最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第26話です。2週間ほど投稿期間が開いてしまい、申し訳ありませんでした。投稿期間が開いたもろもろの事情は活動報告のところに記載しておりますので、もしよろしければ見ていってください。
では、あらすじをどうぞ。

ロビンの焦りを皮切りに異様な空気へと変貌してしまったスタジアムの場内。最悪なことにその場を利用し、ブロッケンは父親に対し心にもない罵声を浴びせてしまう。そして、彼の言葉を受け、あらかた事情を知っている”あの男”がついに怒りをあらわにする。
 一体、この試合はどうなってしまうのだろうか?


第二十六話「野望の終着駅」

ステージ 場内

 

「いいかげんにしないかーっ!」

 

「ウ…ウォーズマン…?」

 

突如聞こえてくる機械音を混じらせた叫び声に驚くキン肉マン達。

間髪入れずウォーズマンは言葉を続ける。

 

「お前…!さっきから聞いていれば自分の親父のことを散々バカにしやがって!」

「もう許さねぇ!こうなったらルールなんざぶっ潰して…」

 

ここで正義超人側が状況を察したのかキン肉マンも半ば感情的になり

 

「だ、黙らんかい裏切者めっ!!さっきから何をごちゃごちゃとわけのわからんことを言うておるんじゃ!!」

 

彼に対して反論する。

 

「わけのわからんことだと!?いい加減なことを言うな!」

「ブロッケンマンはな…ブロッケンマンは…!」

 

しかし、ここで彼の前に手刀が現れることで、いったん言い争いは収まった。

 

「おい」

「いい加減にしろ…お前も感情的になってどうすんだ」

「パートナーを無視すんじゃねぇ」

 

「うっ…」

 

リングロープに前かがみの姿勢でもたれかかったままウォーズマンをにらみつけるブロッケンマン。

その怒りが凝縮されたような表情にウォーズマンはたじろいでしまう。

 

「す、すまない…」

 

「…ま、別にいいんだけどよ」

 

そういうと彼は正義超人側の方を向き、静かな面持ちで口を開く。

どこか先ほどのような毒気が消えていると感じるのは自分だけだろうか。

 

「それよりも…」

「息子よ、俺はお前の質問に答えなくちゃいけねぇな」

 

「えっ…?」

 

突然のブロッケンマンの言葉に言葉を失う正義超人たち。

しかし、それもお構いなしに彼は言葉を続ける。

 

「まず、前提としてだ」

「俺は、お前が何を言おうが気にしねぇ」

 

「俺が残虐超人の肩書を捨てるくれぇなら」

「生粋の残虐超人で結構。俺は残虐行為に躊躇しねぇ」

 

「それが、俺の答えだ」

 

ブロッケンマンが言っているのは先ほどのブロッケンが言っていた罵倒のことである。「未練がましい…」とか「超人墓場に…」といった内容。

彼はその罵倒を質問と捉え、それに答えているということなのか。

 

「そんなこと…」

 

(サッ)

 

反論するブロッケンの言葉を遮るようにして彼の前に手を置いたラーメンマン。

納得がいかないのかブロッケンが妨害しようとすると…

 

「!?」

 

「おいラーメ…」

 

「……」

 

彼は首を横に振り、話を聞くように促した。

 

「……」

「…ちっ」

 

彼もそれに(いやいや)納得したのか、不満げな表情のまま頷いた。

 

「それで、さっきのお前の言葉だが…」

「確かさっき未練がどーたら、とか言ってたな」

 

腕を組みながらリングの鉄柱にもたれかかるブロッケンマン。

そしてわずかな沈黙の後、彼は静かに口を開いた。

 

「未練は、ある」

「あの時の戦い…ラーメンマンは知らんがこの俺、ブロッケンマンにとっては満足のいかない試合だった」

「残虐超人の総帥と呼ばれていたラーメンマンとの“最終決着”があんな形で決まっちまったんだ。…どうしても後味の悪いものが残る」

 

「最終…決着…?」

 

ブロッケンが不思議そうな表情でブロッケンマンに尋ねる。

 

「そうだ。最終決着だ」

「俺はそれがうまくいかなかったがために、未練を残すハメになっちまった」

 

次の瞬間、それに割って入るようにキン肉マンがリング横から叫んだ。

 

「じゃ、じゃがブロッケンが言っておったぞ!お前は“リングの上で死ぬのが本望だと…」

 

「ああ。確かに息子の言う通り、俺はリングの上で死ねれば本望だ」

「だがそれは、あくまで普通の試合での話」

「“あの男”の場合は別だ…」

 

神妙な面持ちで説明を続けるブロッケンマン。

その時の彼の表情はどこか達観しているような感じで、今までのような迫力のある表情をしていなかった。

彼はその表情を保ったまま説明を続ける。

 

「それに…俺がリングの上で死ぬことが本望だと言ったのは、単に長い間ここで戦っていたからリングに対して愛着を持っていたからじゃねえ」

「リングに立つことこそが、俺の精神的な支柱だったからだ」

 

「ど、どういうことだ…?」

 

険しい表情で彼に聞くウォーズマン。

それに対しブロッケンマンは下を向きながらうなだれたような表情で言い放った。

 

「…俺はよ。昔はよくバカにされてたんだ」

「純粋な超人じゃあないということでな」

 

「…なんだって?」

 

彼の言葉を受けて首をかしげる正義超人一同。

どこか腑に落ちないといったような感じ。衝撃の告白の割にはインパクトが薄い。

そんな感じだった。

 

「おかしいじゃないか。だってお前は栄誉あるブロッケン一族の…」

 

不思議そうな表情でブロッケンマンに尋ねるキン肉マン。

すると彼は顔を上げ、彼らに向かって真っすぐな目で言い切った。

 

「ああ。確かに俺はブロッケン一族の子孫だ」

「だが…代表的なブロッケン一族はな、実質俺の代から始まったんだ」

 

「な…なんだって!?」

 

ブロッケンマンの言葉に初めて驚く正義超人たち。

しかし、ブロッケンマンははたと気づくと自分が放った言葉を訂正する。

 

「…いや、訂正する。ブロッケン一族の存在が明るみに出たのは、俺が最初なんだ」

「今までにもいたっちゃあいたんだがな、ちょっとそん時の情勢が悪かったのか、あんまり資料が残っていないのよ」

 

「だ…だがお前の一族はもともと人間で、成人すると紋章を授けられ、最終的には超人として活躍するのだと聞いているが…」

 

「ブロッケンマンの言葉に首をかしげながら反論するロビン。

しかしその反論にも彼は冷静な口調で返す。

 

「そうだ。確かにブロッケン一族は元々人間で、ある一定の年齢になると超人に変身できる紋章を授けられる…それ自体は間違っちゃいねぇ」

「だが、俺の親父が…ちょっと異質でな」

「とある人間と俺の爺さんが恋に落ちて、駆け落ちの形で純粋な変身型の超人であるブロッケン一族を離れたらしいんだ」

「そん時に生まれたのが俺の親父、息子の爺さんに当たる“ブロッケンマン”だ」

「紛らわしいからG(グロウズ)と呼ばせてもらうぜ」

 

ブロッケンマンは一息ついて説明を続ける。

 

「Gは、俺の爺さんと人間の女との間に生まれた息子だった」

「いわば人間と超人のハーフってことだな」

「リングの上に立ってた時の親父の背中はかっこよくてなあ…小柄ながらもガタイの大きい超人に立ち向かっていく姿は、俺の憧れだった」

「親父は、超人オリンピックをはじめとした公式の大会ではあまり大きな結果を残せてなかったんだが、小さな大会ではよく優勝してたんだ」

 

「だが…親父の勝利を称賛するものは誰もいなかった」

 

「い、いったいなぜ…」

 

動揺を押し殺しながらラーメンマンは彼に尋ねた。

そして、その問いにブロッケンマンは少し考えた後、静かに口を開いた。

 

「人間と超人の“ハーフ”だったからだ」

 

ブロッケンマンは俯きながらキン肉マン達に言い放った。

 

「えっ、人間と超人の…ハーフ…?」

 

突然の答えに驚くブロッケン。

あっけにとられる息子をよそに、彼は説明を続ける。

 

「そうだ息子よ。人間と超人のハーフだ」

「人間と超人のハーフはな…完全な超人じゃあねぇってんで、昔はよく避けられていたんだ」

「後ろ指を差されながら戦ってた親父が…今でも目に浮かぶ」

「今じゃあすっかりメジャーになってるらしいが…俺らの時じゃあ考えられねぇことだぜ」

「何事にも“純粋”が求められていた。そんな時代があったのさ」

 

ブロッケンマンは一息つくとさらに説明を続ける。

 

「そんな立ち位置にいたんだ。息子である俺だって例外じゃなかった」

「訓練所の外へ行けば石を投げられ、罵られ、笑われる日々…」

「訓練所の中でだって陰口を叩かれていた。“アイツはうすら汚ねぇ超人だ”ってな」

 

「……」

 

「そんな中で俺は厳しい訓練の末、親父から“ドクロの紋章”を継承し初めてリングの上に立った」

「そして…“あの行為”をやったんだ」

 

「あの行為」とはブロッケンマンがリング上で対戦相手の目をくり抜いたのち、猛攻を加えたという残虐行為のことである。

 

「今まで俺をバカにしてきた奴ら、汚れた超人だと罵ってきた奴ら」

「そんな奴らに恐怖を味わわせてやるため…俺は対戦相手の顔を掴み、眼窩に思いっきり指を突っ込んだ」

 

「ひっ…!」

 

恐怖のあまり目を覆うキン肉マン。

淡々と自分のした行為を語っていることも相まって、ブロッケンマンの語りは恐怖を増していた。

 

「これがきっかけで俺は残虐超人への仲間入りを果たし、そこから勝利を重ねていった」

「親父の無念と残虐超人である一族の誇りを携えてな…」

「その結果が残虐超人の大会で異例の4連覇…自分で言うのもなんだが、俺はまさに絶好調だった」

 

「そん時だ…俺が“あの男”と出会ったのは」

 

そういうと彼は険しい面持ちでとある男の方を指さした。

 

「ラーメンマン…お前だ」

 

「……」

 

指を差されたその瞬間、ラーメンマンは顔をしかめた。

しかしそれもお構いなしに彼は説明を続ける。

 

「アイツと初めて会ったのは、20回超人オリンピックから約10年前のこと」

「俺は残虐超人の内輪で行われている大会で5連覇を狙っていた」

「当時7歳だったこいつもいたし、俺は息子のためにも何とか勝利をかっぱらってやろうと思っていた」

「そして、迎えた決勝…」

「俺は、ラーメンマンと出会った」

 

彼の脳裏にラーメンマンと初めて会った時の記憶がよみがえる…

 

響き渡る歓声。しかし、その歓声に交じり聞こえてくる罵倒と怒号。

 

「殺せーっ!!ぶっとばしちまえーっ!!」

「死ねーっ!死んじまえーっ!!」

 

そして次の瞬間、卵やゴミ、鉄くずなどがリング内に放り込まれる。

とても通常の試合では見られない光景。

しかし、そんな状況下でもこの2人はまるで動じていなかった。

まるでそのことが起きるのが日常茶飯事であるかのように。

 

「…よう」

 

「……」

 

ブロッケンマンの問いかけに沈黙するラーメンマン。

今の様子とは裏腹に別の不気味さを醸し出していた。

 

「アンタも物好きだな。何もこんな殺気立ってる大会になんざ出場するこたぁねぇのによ」

「下手すりゃ殺されるぜ」

 

「……」

 

「私は、残虐超人だ」

「そのくらいは、心得ている」

 

「…そうかよ」

 

ひどく冷え切ったラーメンマンの表情。

いや、もしかしたらまだスイッチが入っていないのかもしれない。

何も残虐超人は誰でも常に狂ったような様子を見せているわけではないのだから。

 

(あの時のそいつはまだ残虐超人としては無名で、俺と試合をする準決勝で対戦相手をひどくボコしたからスタジアムの中で噂になっていたぐらいだったんだ)

 

(だが、それは叶わなかった)

(無名で決勝戦に上がってくるってことを俺は甘く見ていたんだ)

 

様々な思惑が渦巻く中、ついに試合開始のゴングが鳴った。

 

(カァンッ!!)

 

「そして、俺は負けちまった」

「試合内容は話すまでもねぇ…それだけ簡単に試合が終わっちまったってことだ」

「お前は純粋な超人であり、そして何よりも強かった」

「いくら超人になったとはいえ、俺は元々人間の血が入った超人だ。体力的にも自然治癒の速さでも並みの超人より劣っている」

「純粋な超人で、かつ鍛錬を積み重ねているであろう存在に勝つことは困難を極めた」

「案の定、俺はラーメンマンに敗北し、5連覇を果たすことはできなかった」

 

ブロッケンマンはさらに説明を続ける。

 

「その後は俺も何とかアイツの弱点を見出し、五分で渡り合えるようになっていた」

「そして、お互いに超人オリンピックのチャンピオンを目指すためのよきライバルとなっていったんだ」

「だが、時の流れというのは残酷でな…いつしか俺も年を取り、プロレスを続けていくことが困難になってきた」

「“引退”の2文字が俺の頭の中をちらつくようになっていったんだ」

 

「……」

 

彼の演説(?)に静かに聞き入る正義超人たち。

ラーメンマンも自身の名前が出されたのにも関わらず、静かな表情を保ち続けている。

 

「そして迎えた引退前…」

 

「俺は超人オリンピックのドイツ代表となり、ラーメンマンを倒すべく決勝トーナメントのステージへと歩みを進めた」

 

スタジアム -場内-

 

(……)

 

異様な空気。割れんばかりの観客の声援もない。

無理もなかった。このスタジアムはもともとほかのスタジアムとは違い、隔離されたような形で行われているのだ。

残虐超人たちの残虐極まりないプレーを見せないために、このような試合が組まれたのである。

 

「よう」

「へへ…こうやって残虐超人同士、超人オリンピックの舞台へと上がることができたんだ」

「…お互いに全力を出し切ろうや、なあ?」

 

しかし、気さくな態度とは裏腹に彼の考えていることは全くの真逆だった。

 

「……」

 

(…へっ、それにしても、大会の主催者も下衆なことを考えるもんだな)

(残虐超人同士で戦わせ、あわよくば怪我でもして、ほぼ全員敗退してくれることを願っているんだろう)

(…まあこの扱いにも、もう慣れちまったんだがな)

 

大会の主催者にやるせない思いをぶちまけるブロッケンマン。

しかし、今はそんなことも言ってられないと気持ちを切り替え、ラーメンマンがスタンバイしている反対側のリングを見た。

 

(さて…問題の相手だが)

(キン肉マン…とかいうやつは気にしなくてもいいか)

(同期のカレクックが普通に勝ち上がってくるはずだ)

(問題なのは…)

 

(ラーメンマン…だな)

 

その時、ブロッケンマンの目がギラリと光った。

 

(残虐超人の総帥であり、そして何よりも俺から勝利を奪った超人!!)

(中国拳法とプロレスを混合した技で、相手の息の根が止まるまで戦い続けるおっとろしい野郎だぜ)

(おまけに今のコイツは、俺を倒したことと、世界3大残虐超人の一人として名をはせていることもあって脂が乗っている…正直今の俺が正当に向かっていっても倒せやしないだろう)

(ならば、俺は…)

 

そう言うと彼は軍帽の中に仕込ませていたメリケンサックをちらつかせた。

しかし、ラーメンマンと審判は気づいていなかったようで、流れるように試合開始の準備が進められていく。

そして何分か時間が過ぎ、レフリーが試合開始の合図を告げようとした、その時…

 

残虐精神(これ)で行かせてもらうぜッ!!」

 

ブロッケンマンは彼らを押しのけ、そのままラーメンマンの方へと向かっていった。

 

「…!!」

 

(カァンッ!)

 

試合開始のゴングが鳴った。

 

それと同時に、ブロッケンマンはラーメンマンに軍服を被せ、そこから持っていたメリケンサックをおもむろに取り出し、彼に攻撃を加えた。

 

(ガッ!ドガッ!!)

 

「あーっと!?ブロッケンマン、ゴングが鳴る前にラーメンマンを不意打ちだッ!!」

「そしてすかさず凶器攻撃です!」

 

突然の出来事に不意を打たれる実況と審判。もちろんラーメンマンも例外ではなく、何が起こったのかわからないままその場に立ち尽くしていた。

 

「ぐへへへ…!」

 

その時のブロッケンマンは正気の沙汰ではなかった。

“勝利”の2文字。そのためだけに動く殺人マシーンへと変貌していたのである。

 

(勝ちてぇ…勝ちてぇ…!)

(俺は…勝ちてぇんだッ!!)

 

「……」

「無様だな…」

 

攻撃を受けながらニヤリと笑うラーメンマン。

言動から察するに、恐らく彼の攻撃はあまり効いていない。

 

「なんだと…!」

 

「勝利欲しさにここまでやるか。…まあ、それが残虐超人の模範なのだから当然のことではあるんだがな」

「…いいだろう」

 

そういうとラーメンマンは彼に足払いをかけ、体勢を崩させた。

 

「ぐあっ…!」

 

いきなりの事態にまごつくブロッケンマン。そしてそれを契機と見るや、ラーメンマンは彼の方へと向かっていった。

 

「今まで同じ残虐超人として戦ってきた仲だ…残虐超人の総帥として、お前を最高のやり方で葬ってやろう!!」

 

そういうと、彼はまず自身の足をブロッケンマンの口へと押し込み、彼のあごの骨を外した。

そして彼を無理やり立たせ、チョップの嵐。…なかなかに凄惨な光景だった。

 

そして極めつけは…

 

(ダアアアンッ!!)

 

「あーっと!キャメルクラッチです!!ラーメンマン、キャメルクラッチをブロッケンマンの処刑技に決めたようです!!」

 

「ぐあああああっ!」

 

傷だらけの体に上半身を無理やり起こされいるためか、尋常じゃないくらいの痛みが彼を襲う。

そして、そのあとに聞こえてきたミリ…という音。

 

「そして次の瞬間…俺はその音と共に、自分の目がスタジアムのライトをまっすぐ見つめているのがわかった」

「それからすぐ、俺は目の前が真っ暗になり、自身の敗北を悟ったんだ…」

 

「……」

 

彼の言葉に沈黙する正義超人たち。

何も言えない、というよりかは返す言葉が見つからない…そんな感じだった。

 

「俺は結局力を出し切れぬまま、胴体を真っ二つに折られちまった」

「こうして、俺のラーメンマンとの“最終決着”は幕を閉じたんだ」

「不意打ちの末、ラーメンマンの返り討ちにあった惨めな超人という汚点を抱えたまま…」

 

「ブロッケンマン…」

彼の言葉に対し、静かな反応を示すキン肉マン。

 

これまでの経緯をまとめると、彼の人生は人間として育つことなくハーフの超人として生まれ、残虐超人ということも相まって周りから蔑まれながら育った日々、そして、その悔しい日々をバネに努力を重ね、ついに残虐超人の頂点へと君臨した。しかし、いかに強いといえども年齢には勝つことができず、最終的には自分が引退試合と決めた超人オリンピックにおいてライバルであったラーメンマンとの戦いに敗れた…

そしてそれが未練となり、紆余曲折を経て彼はこの戦いに身を投じているのだった。

 

「確かに、俺も巷ではラーメンマンと同じく世界三大残虐超人として有名だった」

「だが、残虐超人内では“純粋”な超人ではないから超人として認められないのではないのか、という声もあった」

「俺が最初に超人オリンピックの出場が決まった時も国内ではひと悶着あったんだ。…参加を辞退しろなんて言う心ない言葉もあったんだぜ」

「20回の時はそうでもなかったんだよな。…時代は変わるもんだ」

 

「ブロッケンマン…」

 

「俺は悔しかった。今になって思えば、あんなことをやるんじゃなかったと後悔している」

「超人墓場で聞いた話じゃ、あの後訓練所が襲撃されて、一時は施設が崩壊寸前にまで追い込まれていたっていうじゃねぇか」

「普通、俺たちにとって超人オリンピックに出られることは名誉なことだ…だが」

「全力で戦えなかった上に、私情で一族の連中にまで迷惑をかけちまったんだ。…罪悪感がぬぐえねぇ」

 

「ブロ…」

 

うなだれる彼を前に、親友のウォーズマンも言葉を返すことができない。

過去の栄光を尻目に最悪の形で負けてしまった彼を励ます言葉をかけられるものは…少なくともこの中にはいなかった。

 

「…さて、これで話は終わりだ」

「俺はラーメンマンと最後の決着をつけるためにここへ来た」

「もとい…」

 

「……」

 

「…?」

 

彼が言葉を切らせたことに首をかしげる正義超人たち。

その様子を見て、彼は

 

「…いや、なんでもねぇ」

「忘れてくれ」

 

軍帽で表情を隠しながら下を向き、後ろを向いた。

それと同時にウォーズマンが彼の肩に手を置く。

 

「そうだぜブロ。この戦いの目的は未練の達成と正義超人を倒すこと」

「俺たちはそのために戦ってるんだ」

「純粋な残虐超人の力を、ここで見せてやろうじゃないか」

 

ようやく励ます言葉が見つかったのか、ウォーズマンは彼に対し穏やかな表情で親友に言葉を贈った。

しかし、この時の彼の反応は全く真逆のものだった。

彼の言葉にブロッケンマンは首を横に振ったのだ。

 

「…?」

 

友人の予想外の反応に呆然とするウォーズマン。

それもお構いなしに、ブロッケンマンは言葉を続ける。

 

「いや、その必要はねぇ。…ウォーズマン、もういいんだぜ」

 

「ブ…ブロッケンマン…?」

 

「どんなトーシロでも、ここまでくりゃあ誰だってわかる」

 

「!!」

 

この時、ウォーズマンは気づいた。

自身の行っていたことが、そして考えていたことのほとんどがもう、彼に見破られていたことを。

 

「…ここなんだな、ここが」

「俺の野望の、終着駅…」

 

達観したような表情で彼は言葉を続ける。

 

「ウォーズマン…」

「“超人狩り”は、ここでおしまいだ」

 

                   続く

 




グロウズはドイツ語で「お爺さん」という意味らしいです。ブロッケンマン、ブロッケンジュニアと区別する形で本作ではグロウズを使わせていただきました。
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