最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第14話です。すみません、昨日用事があったために投稿が遅れてしまいました。という事で今回は急遽、日曜日に投稿することになりました。
 彼らが繰り出したタッグ技によりラーメンマンが倒されかけていたその時、突如スタジアムのどこからか現れた謎の超人により正義超人側は事なきを得る。果たしてこの超人は試合の流れを変えるきっかけとなるのか…?


第十四話「猛進の来訪者」

スタジアム 場内

 

「バ…バッファローマン…?」

 

太く鍛え抜かれた腕、そしてデカい図体に加えて頭に生えた大きな2本の(ロングホーン)

 

「…超人界の一大事と聞いてこのスタジアムに来たが」

 

「何だこのザマは?」

 

沸き立つ白煙とともに現れたのは、1000万パワーを持つ「正義超人」の代表格…

 

猛進の来訪者、バッファローマンだ。

 

ブロッケンマンに倒され、病院で治療を受けているはずの彼がなぜか、ここにいる。

 

「バ…バッファローマン!お前、一体なぜここにッ!?」

 

「ブロッケンマンにやられて病院で昏睡状態になっていたはずではなかったのか!?」

 

突然の来訪者に驚きを隠せないキン肉マン達。

 

テリーとキン肉マンが交互に叫んだ。

 

「ああ、これか」

 

そう言うとバッファローマンは自分の胸に目をやる。

 

傷口こそ見えていないものの、恐らくその包帯の下には以前病院で見たあの傷が

まだあるのだろう。

 

「問題ねぇよ。こんなん大したことじゃねぇ」

 

バッファローマンは傷を見ながら薄く笑った。

 

「た、大したことねぇって…!」

 

バッファローマンの言葉に驚きを隠せないテリー。

 

しかし、心配するキン肉マン達をよそに彼は試合をしているリングへと目を向ける。

 

「それよりも…」

 

「……」

 

「ブ…ブロッケンマン」不安そうに彼を見るウォーズマン。

 

しかし、ウォーズマンが返答する暇もなく、バッファローマンはリングロープをまたぎ、ブロッケンマン達がいる方へと向かった。

 

リング上で相対する2人、小柄な体と巨大な体躯が何とも対象的だ。

 

「ブロッケンマン…久しぶりだな」

 

「誰だてめぇは?」

 

腕を組み、バッファローマンに対して問うブロッケンマン。

 

試合を邪魔されたことに苛立ちを覚えているのか、彼の視線は冷たい。

 

しかし、その言葉を受けたバッファローマンの反応は至極冷静で

 

「へっ…つれねぇな」

 

「負け犬はとっとと記憶の彼方におさらばってわけか」

 

呆れたように減らず口を言うバッファローマン。

 

「いいぜ。もう一度教えてやる」

 

「俺はバッファローマン。正義超人だ」

 

「お前とは、一度戦っているはずなんだがな」

 

「…覚えてねぇな。人違いじゃねぇのか?」

 

腕を組みながらリングロープにもたれかかり、バッファローマンに反応するブロッケンマン。

 

その態度はそっけないもので、彼がバッファローマンに対して興味がないのは目に見えて明らかだった。

 

負けた相手には興味がないという事なのか、それとも単純にラーメンマンや息子に関すること以外の過去に対して無関心なだけなのか…

 

「お前とはぜひ戦ってみてぇんだがよ、あいにく今は別の勝負をやってるんだ」

 

「用があるんならさっさと済ませてくれねぇか?」

 

やはり、バッファローマンに対するブロッケンマンの態度はそっけない。

 

取り付く島もないとはこういうことを言うのだろうか。

 

「フン、言われるまでもねぇ。すぐに済ませるぜ」

 

「そもそも俺は、戦う気なんざさらさらねぇんだ」

 

「ただ、この試合を元に戻しに来ただけなんだからな」

 

「…何だと?」

 

バッファローマンの言葉に反応するウォーズマン。

 

「おいバッファローマン。お前、この試合にケチをつけるつもりなのか?」

 

「ついさっきここに来たやつが随分と厚かましいな」

 

曇ったような声。聞き捨てならないと言わんばかりにウォーズマンは彼に詰め寄る。

 

「おいおい、勘違いしてもらっちゃ困るぜ」

 

「試合自体は間違っちゃいねぇさ。文句をつける理由もねぇ」

 

「だが、タッグバトルなのに2対1で無抵抗の奴を嬲り殺しにするのは感心しない…」

 

「だからこうして戦いの仲裁に入ったというわけだ」

 

「…ん?」

 

その時、今までまったく彼の話に関心がなかったブロッケンマンが突如、バッファローマンの方を向いた。

 

「おいおい、ちょっと待て」

 

「なんだ」

 

「バッファローマンとか言ったな、ちょっと大切なことを忘れちゃいねぇか?」

 

「ん、何の話だ」

 

「ルールを破ってるぜ。タッグバトルに第3者の介入はあっちゃいけないってルールが」

 

ブロッケンマンは詰め寄るようにしてバッファローマンに言った。

 

心なしか彼の言動には苛立ちの色が見える。

 

「だってそうじゃねぇか?俺達は今までラーメンマンと息子の2人と戦っていたんだ」

 

「そこにお前が現れた」

 

「もとい、邪魔をしに来たわけだぜ」

 

「これが第3者の介入じゃなくてなんと言うんだ?」

 

ブロッケンマンの言い分を要約すると、彼は正当なルールに基づいて試合を行っていたところにいきなりバッファローマンが現れ、試合を妨害した。

 

 

その彼が自分たちの行っている試合にケチを付け、試合自体の否定をするのは如何なものか、と言っているのである。

 

「へへへ…バッファローマンとか言ったな」

 

「仲間を守るために戦いの仲裁に来た、というのはご立派だがよ…」

 

「ルールを破る奴が仲裁に入るってのはちょっとないんじゃねぇのか?」

 

「友情ごっこなら、試合のルールを守ってからにするんだな…」

 

「……」

 

ブロッケンマンの言葉を受けて沈黙するバッファローマン。

 

「バ…バッファローマン…」

 

ブロッケンマンの言葉に不安そうな表情を浮かべるキン肉マン。

 

しかし、キン肉マン達の不安もよそにバッファローマンはニヤリ、と笑う。

 

「フフ…熟練の超人でも気がつかねぇのか」

 

「ドイツの鬼も堕ちたもんだな」

 

「何だと?」

 

苛立ちを隠せない様子でバッファローマンの言葉に反応するブロッケンマン。

 

バッファローマンは説明を続ける。

 

「わからねぇのか?なら、答えてやるぜ」

 

「俺は、正義超人側はルールをやぶっちゃいねぇ」

 

「なぜなら…」

 

「今の戦いには一人、明らかにこの戦いに参加していない奴がいたからだ!」

 

「…何だと?」

 

腕を組みながら片眉を上げ、ブロッケンマンは若干口角を釣り上げた。

 

「い、いったい誰だと言うんだ…」

 

バッファローマンの言葉を受けて訝しげな表情をするキン肉マン。

 

それから一拍おいたのち、バッファローマンは

 

「それはお前の息子、ブロッケンジュニアだっ!」

 

残虐超人側に指を指し、リング場内に大きく響く声で叫んだ。

 

「な…なんだと?」

 

彼の言葉を聞き、素っ頓狂な声を上げるブロッケンマン。

 

しかし、それからすぐに思い直し、バッファローマンの方を向くと

 

「…へっ、とんだ暴論だな。そんな理屈が俺に通じるかよ」

 

呆れた様子でバッファローマンの言葉に反応するブロッケンマン。

 

「どんな形であれ、リングの中に入っていれば戦闘に参加したことにはなるはずだ」

 

「リング外から入って来ればそれはどんな奴でも”部外者“だぜ。それがたとえ超人界の神であっても許されることじゃねぇ」

 

「その主張は通らんぜ」

 

しかし、バッファローマンは彼の反論に対して我関せず、動じない。

 

まるでその反論が来ることがわかっていたかのように。

 

「フフフ…そんなこたぁねぇ」

 

「ブロッケンをよぉーく見てみな…」

 

「何だと…?」

 

ブロッケンマンをはじめとしたバッファローマン以外の人たちが彼の指さした方向に目を向ける。

 

そこには、観客席にもたれかかり気を失っているブロッケンの姿があった。

 

「…あっ!」

 

「ゲェ―ッ!?な…何だアイツ、リング外に出てやがるぞ!?」

 

客席で気絶している友人の姿を見て愕然とするキン肉マン達。

 

「どうやらさっきの衝撃で吹っ飛んじまったようだな…」

 

ニヤリ、と再び不敵な笑みを浮かべるバッファローマン。

 

「!!」

 

ブロッケンマンは目を見開いた。

 

「お前のさっきの"リングの中に入っていれば”って言葉が正しけりゃあ、アイツは一時的にでも”部外者”ってことになる…」

 

「審判もいねぇようだし、今の主張が通るかもしれねぇな」

 

「くっ…!」

 

バッファローマンの反論にグウの根もでないブロッケンマン。

 

彼の言っていたことに気づき、一杯食わされた…そんな表情にも見える。

 

バッファローマンの反論を要約すると、彼はプロレスにおけるリングアウトのルールがこの試合に適用されていないことを指摘したのである。

 

そもそもこの試合は非公式試合で、基本的にルールの裁定を務めるはずの審判もいない。つまり、カウントを取ることもないので一応リングアウトしたものに関しては”部外者“という事になるのではないか、ということを主張したのである。

 

本来なら先ほどのような金網で囲まれたリングではリングアウトは起こりえない…そのため、リングアウトがあるということを普通なら考える必要があまりなかったのだが、途中で残虐超人側が金網を取り外したためにこのルールについて彼らか正義超人側のどちらかが言及する必要があったのだ。

 

ということは、それに関するルールを設定しなかった残虐超人側、そしてそれを指摘しなかった正義超人側の両方に落ち度があるのではないか、という事になる。

 

つまり、この試合が両者水入りの仕切り直しとなる可能性が出てきたということだ。

 

「クク…これでとりあえずルールは破ってねぇてことになったな」

 

リングロープにもたれかかりながらニヤつくバッファローマン。

 

まさにしてやったりという表情だった。

 

「まぁ、それによ…」

 

「試合が始まる前、正義超人サイドでルールを決めていいとお前らが公で言っておきながら、当日になっていきなり自分達にとって都合がいいような試合内容を勝手に決めたんだ」

 

「てめぇらにルールを守れだの、どうこう言われる筋合いはねぇんだよ」

 

「くっ…!」

 

バッファローマンにそう言われ、たじろぐブロッケンマン。

 

ここにきて、残虐超人サイドが行った試合前の勝手が、そしてミスが仇となったのである。

 

屁理屈を言いやがって…と言おうとしたブロッケンマンだったが、彼はすぐに口を紡いだ。

 

何となくではあるが、これ以上彼に何を言っても牙城を崩すことが出来ないと判断したのだろう。

 

彼の表情はまるで苦虫を食いつぶしたかのような苦悶の表情を浮かべていた。

 

「…ちっ、わかったよ」

 

「さっきのやつは無効だ。このまま試合を続行するぜ」

 

「ブ、ブロッケンマン!」

 

ブロッケンマンの言葉を受け、焦燥するウォーズマン。

 

「い、いいのかブロ!あんな屁理屈を…」

 

「…仕方ねぇだろ。俺達のやった戦略が裏目に出ちまったんだ」

 

「まさかこんなところで一杯食わされるとは思わなかったぜ…」

 

そう言うとブロッケンマンは帽子を前に深くかぶり、自身の表情を隠すような素振りを見せた。

 

「そんな…」

 

少なくとも彼がこの試合でそのような仕草は見せたことがない。

 

それだけバッファローマンの来訪が、そして試合形式の変更が予想外だったという事なのだ。

 

「……」

 

少し間があったのち彼は再び帽子を上げ、ウォーズマンの肩に手を置いた。

 

「…まぁ、心配するなよ。まだ勝敗が決まったわけじゃねぇ」

 

「今はアイツらの意見が通ったってだけだ。依然として流れは俺達にある」

 

「まだ”あの技”が破られちゃいねぇんだからな」

 

「また機会をうかがえばいいだけだぜ」

 

ブロッケンマンが言う「あの技」とはベル赤なのか、ミヌートのことなのか…

 

いずれにせよ、現時点ではわからない。

 

ただわかるのは、この一連の流れで何かしらの「変化」があったという事だけだった。

 

「な、なんじゃ?ブロッケンマンのやつ、あれだけルールがどうこうと言っておったのに…」

 

不機嫌そうにするブロッケンマンを横目に怪訝な顔をするキン肉マン。

 

「ブロッケンマンにとってさっきの妨害がよっぽど頭に来たんだろう」

 

「表情にはあまり出ていなかったが、彼の言動に苛立ちが見えていたからな…」

 

腕を組み今の状況を冷静に分析するロビンマスク。

 

「無理もない。彼にとってはそれほど”復讐”が重要な意味を成しているということなんだろう…」

 

「恐ろしい執念だな…」

 

「だが、いずれにせよこれで流れが変わったのは事実じゃ」

 

「バッファローマン!感謝するぞ!」

 

「これで…」

 

(スッ…)

 

「あ、ありゃ?」

 

キン肉マンの言葉を無視するかのように彼らの前を素通りしていくバッファローマン。

 

「バ…バッファローマン?」

 

向かった先はブロッケンの吹き飛ばされた場所であった。

 

バッファローマンがブロッケンの前に立ちふさがる。

 

その時の彼の表情は背後に光るライトがちょうどバッファローマンの頭の後ろを照らしていたためかよく見えなかった。

 

少なくとも笑っていないのだけは事実だ。

 

「い、いててて…」

 

「…ん?」

 

「バ、バッファローマン!」

 

「お前、病院のベッドで寝ていたはずじゃあ…」

 

突然の戦友の来訪に驚きを隠せないブロッケン。

 

無理もない。突然知らない誰かに吹っ飛ばされ、気絶した矢先に病院で昏睡しているはずの戦友が目の前にいるのだから。

 

「へっ、じゃあここにいる俺は誰なんだよ」

 

「幽霊とでもいうのか?」

 

「そっ、そうだな…」

 

納得したようなそうでもないような曖昧な様子で返答するブロッケン。

 

「そ、そうだっ!ラーメンマンは…?」

 

それからすぐ、思い直したようにバッファローマンにラーメンマンの安否に関して問う。

 

「安心しろ。ラーメンマンはやられてない」

 

「お前の師匠は無事だぜ」

 

「そ、そうか…」

 

「す…すまねぇバッファローマン」

 

「助かっ…」

 

静かに、そして少しばかりの安堵した表情を浮かべながらブロッケンの前に佇むバッファローマンにブロッケンが立ち上がろうとして言いかけた、その時…

 

「ばかやろーっ!!」

 

突然、バッファローマンはブロッケンの頬を思いっきり殴った。

 

「ぐあっ…!」

 

殴られた衝撃でその場に倒れこんだブロッケン。

 

果たして、バッファローマンが起こしたこの行動の意味とは…?

 

                -続く-

 

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