最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第21話です。突如バッファローマンが倒れ、応急処置を行うために医務室へと向かったキン肉マン。その際、スタジアムの外で防衛をしていたカナディアンマンとスペシャルマンにバッファローマンが倒れた遠因について聞かされる。果たしてバッファローマンは助かるのだろうか?


第二十一話「静かなる微笑み」

スタジアム 場内

 

ブロッケンとラーメンマンを除いた正義超人たちは、突如大量出血したバッファローマンの看病をするため、彼らの周りへと集まってきていた。

 

「……」

 

全員が緊張した面持ちでバッファローマンの方を見る。

 

「……」

 

しばらくするとロビンがバッファローマンの体に新しい包帯を巻きつけ、一息つくと彼らの方に向けて立ち上がった。

 

「…どうだ?大丈夫そうか?」

 

顔を強張らせながらロビンに尋ねたテリー。

ロビンはしばらく黙ったのち、落ち着いた物腰で

 

「…大丈夫だ、応急措置に傷口を消毒して、包帯を巻いて止血したからとりあえずなんとかなりそうだぞ」

 

その言葉を聞いて正義超人たちは緊張していた顔が緩み、全員の中でほっとしたような雰囲気へと変わった。

 

「よかった…」

 

胸を撫で下ろすテリーマン。

これは筆者の主観なのだが、もしかしたら彼がずっとバッファローマンを支えていたこともあってか彼が一番バッファローマンのことを心配していたのではないかと考えられる。

いや、全員がバッファローマンのことを心配していたのだから本当は心配に優劣を付けてはいけないのだけれど…

ただ、何となくそう感じたのである。

 

「…だが、傷口を包帯で巻いているだけだから正直心もとなさはある」

「油断はできないぞ」

 

正義超人たちのほっとしたような雰囲気とは裏腹に表情を変えず、顎に手を当てて不安そうに話すロビンマスク。

確かに、水を差すようではあるが今の状況はあくまで彼のけがに対して応急処置を行っただけで、またいつ出血するかわからないという状況は変わらないのである。

 

「そうだな…」

 

テリーは先ほどのようなほっとした表情をまた少し強張らせ、予測される事態に対して警戒を強めた。

 

「バッファローマン…」

 

その一方で下を向き、神妙な面持ちでバッファローマンの方を見ていたキン肉マン。

 

「ん?どうしたキン肉マン」

「バッファローマンがどうかしたのか?」

 

その様子に気づいたのか、キン肉マンに話しかけるロビン。

するとキン肉マンは顔を上げ、周りにも聞こえるような声で自分がいま考えていることを話し始めた。

 

「いや、さっきカナディアンマンから聞いた話なんじゃが」

「どうやらスタジアムの外で観客が暴れていたそうなんじゃ」

 

「な、なんだって!?」

 

突然の報告にどよめく正義超人達。

無理もない、今まで彼らはスタジアムの中の状況に手いっぱいだったのだ。外で正義超人たちに待機してもらっていることは知ってはいたものの、具体的に外で何があったのかまで詳細に把握することは難しい。

 

「そ、それで今の状況は!」

 

焦燥を隠せず、上ずった声でキン肉マンを問いただすロビン。

その様子とは対称的に、キン肉マンは鼻をほじりながら彼なりの冷静沈着さでロビンの質問に答えた。

 

「いや、もう収まったんじゃがな…私が行ったときはもう暴れてた観客達もおらんかったし、超人もカナディアンマンとスペシャルマンしか残っとらんかった」

「他の超人は事態の収拾にケリがついたから、怪我をしている超人たちを病院へ連れていくために帰ったみたいなんじゃ」

 

「そうか…よかった」

 

事態の収拾に安心した正義超人たち。

しかし、キン肉マンはここからが本番という感じでさらに説明を続けていく。

 

「いや、本題はここからだぞ」

「どうやらその騒動…バッファローマンが止めたそうなんじゃ」

 

「な、なんだって!?」

 

「あとから医務室でカナディアンマン達に聞いた話じゃと、どうやらバッファローマンは包帯を外して今回の敵が危険だという事を知らせて観客に帰ってもらったそうなんじゃ」

「恐らく、その時にブロッケンマンと戦った時にできた傷が開いてしまったんじゃろう」

「だがその出血量がはじめは少量だったから、バッファローマンは気にも留めずに私たちのいるスタジアムの中へと進んでいった」

「それからラーメンマンを殺そうとしていたブロッケンマンに向かってバッファローマンは突撃、その時に開きかけていた傷口が開いて、出血が本格的に始まったということなんじゃろう」

「…で、ついさっきのような出血多量に陥ったということじゃ」

 

「そうか…どうりで包帯を外した際に傷口が開いたような跡があったわけだ」

「なぜいきなり出血が起こったのか疑問だったんだが…そんなことがあったとはな」

 

納得した表情で頷くロビン。

その言葉と時雄同じくして、テリーは倒れているバッファローマンの方へと向かい彼を抱き上げる。

 

「バッファローマンは観客も、私たちのことも身を挺して守ってくれたんだな…」

 

「じゃが、こうなってしまっては…」

 

「…よしテリーマン、バッファローマンを医務室に連れて行ってくれないか?」

「バッファローマンがもし気が付いたら、状況を説明してやってくれ」

 

キン肉マンの言葉を受けて、ロビンはテリーにバッファローマンを医務室へ連れていくように提案した。

 

「…わかった」

 

その意見にはテリーも賛成だったようで、仲間の超人もいるという事から彼はテリーの肩を借りて医務室へと向かった。

その時のバッファローマンは出血多量により気絶してはいたものの、どこか安心したような表情だった。

 

「……」

 

さて、場所は変わってリングの上。

バッファローマンがテリーマンによって医務室へと連れていかれるその後ろ姿を見ていたブロッケンマンたち。

どうやらバッファローマンの手当てを受けて試合のほうも再び休止していたようだ。

正義超人たちが行っていた一連の流れを、ただ黙々と眺めている2人。

 

「ブロッケンマン…」

 

その時、ブロッケンマンの向かい側からかすれたような声が聞こえてきた。

 

「ん?」

 

「ブ…ブロッケンマン…おまえ」

「あの光景を見て…何か…気づかないのか?」

 

声の主はラーメンマンだった。

彼はリングロープにもたれかかり、ブロッケンマンの方をじっと見つめている。

どうやら傷だらけの体なので体も動かせないばかりか声もうまく発せていないようである。

先ほどキン肉マンが持ってきた医薬品によってある程度止血の措置はしているものの、包帯もまかず傷を晒しているので、いつまた出血が起きるかわからない。

彼もまた、予断を許さない状況だった。

 

「あぁ?」

 

ラーメンマンの言葉を受けて若干いらだったような応答をするブロッケンマン。

果たしてかすれたような声にいら立っているのか、または別の理由でピリピリしているのか…

 

「正義超人たちが倒れているあの男に対してやっていることに関して、何か気づくことはないのか…と聞いているんだ…」

「バッファローマンは俺たちの戦いにジャマが入らないよう身を挺して守ってくれたのだ」

「それに対して何か…思うところはないのか?」

 

しかし、ラーメンマンの必死の質疑に彼は鼻で笑い、彼の質問に答える。

 

「ふん…随分とまた的外れなことを聞いてくるな」

「そう言えば、お前らは“友情”がどうのこうのとか言ってたっけな」

「残虐超人に“馴れ合い”が必要だってのか?」

 

「……」

 

「それに、観客の流入があったってことは恐らく外で守っていたであろうてめぇらの仲間がスタジアムを守ることに失敗したってことだろう?」

「アイツはその失敗の尻ぬぐいのために必要もねえのにわざわざ火中の栗を拾いに行ったってことじゃねえのか?」

「へっ、無様なもんだな。手負いのくせして他人の失態に首を突っ込むからそんな目に合うんだ」

「情けねぇ、自業自得ってやつだぜ」

 

「何だと…!」

 

バッファローマンを運ぶ際中、ブロッケンマンの言葉に反応したのかテリーはピタリと足を止めた。

ブロッケンマンの言葉に怒りが湧いたのか、これまでにない鬼のような形相でブロッケンマンの方を向いたテリー。

友情に厚い男なだけにその表情は息をのむものだった。

 

「ヘイ、ブロッケンマン!さっきから聞いてれば言ってくれるじゃないか!」

「今までの戦いのことも知らずに…私たちの友情にケチをつけるつもりなのかっ!!」

 

「うるせぇ!さっきから友情、友情しつけぇんだよ!」

「こっちはこっちの意見を正直に言ったまでだぜ!俺達にとって友情なんざリングの上では足かせにしかならねぇ!」

「他人のことには基本的に首を突っ込まない“残虐超人”(おれたち)には到底理解出来ねえとさっきから言ってんだよ!」

 

ブロッケンマンは半ば感情的になり、さらに言葉を続ける。

 

「それに、一体何があったのかは知らねぇが、てめぇらはさっきまで仲間割れをしていたじゃねぇか!」

「それが友情の脆さってんじゃねぇのか!普段は慣れ合っていても、いざトラブルが起きれば簡単に結束が崩れ去る!」

「そんなんに命かけてるなんざ、バカバカしくって見ちゃいられねぇぜ!」

 

「なんじゃと…!」

 

ブロッケンマンの言葉に我慢ならなかったのか、今度はキン肉マンがブロッケンマンに怒りの矛を向け始めた。

 

「おいブロッケンマン!今すぐそっちに向かうから待ってろ!」

「手負いのラーメンマンに代わって私が…」

 

「おー構わねぇぜ!“運だけ”で超人オリンピックの決勝トーナメントに上がってきたラッキー超人の実力を見せてもらおうじゃねえか!」

 

「なんじゃとーっ!!」

 

ブロッケンマンの挑発にキレたキン肉マン。もう許さんとばかりに彼は顔を紅潮させながら怒りの形相でリングへと向かっていく。

しかし、その行動をロビンは羽交い絞めにして彼の怒りの行進を止めた。

 

「落ち着けキン肉マン!今はブロッケンとラーメンマンの試合だ!」

「ここでお前が出たら、一体何の試合かわからなくなるだろう!」

 

それと同時にウォーズマンも彼の方へと向き直り、かなり焦った様子でブロッケンマンを諫めていた。

 

「ブ、ブロッケンマン…まずはいったん落ち着こう!」

「これじゃ戦いに支障が…」

 

「ぐぬぬ…」

 

「ちっ…」

 

お互いに顔を見合わせながらとりあえずは戦いの矛を収めた2人。

リング外からの乱闘という最悪の事態は何とか回避できたのである。

 

「けっ…つまらんことを聞いてくるぜ」

 

腰に手を当て、うっとうしそうな表情で正義超人の方を後ろ目に見るブロッケンマン

 

「ブ…ブロッケンマン…」

 

その様子を心配そうに見るウォーズマン。

 

「……」

 

減らず口を叩いたのち、しばらくポケットに手を入れて考え込んでいたブロッケンマン。

彼の脳裏に今まで戦ってきた超人たちの言葉がよみがえってくる。

 

(仲間ってのは、ともに力を合わせて困難を乗り越えていく存在じゃねえのかーっ!!)

 

(バッファローマンの雪辱は…俺が果たすッ!!)

 

「……」

 

「ブ、ブロッケンマン?」

 

「…へっ、なんでもねえよ」

「もう十分休んだだろ、交代しようぜ」

 

「あ、ああ…」

 

(ちっ…)

余計(いや)な思い出だ。敗者の戯言なんぞ聞く価値はねえ)

(少なくとも今はそんなことを考えている暇がありゃ、ウォーズマンに少しでも戦ってもらって、自分の感情を抑えなきゃな…)

 

ブロッケンマンは少し疲れた様子でリングロープにまたがり、リングから出ようとした。

その時である。

 

「おい親父」

 

「ん?」

 

 

「逃げんのかよ」

 

 

「…!?」

 

ブロッケンマンの言葉を聞いて、少し驚いたような表情を見せたブロッケンマン。

しかしすぐに思い直り、彼に向けてやれやれといったような表情で返す。

 

「おいおい、勘弁してくれよ…この試合はタッグバトルなんだぜ」

「同じチームと交代することのどこが逃げてるって言うんだよ」

 

「へへ…俺はタッグバトルのルールのことを言ってるんじゃねえよ」

「親父、アンタの性根の問題さ」

 

「…んだと?」

 

「よく考えてみてくれよ、状況を考えればアンタが逃げてるって解釈されても、半ばおかしくない状況なんだぜ」

「アンタらが最初に用意してきた試合のセットやルールがラーメンマンやバッファローマンによって破られ、果ては禁断の技だった“A.A.戦法”も俺の手によって破られた…」

「はたから見りゃ、追い込まれてるのはアンタらの方じゃねえのか?親父、じゃなきゃさっきからアンタがそこまで感情的になっていることへの説明がつかねぇ」

 

畳みかけるようにブロッケンはさらに説明を続ける。

 

「挙句の果てには基本的に関係のない外野にまで喧嘩を吹っかけやがったんだ」

「傍から見りゃ、今の親父の状況は喧嘩に負けた悔し紛れに捨て台詞を吐いて去っていくようにしか見えないぜ…」

 

「……」

 

「ふん、だんまりかよ。なんてことはねえ」

「へっ、まったく…“純粋な残虐”ってのは、どうやら大したものでもなかったみてぇだな」

 

腕を組み、半ば見下した、舐めきったような言葉をブロッケンマンに浴びせたブロッケン。

当然、感情的になっているブロッケンマンは彼に対し激昂して向かってくるだろうと思われた。

しかし、怒らせたのはブロッケンマンではなくもう一人の方だったようだ。

 

「ちょっと待て」

 

ひとしきりブロッケンの会話を聞いたのち、2人の会話に割って入ったウォーズマン。

なにやら言動が曇っている。

 

「それは聞き捨てならないな…俺達が追い込まれてるだって?」

 

(カッ!!)

 

「あ…あれは!」

 

ウォーズマンの顔を見て驚愕する正義超人たち。

 

「ウ…ウォーズマン、それは…!」

 

「ウォーズマンスマイルッ!!」

 

いつもは冷静沈着で表情が見えにくいウォーズマンが自分と同等かそれ以上の相手に出会った時だけに見せる、あの表情である。

初出はキン肉マンとウォーズマンが超人オリンピックにて戦った時だが、それ以降出ているのは王位争奪戦の時くらいなので意外と珍しい行動なのである。

 

「おい…その表情はあれだけアイツらに見せるなと試合前に言ったはずだぜ」

 

冷静沈着にウォーズマンの行動を止めるブロッケンマン。

しかし、彼は冷静に対処しようとはしているものの、言動から焦っているのが見て取れた。

しかし、ブロッケンマンの言葉を聞いてもなお、彼の意志は曲がらなかった。

 

「いいやブロッケンマン、俺はもう我慢ならねぇ」

「アイツはお前を散々バカにした挙句、俺達の残虐精神(マダースピリッツ)をもコケにしやがったんだ」

「許せねえ…今すぐアイツの減らず口をふさいでやりたい。氷の精神を持つ純粋な“残虐”が底知れない力を持ってるってことを、アイツらに知らしめてやりたいんだ」

 

「…そうか」

 

ウォーズマンの気迫に押されたのか、ブロッケンマンも納得したような表情で頷き

 

「へへ、そこまで考えてるんならお前を止める理由はねぇ」

「いくらでも、暴れてこいよ…」

 

リングへ向かう彼を見送ったのであった。

 

「……」

リング上で相対する2人。

もう何度も見た光景。しかし、形が違えど残虐超人2人が相対するごとに、常になにがしかの形でブロッケンマンをはじめとした残虐超人たちの詳細が明らかとなった。

今回も、何となくではあるがそんな気がするのである。

 

「おいおい、30分以上戦えるようになったからって調子に乗ってんのか?」

「燃料の無駄だぜ…」

 

ニヤリと笑いながら揶揄するブロッケン。

何となくさっきと立場が逆転しているように見えるのは気のせいだろうか?

 

「フフ…ご忠告感謝するぜ」

 

しかし、それに対して全く動揺した様子もなく平然とした様子で返すウォーズマン。

もともと表情自体が読み取りにくい超人でもあるのでそれも相まっているのだろう。

 

「だが…申し訳ないがその心配は全くいらない」

「なぜなら…」

「お前はもう、そんな心配をする余裕すらなくなるからだ」

 

(なんだと…?)

 

ウォーズマンの言葉を受けて違和感を覚えた正義超人たち。

なにかがある、そんな予感という名の残り香を漂わせて…

 

「俺達にだって守るべきものがある!」 

「行くぞッ!!」

 

ブロッケンの言葉によって静かなる怒りを燃やすウォーズマン。

果たして“真の姿”を見せた彼の実力とは…?

 

    

 

                   -続く-

 

 

 

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