果たして正義超人たちはその危機を脱することが出来るのか?そして、ラーメンマンは自身の葛藤を乗り越えることが出来るのか?
スタジアム内でラーメンマン達が戦っていたころ…
スタジアム 外
時を同じくして、スタジアムの外には多くの正義超人たちが集まっていた。
ロビンがラーメンマンを探していた時に、キン肉マンとテリーがスタジアム防衛の仲間を探すべく、様々な正義超人に呼びかけていたのだ。
その規模はおおよそ80人くらい。とりあえず日本にいた超人たちを片っ端から呼び寄せてここに集まってもらったという事らしい。
これでとりあえず、スタジアムを囲うことが出来るくらいの人数が集まったので、ひとまずこれで一安心…
…かと思ったが、どうやら一つ、大きな問題が発生したようだ。
ざわ ざわ ざわ…
スタジアムの周りを守っている正義超人からさらに外側を囲んでいる大勢の観客。
対ブロッケンマンと正義超人の試合を見に駆け付けた観客たちだ。
スタジアムの周りを囲むようにできた数えきれないほどの黒山の人だかり。そして、なにやら殺気だったような雰囲気。
お世辞にも彼らの態度は友好的とは言い難かった。
それもそのはず。現在スタジアムへと観戦に来ていた人たちは中に入れないのだ。
スタジアムの外には中の様子を一切見せないようにするため、スタジアムの内周を多くの正義超人と、その外周に騒ぎを聞きつけた警察が配備されていて、簡単には中に入れないようになっていた。
例えるなら、某漫画の外敵から身を守るための「壁」と認識してもらえたらいいと思う。
せっかく試合を見に来たのに、スタジアムには多くの警察と超人たちが壁を作って中に入れさせまいとしている。
観客たちのほとんどは試合を楽しみにして来ていたわけだから、とうぜん何人かは納得がいかず、怒り始める人も出てくるだろう。
これがまだ少人数だったら、まだ事情を言って帰ってもらうことが出来たのかもしれないが、現状では数えきれないほど人で埋め尽くされており、とても説得が出来そうな規模ではなかった。
おまけにこの状態だと、いつ観客の怒りが伝染して最終的には暴徒と化すかわからない状況でもあったため、まさに一触即発の状態だった。
そんないつ何かしら起こってもおかしくない状況の最中、その作られた壁の一部、スタジアムの入り口付近を守っているとある2人の超人。
超人オリンピックカナダ代表「カナディアンマン」と、テリーマンと同じアメリカ代表「スペシャルマン」がお互いに向かい合って話し込んでいた。
「いや、まいったなぁ…スペシャルマン」
「そうだね…カナディアンマン」
「テリーマンとキン肉マンにスタジアム外の警備を任されたのはいいんだが」
「どうして…」
「中に入れさせろ-ッ!スタジアムの中はどうなってるんだーっ!!」
「俺たちは試合を見に来たんだぞーっ!何でスタジアムの中に入れないんだーっ!」
「こんなに騒がしいんだ?この試合は非公式試合ってことになってたんじゃないのか?」
頬杖を付き、憂鬱そうな表情をしながら人が押し寄せている方を見る2人。
今更だが、どうやら今スタジアム内で行われていた試合は非公式試合だったようだ。
どうりで実況者や解説、観客がいなかったわけである。
「カナディアンマン、2日前のテレビ見てなかったの?」
「ああ。俺はずっと山の中で薪の素材になる木を切ってたから、テレビは一切見てなかったんだよな…」
「いったい何があったんだ?」
「ブロッケンマンがテレビで正義超人を殲滅するって"挑戦状"の声明を出したんだよ」
「"俺はお前たちに挑戦状を叩きつけるーっ!"って感じにさ」
「へぇ。そいつは知らなかったな。俺はテリーマン達が来てようやくブロッケン達が戦うってことを知ったからさ」
「2日前にそんなことが起きてたとは知らなかったぜ」
「思い切ったことをしたよね…そのブロッケンマンって超人もさ」
「これなら多くの超人が集まるし、主力級の超人もここに集まってくるもんね」
「ただ、それにしたっておかしいぞ。そいつがテレビで正義超人に声明を出したとはいえ、いったいどうしてスタジアムの外に多くの観客が集まってるんだ?」
「うん…実はその映像、全国ネットで放映されてて結構多くの人が見てたみたいなんだ」
「それをSNSとか動画サイトに映像を投稿して、それを見た多くの人がここに集まってきたって感じみたいだね」
「くそ…ブロッケンマンのやつ、はた迷惑な話だぜ」
「挑戦状を送るんなら矢文とか郵便で出せばいいのに」
「そ、そうだね…」
若干引き気味に受け答えをしたスペシャルマン。
確かにカナディアンマンの言ったその方法は便利、かつ合理的なので送る方法としては一理あるかもしれない。
ただ、その場合だと矢文で挑戦状を送るならまだしも、郵便で出した場合は結構シュールな絵面になりそうである。
「あれ?そういえばブロッケンマンって…第20回の超人オリンピックでラーメンマンに真っ二つにされたやつだよな?」
「もう死んでるはずなのに、どうして正義超人と戦ってるんだ?」
「真っ二つにされたけど、実は生きてたとか?」
「まさか。後で聞いた話だと、完全に真っ二つにされたって話だったんだぜ?」
「仮に生きてたとしても、再起することはできないだろ」
「そこらへんはボクもよくわかんないよ。詳しいことはよくわからないし」
「そうだよな…」
「っていうか、俺たち配備されたのはいいけど詳細な事情は何も知らされてないんだよな」
「警察だってこの騒ぎを聞きつけて配備されたようなもんだし、もうよくわかんないよね…」
スペシャルマンがやれやれと呆れたような、困ったような表情を浮かべていた
その時。
ワー!ワー!
「ん?」
スタジアムの外周から聞こえてくる、明かに異質な喧噪。
「入・れ・ろ!入・れ・ろ!」
スタジアムの周りから一斉に聞こえてくる「入れろ」コール。最初は一部でしか聞こえていなかった怒号は瞬く間に観客内に伝染し、ものの数秒でほぼすべての観客が怒号をまき散らすようになった。
「お、おいおい…まずいんじゃねぇか?あれ」
「下手したら外の壁が壊されちまうんじゃ…」
「う、うん…準備しといたほうがいいかも」
観客の流れを何とか食い止めようと2人が臨戦態勢を整えようとしていた…
次の瞬間。
ガシャーンッ!
暴徒と化した観客たちが一斉にバリケードを破り、2人がいた場所とは少し離れた場所において、警察で構成された「外壁」を突破した。
多くの観客が超人たちの守る「内壁」へと入ってくる事態となってしまった。
「や、やべえ!バリケードが壊された!」
「いかん!このままでは観客たちがスタジアムの中に入ってしまうぞ!」
「みんな!守備陣形を崩さず壁になるんだっ!」
「人っ子一人スタジアムの中に入れさせるなーっ!」
多くの超人たちが焦る中、守備に当たっている超人たちをまとめるために裂けんばかりの大声を上げたカナディアンマン。
その後、その声を聴いたスタジアムの周りを囲っていた正義超人たちはお互いの腕を組み、まるでラグビーの守備陣形の一つである「スクラム」のような形となって観客の方へと突っ込んでいった。
果たして彼らは暴徒と化した観客たちを止めることはできるのだろうか?
それに関してはまたのちほど話すことにしよう。
スタジアム 場内
さて、場面は変わって、スタジアム場内。
ラーメンマンは前回、ブロッケンマンに残虐超人の総帥へと戻ることを勧められ、それに対して彼が面食らうといったところで話が終わっていた。
「戻って来いよ、ラーメンマン」
「残虐超人界によぉ」
「!!」
突然の言葉に対し、すぐに反応できなかったラーマンマン。
しかし、彼はすぐに気を取り直し、冷静に言い返す。
「ふふ…」
「驚いたな。残虐超人も冗談が言えるのか」
「私は何も変わってはいない。むしろ追い詰められているのはそっちのほうじゃないのか?」
「"正義超人"である私に"残虐超人"に戻れなどと…的外れにもほどがあるぞ」
「へっ、バカ言うんじゃねぇぜ。そんなハッタリが俺に通用するかよ」
「特に"
リングの上で倒れこんでいるラーメンマンに対し見下ろすようにして返したブロッケンマン。
「…何だと?どういう意味だ」
語気を強めてブロッケンマンに問うラーメンマン。
彼が正義超人を侮辱したことに対する静かな怒りをブロッケンマンにぶつけていることは、誰から見ても明らかだった。
「特に意味はねえ。ただ俺の言いたいことを短く言ったまでだ」
「気に食わんな、私たちの何が不満だというんだ?」
「不満?へっ、愚問だな」
「あるからこうして戦ってんじゃねえか」
「ラーメンマン、奴の挑発に乗るんじゃない!」
「冷静になるんだッ!!」
「ムキになればなるだけ奴らの思うツボだぞッ!!」
ロビンは彼に向かって叫んだがラーメンマンには聞こえていなかった。
よほどさっきの言葉が気に入らなかったのだろう。彼の言葉にところどころではあるが、感情的な一面が見える。
「へへ…いつもは冷静な超人博士さまも、こうなりゃぁ形無しだな」
「まぁ…ムキになるのも仕方ねぇわな。なぜならお前は」
「迷っているからなぁ…」
「なに…?」
「そういえばよ」
「聞いた話じゃお前、俺が死んだ後、とある試合で"情け"をかけたそうじゃねえか?」
「!!」
「仮にも残虐超人の総帥だった奴が"情け"をかけるたあな…文字通り、情けねえぜ」
「だ…黙れっ…!」
「情け」をかけた試合とは、おそらく「超人オリンピックザ・ビッグファイト」でのウォーズマンとの戦いのことを言っているのだ。
彼はこの試合で、先ほどブロッケンマンに対してかけた技「ネッグハンギング」をかけた際に、ブロッケンマンの言う「情け」をかけてしまい、その隙を付かれたウォーズマンにスクリュードライバーで頭を貫かれてしまった。
結果的にラーメンマンはこの戦いに敗北。それだけではなく、彼は一時的に「生身の体」ではリングに上がることが不可能な体となってしまった。
「ラーメンマン!いいことを一つ、教えてやるぜ」
「今のお前には"キレ"がねぇ…」
「それも一番最悪な、自分を見失ってる状態での"キレ"のなさだ」
「それは何かをやめたとき、自分が長い間やっていたことを突然やめちまった奴に起こりやすいのさ」
「てめえは"残虐超人"になることをやめた…いや?未練がある形でキン肉マン達と協力することになった」
「実力が中途半端になるのは当然だぜ」
「…何が言いたい?」
「さっき言っただろ。戻って来いって」
「結局はよ、お前は"残虐"になることをやめちまったから自分を見失ったんじゃあねえのか?」
「息子の言うとおりだぜ。お前の居る所は"正義"と謳っちゃあいるがしょせん、単なる烏合の衆…」
「ちょっとでも
「さっき言った、中途半端になる原因でもあるのさ」
「……」
「戻って来いよ、ラーメンマン」
「おまえは総帥として君臨してたほうが、よっぽど性に合ってる」
「もう一度"残虐"になって"完璧"なラーメンマンに戻ろうじゃねぇか」
「……」
彼の一通りの演説を受けたラーメンマンの表情は訝しげだった。
正義超人自体を否定するつもりは毛頭ないのだろうが、彼自身、残虐超人界に対して何かしら思うところがあるのだろうか。
そんな感じの表情だった。
「ラーメンマン!まさかお前…」
この状況にいたたまれなくなり、ついに二人の間に割って入ろうとリングに向かって走り出そうとしたキン肉マン。
「待て、キン肉マン」
しかし、そんな様子のキン肉マンをロビンが立ちふさがる形で制止した。
「ロビン、なぜ止める!お前はこのままラーメンマンがあの頃に戻ってもいいというのか!?」
「違う!…私も、ラーメンマンには残虐超人に戻ってほしくはない」
「だが、あれはラーメンマン自身の問題なんだ。私たちが介入できることじゃない》
「アイツの判断に、任せるんだ」
「くっ…!」
「…わかった」そう答えるキン肉マンの表情はいつになく不満げだった。
「……」
ロビンも、自分の中にある何かを抑え込むようにキン肉マンを諭したといったような感じだった。
今、ラーメンマンに与えられた選択肢は2つ。
一つは、このまま正義超人として生き、キン肉マン達とともに超人界を守っていくこと。
もう一つは彼の言う「残虐超人界」に戻り、再び総帥として君臨し「残虐超人」の派閥を復活させること。
「ラ…ラーメンマン…」
(私は…私は)
(どうすればいいのだ…!)
突如、
いや、あの時(スタジアムでウォーズマンに言われた時)にうやむやにしていた決断を
いま迫られているといったところなのか。
窮地に立たされた非情の鬼は果たして、未来の超人界を左右するであろうこの
果たして、次回までに明らかになるのか…?
―続く―