははっ……」

 

「……」

 

しずかはともかく、のび太は不機嫌そうにムスッとしている。

 

「悪かったって!代わりといっちゃあなんだが近くの格納庫に行くか、二人ともびっくりするぜ」

 

「格納庫……何があるんですか?」

 

「まあ見てからのお楽しみだ」

 

そう言われてレクシーの連れられて向かった先でのび太達は度肝を抜かれる。

 

「「うわぁあ、す、スゴ~~いっ!!」」

 

都市一つは収まりそうな凄い広大な空間には無数の赤色を基調とした巨大戦闘機、そして漫画やアニメから飛び出してきたかのような白色を基調とした二足歩行型の、まるでビルのような高さの巨大ロボットが荘厳にみっちりと統制して並んでおり、そこには大多数のメカニックマンがそれぞれ整備を行っている。

 

「赤色の戦闘機は『ツェディック』、白色の機体は『スレイヴ』。俺らアマリーリスの主力戦闘ユニットだ」

 

「戦闘ユニット……?」

 

戦闘ユニットとはアマリーリス、銀河連邦などの先進技術を持つ組織が所有する機動兵器の総称である。小型、中型、大型に分類されスレイヴは中型戦闘ユニットである。

 

「俺らは惑星侵略するばかりじゃない。宇宙船を襲撃したり宇宙空間で敵と対峙することも多々あるからな。その時はこれに乗り込んで出撃、交戦するんだ。扱いには多少難があるがその分性能はかなり高いぞ」

 

まるでロボットアニメの世界に入り込んだかのような衝撃を受け圧巻させられる二人。特にのび太は男の子なだけあって物凄く目を光らせて羨ましがっていた。

 

「レクシーさんもこれらを操縦してたんですか?」

 

「そりゃあ戦闘員だからな、操縦できなきゃ意味がない。アマリーリスでは徹底的にこれらの操縦技術を叩きこまれる。俺も入りたての頃はリーダーにこっぴどく叱られながら教えられたっけか」

 

「ラクリーマさんもこれに乗るんですか?」

 

「ああ、リーダーもこれらに乗り込んで前線で指揮する。はっきりいってリーダーの操縦技術、センスは本当に誰が見てもやべえぐらい凄いからな。二人にも見せたかったなあ」

 

「そ、そんなにですか?」

 

「俺達アマリーリスの頂点に立つ人だからな。流石の一言だよ」

 

彼の底知れね実力に凄いと思うと同時に畏怖のような気持ちも生まれる二人。このアマリーリスは地球とは比較にならないレベルのとんでもない技術と戦力を兼ね揃っていることが分かる。もしこんな戦力を持って地球に侵略されていたらと思うと……。

 

あらかた説明が終わり、格納庫を後にする三人。

 

「次のエリアは……そうだ!しずかのような女が喜ぶところへ連れていってやるよ」

 

その言葉にしずかは非常に興味津々となる。

 

「えっ、あたしが喜びそうな所っ?なんか素敵ぃ!」

 

次に向かった先はエリア8、多目的エリア。

 

様々な施設があるが、のび太達が向かった先は。

 

「ここは……なんですか?」

 

二人は何の説明もなくある施設のドアの前に立たされる。 

 

「とりあえず入ってみな、今にわかるぜ」

 

レクシーは二人の背中をどんと押した。二人は前によろめいた瞬間、ドアのセンサーが反応して開放された。二人がみた施設内は……。

 

「うわあ……っ」

 

「ああ………っ」

 

見渡す限り植物や花の、緑や鮮やかな色が拡がる自然。トレーニング場や射撃場、格納庫などさっきまでの無機質の雰囲気とはまるで別世界に入ったかのような違和感というか、衝撃が二人を襲った。

 

「ここはプラントルームだ。この艦内で唯一、有機物でありふれてるトコだ。ほれ、奥に行こうぜ」

 

のび太達は促され、その施設の奥へ入っていく。地球で見たことがある植物類は勿論、見たことのない奇妙な形の植物、花が見渡す限り咲いている。そしてここの特記する点は、非常に空気が澄んでいることだ。さっきの訓練エリアや格納庫と比べたら雲泥の差である。

 

「すごい……けど誰がこれを……」

 

「のび太さん、あそこに誰かいるわっ」

 

どんどん奥に進んでいくと広場になっている場所で、一人の男が植物に向かって何かをしている。しかし、近づき姿が明確になるに連れてどこかで見た覚えのあるような身体つきをしている。その人物とは……。

 

「あの人ってもしかして……っ」

 

「ラクリーマさんっ!?」

 

しずかの声に反応し、男が三人に向かって振り向いた。

 

――ラクリーマであった。二人はすぐに彼の元に駆けつける。

 

「お、今レクシーに艦内を案内されてんのかい?」

 

相変わらずの不敵な笑みを浮かべてこちらを見てくる。両手にはそれぞれ袋とホースを持っていた。

 

「ラクリーマ、今何してるの?」

 

「なにって……水やりだが?」

 

それを聞いた二人は強烈な違和感を感じたのか、口が開いたまま塞がず、呆然とした表情だった。

 

「これの水やり……もしかして全部……?」

 

ラクリーマはのび太の発言に理解出来ず、不思議そうな表情をとる。

 

「だからどうした?」

 

しばらくするとのび太は腹に手をで押さえ、うつむく。体が微妙に震えはじめ……。

 

「くっくっく……あはははははっ!!」

 

突然、のび太は大声で笑い、辺りにこだました。

 

「ら、ラクリーマみたい人が花の世話っ……くはははっ!」

 

「のっ、のび太さん……失礼よっ……ぷっ……」

 

注意するしずかもなんだかんだで笑いかけている。そんな二人を見たラクリーマは腕組みをして不機嫌そうな顔をしてこう言った。

 

「……何がそんなにおかしいんだ?」

 

するとレクシーも彼らの場所に辿り着き、のび太達が腹を抱えて笑っていることを目にする。

 

「リーダー、どうしたんですかい?」

 

「こいつら、俺が水やりしてるって言ったら急に笑い出したんだが」

 

レクシーも少し間を置いたのち、その意味に気づいたのかクスクス笑い出した。

 

「……かもしんねえっ、くっくっく…」

 

三人がクスクス笑い出し、痺れを切らしたラクリーマはついに左手を彼らへ向けて突きだした。

 

「……今ここで全員死んでみるか?どうする?」

 

「「「あっ……」」」

 

さすがにやりすぎたのか、三人は一気に冷めてその場で固まった。

 

エリア2、住居エリア。三人は一端戻り、昨日レクシーに連れられてきた広大な休憩広場で食事をとっていた。

 

「うわぁ、こんなもの始めて食べたけどおいしいな~」

 

「ホントよねぇ!」

 

二人が初めて見る携帯食料を美味しそうに食べる姿を見て、レクシーは軽く笑った。

 

「嬉しいねぇ、気に入ってもらえて」

 

――ウィンドウから見える景色はワープホール空間から抜け出し、広大な宇宙空間が垣間見れる。沢山の惑星、沢山の小惑星が無限大にちりばめられ、まさに地球人が夢見た世界とも言える。ここの休憩広場には大勢の人々が行き交う。仲のいい者同士でゲラゲラ笑ったり、外を眺めながら歩く者、デバイスを片手に持ち、仕事をしているのか、はたまた勉強をしているかのような仕草を見せる者、みなそれぞれであり、まるで学校の休み時間における廊下での風景を再現しているかのようであった。

 

そんな中、のび太はレクシーにあることを聞いた。

 

「あの植物や花は全部、ラクリーマが育てたんですか?」

 

しかしレクシーは顔を横に振る。

 

「あれはな、元々リーダーのカノジョが育ててたものなんだよ」

 

「「えっ?」」

 

二人は顔を赤くした。彼にも恋人がいたなんて知ってしまうと、思わず恥ずかしくなってしまうのだった。

 

「その人はランって名前でな。ユノンさんがアマリーリスに加入する前の副リーダーみたいな役柄で、あの人とは反対にとぉにかく気が強くてじゃじゃ馬でリーダーも手を焼いてたなぁ……」

 

「あのラクリーマさんが?」

 

レクシーはうなずくとさらに話を続ける。

 

「けどあの人は超がつくほど花や植物が大好きでな。侵略した惑星で気に入った花や植物を持ち帰って嬉しそうに育ててたよ。それにあの人らは自他認める相思相愛だった。ちょうどお前らが座っている場所でキスしてたっけか?」

 

「ええっ!?」

 

「まあっ!!」

 

二人はさらに顔を赤くし、その場所から少しずつ座りながら離れようとしていた。それを見てレクシーはふっと笑う。

 

「その人は今どこにいるんですか?」

 

その質問にレクシーは手を組み、表情は笑っているもののどこかもの悲しそうな瞳をしていた。

 

「ランさんは……もうこの世にいないんだ」

 

この世にいない。死んでいるという意味を持つその言葉に耳を疑い、そして言葉を失うのび太達。すこし沈黙したあと、レクシーは静かに口を開いた。

 

「さっき格納庫でも言ったが俺たちはこんな仕事をしている以上、生死に関わることが度々ある。他の先進種族と交戦することは日常茶飯事だ。数年前だったかな、確か……」

 

レクシーは思い出を語り出した。

 

◆ ◆ ◆

 

今から約4年前。デルタ・エリダヌス宙域第3惑星エデン。

そこに滞在する先進種族の軍事国家が、偶然その惑星に攻め入ろうとしていたアマリーリスの存在を感知し、衝突。

あまりの激戦にさすがのアマリーリスも相手の圧倒的戦力差を前に窮地に追い込まれ、敗退せざる得なかった。しかしあちらもこちらの逃亡を許すはずもなく、追跡を行ってきたのだった。

そんな中でラクリーマがツェディックに爆弾を大量に積み込んで相手の母艦めがけて特攻すると言い出した。

 

部下達は慌ててそれを止めようとしたが彼は、

 

「エクセレクターをここで墜とさせるわけにいかない」

 

そう言い張り、振り切った。だが、彼が格納庫に到着した頃にはもう爆弾の積んだユニットはカタパルトから射出されてもうなかった。

ラクリーマは誰があのユニットに乗っているのか突き止めたところ、それは彼の恋人であるランであった。彼女の乗ったユニットは敵の弾幕が降り注ぐ中、大破されながらも敵母艦のブリッジに突撃し……。

 

◆ ◆ ◆

 

「あの時、彼女があのような行動を取らなければ俺たちは全員死んでいたな」

 

なんと言葉をかければいいのだろう。二人はそれしか考えられなかった。

 

「実はあの後、リーダーのところへ駆けつけたらな……窓の外を見ながら何をしていたか分かるか?」

 

二人は首を横に振る。するとレクシーから信じられない言葉を聞いた。

 

「あの人はいつも通りに笑っていたのさ。「見事だった、ラン」ってな」

 

「!!?」

 

二人は信じられないような表情をとった。大切な恋人が死んだのに笑っていられるなんて……正気の沙汰ではない。

 

「なっ……なんで好きな人が死んだのに笑っていられるんだよ……おかしいじゃんっ!僕だったら絶対悲しくて泣いちゃうね!」

 

のび太は立ち上がり、レクシーに訴えた。無理もない、のび太の言うことは一番マトモな答えなのだから。するとレクシーは、

 

「まあさすがの俺もどうかとは思った。あれでリーダーを軽蔑しそうになったけどその時リーダーの右手を見た瞬間、そんな考えも一瞬で消し飛んだよ」

 

「みっ右手?」

 

「……?」

 

レクシーはあの時のことを再現するかのようにのび太達の目の前で右拳をぎゅっと握りしめた。

 

「リーダーの右手から……血がポタポタ流れて落ちてたよ。そして止まることなく手が震え続けていたのさ」

 

「ちっ血が……?」

 

レクシーはコクっとうなずく。

 

「力いっぱい握りしめて爪が手のひらに食い込んだんだろう。

あの人も実際は悲しくて泣きたい気持ちでいっぱいだったんだろうけど、悲しむ姿を見せたら俺らの士気が下がると思ったんだろうな……まああくまで俺の予想だが、あれを見た時、「この人に一生ついていこう、この人のためなら命を捨てる覚悟はある」。そう決意したね」

 

「「…………」」

 

「俺たちは今までにどれだけの仲間やたくさんの人間を犠牲にしたのかもわからんが、そのたびにリーダーは『生物いつか死ぬ。それが早いか遅いか、運が良いか悪いか、それだけだ』と言っていたな。その意味の捉え方は人それぞれだが、俺らからしたら最高の励ましかもな」

 

二人は心温かいことを聞き、自然と笑顔になっていく。どうやら自分達は彼に対して疑い過ぎてたと思うて何だか恥ずかしくなってくる。

 

「お前ら何かしんみりしてんだ?」

 

噂をすると花の世話が終わったラクリーマが三人の元をやってくる。

 

「ラクリーマ……っ」

 

何か縮こまっている二人を見て彼はニヤッと笑う。

 

「てめえら、何か俺に隠し事をしてるな?」

 

すると、

 

「ラクリーマさん、ちょっとこれ見てくださいよぉ!」

 

離れた所にいる数人の部下に呼ばれて「おう!」と元気よくその場へ走っていく。ラクリーマは彼らに辿り着くと、上下関係など一切ない親友同士と言わんばかりに満面な笑顔でゲラゲラ笑い、部下の首に腕をかけてじゃれあったりと楽しく話をしている。

三人はそんな彼に安心感で満たされて温かい目で見つめている。するとレクシーは二人はこう聞いた。

 

「なあ?二人はこう思わねえか?」

 

「えっ?何をですか?」

 

「あの人は実際、俺らでも考えねえようなくだらねえことや馬鹿なこと大好きだし、ああやって部下と絡んでるけどあれでもここで一番上の立場なんだぜ?なんか威厳がないだろ?」

 

「まっ……まぁ……っ」

 

すると彼は立ち上がるとラクリーマを見つめてニコッと笑った。

 

「けどな、俺達はそんなリーダーが大好きなんだ。あの人は自分よりも他人のことを常に考える人だからーー」

 

のび太はそんなラクリーマを見て彼をやっぱり信用しようと強く思い始める。

 

「楽しそうだね、ラクリーマ」

 

「ええ。なんかあの自然な笑顔を見るとあたしたちもいつのまにか笑いたくなるわね」

 

そんな微笑ましい一時を送っていた瞬間、

 

「ラクリーマァァっ!!!」

 

突然、馬鹿でかい怒号が休憩広場に響き渡る。その声の主はなんとあのユノンであった。しかし、いつもの冷たい印象とはうってかわり、眉間にしわをよせ非常に怒りに満ちた表情をしている。

しかもなんとロケットランチャーと思わしき物騒な重兵器を抱え持っていた。

それを見た全員がその場でドン引きし、さらにラクリーマもびっくりしてその場から全速力で逃亡した。

 

「やっべぇっ!!そういやぁあいつから逃げてたんだ!!」

 

逃げる彼を彼女も全速力で追いかける。

 

「あんたまたあたしの部屋に忍びこんで下着を漁ったでしょーーーっっ!!パンツとか数枚なくなっているけどどこにやったのよっ!!?」

 

その破廉恥な理由にのび太としずか以外の全員がまたかと呆れて果てている。のび太達も情けなさすぎて彼に対しての評価が著しく下がるのだった。

 

「絶対コロスっ!!」

 

するとユノンは膝撃ちの態勢を取り、ランチャーの砲口を彼に向けバレル上の照準サイトを彼に合わせて発射態勢に入る。振り返ったラクリーマはそれを見て、さらに慌て出した。

 

「ユノン!!ホント悪かったからやめてくれえ~~っ!!」

 

しかしそんな謝罪で許すような彼女ではなく、容赦なく彼女はラクリーマに向けてトリガーを引き、重厚な発射音と共に野球ボールほどの大型弾頭がラクリーマめがけて駆け抜けていき、ラクリーマについに直撃し、大爆発。

 

「のわああああーーーー!!!!!」

 

爆風と共に彼の断末魔が辺りに響き渡った……。

 

「あわわわ…………」

 

この光景に全員が唖然となっており、レクシー、のび太、しずかも例外ではなかった。

 

……このあとユノンは丸焦げとなってノびているラクリーマをズリズリ引きずり、去っていく。自業自得と云うべきか、レクシーに言われた教訓をこの目で見たのび太達は彼女に対する恐怖を覚えたのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

レクシーによるエクセレクター艦内の案内が一通り終わり、それぞれ部屋へ戻る。のび太はベッドに寝転び、天井を見ていた。

歩き疲れて眠たいのは山々なのだが、どうしても気になっていることがあった。それは、

 

(ドラえもん、ジャイアン、スネ夫……僕達のことを心配してるのかなぁ……っ)

 

やはりドラえもん達のことが気になって眠れない。

今何をしているのか、心配してくれているのか、ただそれだけを彼は思い続けていた。

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