最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第28話です。残虐超人と正義超人との熱戦が続く中、ついに残虐超人陣営のウォーズマンに機能のタイムリミットが訪れた。肩から煙が噴き出し、満身創痍のウォーズマン。しかし、彼は自身の体を顧みず、親友を守るために決死の突貫を試みる。果たして命がけの突貫劇の行く末は…?


第二十八話「残虐を上回りし友情」

スタジアム 場内

 

電光石火(ライトニングアロー)―っ!!!」

 

電気を纏いながら勢いよく回転するウォーズマンの体。

その光は正義超人の陣営の方へと次第に近づいていく。

 

「い…いかん!マッスルスパークの超人パワーを超えてきおった!!」

「は…早く逃げなければ…」

 

しかし、キン肉マンの言葉空しく、正義超人全員はいきなりの出来事に呆然としていた。

それは叫んでいたキン肉マンも例外ではなかった。叫びはしたものの、体が動かないのである。

そして…

 

(ドゴオオオオッ!!)

 

ついにウォーズマンの体が正義超人たちのいる方へと刺さっていった。

それと同時に轟音と白煙が巻き上がる。

 

煙が上がってしばらくたった頃だろうか。

舞い上がっていた煙は徐々に消えていき、視界が鮮明になっていく。

 

結論から言えばこうだ。

彼ら…もとい正義超人はやられてはいなかった。

なぜなら…

 

「…あれ?」

 

腕で口を覆いながらあたりを見渡すブロッケン。

次の瞬間、彼の目の前に人の影があった。

その時ブロッケンに見えた影、それは…

電気を纏ったウォーズマンを抱えているラーメンマンの姿だった。

 

「ラ…ラーメンマン!!」

 

「ぐっ…うっ…ううっ…!」

 

恐らくすんでのところで止めたのだろう。奇跡的に正義超人側への被害はなかった。

最悪の事態は何とか免れたのである。

 

(ボト…ボト…)

 

しかし、抑えたラーメンマンの方はそうはいかなかったようだ。

彼の体からは血が滝のように流れ出ていた。

 

「み…見事だウォーズマン…」

「お前の思い…しかと受け取ったぞッ!!」

 

「お、おい!ラーメンマン!いったい何を…」

 

傷だらけの体で次の行動に移ろうとするラーメンマン、それを無茶と見たのかブロッケンは彼を制止した。

しかし、彼は振り向かずに静かな面持ちで彼の質問に答える。

 

「…こいつはブロッケンマンのために決死の突貫をした」

「ならば…私たちもそれに答えなければ…ならない…だろう」

 

そういって抱えているウォーズマンの体を持ち上げるラーメンマン。

その際、彼の体からは大量の血が流れ出てきた。

閉じかけていた傷口が一斉に開いたのである。

 

(ブシャッ!!)

(ボドッ…ボドボドッ…!)

 

「ぐああ…っ!!」

 

「無茶だっ!!そんな体で技が出せるわけがないっ!!」

「今すぐウォーズマンを下ろすんだ!ラーメンマンッ!!」

 

「いや出せるっ!!出せるはずなんだッ!!」

「ウォーズマンもこの状態でやったのだっ!!ならば、私もやらねばなるまいっ!!」

「それが、あの男たちの友情に対する最高の礼儀なんだーっ!!」

 

キン肉マンの制止も聞かず、彼は傷だらけのまま勢いよく上昇した。

それと同時に彼の体から流れ出ている血が、一つの“道”を作り上げていた。

それはさながら、白いタイルに敷かれていく一つの赤いじゅうたんのようだった。

 

「行くぞウォーズマン!!これが…」

「これが“残虐を上回りし友情”だーっ!!!」

 

九龍城落地(ガウロンセンドロップ)ーッ!!」

 

(ズッドオオオオッ!!)

 

技の掛け声とともに再びリング内に大きな衝撃が走った。

衝撃と共にリングの中央には大きな亀裂が入り、技の威力の大きさを物語っていた。

当然ながら技を掛けられたウォーズマンはその場に倒れこみ、そのまま動かなくなてしまった。

 

「……」

 

しかし、次の瞬間ウォーズマンは静かに立ち上がった。

 

(ムクリ…)

 

「ゲェ…た、立ち上がった!?」

 

「ッ!?」

 

キン肉マンの言葉を受けて一斉にウォーズマンの方へと視界を向ける正義超人たち。

 

(ガガガ…ガ…)

(シューシュー…)

 

しかし、ウォーズマンは一向に攻勢に出る気配がない。

次の瞬間、雑音に交じって彼の声が聞こえてきた。

 

「ち…ち…くしょ…う」

「ど…うして…30分…しか…戦えね…え…んだ…よ」

「こ…れ…じゃ…しん…ゆうを…すく…えない…じゃ…な…い…か…」

 

「…ウォーズマン」

 

それは、自身の弱点が親友を守れなかったことに対する哀歌だった。

決死の突貫も通らず技は返され、おまけにとどめの一撃を食らってしまう始末…

恐らく、彼の心中は悲哀に満ちたものとなっているのだろう。

 

しかし、その悲哀も彼の言葉によって打ち消された。

 

「…しむな」

 

ラーメンマンは傷だらけの体を起こし、最後の叫びといわんばかりにスタジアム全体をつんざくような大声でこう言い放った。

 

「悲しむなっ!!お前はよく戦ったっ!!」

「お前は友情のために自分の命を賭したんだッ!!お前の雄姿を笑うやつはここにはいないッ!!」

「お前は立派な…“正義超人”なんだーーッ!!」

 

「……」

 

ウォーズマンは涙を流しながら叫ぶ彼の姿を一瞥するや否や、彼の目は輝きを失った。

頬に伝う熱い友情の涙を残し、彼の機能は静かに停止した。

 

「ウォーズマン…!」

 

人形のようにたたずむ彼の姿をリング近くで見ていたロビン。

しかし、彼は弟子の変わり果てた姿を見ることができないのか、下を向き、小刻みに震えながら握りこぶしを固めていた。

覚悟はしていたが、最悪の事態が起こってしまったことに対する自責の念が、彼の中で爆発した瞬間だった。

 

しかし、いつまでも時は(なかま)の離脱を悔やませてはくれなかった。

 

「ぐぅ…っ!」

 

ウォーズマンの技を受けた反動、そして自身の技の反動の両方が自分の体にかかってしまい、ラーメンマンはその場に倒れこんでしまった。

それに加えて、傷口からの大量出血…顔色もすっかり土気色になってしまっており、すぐにでも病院に連れていく必要があった。

 

「ラーメンマン、おいラーメンマン!しっかりしろっ!!」

 

「おいっ!いったいどうしたってんだ!!」

 

その時である。

彼らの後ろから聞き覚えのある声がした。

 

医務室で待機していたテリーマン達である。

彼らは突然の地響きに違和感を覚え、大急ぎでスタジアムへと向かっていたのである。

 

「テリー!ラ、ラーメンマンとウォーズマンが…!」

 

「…ガッデム!遅かったかッ!!」

 

今の状況に対し、テリーマンは壁を叩いて怒りをぶつけるという答えを出した。

悔しい。自身がこの場における状況を何一つ知らない。それが自分にとって悔しかったのだろう。

そんな怒りのぶつけ方だった。

 

「は、早くラーメンマンを医務室へッ!!」

 

しかし、2人がラーメンマンを運ぼうとするや否や、突然彼らの後ろから声が聞こえてきた。

 

「…テリー、キン肉マン」

「…ウォーズマンを、助けてくれないか」

 

ロビンは絞り出すような声で、彼らの方に向かって静かに言った。

その言葉を受けて、2人はその場に立ち尽くす。

 

「…ロビン」

 

「お願いだッ!!あいつも助けてやってくれッ!!」

「それが…それが今の私にできる唯一の罪滅ぼしなんだ!!」

 

そう叫んだ彼の頬には涙が流れていた。

彼が叫んだ意図、それは師匠としてなのか、一人の友人としてなのか…

少なくとも、彼の涙には先ほどまでの焦りの色はなかった。

 

その言葉を受けてキン肉マンは穏やかな表情で応える。

 

「…何を言っておる。ロビン」

「当然じゃないか…!あいつも私たちと同じ超人だ」

「敵も味方もない…助けない理由なんかどこにもないさ」

 

そう言うとすぐに、ラーメンマンとウォーズマンの2人は一緒に来ていたカナディアンマンとスペシャルマンに抱えられ、医務室の方へと消えていた。

恐らく、このまますぐにバッファローマンと共に超人病院へと運ばれていくのだろう。

彼らの安否を祈るばかりである。

 

さて、場面は変わり、リングの上。

静かにたたずむ息子と呆然と立ち尽くす父親。

ブロッケンマンの方はさっきまでの一連の流れに呆然としていた。

そんな彼を見かねたのか、息子が彼の肩を言葉で叩く。

 

「親父…」

 

「…親友がやられたんだぜ、涙くらい流してもいいんじゃねぇのか」

 

あきれた様子で話しかけるブロッケン。

しかし、彼は決してただ茫然としているわけではなかった。

ある一種の覚悟…次の瞬間、彼の目の色が大きく変わった。 

 

「……」

「…ちげぇな」

 

「…なに?」

 

「今の俺に必要なのは、親友を想う“涙”じゃねぇ」

「俺に…俺に必要なのは…!」

 

「親友のために戦って流す“汗”なんだーッ!!」

 

そういうとブロッケンマン、息子に向けて袈裟懸けの軌道で手刀を放った。

 

「ぐっ…!?」

 

大振りとはいえ、いきなりの攻撃に不意を打たれたブロッケン。

ギリギリのところで躱しはしたものの、浅いながら一太刀受けてしまった。

 

そんな息子の様子を一瞥すると、彼は正義超人たちに向かって低く、重い声でこう言い放った。

 

「来やがれ…正義超人ども!!」

「純粋な残虐超人が…今ここで相手をしてやる!!」

「ウォーズマンにもらったこの機会…俺は決して無駄にはしねぇ」

「俺は必ず…お前らを倒すッ!!」

 

彼がそう言い放った次の瞬間…

彼の体を紫色のなにかが包み込みはじめた。

 

「な…なんだあれはっ!?」

 

突然のことに驚くキン肉マンたち。

しかし、キン肉マンはあのオーラにどこか既視感があった。

それは自身が危機に瀕した時に発生する“あの現象”と似ていたからだった。

絶対的な力を持つ、あの力に…

 

「ま…まさかあれは」

「“火事場の…クソ力”…?」

 

                ―続く―

 

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