最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第15話です。試合前から続いていた正義超人同士の争い。その諍いに業を煮やし、来訪したバッファローマンは、ついにこの問題に対してメスを入れた。さて、泥試合が続くこの試合、ようやく正義超人側に勝利の兆しが見えてきたか?


第十五話「相対する瞳」

スタジアム 場内

 

「ばかやろーっ!!」

 

突然、バッファローマンはブロッケンを思いっきり殴った。

 

「ぐあっ!」

 

殴られた衝撃で吹っ飛んだブロッケン。バッファローマンの「制裁」に対して体が耐え切れなかったのか、スタジアムの壁に思いっきり体がぶち当たった。

 

(ダンッ!)

 

「いてて…」

 

背中をさするブロッケン。それから彼はバッファローマンをにらみつけ

 

「な、なにをするんだバッファローマン!お前も…」

 

しかし、それを遮るようにバッファローマンは反論する。

 

「うるせぇ!さっきから聞いてりゃあネチネチと…」

 

バッファローマンは彼の胸ぐらをつかんだ。

 

感情的になっているのか、彼の軍服を掴むバッファローマンの手には強い力のあまり、軍服が完全に歪んでしまっていた。

 

「ブロッケンマンを捜索するために役割分担した時にその分担が気に入らなかったから、その場飛び出して…」

 

「そんで、仲間とケンカしたからそれに強情張って大事な“師匠”を見捨ようとしただと?」

 

「ブロッケン!お前一体何のためにソルジャーの右腕になったんだっ!!」

 

「強情張って、仲間を見捨てて超人血盟軍が務まるかよッ!!」

 

「バ…バッファローマン…」

 

彼の鬼気迫る姿を見て身震いするブロッケン。

 

その震えはいったい何を意味するのだろうか。

 

「お前も見てきただろう!数ある戦いの中で培った友情をッ!」

 

「そしてそれが数多くの勝利をもたらしたことをッ!!」

 

(グッ…)

 

バッファローマンの胸ぐらをつかむ手にさらに力が入る。

 

下手をすればブロッケンの首を絞めてしまいそうな力の入れ方だった。

 

それほどまでに、彼が「友情」の2文字に情熱を傾けているという事なのかもしれない。

 

「そりゃあたまに(いさか)いもあるかもしれねぇ!だが、仲間ってのは」

 

「どんなことも共に乗り越えて行けるような…どんなことにも互いに力を合わせ、勇気をもって立ち向かう」

 

「そんな奴らのことを言うんじゃねぇのかーっ!!!!」

 

バッファローマンが出したその叫びはスタジアム全体に響いた。

 

それと同時に、彼は掴んでいた胸ぐらを離し、片膝をついている彼を見た。

 

その時の彼の表情、それは怒りと哀しみの両方が混じったような…

 

何というか、複雑な表情だった。

 

ラーメンマンに対する侮辱が許せず、それに固執したばかりに「仲間」という大切なものを失いかけたブロッケンのことを彼は許せなかったのであろう。

 

バッファローマンの性格が寡黙かつ熱血漢であるのも相まって彼の言った「仲間」という言葉には異常なまでの重みがあった。

 

それはブロッケン、そして周りでそれを聞いていた正義超人たちにも響いていた。

 

言葉には表せない、鬼気迫るなにか…

 

一瞬、ほんの少し時計の秒針が0から1に動くくらいの一瞬の間ではあったが、彼の放った言葉に対してしばし沈黙の時が流れた。

 

そんな彼の言葉から一瞬の沈黙があったのち、今まで頑なに仲間に対して素直な口を利かなかったブロッケンの口がゆっくりと開いた。

 

「…すまねぇ、バッファローマン」

 

肩を震わせながらかすれ声になりながら言葉を発するブロッケン。

 

「俺が…間違っていた…」

 

彼の脳内に今までの戦いがフラッシュバックする。

 

7人の悪魔超人編で正義超人の初白星を上げた時、ザ・ニンジャに激闘の末、勝利を収めた時、そして、ソルジャーとの出会い…

 

自分が勝利した時も、敗北を喫した時も常に彼のそばには「仲間」がいた。

 

困難を乗り越えるための、仲間がいた…

 

 

「仲間ってのは…」

 

「どんなことも共に乗り越えて行けるような…どんなことにも互いに力を合わせ、勇気をもって立ち向かう」

 

「そんな奴らのことを言うんじゃねぇのかーっ!!!!」

 

 

先ほどのバッファローマンの言葉が脳裏によみがえる。

 

(ドクン…)

 

バッファローマンの言葉が彼の心の中にある情熱を揺さぶった。

 

「孤独が持つ、強さは本当の…強さじゃない…」

 

自分の心の中にあるなにかに気づいたのか、ゆっくりと立つブロッケン。

 

その表情は先ほどまでの卑屈に歪んだ悪鬼のような顔ではなく、静かに、でも透き通った空のように晴れやかな表情だった。

 

そんな彼に寄り添うようにして肩に手を置き、薄い笑みを浮かべたラーメンマン。

 

「力を合わせて、困難を共に乗り越えることこそ友情…」

 

「ソルジャーはかつて、そう言っていた…」

 

「…見せてやろうじゃないか。私たちの友情を、お前の父に」

 

「そして…」

 

「かつてお前のリーダーだった、キンニクアタルに…」

 

そう言い、ラーメンマンは片膝をついているブロッケンに手を差し伸べた。

 

彼の体は傷だらけであったが…それを感じさせないほどにその手はまっすぐで

透き通っていた。

 

ラーメンマンの傷だらけの手を見るブロッケン。そして彼は力強く差し伸べられた手を握ると少し照れた様子で

 

「…へへっ、何言ってんだよ。ラーメンマン」

 

「俺の中ではソルジャーは…今でも」

 

「王位争奪戦が終わっても…俺達の立派なリーダーだぜ」

 

「そうだ…そうなんだ。…友情ってのは」

 

「馴れ合いじゃねぇ。共に戦って、お互いを高めあって強くなっていくのが本当の“友情”なんだ」

 

「たまに意見がぶつかるときもあるけど、それを共に乗り越えた存在こそが本当の“仲間”なんだ」

 

「こんな大事なことを、一時的にとはいえ忘れていたなんて…」

 

「俺もまだまだだよな。こんなんじゃあ…」

 

「こんなんじゃあ、勝てる試合も勝てねぇ」

 

そう言うとブロッケンは立ち上がり、キン肉マン達の居る方へと体を向け、頭を下げた。

 

「みんな…ごめん。俺、つい意固地になっちまった」

 

「…行ってくるよ」

 

「だ、大丈夫か…?ブロッケン」

 

勇みながらリングへ向かっていくブロッケンに不安そうな表情で歩み寄るテリー。

 

しかし、その辛気臭い言葉とは裏腹に、彼は明るい言葉で応えた。

 

「ああ、もう大丈夫だぜ!」

 

「俺はもう迷わねぇ!正義超人の一因としてこの試合、必ず勝って見せる!」

 

「ラーメンマンと共に“勝利”の二文字をつかみ取ってやるぜっ!!」

 

腕を高々に揚げ、見守る彼らに対して叫んだブロッケン。

 

それに応えるようにキン肉マンも彼を鼓舞した。

 

「いいぞブロッケン!勝ってお前の強さをアイツらに見せてやるんじゃーっ!」

 

そう言うとブロッケンはリングに向かっていった。

 

その姿に先ほどまでの彼の姿はなかった。

 

悠然とリングへ向かっていく彼のうしろ姿を見ながら、ほっとしたような表情を浮かべたテリー。

 

正義超人の諍いを解決することが出来た、自身が起こした行動に対する罪悪感からある程度解放されたことに安堵しているようにも見える。

 

「ありがとう、バッファローマン」

 

「へっ、水くせぇ。仲間じゃねえか」

 

「このくらい…」

 

その時、バッファローマンは少しだけ体を前に傾けた。

 

自身が負っている傷を手で抑えながら。

 

「ぐっ…」

 

「バッファローマン!大丈夫かっ!?」

 

驚いた様子でバッファローマンに駆け寄るテリー。

 

額に汗を垂らす彼の様子は明らかにおかしかった。

 

「へへ…ちょっと無理しすぎたかな」

 

「柄にもなく大声出しちまったから、ちょっと疲れちまった…」

 

「疲れた…?」

 

バッファローマンの言葉に違和感を感じたテリー。

 

「…はっ!」

 

なにかに感づいたのかテリーはバッファローマンの傷がある胸へと目を向けた。

 

(きっ…!傷口が…)

 

バッファローマンが抑えている包帯からは血がにじみ出ていた。

 

満身創痍の体のなか残虐超人側に突進していったこと、そして、その状態で叫んだことも相まって彼の体が悲鳴を上げ始めたのだ。

 

血のにじみはその悲鳴に対する合図だと言えるだろう。

 

(バッファローマン…お前ってやつは…っ!)

 

下を向き、拳を強く握って震えるテリー。

 

それからまるで鬼のような形相をすると、ブロッケンがいるリングに向かい、涙ながらに叫んだ。

 

「ブロッケン!絶対に勝て―ッ!!」

 

「勝ってバッファローマンの雪辱を晴らすんだーっ!!」

 

涙を浮かべ、ブロッケンに叫ぶテリーに対し、彼は「沈黙」という形で返し、ブロッケンマンが待つリングへと向かった。

 

「……」

 

「……」

 

リング上で相対する二人。

 

先ほどまでの混沌とした雰囲気とはまた違う、別の意味での緊張感があった。

 

例えるなら、対等感のある緊張感…さっきまでの一方的にやられている様子とは一線を画す雰囲気だ。

 

「よう。さっきまでの卑屈な態度はどうした?」

 

「…置いてきたよ。自分の枕元に」

 

「よく、見つかって怒られてただろ」

 

「…さぁ、覚えてねぇなあ」

 

息子のジョークともとれる会話をとぼけたように返すブロッケンマン。

 

息子と父親だからこそできる会話、という事なのだろうか。

 

「へへ…まぁともかく、ようやくお目覚めってわけかい」

 

「ああ、覚醒(めざ)めてやったぜ」

 

「アンタを、倒すためにな…!」

 

親父とはまた別の意味で、彼の瞳には光が宿っていた。

 

親父が闇なら息子は光、と言った具合にその雰囲気は対象的だった。

 

「けっ、調子のいい野郎だ」

 

「ちょっとばかし発破をかけられたくらいで調子に乗るんじゃねぇ…」

 

やれやれ、といった感じで呆れたように息子を煽るブロッケンマン。

 

「安心しな。その友情、今すぐに俺がぶち壊してやるぜ」

 

(ギラリ)

 

そう言うとブロッケンマンはまたあの「残虐な眼」をした。

 

まるで獲物を狩る虎のような、あの眼である。

 

「こっちこそ…俺たちの友情が本物だってことを見せてやるッ!!」

 

「行くぞっ!」

 

そう叫び、勢いよく父親に向かっていったブロッケン。

 

試合時間が30分以上という長時間にわたって行われているこの試合。

 

これで本当の意味で対等な戦いになった、という感じなのだろうか。

 

果たしてこの勝負、ブロッケンの「復帰」で正義超人側に勝機が訪れるのだろうか。

 

「残虐超人 対 正義超人」の試合はまだまだ続く…

 

                 -続く-

 

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