最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第27話です。活動報告でお知らせしました通り、2週間小説が出せていなかったので急遽、日曜日に先週分を上げることにしました。では、本編をどうぞ。

―あらすじ―

異様な雰囲気が流れていたスタジアムの場内に、罵倒の回答という異例の方法で解決にメスを入れたブロッケンマン。そこで彼は自身の過去と、自分が戦っている目的の詳細な部分を暴露する。これで戦いの意思が固まったとウォーズマンが手を伸ばすが、ブロッケンマンは突然、戦いを止めることを仄めかす発言をする。
果たして、彼の言葉が意味することとは?


第二十七話「決死の突貫!電光石火(ライトニングアロー)

スタジアム 場内

 

「超人狩りは…ここでおしまいだ」

 

落ち着いた雰囲気でウォーズマンの方を向き、そう宣言するブロッケンマン。

その表情にはもう、先ほどのようなギラついた様子はない。

 

「な、なに言ってんだよブロッ!お前、ラーメンマンへの復讐のためにここへ来たんじゃなかったのか!?」

 

彼の雰囲気とは裏腹に、突然放たれた親友の弱気な発言に動揺するウォーズマン。

 

「どうして、今になってそんな…」

 

「あの時、超人閻魔に言われた言葉…」

「正義超人の中枢ってのはこいつらのことで、これを倒せば俺たちは解放される」

「そんで、いきなりそれを伝えちまうと、俺は戦いを躊躇しちまうかもしれないから」

「お前はあえてそれを伏せ、俺を戦う方へと導いた…」

「だよな…ウォーズマン」

 

彼の言葉を受け、しばらく黙り込んだウォーズマン。

 

「……」

「…すまない。今までずっと黙っていて」

 

それからしばらくして、彼はブロッケンマンに対し、謝罪した。

 

「いや…俺はお前を責めてるんじゃねえ」

「むしろ感謝してるくらいなんだ。こんな俺に気を使ってくれてよ…」

 

「だが、それじゃねぇ。俺が超人狩りを止めようっていたのはそれが理由じゃねえんだ」

 

「え?じゃあ、いったいどうして…」

 

不思議そうに彼を見るウォーズマン。

それが契機と見たのか、ブロッケンマンはなぜ、戦いを止めようと言い出したのか説明しだした。

 

「俺は、この戦いの中ずっと考えていた」

「あいつらの中に宿る“大きな存在”…」

「俺は、それに気づいた…いや、気づいちまったから、戦いを止めようと言ったんだ…」

 

「大きな存在…?」

 

「そうだ、大きな存在だ」

 

ブロッケンマンの脳裏に戦ってきた彼らが言っていたことが思い出される…

 

「友情ってのは…どんな時でもともに助け合える存在なんじゃねぇのかーっ!」

 

「バッファローマンの雪辱は…俺が果たすッ!!」

「ブロッケンジュニア…かつて私と共に戦った戦友だ!」

 

「あいつら2人に共通していたこと、それは」

「仲間のために自分が犠牲になること、だ」

 

ブロッケンマンはさらに説明を続ける。

 

「最初、アイツらが言っていたことは戯言だと思っていた」

「自己犠牲なんざ単なるエゴでしかない。あいつらのやっていることはおかしい…とな」

「だが、アシュラマンと戦った時、俺は一つの違和感を覚えた」

 

路地裏

 

「だがよ…」

(妙だ…どうしてここまで他人のために戦うことができる?)

 

訝し気な表情で考え込むブロッケンマン。

しかし彼はすぐに思い直し、後ろを向く。

 

(…いや、考えても仕方ねぇか)

(今やこいつは名も言わぬ“骸”…吐かせようにも吐かせられねぇ)

(…もう、行くか)

 

「…あばよ、プリンツ」

 

そういうと彼は静かに歩きだし、先に行っていたウォーズマンの後を追った。

彼があの時路地裏で言いかけた言葉には、友情に対する疑問が浮かび上がり始めていたのである。

ひとしきり思慮を巡らせると、彼は回想を終え静かに語りだした。

 

「なぜ、こいつらはそこまでして他人のために戦える…?とな」

 

「お前も知っての通り、残虐超人はもともと“個”を重視する超人だ」

「戦法の残忍さ故から煙たがられることの多い俺たちは、基本的に修行をするときも一人でやっていることが多かった」

「それに、下手をしたら試合中に自分が同族に殺される世界だ…そんな中いったい誰がそいつらを友人として見ることができる?」

「だから、普通なら俺たちには友情なんてほとんど芽生えることがねぇ」

「ましてや、仲間のために自分を犠牲にするなんざ、到底考えられねぇことだ」

「だが…アイツらは違った」

 

「たとえ残虐超人だろうが悪魔超人だろうが、分け隔てなく接していた」

「そして…友人のためなら命を賭してでも守ろうとしていた…」

 

一息つき、ブロッケンマンはさらに説明を続ける。

 

「俺は考えた」

「アイツらの中には“何か”がある…俺の、俺たち残虐超人をはるかに凌駕するような」

「そんな強さがある…とな」

 

「ブロ…」

 

「俺はこの戦いに勝つため、ありとあらゆる策を練った」

「金網デスマッチやミヌート…果ては禁断の技にまで手を出したってのに」

「あいつらには全く通用しねぇ…いつも押し返される」

 

「そして、俺はこの戦いで確信した」

「これはただの“友情”で片づけられる問題じゃないんだ、と」

「あいつらの中に宿るもの…それがあいつらの強さを後押ししているんだ、と」

 

「そしてその強さに…俺は屈した」

「あいつらの持つ“友情パワー”とやらにな」

 

「……」

 

彼の言葉に思わず言葉を失ったウォーズマン。

無理もない。試合中はずっと強気な発言や冷静さがあったのだ。まさかずっと苦しんでいたなんて、いったい誰が想像がついただろう。

そして今、彼の中にある心の糸が切れた。…そういうことなのだろうか。

 

「もう、俺はアイツらと戦えねぇ」

「復讐の念を持ったって暖簾に腕押し…アイツらの底知れぬ“友情パワー”とやらに圧倒されるだけ」

「やるだけ無駄なんじゃないかと…戦いの最中、そう思い始めたんだ」

 

そう言った彼の語気にはもう、覇気のようなものは見当たらない。

うなだれながら親友に訴えかける…そんな構図だった。

 

「そして、極めつけは息子のあの言葉…」

 

「親父なんか…ずーっと超人墓場にいりゃあ良かったんだーっ!!」

 

「いくら若くたって、俺は前の世代の超人」

老兵(おれ)の居場所なんて、もうどこにもねぇ」

「俺、本当は現世(ここ)へ戻ってきちゃいけなかったんだな…」

 

その言葉の後、しばらくの間、彼らの間に沈黙が流れた。

今の彼の言葉を要約するとこんなかんじだろうか。

自分はラーメンマンへの復讐、そして息子に会うため、その思いを引っ提げて現世へと舞い降りた。

しかし、そのために身を粉にしていろいろ準備を進めてきたが、結果的にすべてが裏目に出てしまい、終始正義超人たちの友情パワー(その当時は見知らぬ力)に圧倒されるばかり。

そして、あろうことか自身の息子にも罵倒される始末…

彼の心はもう、ボロボロだったのである。

 

「ブロ…」

 

ウォーズマンが呆然としていた次の瞬間、

 

(シュウゥゥ…)

 

「!!」

 

突如として彼の肩から大量の煙が噴き出してきた。

 

「ウ…ウォーズマン、お前…」

「肩から煙が…!」

 

突然の親友の異変に驚くブロッケンマン。

それと同時に彼は片膝をついた。

彼は最初、驚きの色を隠せなかったものの、自分がもう戦闘できる時間をゆうに超えていたことを思い出し、冷静になった。

 

「…へへ、あんまり長丁場だったから、ついに限界が来ちまったらしいな」

「もう、持たねぇか。もうあと30分くらいは行けると思ったんだけどな…」

 

「な、なんじゃ!?ウォーズマンのやつ、肩から煙を吹き出しおったぞ!?」

 

「来たんだ…!タイムリミットが…!」

 

目に見えるウォーズマンの異変に騒然となる正義超人たち。

キン肉マンとロビンが口々に叫ぶ。

 

「ウォーズマン…無理をしねぇ方がいい」

「このままじゃ…」

 

もう戦う意思がないのか、ウォーズマンを気遣う発言をするブロッケンマン。

力なく言葉を掛ける様に、もう先ほどまでの面影はない。諦観の色。

しかし、ウォーズマンの方は違ったようだ。

 

「…何、言ってんだよ。お前」

 

「…!?」

 

そういって静かに立ち上がるウォーズマン。

そして、肩から煙を噴き出しながらブロッケンマンの方を向く。

 

「俺はまだ、諦めるつもりなんてないぜ」

 

そういった彼の目は、まだ死んではいなかった。

 

「やめろっ!これ以上動いてなんになる!」

「このままじゃお前の体が…」

 

「へへ…どのみち負けりゃあ俺の体はぶっ壊れちまうんだ」

「だったら…いま残ってる体力をありったけぶつけた方が、いいに決まってんだろ」

 

「ウォーズマン…!」

 

「まかせろ…!」

「ブロ…お前があいつらの友情パワーに屈したとしても」

「俺は決して屈したりはしない!必ずお前をこの世界にとどまらせてやる!」

 

そういうと彼は、キン肉マン達がいる方向を向いた。

そして大きく息を吸い込むと大きく口を開き、彼らに向かって声を上げた。

 

「お前たち!…この際だから教えてやるぜっ!」

 

「俺は脱走する途中、超人閻魔とある“賭け”をした!」

「俺たちが正義超人に勝ったら、正しくは中枢にいる超人に勝つことが出来たら」

「俺たちは解放される。だがもし、俺たちがお前らに負けるようなことがあれば」

「俺たちは超人墓場へ戻され、刑期を全うすることになる…ってな!」

 

「な…なんだとっ!?」

 

彼の言葉を受け、驚く正義超人たち。

 

「じ、じゃあお前が裏切ったのは…」

「親友と共に超人墓場から抜け出すためだったってことなのか!?」

 

加えてロビンが事実を確認するように叫ぶ。

 

「ああ、そういうことだ」

 

唐突なウォーズマンの告白に言葉を失う3人。

しかし、それからしばらくしてブロッケンが反論する。

 

「で…でもおかしいぜ!親父とウォーズマンはいったいどこで知り合ったってんだ!?」

「年が離れすぎてるし、そもそも出会う機会が…」

 

しかしその反論も、ラーメンマンの分析が割り込んだことにより、見事に解消されることになる。

 

「いや…接点はあった」

「おそらく、超人墓場で知り合ったんだろう」

「それから何らかの過程を経てお互いに友人となり」

「自身の存亡を懸けて私たちと戦っている…そういうことだったのか」

 

そう分析したラーメンマンの顔は青ざめていた。

一杯食わされていたことも相まって、彼はかなり動揺している。

 

「なんと…いうことだ…!」

 

だが、そんな彼らの推測をよそに、ウォーズマンは説明を続ける。

 

「…まあ、俺たちは脱走しているだろうから、恐らくその罰も加わるだろう」

「だとしたら…俺たちはもしかしたらもうずっと、ここには戻ってこられないかもしれない」

「また、あの厳しい労働を強いられることになるんだ…」

 

「……」

 

「だがよ、ブロ! 俺は絶対にそんな運命にはさせねぇ!」

「俺は、お前と傷をなめ合いながら地獄に落ちるなんざごめんだぜ!」

「俺は…俺たちは正義超人に勝って、現世(ここ)でお前と酒でも飲みながら、楽しく余生を暮らしてぇんだ!」

「もう、お前に苦しい思いをさせるわけにはいかないっ!!」

 

「ウォーズマン…」

 

「だから…だから俺は…っ!」

「負けるわけには…いかねぇ…っ!」

 

(バリッ!バリバリッ!)

 

その時、煙を纏った彼の体から突然、電気が発生した。

 

「な、なんじゃ!?ウォーズマンのやつ、肩から煙が噴き出したと思ったら」

「体中に電気を纏いだしたぞッ!!」

 

「ウォーズマン…」

 

リング下から彼を見つめるロビン。

師匠が見守っている(?)のが見えたのか。彼はロビンの方を向き、落ち着いた表情で彼に言葉を投げた。

 

「ロビン…すまないが、俺は…アンタらに…刃を向けさせ…てもらう」

「俺の…大切な、友人の…た…めに…!」

 

「……」

 

とぎれとぎれに宣言する彼の言葉に、ロビンは静かにうなずいた。

もう時間がないのだろう。どこか彼の言葉には弱々しい部分があった。

ロビンは震えていた。目の前で親友を守ろうとする弟子の姿を、彼は止められなかった。

彼の…ウォーズマンの覚悟を、不意にするわけにはいかなかったのだ。

 

(ヒュンッ!)

 

それを契機と見たのか、ウォーズマンは体を大きく飛躍させ、彼らの前から一瞬の間姿を消した。

そしてリングロープの上へと立ち、静かにたたずむ。

何か技を放つつもりである。

 

「見ろっ!」

 

次の瞬間、ウォーズマンの手から2つの爪が出てきた。

ベアクロー二刀流である。

 

「な、なんじゃ!?一体何を…」

 

「あの時、成功しなかった俺の必殺技!」

「今ここで、決めさせてもらうぜーッ!!」

 

(ゴゴゴゴ…)

 

彼が叫んだその瞬間、地面、もといリングが大きく揺れだした。

成功しなかった必殺技とは、もしかしたら“あの技”のことなのか。

 

―医務室-

 

「…うわっ!」

 

「な、なんだ!?地震かーっ!?」

 

突然の揺れに驚くテリーマンたち。

揺れの大きさはスタジアムの全体にまで及んでいた。

 

スタジアムが大きく揺れる中、ウォーズマンは雷と煙を体に纏いながら、先ほどまで開いていた口を閉じ、自分の心の中にある“覚悟”を感じ取っていた。

 

(…そうだ。これが正しい選択)

(アイツらを倒し、親友を守るための唯一の策)

 

覚悟が決まったのか、彼は顔を上げ、そっと親友の方を見た。

その表情、まるで今から突貫していくとは思えないほどに穏やかだった。

 

「…あばよ、ブロ」

「いままで、ありがとな」

 

その言葉を聞いた瞬間、ブロッケンマンの体に強烈な悪寒が走った。

彼は自分の体を犠牲に死ぬつもりなのである。

 

「!!」

「やめろウォーズマン!」

「死ぬんじゃねぇーっ!!」

 

しかし、親友の叫びも空しく、彼は勢いよく上昇していった。

ウォーズマンが放つ最大火力の必殺技が今、放たれる…!

 

(ビュンッ!!)

 

「100万…!いやっ!!」

「倍増だッ!!」

 

「200万パワー+200万パワーで、400万パワー」

 

(グウン!!)

 

「いつもの2倍のジャンプが加わって、400万×2で、800万パワー!!」

「そして…」

 

(ゴオッ!!)

(ギュルルルル…)

 

「いつもの10倍の回転を加えて…行くぞッ!!」

「8000万パワーだッ…!」

 

その時、強烈な回転と共にウォーズマンの体が光りだした。

まさに光の矢…電光石火の一矢である。

 

電光石火(ライトニングアロー)―――ッ!!!」

 

「やめろーっ!!!!」

 

けたたましい轟音と共に彼らの方へと向かっていく光の矢。

それを止めようと、親友は必死に叫んだ。

果たして、この結末はいったいどうなってしまうのだろうか?

 

                 ―続く―

 

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