最後の残虐   作:ぴえろー

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『最後の残虐』第16話です。用事があったので少し投稿時間が遅れてしまいました… 正義超人と和解したブロッケンは父親であるブロッケンマンに対して宣戦布告をし、ここに対等な形での親子対決が実現した。…のだが、両者とも似たような戦い方をするためか試合がなかなか進まず、両陣営は手をこまねいていた。さて、正義超人たちはこの状況をどう打開するのだろうか?


第十六話「放て!因縁の技!」

スタジアム 場内

 

リング外から突如乱入してきたバッファローマンにより正義超人側に勝機が訪れてからしばらく後のこと…

 

リング内では現在ブロッケンマンとその息子のジュニアが戦っており、お互いの刃と刃がぶつかり合う白熱した戦いとなっていた。

 

(キィン!ガッ!)

 

リング上に響く刃物がこすれるような音と、人間の体同士がぶつかる際に鳴る鈍い音。

 

ブロッケンマンが斬りかかればブロッケンがそれを手刀で防ぎ、ブロッケンが斬りかかれば父親がそれをいなす、と言った感じ。

 

刃物と同等の切れ味を持つ手刀を防いだ際に血が流れないのは、さすがブロッケン一族と言ったところか。

 

やはり腕の鍛え方が普通の人と違うのだろうか…

 

「ぜえ…ぜえ…」

 

「へへへ…うっとおしい野郎だぜ」

 

「それはこっちのセリフだ…親父」

 

息を切らしながらお互いを揶揄し合う2人。

 

しかし、お互いに実力が拮抗しているのかなかなか勝負がつかない。

 

否、彼らは決定打が打てないのだ。

 

なぜなら、彼らはお互いの懐に入り込むことができないでいたからである。

 

真剣での決闘で行われる鍔迫り合いを見ると何となくわかるかもしれないが、基本的に刃を持った両者が懐に入り込もうとするとお互いが自分を防ぐような体勢となってしまう。

 

まともに向かっていけば問答無用で斬られてしまい、最悪そのまま負けてしまう事も十分に考えられる。

 

そうなってくると、ある程度懐近くまで言ったとしても、斬られる可能性を少しでも低くするために距離を取りつつ戦うといった泥試合のような試合展開となってしまうのだ。

 

そのため、ブロッケンマンとブロッケンとの親子対決が始まってからは特に目立った試合展開はなく、お互いがお互いをけん制し合うという状況が続いていた。

 

と、いうのが前回ブロッケンが父親に対して高らかに宣言したのちにあった展開である。

 

さて、親子同士が戦っていた一方で正義超人側にも新たな動きがあったようだ。

 

今まで「セコンド」と呼ばれる、簡潔に言えばリング内で戦っている味方にリング外からいろいろアドバイスする人を決めていなかったので、一体誰がセコンドをやる?という話になっていたのだ。

 

「確かに…あっち側は自分で判断して戦っとったから私たちもそれに乗じてセコンドなしで戦っとったな」

 

「俺達は基本的に見てるだけで、アドバイスなんかはほとんどやってなかったぜ…」

 

口々にキン肉マンとテリーマンが頬を人差し指で搔きながらお互いに顔を見合わせた。

 

「さて、誰が今回のセコンドをやる?」

 

「うーん、そう言われると適任者がおらんのう」

 

「ブロッケンやラーメンマンのようにブロッケンマンとウォーズマンの戦い方の両方を知っとると言うやつは私たちの中におらんからな」

 

「やはりここはセコンドなしで…」

 

キン肉マンが話を打ち切ろうとした次の瞬間、

 

「ま、まて…」

 

突如背後から聞こえてくるかすれ声。

 

その声は紛れもなくバッファローマンのものだ。

 

テリーマンに抱えられながらバッファローマンは少し息を切らせながらキン肉マン達に話しかける。

 

「俺が…俺がセコンドをやる」

 

「バッファローマン!お、お前…ブロッケンマンと戦った際に受けた傷がまだ完治しておらんのじゃろう? 」

 

「病院に戻ったほうが…」

 

キン肉マンの心配する声を断ち切る形で言葉を遮ったバッファローマン。

 

額には汗が流れており、とても大丈夫そうには見えないのだが…

 

「いいや、俺は何としてでもここに残る…」

 

「ブロッケンマンと戦ったことがあるのはこの中で俺だけなんだ…少しくらいならアドバイスができるかもしれねぇ」

 

「……」

 

バッファローマンは眼をつむった。

 

彼の脳裏にブロッケンマンとの死闘が思い起こされる。

 

 

「死ね牛野郎!」

 

異常なオーラを身にまとい、彼の胸に向かって放たれる刃。

 

「ぐわああああああっ!!」

 

それをもろに食らい、胸から赤い鮮血が噴出した。

 

そこで彼の回想は終わった。

 

 

バッファローマンは閉じていた瞼をゆっくりと開く。

 

(……)

 

バッファローマンは下に向けた顔を上げ、まっすぐな目でキン肉マン達の方を向いた。

 

「それに、友人2人がここで必死になって戦ってるんだ」

 

「いま病院に戻るのは酷ってもんだぜ…」

 

バッファローマンの鋭い眼光、必死の形相。ここを離れたくないという鋼の意志。

 

もう、誰も彼を止めることはできなかった。

 

「…わかった。全く…いつもお前さんの気迫には敵わんわい」

 

「好きなだけ、ここにいるといい」

 

意地でもここに残るといって聞かない彼に呆れつつもにっこりと笑ってバッファローマンに対してこの場所に留まることを許したキン肉マン。

 

テリーやロビンも同じ意見のようだった。キン肉マンがうなずくと同時に彼らもうなずいた。

 

「へへ…ありがとよ、キン肉マン」

 

そしてテリーマンの方へ向き直ると

 

「テリーマン、すまねぇがリングの傍まで行くのを手伝ってくんねぇか?」

 

「体が…思うように動かねぇんだ」

 

「OK、了解した」

 

テリーマンがそう言うとバッファローマンと肩を組み、一緒にリングの傍まで近寄っていった。

 

「くそ…全く展開が開けねぇ」

 

「どうすればいいんだ…」

 

息を切らしながら父親の方をにらみつけるブロッケン。

 

かなり焦っているのか言葉の方にも刺々しいものがある。

 

「……」

 

また、その様子を近くで見ていたラーメンマンのほうも手をこまねいているようで腕を組みながら静かに二人の様子を見守っているといった状況。

 

そんな状況の中、突然後ろから大きな影が現れた。

 

「バ…バッファローマン…?」

 

突然の相棒の出現に驚いたラーメンマン。

 

しかし、その様子に目もくれずバッファローマンはリングに向かって小声で

 

「ちっ…見てられねぇぜ」

 

そう吐き捨てた次の瞬間、テリーマンに支えられながらバッファローマンはリングに向かって声を荒げた。

 

「ブロッケン!いったん交代だッ!」

 

「ラーメンマンと代わるんだッ!」

 

「バ、バッファローマン…?」

 

突然のセコンド宣言に驚きを隠せないブロッケン。

 

「これからの試合は俺がセコンドをやる!お前たち2人のセコンドをな!」

 

「キン肉マン達からのお許しも出た!だから安心してこの俺を頼ってくれーっ!!」

 

「バッファローマン…」

 

バッファローマンの言葉に驚くブロッケン。

 

しかしすぐにその表情も安どの表情へと変わり、帽子を深くかぶった。

 

「…へっ、わかったよ」

 

「頼むぜ、バッファローマン」

 

ブロッケンマンはそう言うとリングを降り、バッファローマンに向けて手を向けた。

 

「まかせとけ」

 

それに反応するかのようにバッファローマンは自身の手を合わせる。

 

簡単に言うとそれは「ハイタッチ」であった。

 

しかもそれは、特に仲が良い友人に対してしか行わない「友情のハイタッチ」…

 

ブロッケンが彼をいかに信頼しているかがよくわかる行動だ。

 

その様子を遠くから見ていたキン肉マンとロビンは静かに一回、首を縦に振り、2人の解れることのない友情を噛みしめていた。

 

しかし、その一方でキン肉マンは何か腑に落ちないものを感じていたらしい。

 

キン肉マンが訝し気な表情で首を傾げた。

 

「しかし…おかしいのう」

 

「ラーメンマンが手負いとなっている今、なぜわざわざラーメンマンを出すんじゃ?」

 

「あまり傷を受けていないブロッケンの方がより長く戦えるはずなんじゃがなぁ…」

 

そんなキン肉マンの心配をよそに、ラーメンマンとブロッケンマンは再び対峙した。

 

「へへ…そんな体じゃお前の得意な空中技もろくに使えやしないだろ」

 

傷だらけのラーメンマンをみてニヤリと笑うブロッケンマン。

 

次の瞬間、ブロッケンマンはラーメンマンに向けて蹴りを一発、彼の腹にお見舞いした。

 

「ぐっ…」

 

蹴られた衝撃に耐えるラーメンマン。単純な蹴りだが、傷だらけの体であることも相まってダメージは大きい。

 

「へへ…やっぱりこの状態で戦うのは無謀じゃねぇのか」

 

「どうやらあっちにはセコンドがいるみてぇだが…とんだ見当違いだった見てぇだな」

 

片膝をついて受けた傷を押さえる彼に対して冷徹に言い放つブロッケンマン。

 

しかし、ラーメンマンの表情はいたって冷静だった。

 

「…それはどうかな?」

 

「なに?」

 

「ブロッケンマン…お前がこの試合の最初に言った言葉をそのまま返してやる」

 

「お前はバッファローマンをなめたことを、後悔することになるだろうぜ…」

 

「…フン」

 

「なめるなよ…」

 

次の瞬間、ブロッケンマンは近くにあったリングロープに乗り、反動を利用してジャンプした。

 

彼の体が地面から離れるかどうかといったその瞬間、突如リング外から荒々しい声が聞こえてきた。

 

「ラーマンマン!奴を空中に浮かせてはダメだ!」

 

「何としてでも地上戦に持ち込ませるんだーっ!」

 

突然バッファローマンがラーメンマンに向かって叫んだ。

 

(バッファローマン…!)

 

「よし、わかった!」

 

バッファローマンの言葉を受けてブロッケンマンの方へと向かうラーメンマン。そして…

 

(ガシッ!!)

 

ラーメンマンは反射的に飛翔しようとするブロッケンマンの体をキャッチ、そのまま勢いよく地面へと叩きつけた。

 

「たぁーっ!!」

 

(ドンッ!)

 

「くっ…」

 

勢いよく地面に叩きつけられるブロッケンマン。

 

叩きつけられた衝撃で痛みが全身に走ったのか、彼は叩きつけられた瞬間に苦悶の表情を浮かべている。

 

「やった、ジャンプしようとするブロッケンマンを何とか防いだぞ!」

 

「そうか…!今のラーメンマンは足を怪我していて、ブロッケンマンの得意分野である空中戦に持ち込ませることが難しい」

 

「そこを逆に利用したのか…盲点だった」

 

一見すると泥試合を解消させようとブロッケンをいったん交代させたように見える先ほどのバッファローマンの行動。

 

しかし本当は、バッファローマンがラーメンマンをリングに出したのはブロッケンマンがよくこの試合でも頻繁に持ち込ませていた「空中戦」に入ることを阻止するためだったのだ。

 

ラーメンマンは現在、先ほどブロッケンマンによって放たれた手刀によって足を怪我しており、空中戦に持ち込ませることはほぼ不可能。

 

しかし、それは逆に地上戦に持ち込ませることが出来るという事で、バッファローマンはそこに気づき、先ほどのような指示を出したということだ。

 

また地上戦であればラーメンマンの決定打であり、かつブロッケンマンとって最悪のトラウマ技を出すことが出来る…

 

バッファローマンは先ほどまでの試合展開でそこまで考えていたという事なのだろうか。

 

「そうか…長い間この男が戦っている姿を見ていなかったから気づかなかったが」

 

「この男、よく前の試合でも空中戦に持ち込ませていたんだったな」

 

ブロッケンマンが以前、戦っていた時のことを思い出すラーメンマン。

 

少しずつだが、彼自身もブロッケンマンと戦っていた時の記憶が戻ってきているのが分かった。

 

すると、ラーメンマンは地面に倒れる仇敵を見て、とあることに気づく。

 

「…ん?そう言えば」

 

「そうか…このパターンはっ!」

 

次の瞬間、ラーメンマンは倒れているブロッケンマンを無理やり立たせ、

 

「-残虐殺法-“死の舞”―ッ!!」

 

ラーメンマン秘伝のチョップの乱れ撃ち。その一発一発がブロッケンマンの体にぶち当たる。

 

(ぐあっ…がっ…)

 

乱れ撃ちを一方的に体で受けるブロッケンマン。

 

その時、チョップの猛攻に耐えられずブロッケンマンの体が大きくぐらついた。

 

「そこだっ!」

 

ブロッケンマンが倒れるか倒れないかのその瞬間、ラーメンマンはこれがチャンスと見たのか、彼に向って走り始めた。

 

(ガシィッ!)

 

倒れかかる彼の体をキャッチしたラーメンマン。

 

「…はっ!」

 

「…ブロッケンマン、久しぶりだな」

 

「ついに、お前に対してこの技を掛ける時が来た」

 

そう言うとラーメンマンはブロッケンマンをうつ伏せにし、彼の上半身を勢いよく仰け反らせた。

 

(ダアアアンッ!!)

 

ラーメンマンの代名詞「キャメルクラッチ」の態勢だ。

 

「き…決まったーっ!」

 

「キャメルクラッチだッ!!ブロッケンマンを葬ったラーメンマンの必殺技ッ!」

 

伝説の必殺技の登場に嬉々として腕を上げて反応するキン肉マンとテリー。

 

(ギリギリギリ…)

 

ラーメンマンによって締め上げられる彼の上半身。

 

締め付けられる音で、彼の体が悲鳴を上げているのがよくわかる。

 

「ぐ、ぐおおおお…」

 

「ブロッケンマンッ!!」

 

今のこの状況に耐えられず、悲痛な叫び声を上げたウォーズマン。

 

しかし、その声もラーメンマンの言葉によってかき消された。

 

「ブロッケンマン…この技の由来は知っているな?」

 

この技の由来、それは“キャメルクラッチ”の由来についてだ。

 

キャメルクラッチとは本来アラブの国で使われていた技であり、逃げ出したラクダを懲らしめるために使われていた荒業である。

 

相手をうつ伏せの状態にさせ、上半身を無理やり仰け反らせるというその分かりやすいビジュアルから、主に相手の背骨を折る技として知られている。

 

以前も言ったが、原作ではラーメンマンがブロッケンマンを倒した必殺技として、そしてラーメンマンの名を世界に轟かせた彼を代表する必殺技なのだ。

 

「文句なく、背骨を折らせてもらおう」

 

しかし、その下にいた悪鬼の目は死んでいなかった。

 

「…ふ」

 

「ふざけんじゃねぇ…!」

 

悔恨と怒りが混じったかすれ声でラーメンマンの言葉を返すブロッケンマン。

 

しかし、彼の言葉の中に諦めているような雰囲気はなかった。

なにか別の策がある、そのような返し方だった。

 

「お、俺は…」

 

 

「俺はっ…この技をぜってぇに破るって決めたんだーっ!!」

 

 

(ブウン…)

 

「はっ…!」

 

「い、いない…?」

 

次の瞬間、謎の音と共にブロッケンマンが消えた。

 

つい先ほどまで感じていたブロッケンマンの感触、それがなぜか急に消え去り、自身は虚空を掴んでいる。

 

「ど、どういうこと…」

 

しかし、ラーメンマンが思慮に至る暇もなく、外からロビンの悲痛な声が彼の耳を貫いた。

 

「ラーメンマン!上だーッ!!」

 

ロビンが言った通りの方向を向くと…

 

「はっ!!」

 

そこには手刀を前に交差させてギラついた表情をしながら飛翔しているブロッケンマンの姿があった。

 

「あばよ…」

 

 

「ベルリンの…」

 

「赤い雨-ッ!!」

 

 

(ドゴオーッ!!)

 

ブロッケンマンが両手を振り上げ、勢いよく下降した次の瞬間、轟音と共に勢いよく煙を上げたリング。

 

包み込まれる2人、果たして一体何が起こったのか…?

 

                -続く-

 

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