最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐24話です。先週小説が出せていなかったこともあり、今回は普段と比べてかなり長いです。これで一応、回想編は終わりなので来週からは通常通り物語が進みます。では、本編をどうぞ。

~あらすじ~
 超人墓場で辛く、苦しい作業を続けていたウォーズマンは、とある出来事から共に作業をしていたブロッケンマンと意気投合するようになる。2人はお互いに信頼関係を築いていったが、ついにウォーズマンは前々から計画していた脱走計画当日を迎えてしまう。彼を一人にすることを心残りに思いつつも、最終的にウォーズマンは彼を置いていく決断をした。しかし、脱走していたさなか、道中に突如現れた超人閻魔により、脱走の許可と、親友であるブロッケンマンの解放が提案されたが…?
果たして、この提案をした超人閻魔の意図とは?そして、ウォーズマンは自身と、親友の解放を実現することができるのだろうか?


第二十四話「出された条件、冷徹な決断」

超人墓場 脱走路

 

「そしてもう一つは…」

「お前の友人である、ブロッケンマンの解放だ」

 

「な…」

「なんだとっ!?」

「そ、それは…」

 

(ニヤ…)

 

驚くウォーズマンにほくそ笑む閻魔。しかし、ウォーズマンはすぐに思い直すと怪訝な表情で彼の方を見た。

 

「いや、ちょっと待て…おかしいな」

「なぜ俺とブロッケンマンが友人だということをアンタが知ってるんだ?」

「超人墓場には俺を含め、死んだ超人が何万といるはずだが」

 

閻魔は一瞬無表情になったのち、ニヤリと笑って彼の質問に答えた。

 

「フッ…簡単なことよ。超人墓場では“友情”という概念が表出することは少ない」

「つまり、ともに意識する形で力を合わせたり、友人と行動を共にする奴らが少ないということ…」

「そんな中でお互いが親しい友人として行動を共にする奴がいれば、それなりに目立つというものだろう」

「まるで多くの黒いアリの中に一匹だけ白い奴が紛れ込んでいる、といったようにな…」

 

「……」

 

閻魔の回答に表情を変えないウォーズマン。その表情は疑っている部分こそあるものの、どこか納得しているような表情だった。

 

「まあ、その話はあまり関係なかろう。問題なのは私が出した条件のはずだからな」

 

そういうと閻魔は指を鳴らし、ウォーズマンの目の前にモニターを取り出した。

 

「?」

 

「これを見るがよい」

 

ザ…ザザーッ!

 

モニターにはドクターボンベが映し出されている。おそらくウォーズマンが脱出した後の映像だろう。

 

(ああっ…!)

(し…しまった…!命の石で肉体を蘇らせることにこだわりすぎて記憶の方を蘇らせるのを忘れてしまっていた…!)

(まずい…このままではウォーズマンが今まで教えられていたプロレスの技術を忘れた状態で試合に…)

 

「えっ!じゃあ俺は…」

 

突然の出来事に焦燥を隠せないウォーズマン。

しかし、それを予想していたのか超人閻魔は至って冷静に彼の言葉を遮った。

 

「案ずるな」

「気にする必要はない…あいつの言ったことは正しけれど、間違っているのだ」

 

「ど、どういうことだ?」

 

動揺するウォーズマンに彼は頷き、落ち着いた様子で説明する。

 

「あやつはお前の記憶を戻さなかったことに焦っているようだが…記憶がはがれる心配はない」

「間違っているのだ。超人の記憶というのはそう簡単にはがれるものではない」

「確かに、超人墓場の中にある“命の石”は生き返らせるために体と頭脳で別のものを作る必要がある」

「だが、仮にどちらかの部分を忘れて生き返らせた場合でも体に起きる異常は軽微なもの…日常生活にまで支障をきたすものではない」

 

彼はさらに説明を続ける。

「それに、超人の深い記憶というものは医療ミスごときでそう簡単になくなるものではないのだ。現にお前は今、王位争奪戦でキン肉マン達に加担するため、城に向かっているのではないのか」

「そして、それを邪魔する私を阻止するために、自分が今まで覚えてきた技で向かってきたのではないのか?」

 

「そっ…そう言えば」

 

「だろう。それが何よりの証拠」

「命の石なしで友情の精神とプロレスに関する技能の記憶が残っている、ということのな…」

「私は、そのお前が持つ友情の記憶が本物かどうかというのを見定めたいと思っているのだ」

「もしお前が持つ友情の記憶が本物であるならば、私が出した条件を突破することができるだろう」

 

「そ、それで…その条件とは」

 

「うむ、では伝えよう」

「お前の記憶をなくした状態で、キン肉マン率いる正義超人側と対峙しているチームを見事破り、彼らを勝利に導いて見せよ」

「そうすればお前の罪を許し、友人であるブロッケンマンを解放してやろう」

 

「そ、それが俺とブロッケンマンが解放されることの条件…」

 

「ああ。お前の場合は“前借り”という形になるがな」

 

彼の言葉を受け、ウォーズマンは少しの間沈黙していた。

そして彼に向かって語気を強め、叫んだ。

 

「本当なんだろうな…っ!」

 

「……」

 

彼の言葉を受けて沈黙の反応を示す超人閻魔。

すると彼はウォーズマンの頭に手をかざした。

 

「えっ?」

 

(ビビビーッ!)

 

「ぐあーっ!!!」

 

(ガクッ…!)

 

「約束は守る…私は超人閻魔」

「嘘は許されておらぬ…すなわち、一度言葉にしたことは必ず実行せねばならぬという事」

「しかしウォーズマン…もし私の言うことが達成されなければ」

「その時は必ずお前を連れ戻し、ブロッケンマンの解放もなかったことにさせてもらうからな」

 

「……」

 

閻魔の電流に耐え切れなかったのか気絶しているウォーズマン。

それを見た超人閻魔は右手で顎をさすりながら

 

「…ふむ、少し電流が強すぎたかな?」

「ならば、私の力で送ってやろう!」

 

(グウンッ!!)

 

そういうと超人閻魔は姿を消し、それと同時にウォーズマンの体が勢いよく上昇した。

 

(その後、俺は記憶をなくした状態で技巧チームの“ザ・マンリキ”を倒し、正義超人チームの勝利に貢献した)

(ただ、知性チームとの戦いに備えて竹林で特訓をしている最中にマンモスマンに襲われ、俺は離脱を余儀なくされてしまった)

(そうこうしている間に王位争奪戦も終わり、病院から退院すると俺はすぐに復活しているであろうブロッケンマン探しを始めた)

(ただ、いくら探せどブロッケンマンは見つからず、正義超人たちが観光旅行をしている間も俺はブロッケンマンを探し続けた)

(正直、戦績を考えてもちゃんと貢献できているかどうか自分なりにかなり微妙だったので、もしかしたら生き返っていないかもしれない、と少し不安になった)

(ちなみに、俺の師匠であるロビンには修行だと偽り、旅行には参加していない)

(そんなこんなで王位争奪戦が終わってから早くも1週間が経とうとしていた…)

 

とあるプロレスジム

 

「はい…はい…そうですか」

「すみません、ありがとうございました」

 

(ガチャッ!)

 

お礼を言ってドアを閉めるウォーズマン。友人が見つからなかったのかその表情は暗い。

 

「くそ…ここにもいない」

「一体ブロッケンマンはどこへ行ったんだ?」

 

閑散としたジムの前でウォーズマンは頭を抱えた。

行方不明の友人を昼夜問わず探し続けているのだから無理もない。しかもただ単に超人閻魔から脱走路で条件を聞いただけだったので、彼自身が生き返っているかどうかすらわからないというおまけ付きなのだからなおさらだった。

 

「本国である西ドイツの方に電話をかけてもぜんぜん通じないし」

「あいつが墓場で行きたがってた場所にも手あたり次第行ってみたんだが…そこにもいなかったし」

「どうすりゃいいんだよ…まったく」

 

しかし、この後彼はブロッケンマンにあっさりと再会することができた。

彼は第20回超人オリンピックで自分が戦っていたスタジアムにいたのである。

その場所はウォーズマンが探索を行う際、いの一番に行った場所だったのだが、どうやら彼が訪ねた少し後にブロッケンマンがこの場所を訪れていたようだ。

すれ違い、ということである。

 

スタジアム 場内

 

「よう…久しぶりだな」

 

初老のしわがれた声に、色あせた軍服…

間違いなくブロッケンマンであった。

 

「ブ…ブロッケンマン!いったいどうしてここに!」

 

歓喜と驚きが混じった声でウォーズマンはブロッケンマンに尋ねた。

その質問にブロッケンマンは顔の前で手を組みながら彼の質問に答えた。

ちなみに、この時の彼は“まだ”若返っていない。

 

「…ああ、そういえば俺が参加したオリンピックのことは、あんまり詳しく言ってなかったんだったな」

「ここが、俺とラーメンマンが戦った場所だぜ」

「変わらねえな…相変わらず」

 

ブロッケンマンは懐かしそうな様子で上を見上げ、それからすぐに視点をウォーズマンの方へと移した。

 

「誰も来ないし、しばらくの間ここを活動拠点にしてたんだ」

「どうだい?決勝のスタジアムとかと比べると、なかなかにこぢんまりしてるだろ?」

 

「…何というか、異質な場所だな」

「ほかのスタジアムとは違う、独特な雰囲気があるぞ」

 

しばらくスタジアムの雰囲気に彼らが浸っていると、ウォーズマンが何かを思い出したのか、彼の方を向いた。

 

「…そうだ、ブロッケンマン」

「ここも大事だろうが、まずはブロッケンに会うのが先じゃないのか?」

「長いこと会ってないから、多分アンタに会いたがってるだろうし…」

 

彼に対し気遣うような表情で提案するウォーズマン。

しかし、そう提案したウォーズマンに彼は首を横に振り、下を向いて口を紡いだ。

次の瞬間、彼の口から予想外の一言が返ってきた。

 

「…会えねえんだ」

 

「えっ」

 

「会えねえ、息子に」

 

その言葉を発した彼の表情は暗かった。

 

「…なぜだっ!?超人墓場から出てきたら、一応普通の超人として暮らすことができると墓場の規定に書いてあったんじゃないのかっ!」

「墓場にいた鬼たちもそういっていたはずだぞッ!!」

 

「わからねぇ。息子に会おうとすると必ず“超人ハンター”が来やがってな」

「俺が息子に会うのを阻止しようとするんだ」

「そいつを何とかするために、ここを活動拠点にしてるんだ」

 

「えっ?超人ハンターって、超人墓場の使者なんじゃ…」

 

(グロロロロ…)

 

すると、どこからともなく聞き覚えのある笑い声が聞こえた。

 

「…ん?」

 

すると次の瞬間、どこからともなく超人閻魔が現れた。

 

「グロロ…ブロッケンマンに会えたようだな」

「お前が友人を必死で探す姿…しかとこの目で見せてもらったぞ」

 

相変わらずでかい図体とご尊大な態度が何とも印象的だ。

 

「ち…超人閻魔ッ!!」

「なぜアンタがここにいる!俺たちを追ってきたのか!?」

 

「グロロ…当たらずとも遠からず、だな」

「私はお前が脱出した際、何人かの超人ハンターを現世へと送り込み、お前を監視させていたのだ」

「私自身がお前たちの後を追うなどと、プロレス以外で体力の使うことはせんよ」

「あとは簡単なこと…私の放った超人ハンターがお前の居る場所を特定し、居場所を伝えてくれたのだ」

「…ああ、ちなみに解放についてはもうあやつに伝えてあるぞ」

 

そういいながら、閻魔はブロッケンマンの方を指さした。

彼の言葉を受けて、ブロッケンマンはウォーズマンの方へと向かい、彼の手を取った。

 

「…事情はあいつらから聞いた。まさか、俺のためにそこまでしてくれていたなんてな」

「ありがとうよ。おめぇには感謝してもしきれねぇ」

 

そう言う彼の目じりには少量の水が溜まっていた。

彼の言葉を受けてウォーズマンの目頭も熱くなっていた。

 

「ブロ…」

 

しかし、その2人の雰囲気に水を差すかのごとく、超人閻魔が言動を持って2人の中に割って入ってきた。

 

「おっと、感動の再会は後にしてもらおう」

「あいにくだが、私もこの後業務がある故、時間がない。簡潔に用事を述べさせてもらう」

 

そう言って淡々と事を進めようとする超人閻魔。

しかし、それに反論するかのようにウォーズマンが彼に対して疑問を投げかけた。

 

「ちょっと待ってくれよ。アンタが忙しいのはわかるんだが…」

「解放するって条件だったはずなのに、なんで俺たち監視なんかされてるんだ?」

「ブロッケンマンが解放されてるってことは、アンタの望み通りに事が進んだってことだろう?話が違うじゃないか」

 

「ふむ…そうだな」

 

ウォーズマンの言葉を受けて下を向いたのち納得したような表情を浮かべた超人閻魔。

事情を説明するべく彼は再び顔を上げた。

 

「では、結論から言おう」

「お前たちはまだ、我々の監視下に置かれている」

「解放されたければ、私たちの出す“条件”を飲んでもらおう」

 

「な、なんだって!?」

「ちょっと待て超人閻魔!俺が現世での条件を満たすことで、俺たち2人を解放してくれる約束じゃなかったのか!」

 

(グロロ…)

 

鬼のような形相で超人閻魔に怒りをぶつけるウォーズマン。

しかし、無情にも閻魔は彼に対して嘲け笑っていた。

 

「なにがおかしい!」

 

「何を勘違いしている?私はまだ、お前たちを自由にするとは言っておらんぞ」

 

「なんだとっ!?」

 

「言ったはずだ。あくまで私が譲渡したのはお前たちが超人墓場から出ていくこと」

「超人墓場から出ていくことに加えて自由な行動を許すとは一言も言っていないはず…」

「違うかな?ウォーズマンよ」

 

「くっ…!」

 

閻魔の言葉を受け、一歩引くウォーズマン。

早く脱出したいがために一杯食わされた、あの時よく考えなかったことを彼は後悔していた。

 

「解放はした。だがそれは、お前の任務を遂行させるため一時的に解放したにすぎん」

「だから、私はお前が戦っている間、友人を探している間は超人ハンターたちに緊急を要するとき以外は絶対に手を出してはならぬと伝えた」

「私は目的遂行のための邪魔はしない…だが、ブロッケンマンが息子を探しに行ったり、お前が自由に行動しようとすることは任務遂行の範囲外だ」

「文句なく阻止させてもらうぞ」

 

「じゃあ!なぜアンタは俺たちに監視をつけているんだ!?」

「条件が済んだなら超人ハンターを配備しておく必要なんかないじゃないか!」

 

そういって怒りをぶつけるウォーズマン。

よほど感情的になっているのか、言葉の端々に荒い一面が出ている。

それを受け、超人閻魔は再び右手で顎をさすると

 

「ふむ…確かにお前達にはその理由を説明する必要があるな」

「いいだろう。少し時間を取るが、説明してやろう」

 

「まず、私が脱走を許した理由としては、お前たちにある目的を遂行してもらうためだった」

「だが、それを何の過程も経ず直接遂行してもらうわけにもいかなかった」

「仮にもお前たちは脱走者…囚人を預かる身としては、秩序維持のためにも、ケジメというものを付けなければならんということも兼ねておったからな」

「そこでだ…私は、以前出した条件に加えてお前たちにもう一つ、チャンスを与えるとともに、我々の目的も遂行してもらうことにした」

 

「そ、その条件とは…」

 

(ニヤリ…)

 

閻魔はブロッケンマンに向けて指をパチッと鳴らした。

すると、彼の体の周りを光が包み込んでいった…

 

(ゴゴゴゴゴ…)

(ボンッ!)

 

けたたましい轟音ののち、巻き上がる白い煙。

その煙はブロッケンマンの周りを包み込んでいく。

 

「ブロッケンマン!」

 

煙が彼を包んでしばらく経ったころだろうか。

包んでいた煙が徐々に薄くなり、彼のシルエットが現れだした。

それからすぐ、彼を包んでいた煙もほとんどなくなり、彼の姿が露わとなった。

 

「…えっ?」

 

「なっ!?」

「なんだっ!?いきなり体が軽くなったぞッ!?」

 

目の前の光景を見てウォーズマンは目を疑った。

 

「ブ…ブロッケンマン…おまえ」

「若返ってる!?」

 

ウォーズマンの視線の先、そこには異様な光景が彼の瞳を奪った。

自分の同僚と全く同じ姿かたち…いや目の周りだけちょっと違う親友の姿があった。

初老の象徴だった目元や口周りのしわは消え、腕や足の筋肉が初めて会った時とは比べ物にならないほどに隆々としていた。

一体なぜ、この男がラーメンマンに敗北を喫したのかと疑問に思わせるほどに。

 

「いかがかな?文献をもとにあやつの全盛期といわれている20代前半まで若返らせてみたぞ」

「条件とはすなわち、お前たちが“正義超人”と戦い、見事勝利を勝ち取って見せること」

「さすれば、お前たちに“自由”を与えてやろう」

 

「……」

 

突然の親友の変化に驚くウォーズマン。

しかし、それを尻目に閻魔は腕を組みながら笑っていた。

 

「グロロ…戦うのは実力者ぞろいのアイドル超人たちだ」

「老体のままで戦うことは難しかろう?それに…」

「あやつは若いころ、かなりの実力者だったというではないか…どんな戦い方をするのか、とても楽しみだ」

 

「ふざけるなッ!正義超人同士で争いをさせようっていうのか!」

 

「勘違いしてもらっては困るな。私はただ、お前たちを自由にするために一石を投じているだけだ」

「第一、ウォーズマンよ。お前は超人墓場から脱走しているだろう…本来なら重罰を与えるところを、条件次第では自由の身にさせると言っているんだ」

「感謝こそすれ、私の行いを非難される覚えはないぞ」

 

「ぐっ…!」

 

「それに、よく考えてみろ…もともとお前は正義超人ではなく、“残虐超人”であったはずだ」

「お前だって、打倒キン肉マンを師匠であるロビンマスクに命じられていたのではなかったのか?」

 

「そ、それは…」

「それは過去の話だろ!俺とロビンはキン肉マンを中心に正義超人界を守っていくと決めたんだ!」

「いまさらそんなことを掘り返してきたって、俺はあいつらと戦うつもりなんてない!」

 

超人閻魔に、自分が戦う意思がないことを伝えるウォーズマン。

その彼に閻魔は無表情で首を縦に振ったのち、彼らに対して説明を始めた。

 

「そうだ。確かに過去の話だ」

「だが、これはお前たちの意思だけで片付く問題ではないのだ」

「この問題は、我々超人界の中では決して過去のこととして済ませるわけにはいかない」

「まだあと一つ派閥が残っている。そして、その勝者を決めぬことには、正義超人が正当な派閥としては認められぬ…とな」

 

閻魔は一息ついてさらに説明を続ける。

 

「我々が見たいのは“最終決着”なのだ。第21回の超人オリンピックが終わってから悪魔超人や完璧超人が出てきたおかげで、この派閥の決着に関してだけはうやむやになっておったからな」

「私は閻魔ゆえ、物事を白黒つけないと気が済まぬ性格でな…超人界の神々に進言し、その結果、“残虐超人”と“正義超人”との最終決着をつけさせることに決まったのだ」

「だからお前を泳がせた。お前がその“最終決着”を行うことができるに足る超人であるかどうかを試す目的でな」

「そしてそれは成功された。お前はみごと条件を達し、正義超人を勝利へと導いた」

「まあ、知性チームに関しては不意打ちということで協議の末、見なかったことにするという事に決まったのだがな…」

 

そういうと閻魔は右手で顎をさすった。

なるほど、彼らの目的は正義超人と残虐超人との決着だった。

現在、彼らが戦っている裏には超人界の神々の存在があったのだ。

 

「グロロ…まあ、脱走した超人が残虐超人と知った時には、私も心を躍らせたぞ」

「そして、その友にキン肉マンをはじめとした“正義超人”と名の付く者と一度も戦っていない友人がいる…なんと好都合なペアがいたものだろうと思ったよ」

 

確かに、よくよく考えてみればブロッケンマンは元残虐超人であったラーメンマンとしか戦っておらず、キン肉マンをはじめとした純正の“正義超人”とは戦っていない。

おまけにその“正義超人”のことをよく知っている友人がいて、そいつが脱走を企てている…

これだけ脱走の許可を元手に最終決着の条件を突きつける上で好都合な存在は、確かに貴重だった。

 

「ふざけるな…!俺たちはアンタらの遊び道具じゃない!」

「このやろう…!俺たちの解放とか言っといて、はじめからそのつもりだったんじゃないか!」

「俺たちとキン肉マン達を戦わせるための策略に…俺はまんまと乗っちまったってわけだ!!」

 

ウォーズマンは閻魔に対して怒りをぶつけた。

無理もない。友人のためにやったことが、まさか逆手を取られて同士討ちになる布石となっていたことを一体誰が想像できただろう。

利用されていたことに対して怒るのは至極真っ当な主張といえる。

しかし、そんな彼を見ても超人閻魔はおかまいなしだった。

 

「おっと…お怒りのところ申し訳ないが、お前は反抗できる立場ではないはずだ」

「さっきも言ったが、お前は“不”自由の身…お前たちの周りには多くの超人ハンターが付いている」

「反抗するなら…お前の身、友人の身は保証しないぞ」

 

「くそっ…!」

 

閻魔の半ば脅迫とも取れる言動。いや、事務的な対応ともいえるのだろうか。

一度決まったことなのだからいかなる手段を用いてでも遂行して当たり前…そんな冷徹さを感じた。

しかし、そんな彼と話し合う暇もなく、超人閻魔は自身の手元にあった腕時計で時間を確認すると、彼らに向かって

 

「むっ…そろそろ時間か」

「では、私はこれで失礼する」

 

そう言うと、彼は移動するために自分の姿を下から消していった。

 

「ちょっと待て!逃げるつもりなのかっ!」

 

説得を試みようと、閻魔のもとへと向かうウォーズマン。

しかし、ここで予想外のことが起こった。

 

(バァンッ!)

 

どこからか飛んできた銃弾がウォーズマンの頬をかすめた。

弾の軌道から察するに、威嚇射撃のためにやったのだろう。

 

「うわ…」

 

突然のことに腰を抜かすウォーズマン。

威嚇射撃とはいえ、銃弾が自分の顔に当たったのだ。やられた方としては至極真っ当な反応である。

 

「ウォーズマン!」

 

急いで彼のもとに駆け寄り、彼を気遣うブロッケンマン。

しかし、そんな2人の姿を見ていた閻魔は見下すような様子で、

 

「口に気をつけるんだな、ロボ超人…」

「さっきも言ったが、私に歯向かえば、お前たちの周りにいる超人ハンターが黙っておらん。危害を加えれば、すぐさまお前たちを処分するだろう」

 

ニヤリと笑う閻魔。大きい体躯も相まって、かなりの圧力だ。

 

「ぐっ…!」

 

「いいか、最後にもう一度だけ伝えておく」

「お前たちは正義超人と戦い、見事に勝利を収めて見せよ。そうすればお前たちの現世においた如何なる自由も許そう」

「しかし!もしお前たちが負けるようなことがあれば…もちろんあやつの若返りは消える。そして…」

「お前達も、また墓場に戻されることになるのだ」

「刑期がまだ残っている故な」

 

「では、さらばだ」

 

条件を一通り伝えたと同時に、閻魔の姿は消えてしまった。

それと同時に超人ハンターもどこかへと行ってしまった。…ウォーズマンたちを監視するため、どこかに身を隠してしまったというのが正しいのかもしれない。

 

超人閻魔が去り、しんと静まり返ったスタジアム。

何とも言えない空気がしばらく続いたのち、ブロッケンマンが沈黙を破った。

 

「…な、なんだかよくわからんが」

「俺たちは誰かと戦わなくちゃいけねぇ、ってことか?」

 

恐る恐るウォーズマンに聞くブロッケンマン。

しかしウォーズマンが静かにうなづくと、彼はすぐに表情を変え、ギラついた表情をした。

 

「そうか…」

「だとしたら、さっそく修行しねぇとな」

 

「……」

 

ふざけるな。ウォーズマンはそう言おうとしたが、すんでのところで言葉を止めた。

冷静になって考えてみれば、彼は “正義超人”発足の場に立ち会っていないのだ。

仮に墓場で正義超人の存在を知っていたとしても、どういったメンツが出そろっているのかというところまでは完全に把握しきれていないのかもしれない。

そう考えると、彼がなぜ自分の行っていることが、下手をしたら同士討ちにつながるのではないかということを考えていないのかが頷ける。

 

なぜなら、彼は生粋の“残虐超人”だからだ。

 

彼は、今の超人界がラーメンマンや息子であるブロッケンジュニアのように、正義超人の派閥の一つとして“残虐超人”が存在していることを認識していない。

依然として、まだ彼らがヒーロー同士で戦っていると思っているのだ。

ウォーズマンは彼の言葉を受けスタジアムの席に腰を下ろし、しばらくの間、今の状況を分析した。

 

(…多分、ブロッケンマンは正義超人の詳細なことについては知らない)

(本来ならここで事情を伝えるべきなんだろう。…だけど)

(いまこの状況を話しても、アイツはおそらくブロッケン達との戦いは望まない…)

(“神の遊びに付き合うなんざごめんだぜ”と一蹴し、超人ハンターや閻魔を倒すことを提案するだろう)

(それに、アイツはそんな形で息子と戦いたいとは思っていない。口では言いやしないが、本当は正当な形での勝負を望んでいるはずだ)

 

ウォーズマンはさらに思考を重ねる。

 

(だけど、この判断は正直クレバーとは言えない。仮に超人ハンターが何とかなったとしても、あの強大な力を持った超人閻魔には手も足もでないだろう)

(恐らく、以前キン肉マンが戦った“悪魔将軍”と同等か、それ以上の実力を持っていると見た…)

(そう考えると、下手にアイツに喧嘩を吹っ掛けるよりもキン肉マン達と戦った方が賢明。そっちの方が自由になれる可能性が高い…)

(だが、それをやってしまったら同士討ちだ。でもブロッケンマンが…)

 

再び頭を抱えるウォーズマン。

考えれば考えるほど、彼の頭には“葛藤”の2文字が引っ付いて離れない。

彼が友情に熱いが故の葛藤だった。

 

(くそっ!一体どうしたらいいんだ…!)

 

彼が考え始めてからしばらくたったころだろうか。

 

「おい、どうしたんだ?」

「ほれ、自販機でスポドリ買ってきたぜ」

「墓場の居酒屋でウォッカ飲めてたし、液体関係ならいけるだろ?」

 

ブロッケンマンが心配そうな表情でウォーズマンに話しかけてきた。

 

「……」

 

するとウォーズマンは、何かを思いついたのかそっと顔を上げ、彼に向かって静かな口調で話し始めた。

 

「…ブロッケンマン」

 

「ん?どうしたウォーズマン」

 

「…これからは」

 

ウォーズマンは一息おいて言葉を続ける。

 

「これからは、2人で行動しよう」

 

「大きい敵と戦わなきゃいけないみたいだし、それが妥当だと思う」

「俺は他の友人との付き合いもあるから、ちょくちょく抜ける時もあるけど」

「空いてるときはアンタの修行に付き合うぜ。…問題、ないかな?」

 

「ウォーズマン…」

「へへ、なんだか知らねぇが、要するに俺たちは同じ穴の貉になったってことだろ?」

「俺たちが協力しねえ理由なんざ、ねぇじゃねえか」

「よろしく頼むぜ、ウォーズマン」 

 

そう言って静かに笑うブロッケンマン。

2人の間には深い、強固な信頼関係が築かれていた。

超人墓場で共に過ごした日々が、彼らをここまでにしたのである。

 

彼の言動を受け、ウォーズマンは静かにうなづいた。

そして、彼に対し間接的に自身の決断を言い放つ。

 

「ところで…ブロッケンマン」

 

「ん、なんだ?」

 

「さっき閻魔から聞いたんだが…どうやら正義超人(そいつら)を倒したら息子に会えるみたいだぞ」

 

「…!それは本当か?」

 

「ああ。やつは閻魔だから嘘はつけないって、前言ってたし」

「とりあえず、信用する価値はあるんじゃないかな」

 

静かに、それでいてどこか焦燥を感じられるような雰囲気で、ウォーズマンはブロッケンマンにそう言いかけた。

考えた末、ウォーズマンは彼を偽り、友を守るべく正義超人との最終決着に身を投じる決断をしたのである。

 

「わかった。じゃあ、なおさら強くならねぇとな」

「早くアイツの強くなった姿を見てみたいぜ」

 

意気込むブロッケンマン。そんな彼を奮い立たせるべく、ウォーズマンはさらに発破をかける。

 

「よし、ブロ。じゃあまずはブロッケンに会うために…」

正義超人(そいつら)に近い奴らと力試しを…しようじゃないか」

 

その時の彼はもう、普段のシャイで温厚な表情ではなかった。

何かを守るため冷徹で、しかし決意に満ちた表情だった。

 

(見てろよ超人閻魔…)

(ブロッケンマンは…俺が守るッ!!)

 

最終的に彼は友人を守るため、正義超人に対し刃を向けることを選択したウォーズマン。

ちなみにこの後、彼はブロッケンマンの懐刀である“謎の男”として正体を隠し、バッファローマンやアシュラマンなどの正義超人寄りの超人を標的とした“超人狩り”を行ったことは、前述した通りだ。

ここまでが、彼がこの戦いに身を投じることになった経緯である。

果たして、彼の思惑が今後、この戦いにどのような影響を与えるのだろうか?

 

 

                   ―続く―

 

 




おまけ
~カネの出どころ~

「それにしてもブロッケンマン。お前、さっきスポドリを買ったって言ってたよな」
「金、持ってたのか?」

「ん?ああ、増やしてきた」

「へっ?」

「現世に来る前にな、超人閻魔がいくらか持たしてくれたんだ」
「けどよ…あの野郎、しけた額しか持たせてくんなかったらさ。一か八か競馬で賭けてみたんだぜ」
「そしたらそれがうまいことはまってよ!その日のレースの穴ァ当てたんだぜ!」
「いま財布ン中に100万入ってんだ♪今夜は飲み明かそうぜ!」

「え、で、でもそんな大金だったら貯金した方が…」

「何言ってんだ!"大金は使うもの"それがブロッケン一族の掟だぜ!」
「へへ…今日はお前のお礼会も兼ねてんだ。大好物のウォッカをいくらでも飲んでいいぜ」

「え!そ、それは…」

「…どうだ?悪い話じゃねぇだろ?」

「……」
「…そう、だな」

「よし!んじゃあ今日は飲み明かすぜ!」

(この日の夜、結局俺とブロッケンマンは東京の飲み屋街で朝まで飲み明かしたんだ)
(次の日、朝方に俺たちがスタジアムへ戻ってきたときには、2人とも2日酔いで一日中地面に這いつくばっていた…)

                     ~終わり~
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