最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第12話です。先週は急用で作品を投稿できなかったので、今週は少し多めに文章を載せています。
 ブロッケンマンに正義超人から残虐超人への転身を迫られたラーメンマン。果たして彼はブロッケンマンのオファーに、そして自身の葛藤にどのような結論を出すのだろうか?


第十一話「葛藤を乗り越えろ」

―スタジアム 場内―

 

「……」

 

「戻って来いよ、ラーメンマン」

 

「もう一度"残虐"になって"完璧"なラーメンマンに戻ろうじゃねぇか」

 

「……」

 

「ラ…ラーメンマン」

 

困惑しながらラーメンマンを見つめる正義超人たち。

 

その見つめられている本人は両の手を強く握り、額に汗をかいていた。

 

事の発端は第20回超人オリンピックが行われたスタジアムにて「ラーメンマン&ブロッケンJr」対「ブロッケンマン&ウォーズマン」のタッグバトルが行われていた中でのことだった。

 

 突如としてラーメンマンはブロッケンマンから残虐超人の総帥に戻ってくるようにとの勧誘(オファー)を受けたのだ。

 

ブロッケンマンからの突然のオファーに驚くラーメンマン。最初は冷静さを欠いてはいなかったのだが、ブロッケンマンの演説を受け、徐々に冷静さを失っていった。

 

その結果、以前ウォーズマン(その時は「謎の男」)に言われていた一言もあって彼はさらに大きな葛藤を抱えてしまうのであった。

 

迫りくる決断の時。果たして彼はどんな決断をするのか?

 

「さあ、どうした?ラーメンマン」

 

「試合が止まってるぜ。早く決めてくれよ」

 

考え込んでいるラーメンマンに対し、早く回答をするように急かすブロッケンマン。

 

急かすことによって、彼の判断を鈍らせようとしているのだ。

 

「……」

 

依然としてリング上で 沈黙を守っているラーメンマン。

 

それから少しの間、ラーメンマンは眉をひそめながらうつむいたままその場に佇んでいた。

 

事が動いたのは、ブロッケンマンの言葉からしばらくたってからのこと。

 

ラーメンマンはついに下げていた顔を上げ、重い口を開いた。

 

「…完璧、か」

 

「…ブロッケンマン」

 

「お前は「完璧超人」を知っているか」

 

暗い表情のままブロッケンマンに向けて問いかけるラーメンマン。

 

長い沈黙の後、彼が絞り出した言葉はそれだった。

 

その問いかけが意味することとは一体何なのだろうか。

 

「…何?」

 

「知らねぇな。何だそいつらは」

 

「"完璧超人"というのは」

 

「"心・技・体"すべてにおいて完璧であり、超人界においてもっとも気高い超人とされている一族…」

 

「ブロッケンマン、お前が死んだ後に現れた超人だ」

 

「ほう…」

 

それを聞くや否や、ブロッケンマンは闇を纏った目を光らせた。

 

彼の説明に捕捉を加えるとするなら、代表的な超人は「ネプチューンマン」であるということだけだ。

 

ラーメンマンは「夢の超人タッグ編」にて、彼とペアであった「ビッグザ武道」こと「ネプチューンキング」達の放つ磁力攻撃の前に敗れ去っている。

 

もし彼がアシュラマン達に「友情」をコントロールされず、元の状態のままで彼らと戦っていたら、もしかしたら勝利を収めることが出来たのかもしれない。

 

「私は、彼らの研ぎ澄まされた完璧な攻撃の前に敗れ去ってしまった」

 

「ただ、向こうにいるキン肉マンをはじめとした"正義超人"は"完璧超人"に勝つことが出来た」

 

「ブロッケンマン、これがどういうことかわかるか?」

 

「…何が言いたい?」

 

怪訝な表情でラーメンマンの方を見るブロッケンマン。

 

その表情を一瞥すると、一拍おいたのちラーメンマンは口を開いた。

 

「総帥の頃の自分、純粋な"残虐"では"完璧"を倒すことはできない」

 

「ましてや、それに打ち勝った"正義"を倒すことなど、尚更できない」

 

「…ということだ」

 

ラーメンマンは冷たく、重い声でブロッケンマンに言い放った。

 

どうやら、ラーメンマンは自分が未熟であったために仲間を捨て、そして敗北の味を知らされることになったと考えていようだ。

 

勝利のためにかつての仲間さえも犠牲にする純粋な「残虐超人」の考え方があの時まだ残っていたことを、ラーメンマンは今までずっと悔やんでいた。

 

そのことをロビン以外の全員に今、自分の考えていたことを伝えたのである。

 

「別にキン肉マン達を倒そうというわけじゃない。私が強くなるためには」

 

「強くなり続けるためには…どうしても"正義"が必要だ」

 

「そして同時に、互いを高めあい共に強くなっていくための"仲間"が必要なんだ」

 

「仲間がいたから…正義超人は完璧超人を倒すことが出来たんだ」

 

「私は、強くなることが出来たんだ」

 

「ラーメンマン…」

 

神妙な面持ちで腕を組みながらラーメンマンの演説を聞くロビンマスク。

 

彼の今まで不安そうな表情だったのが徐々に薄れていく。

 

「私はもう、純粋な「残虐」には戻らない。なぜなら…」

 

「仲間と高みを目指したこの実力を…お前にぶつけるからだッ!!」

 

「そしてお前を倒す!いや」

 

「倒さなければならないッ!!」

 

「かつての小さかった、私を超えるためにッ!!」

 

ラーメンマンは指を差し、ブロッケンマンに対して強く、そして勇ましくそう言い放った。

 

もう、彼の表情に未練と迷いはなかった。

 

「ラーメンマン…」

 

「…私たちが心配するまでもなかったようだな」

 

「ふふ…相変わらず一途(クール)な奴だぜ」

 

キン肉マン、ロビン、テリーの3人は口々にそう言った。

 

自分は残虐超人としてではなく、正義超人として仲間と共に高みを目指していきたい。

 

この言葉が、今まで様々な経験を通してきた彼の答えであった。

 

一度惚れたら自分の最期まで惚れぬく…それがラーメンマンという男なのかもしれない。

 

「…へっ、御大層だな」

 

「要は自分の成長を止めたくねぇから、総帥になることを断る…」

 

「残虐超人になることを断ると…そう言いてぇんだな?」

 

「そういうことだ」

 

「ちっ、情けねぇやつだ」

 

彼の決意表明に対し、不満そうな表情を浮かべたブロッケンマン。

 

露骨な舌打ちが彼の機嫌の悪さを物語っている。

 

「そんなに"正義"が強いってんなら証明してみろよ」

 

「「残虐(おれ)」より強いってことをよぉ!!」

 

ブロッケンマンは彼に向かってダッシュしたかと思うと、リングの上を大きく飛び、空中で手刀を自分の胸の前に交差させた。

 

「自分が強くなるために"正義"が"仲間"が必要だぁ?…甘ぇこというんじゃねぇ!」

 

「その腐った根性を持っちまったことを…後悔させてやるぜッ!!」

 

「あっ、あれは!!」

 

「-元祖-ベルリンの赤い雨の態勢だ!!」

 

ブロッケンマンはそのまま手刀を前に交差した状態で彼の元へと向かってくる。

 

「させるかっ!」

 

ラーメンマンはブロッケンマンが飛んだと同時に、リングのロープを利用してジャンプした。

 

金網によって運ばれた彼の体はそのままブロッケンマンの元へと向かっていく。

 

「空中殺法"ベルリンの赤い雨"ッ!!」

 

「"残虐"にひれ伏せーッ!!」

 

次の瞬間、あの独特な切り裂き音とともに、ラーメンマンの胸に大きな「×(ペケ)」の文字が刻まれた。

 

ズブッ!!

 

「ぐっ…」

 

「ラーメンマン!!」

 

悲痛に叫ぶロビンマスク。

 

だが、この時のラーメンマンの表情は一瞬だけ苦悶の表情はあったものの、どこか余裕のある様子だった。

 

「へへ、口ほどにもねえな!」

 

「これでとどめを刺してやる!!」

 

「くらえっ!チキンレッグウィッ…」

 

空中でブロッケンマンがラーメンマンの足をとらえ、足技の一つである「チキンレッグウィッグ」が決まったかのように思えた。

 

しかしその時、ラーメンマンの細い目がカッと開いた。

 

「っ!?」

 

驚きを隠せないブロッケンマン。意表を突かれた、というような表情だ。

 

「甘いぞ!ブロッケンマン!」

 

(ガシィッ!!)

 

次の瞬間、ラーメンマンは彼を掴もうとしているブロッケンマンの足をつかんだ。

 

そしてブロッケンマンを抱えたまま金網の方へと落下していった。

 

「!!」

 

「な…なにぃ…」

 

「ブロッケンマン…」

 

「お前が用意した金網、少し借りるぞッ!!」

 

それからほどなくして、金網を踏んだ彼は反動で勢いよく上昇。

 

恐らく今まで彼が飛躍した高さの中では間違いなく高度が高い部類に入る、それくらいにインパクトのある飛翔だった。

 

その姿、まるで雲海を泳ぐ龍のごとく。

 

「ラーメンマン!いったい何をするつもりだ!!」

 

2人が浮いている方を向いて叫ぶブロッケン。

 

龍はそのまま宿敵の足を掴んだまま彼を下にして勢いよく下に落下していった。

 

彼はもう一度あの「技」を放つつもりだ。

 

「いいかブロッケン!!よく見ていろッ!!」

 

「私のような正義超人は…」

 

「このように戦うんだッ!!」

 

「うおおおおおおっ!!」

 

 

九龍城落地(ガウロンセンドロップ)ーッ!!」

 

 

ラーメンマンの大技が、彼の大きな叫びとともにリングを駆け抜けた。

 

ズドォンッ!!

 

ベキィッ!!

 

「ぎゃああああああっ!!!」

 

ブロッケンマンの両腕が、いや上半身が轟音と共に地面に激突し、「ベキッ」という鈍い音が聞こえた。

 

先ほどとは違い、確実にブロッケンマンにダメージが入った音である。

 

「やっ…やったーっ!ラーメンマンがブロッケンマンにダメージを与えたぞーっ!!」

 

キン肉マンが叫んだ瞬間、正義超人側からは大きな歓声が沸き上がった。

 

「そうかっ!2段ジャンプだっ!」

 

「もともと浮き上がっている状態で金網を利用してさらに高度を高くすれば、必然的にあの技の威力は上がる!」

 

「ラーメンマンのジャンプ精度の高さも相まって、技の威力が大幅に飛躍したってわけか!」

 

感嘆が混じった声でテリーマンは今しがたラーメンマンが放った技を半ば興奮気味に分析した。

 

「うぐぐ…」

 

リング外で歓声が聞こえる中、ブロッケンマンは静かに立ち上がった。

 

「!!ブロッケンマンが立ち上がった!」

 

「あれを受けておきながら、まだ戦えるというのか…」

 

驚きの声を上げるキン肉マンとテリー。

 

すぐに場内の歓声は静まり、すべての視線がブロッケンマンに向けられた。

 

「へへ…やるじゃねぇか」

 

ブロッケンマンの口元からは、口を切ったのか少し血が出ている。

 

オマケに少しばかりだが腕も負傷しているようだ。

 

「少し油断しちまったが…次はもう食らわん」

 

「必ずお前らを仕留めてやるぜ…」

 

ブロッケンマンは口から流れている血をぬぐいながらそう吐き捨て、去って行った。

 

強がってはいるようだが、彼の声は明らかに今までの声とは違っていた。

 

震えるような、かすれたような、そんな声だ。

 

するとブロッケンマンは去り際、ふいに後ろを振り返った。

 

そして鬼気迫る表情で正義超人たちに向けて指をさし、叫んだ。

 

「ラーメンマン、そして息子よ」

 

「よく…覚えておくんだな!技ってのは」

 

「やり方や掛け方によっては、十にも百にもなるってことをッ!!」

 

そう言うと、ブロッケンマンは肩を回しながらウォーズマンの元へと歩いて行った。

 

「……」

 

去っていくブロッケンマンを黙って見る正義超人たち。

 

それからしばらくして、半ば感情的にキン肉マンが口を開いた。

 

「なにをーっ!負け惜しみを言いおって!」

 

「今に減らず口を叩いたことを後悔させてやるわいッ!!」

 

「まあ、落ち着けキン肉マン。とりあえずブロッケンマンに一矢報いることができたんだ」

 

「今は俺たちがラーメンマンとブロッケンに対して何ができるのかを考えるのが先だぜ」

 

そう言うと、テリーはキン肉マンの肩にポン、と手を置いた。

 

「うぐぐ…手助け出来んのがもどかしいのう」

 

「テリーの言うとおりじゃ。どうにかして2人にしてやれることはないかのう・・・」

 

テリーの慰撫(いぶ)により、キン肉マンはいったん落ち着いた。

 

しかし、それからすぐに彼ははたと、我に返った。

 

「…んん?しかしどういうことじゃ?十にも百にも…とは」

 

「う~む、わからんのう」

 

「まあとにかく、これでなんとかブロッケンマンにダメージを与えることが出来たな」

 

「一時は攻略不可能とも思われた"―元祖―ベルリンの赤い雨"だったが…攻略する方法はありそうだ」

 

技を攻略することのできた安心からか、テリーとキン肉マンはこわばった表情を少し緩めて会話をしていた。

 

しかし、皆が安心する中この男だけは額に汗をにじませていた。

 

この戦いに対して、みんなとはまた違った心持ちで観戦している男、ロビンマスクである。

 

「……」

 

(確かに…)

 

(確かに、あの技"自体"は攻略できたかもしれない)

 

(だが…おかしい)

 

ロビンは、ブロッケンマンの必殺技についてさらに深く考えていく。

 

どうにも拭えない違和感。ロビンはそれが気がかりで仕方がない。

 

(どうして、技を破られた側が全く動揺していないんだ…?)

 

(そして、あの時のブロッケンマンの言葉…)

 

 

「覚えておくんだな!技ってのは」

 

「やり方や掛け方によっては、十にも百にもなるってことをッ!!」

 

 

「…ラーメンマン」

 

「お前は今、奴の術中にはまっているのかもしれないぞ…」

 

ロビンの顔には「不安」という暗雲が立ち込めて始めていた…。

 

そしてこの男もまた、ブロッケンマンに対して違和感のようなものを覚えていた。

 

「…ブロッケンマン」

 

彼の脳裏にブロッケンマンが放った言葉がよみがえってくる。

 

 

「そんなに"正義"が強いってんなら証明してみろよ」

 

「"残虐(おれ)"より強いってことをよぉ!!」

 

「自分が強くなるために"正義"が"仲間"が必要だぁ?…甘ぇこというんじゃねぇ!」

 

「その腐った根性を持っちまったことを…後悔させてやるぜッ!!」

 

 

(・・・妙だ。なぜそこまでして"正義"を消そうとする?)

 

(ブロッケンマン・・・おまえは一体何を考えているんだ?)

 

ロビンとはまた別の問題でブロッケンマンに対して違和感を覚えていたラーメンマン。

 

互いに腑に落ちない何かを抱えながら、試合は一時休憩となった…。

 

リング外 ―残虐チーム側―

 

一方そのころ「残虐超人」側では…

 

「お…おい、大丈夫かブロッケンマン」

 

ウォーズマンはそう言うと、ブロッケンマンにタオルを渡した。

 

「へへ、問題ねぇ。このくらいかすり傷よ」

 

ブロッケンマンはタオルを受け取った後、汗をタオルで拭いつつ両方の肩をかわりばんこに回しながらそう言った。

 

グキィッ!

 

その時、彼の肩から鈍い音がした。

 

骨折、というほどではないにしろ、体に何かしらの異常をきたしている音であった。

 

「うぐっ!」

 

「あたた…」両腕を抱くようにして痛みを抑えようとするブロッケンマン。

 

やはりラーメンマンの必殺技は効いていたのである。

 

「おいおい、大丈夫か!」

 

「無理をするなッ!」

 

「へへ…大丈夫だ」

 

「心配ねぇ…こんな状況は慣れっこよ」

 

心配する相棒に対してブロッケンマンは額に汗をにじませながら薄く笑い、返答した。

 

「そ、そうか…」

 

「なら…よかった」

 

ウォーズマンがとりあえず安心したことを確認すると、彼は表情を強張らせながら本題に移る。

 

「だが…やはり一筋縄ではいかねぇか」

 

ブロッケンマンがため息交じりにそう言うと、二人はリングの反対側で話し合っているラーメンマンたちを見た。

 

余裕そうなそぶりはないものの、ブロッケンマンに対して一矢報いることが出来た安心感からか、少しほっとしたような雰囲気が見られる。

 

「まさかこんなにもはやく俺の技の弱点を見切ってくるとは思わなかったぜ」

 

顎に手を付きながらリングの反対側を見るブロッケンマン。

 

自分の技に対して割と早い段階で反撃してきたことが意外だったようである。

 

「くそ…やはり難しいのか」

 

「ラーメンマンとブロッケンJrが相手では…」

 

両腕の拳を握りしめて悔しそうに下を向いているウォーズマンに、ブロッケンマンは彼の肩にそっと痣の残る手を置きニヤリと笑った。

 

「へへ、まぁそんな暗い顔すんなよ」

 

「俺の技は破られた訳じゃねぇんだからさ…」

 

「まだまだ俺の刃は健在だ。今にきっと、俺を仕留め損ねたことを後悔するだろうぜ」

 

「あの様子じゃあ、まだ完全に弱点を見破られたって訳でもなさそうだしな・・・」

 

「えっ、ベル赤は破られたんじゃないのか?」

 

目を丸くしながらウォーズマンは素っ頓狂な声を上げた。

 

「へへ…俺を誰だと思ってるんだ」

 

「あんなチンケな技で破られるほど、俺のベル赤はやわじゃねぇよ」

 

「それに、息子を含めアイツらはベル赤の真髄を知らねぇ…「ベルリンの赤い雨」の本当の恐ろしさをな…」

 

「そ、それは一体…?」

 

「クク…見てろよ偽善超人ども」

 

「証明してやる。"残虐"は"正義"より強いってことをよ!」

 

そう言い、不敵に笑うブロッケンマン。

 

その目は相変わらず、狂気にも似たどす黒い雰囲気を(まと)った目だった。

 

果たして、正義超人はブロッケンマン達を倒すことが出来るのか?

 

スタジアムにかかる雲は、いまだに晴れず…。

 

                -続く-

 

 

 

 

 

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