最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第30話です。長い激闘の最中、親友を想う気持ちが爆発したブロッケンマンは屍を超えた火事場のクソ力を発動させた。それに続いて息子の方も火事場のクソ力を発動し親父に立ち向かうが手刀の競り合いに負けてしまい、両腕を負傷してしまう。追い込まれたブロッケンだったが彼は最後の力を振り絞り、父親の手刀へと立ち向かっていくが…?

 


第三十話「鬼の目にも涙」

スタジアム 場内

 

「ベルリンの…赤い雨―っ!!」

 

(ズッバアアアッ!!)

 

刃物が肉を切り裂く音が、スタジアムに響いた。

そして…

 

(ドサッ!!)

 

胸に巨大な「×(ペケ)」の形をこしらえた鬼は、ゆっくりと後ろに倒れた。

 

「決まった…」

 

「…終わったな」

 

正義超人側の勝利を確信し、口々につぶやくロビンとテリー。

彼らはリングの外でその様子を見守っていた。

 

「親父…親父―っ!!」

 

倒れたと同時に父親の元へと駆け寄り、倒れた体を起こすブロッケン。

その目にはもう先ほどまでの敵意はなかった。

 

「…へへ、やられちまったか」

「見事だったぜ。俊敏で隙のない、完璧な手刀だった…」

 

口元から一筋の血を流しながらつぶやいたブロッケンマン。

もう戦う意思がないのか、死期が近いのか、その声は力ないものになっていた。

 

「もう、悔いはねぇ。安心してあの世へ行けるぜ…」

 

ニヤリと笑いながら静かに言ったブロッケンマン。

しかし、それとは対称的に息子の方は目に涙を溜めていた。

 

「なに言ってんだよ…親父、アンタ親友がいるじゃねぇか」

「親友を置いて逝こうなんて、ウォーズマンが聞いたら怒るぜ」

 

かすれた声を出しながら父親を慰撫するブロッケン。

それを受けて父親も穏やかな様子で返す。

 

「…まあ、な。それもそうか」

「それじゃあ…親友(ダチ)を置いてっちゃいけねぇなあ…」

 

「そうだよ親父、だから…」

「だから一緒に…」

 

「…だが、もう無理だ」

 

「…えっ?」

 

ブロッケンマンがそう言うや否や、彼の体がほんのりと光り始めた。

それと同時に白い煙が彼を包み込んでいく。

 

(シュウウウ…)

 

「…ああっ!ブロッケンマンの体が!!」

「元の姿に…戻っていく」

 

体に白煙を纏いながら徐々に元の姿に戻っていくブロッケンマン。

隆々とした筋肉は衰え、超人墓場にいたころの姿に変わっていく。

 

「もう、約束しちまったんだ。負けたら墓場行き…ってな」

「あの力にゃ、逆らうことができねえ…残念だが、もう無理なんだ…」

 

上を向き、まっすぐ天井を見つめながら静かに言うブロッケンマン。

それを見たブロッケンは溜めていた涙を一つ、落とした。

彼の腕は震えていた。腕の痛みも忘れ、力強く父親の体を握る息子の顔には、あふれんばかりの涙が流れていた。

 

「…んでだよ」

「…なんでだよ!なんでそんなこと言うんだよ…!」

「親父が超人墓場に戻りゃあ良かったなんて言ったこと、謝るからさ!!だから…だからそんなこと言うんじゃねぇ!!」

「一緒に…超人閻魔に立ち向かおうって、言ってくれよ…!」

 

もう我慢ならなかった。ブロッケンは胸の内に留めておいたことを一気に吐き出し、父親に向けて言い放った。

それと同時に滝のように流れる涙…今の彼は再会した父親を失いたくない一心で叫んでいた。

 

「ブロッケン…」

 

涙を流す彼を遠くから見つめるキン肉マンたち。

 

するとブロッケンマンは震える彼を慰めるかのように、やせ細った腕を伸ばし、彼の頬に触れ、彼の涙をそっと拭った。

その時の彼の姿はドイツの鬼ではなく、一人の父としての眼差しだった。

 

「…息子よ、よく聞け」

「俺が…俺たちがここへ来た理由はもう一つ、あった…」

 

「お前の…超人界で頭角を現した息子の成長を…この目でしかと見たかったんだ」

 

「…えっ?」

 

父親の言葉に意表を突かれるブロッケン。しかし、それも構わず父親は言葉を続ける。

 

「俺はな…お前の活躍は超人墓場でよく聞いていたんだ」

「一介の若者が、悪のはびこる超人界で手刀を武器に戦っている…とな」

 

「…ッ!!」

 

父の言葉を受けて、彼は今までのことを思い出していた。

 

「敵に許しを請うくらいなら、右肩をくれてやれってな!!」

 

「あーっと!ブロッケンジュニア、ミイラにされずに生きていたーっ!!」

「アイドル超人、初の白星です!!」

 

 

「…なぁロビン、俺も…一人前の正義超人になれたかな…」

 

「ああ…!お前は立派な、正義超人さ…!」

 

 

「さらば!!超人ボディーよ!!」

 

「己の使命…己の使命…」

「己の使命…!!」

 

「ブロッケーンッ!!」

 

「責任を果たさせてくれーっ!!」

「フランケンシュタイナーッ!!」

 

(ズッドォォォンッ!!)

 

「……」

 

沈黙しているブロッケンをよそに、ブロッケンマンは言葉を続ける。

 

「よくわかんねえけど“超人血盟軍”ってのにもなってたんだってな。…ブロッケン一族として誇らしいぜ」

「少なくとも超人界で名の知れた超人になった…俺は、その力が見たかったんだ」

「超人界で頭角を現してきた、お前の実力をな…」

 

「親父…」

 

父親の顔をまっすぐ見つめるブロッケン。

ブロッケンがここに来た本当の目的は、成長した実力をこの目で見たかった。プロレスラーとして、そして父親(ししょう)として有名になった息子と戦ってみたかった。…ということらしい。

ウォーズマンが先ほどまで言っていなかったところを見ると、恐らくブロッケンマンは彼にこの話をしていないのだろう。

父親が死に際に打ち明けた心の内は息子の涙を止め、眼差しを真剣なものにした。

父の言葉が息子を“一人前”にしたのである。

 

「そして、その悲願は達成された。紆余曲折あったが、お前は全盛期の私を見事倒し、俺はお前の腕の中…」

「これほどまでに幸せなこと…は…ない」

 

そういって薄く笑うブロッケンマン。

それを受けて息子は少し笑いながら言葉を返す。

 

「へへ…なんだよ。親父らしくねぇ」

「照れ…くせえじゃねえか」

 

「へへ…へ…へ」

 

「ゴボっ…!!」

 

しかし、時の流れというのは残酷だった。

戦いの傷が今になって出てきたのか、ブロッケンマンは突然吐血した。

額が真っ青になっているところを見ると、かなり危険な状態だ。

 

(ボタ…ボタ…)

 

「お…親父ッ!!」

 

「いかんっ!!大量出血だッ!!」

 

「元の姿に戻ったから傷の負担が大きくなっておるんじゃ!早く病院に行かないと…!」

 

吐血したのを見るや否や急いで処置をするロビン。

焦るキン肉マンを尻目に、ブロッケンも父の口から出た血を袖で拭ってやりながら涙ながらに叫ぶ。

 

「親父、もういい!!しゃべるんじゃねえ!!」

「話の続きは病院で聞く!!だから…だから今は…!!」

 

「へへ…そろそろ、お迎えが来たらしい」

「…すまねぇな、お前の活躍…この目で見れな…くてよ」

「あと…は…墓場で…見てて…や…るから…さ」

 

震えながら息子を激励するブロッケンマン。

自分の身がもう持たないとわかっているのか、彼の目にも涙が見え始めた。

 

「何言ってんだ!!最後まであきらめるんじゃねぇよ!!」

「病院でウォーズマンも待ってる!!だから、死ぬんじゃねぇ!!」

 

しかし、父親を何とか死にはさせまいと彼を鼓舞するブロッケン。

彼に加わり、正義超人たちも次々と彼を励ます言葉を贈る。

 

「そうだ、あきらめるな!!病院でウォーズマンが待っているぞ!!」

 

「そうだぜ!超人閻魔だってミーたちが何とかする!だから死ぬんじゃないっ!!」

 

「ブロッケンマン!お前は親友と墓場から脱出するためにこの世界へ来たんだろう!!」

「なにも悲願が達成されたからって死ぬことはない!超人閻魔じゃって…」

 

そう言った彼らの目にも涙が溜まっていた。

初めてできた親友と脱出するために戦い、生涯を通じて孤独に戦い抜いた彼を見て思うところがあるのだろう。…彼らの目は力強かった。

 

「…親友(ウォーズマン)、か」

 

キン肉マンたちの言葉を受けて再び天井を見るブロッケンマン。

親友の名前を聞いた瞬間、彼は先ほどまでのほどけた表情を変え、真剣なものとなった。

 

「…どうしたんだ?親父」

 

不思議そうに彼を見つめるブロッケン。

次の瞬間、正義超人たちに妙な悪寒が走った。

 

「うっ…!?」

 

(グロロロ…)

(私を倒すとは、いい度胸だな)

(だがそれはあまりに無策、無謀…)

(愚かしい考えだ)

 

「ん?」

 

「な、なんじゃ…この声は」

 

突如暗闇の中から聞こえてくる声。

その声は低く、重みがあった。

 

(ゴゴゴゴ…)

 

「うわっ…地響きじゃ!!」

 

「な、なんだーっ!?」

 

混乱の最中、再び起こる地響き。

しかし、今度はスタジアムの中で引き起こされたものではないようだ。

 

「グロロ…どうやら、勝負あったようだな」

 

暗闇の中、突如現れた影。

巨体の多い超人たちをはるかに上回るほどの巨体、そして同類とは思えないほどの荘厳な見た目…

影の正体は、あの男だった。

 

「ち…超人閻魔!?」

 

                    続く

 

 

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