最後の残虐   作:ぴえろー

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キン肉マンの2次創作小説です。外伝として見ていただければ幸いです。なお、pixivに同じ内容の小説(こちらは9話まで掲載)がありますので、興味がある方はpixivのほうも見ていってください。


第一話「襲われた友ッ!」

これは、王位争奪編から後のお話。キン肉マンをはじめとする正義超人たちは、第58代キン肉星大王であるキン肉スグルをはじめとした仲間たちが戦いを繰り広げた、様々な場所を練り歩いていた。

 

「…ここが」

 

「ここが、親父が死んだ場所…」

 

驚きと悲しみが混じったようなため息をつき、そう言ったのは正義超人の一人、ブロッケンjr。情に厚い男であり、荒々しいファイトに定評がある男だ。

 

「そうだ。私が、お前の父親を倒した場所だ」

 

今、この場所には血の匂いやむせかえるような感じはしない。ただ、ブロッケンと、彼の師匠であり、敵であったラーメンマンの二人には確かに、その2つが感じ取れていた。

 

第20回超人オリンピック1回戦、中国代表「ラーメンマン」対ドイツ代表「ブロッケンマン」この戦いは、大会史上最も凄惨かつ残虐な試合として、今も語り継がれている。

 

「……」

 

ブロッケンは黙った。何かを考えているようにも見える。

 

「…考えているな。父親のことを」

 

「…親父は」

 

ブロッケンはためらいながら

 

親父の最期は…どうだったんだ」

 

「……」

 

立派な最期だった、そういいたかったのだろう。しかし、言えなかった。

 

「…ラーメンマン?」

 

もう幾分昔の話だのに、ブロッケン自身ももう気にしていない、そう言っていたのに。金網に対する恐怖を克服した時よりも、その言葉を言うほうが、今の彼には、覚悟が必要だった。

 

「おい、ラーメンマン!」

 

「!」

 

「な…なんだ?」

 

「どうしたんだ、急に黙り込んだりして」

 

「い…いや、何でもない」

 

「どうした?…ああ」

 

「別に、気にしなくてもいいんだぜ。もうずいぶん昔のことだからよ」

 

「もうお前が憎いなんて、思っちゃいないさ」

 

「…そうか」

 

ラーメンマンは、いつの間にか厳しくなっていた表情をすこし緩めた。

 

ただ、その顔はすぐにまた、厳しいものへと変わった。

 

「お~い!大変だーっ!」

 

遠くから聞こえる、明らかに普通ではない声音。異常事態が起こったのだ。

 

「ハア…ハア…」

 

ものすごく急いできたのか、息切れが激しい。

 

「おいおい、ウォーズマンじゃないか、どうしたんだ?」

 

ブロッケンが問う。

 

「ば…バッファロー…」

 

「えっ?」

 

「バッファローマンが…何者かに、襲われ…た」

 

「な…なんだとっ!?」

 

とある病院

彼、すなわちバッファローマンは、何者かに襲われた後、偶然通りかかった人に見つけられ、何とか一命をとりとめていた。しかし、体全体をズタズタに切り裂かれ、その際に起こった大量出血のせいで昏睡状態に陥っており、いつ目を覚ますかもわからない状態だった。

 

「バッファローマン…」

 

ブロッケンはため息交じりに彼の名を呼んだ。

 

「くそっ!俺がもう少し早く気づいていればッ…!」

 

彼は壁を叩き、そう言った。

 

「……」

 

ラーメンマンは黙っていた。

 

それからしばらくしてキン肉マン達が病室へとやってきた。

 

「バッファローマン!!」

 

キン肉マンの声が病室中に響いた。

 

「一体どういうことなんじゃ!なぜバッファローマンが!」

 

「落ち着けキン肉マン!」

 

そう静止したのは仮面の貴公子、イギリス代表の超人ロビン・マスクだ。

 

「これが落ち着いていられるか!私たちの仲間が襲われたんじゃぞ!」

 

「気持ちはわかる!だがキン肉マン、お前は王位争奪戦の時の傷がまだ癒えていない」

 

「ここまで歩くのだってドクターに止められていたんだ。治らなくなったらどうするんだ」

 

「…そうじゃな、すまん」

 

ロビンに諫められると、キン肉マンは素直に謝った。

 

「だが、いったい誰が…」

 

ロビンがそういうと、周りにいた仲間たちが一斉に考え始めた。

 

「フェニックスとか?」

 

そう口火を切ったのはロビンの弟子であり、かつてキン肉マンを窮地に陥れた殺人マシーン、ソ連(今のロシア連邦)出身の超人、ウォーズマンだ。

 

「ばか言うな!フェニックスはあの後改心したんじゃ!反旗を翻すわけないわい!」

 

キン肉マンは半ば感情的にそう反論した。

 

「そ…そうだな、すまない」

 

彼は素直に謝った。

 

しかしその会話の後は特にこれといった意見もなく、ただ時間だけが過ぎていった。

 

「くそ、誰か思い当たる奴はいないのかっ…!」

 

言うまでもなく、彼らは焦っていた。手がかりもなく、ただやみくもに行動するわけにもいかない。

 

しかも最悪なことに、今回の件は誰も目撃者がいないという点で、特定の難しさに拍車をかけていた。バッファローマンが襲われた、その事実以外に何もないのである。

 

もうだめか、院内にいた全員があきらめかけていた時、ブロッケンはバッファローマンの包帯を取り換えようとしていた。親父に言われて、よく戦場で負傷した兵士の看病をしていたので、これくらいはお手の物なのだ。

 

「ごめんよ…ちょっとだけ我慢しててくれ」

 

彼はバッファローマンにそう言うと、上半身の包帯から外していった。彼が半分くらい外し終わったころだろうか。ブロッケンはバッファローマンの受けた傷を見て顔をゆがめた。

 

「うっ…」

 

医者からズタズタだと聞いてはいたが、思いのほかひどかった。

 

これまで幾多のひどい傷を戦場で見てきたが、これほどまでにひどい傷はあまりない。筆舌には尽くしがたい、それほどまでにひどい傷なのだ。

 

ブロッケンは彼の傷を痛ましく思いながら、何とか我慢して包帯を外した。傷を見た瞬間に感じた、少しばかりの違和感を持ちながら。

 

そしてすべて外し終え、ブロッケンはほっと息をついた。外している最中でも出血の危険性があったので、かなり精神を使ったのだ。さて、包帯をつけようかと、意気込んだその時だった。

 

彼はバッファローマンの傷全体を見た。筆舌に尽くしがた…くはない。いやむしろ、とても分かりやすい。

 

体に刻まれた大きな「×(ペケ)」の文字。バッファローマンの体には何かを暗示するように、そう刻まれていた。

 

「!!これはっ!」

 

彼の傷口を見るや否や、ブロッケンは声を上げた。

 

「どうしたんだ!ブロッケン」ラーメンマンが聞く。

 

「…ラーメンマン、いや、みんな」

 

ブロッケンは口を紡ぎ、一拍置いた後、大きな声で言った。

 

「俺に心当たりがある。もう一度あの男が戦った場所へ行こう」

 

「あの男?そいつはいったい誰なんじゃ!」

 

キン肉マンが問う。

 

「…それは行ってみればわかる、(はんにん)は恐らく、そこにいる」

 

「…ついてきてくれないか。俺が、案内する」

 

ブロッケンの表情は決意に満ちていた。

 

「ブロッケン…」

 

「よしわかった。みんな、ブロッケンについていこう」

 

ブロッケンの意図を汲み取ったのか、ラーメンマンが納得したように言う。

 

「なんじゃ?よくわからんのう」

 

キン肉マンは状況がうまく呑み込めていないようだった。

 

「じゃが、犯人が分かるのであれば何処にだって行ってやるわい!」

 

「よしみんな!ブロッケンに続けっ!」

 

キン肉マンがそう言うと、仲間たちはブロッケンに連れられ、「ある男」が戦ったというスタジアムへと向かった。ブロッケンが突如抱いた、決意の心を引っ提げて…

 

とあるスタジアム

 

ここは、とあるスタジアム。スタジアム、というと連想できるのは熱気に包まれた歓声、盛り上がる試合、観客の視線というスポットライトに当てられた選手たちが、その強さを誇示するべく、汗ほとばしる試合を繰り広げる…そんなところだろうか。

 

 だが、このスタジアムにはそんなものは一つとして見当たらない。歓声もなければ、選手もいない。ただ静寂とした空気が流れているだけである。

 

…そこにあった不気味な人影とそいつの周りを纏っていた、不気味なオーラを除いて。

 

「へへへ…」

 

人影は不気味に笑った。

 

「来るな…超人たちの熱い血の匂いがムンムン伝わってくるぜ…」

 

ニヤリ、と、またその男は不気味に笑う。

 

「楽しみだぜ…少なくとも、さっきの牛野郎よりかは楽しませてくれそうだ」

 

「待っているぞ、正義超人ども…そして」

 

その男は一拍おき、目をカッと見開いた。

 

「我が息子よッ!」

 

それからすぐに、場内に高笑いが響いた。それはたった一人、純粋な残虐性を持った超人の、歪んだ笑い声だった…。

 

                    -続く-

 

 




2021年 5月1日

 本作品の総合UAが初めて投稿してから1000人を超えました。いつもご愛読いただきありがとうございます。これからもより良い作品を執筆できるよう精進してまいりますのでよろしくお願いします。
              ~作者より~
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