最後の残虐   作:ぴえろー

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最期の残虐第31話です。戦いが終わり、傷だらけの父親の元へと駆け寄るブロッケン。しかし、ブロッケンマンはすでに虫の息であり、自身の最期を悟っていた。何とか生きてもらおうと必死で説得する正義超人達だったが、突然轟音と共に超人閻魔が現れて…?



第三十一話「あばよ、親父(ファーター)

ステージ 場内

 

「ち…超人閻魔!?」

 

「あ、あれが…!」

 

「なんという威圧感だ…他の超人とは格が違うぞ」

 

全員があっけにとられながらも口々に印象を述べる正義超人たち。

そんな姿もお構いなしに、超人閻魔は言葉をつづける。

 

「グロロ…お前たちの勝負、どうやら正義超人側の勝ちのようだな」

「超人界の神々もさぞかし満足なされたことだろう…正義と残虐、どちらがより優秀なのかということがはっきりしたからな」

「では…」

 

彼が話を進めようとした次の瞬間…

 

「ち…ちょっと待てっ!!」

 

「ん?」

 

ブロッケンジュニアが彼の言動に割って入った。

 

「ブロッケン…」

 

言葉と共に超人閻魔の元へと詰め寄るブロッケン。

しかし、彼の進行を妨げるようにどこからともなく超人ハンターが現れ、彼の前に銃を突き立てる。

 

(カチャッ!!)

 

「うっ!?」

 

「待て…銃を収めよ」

 

しかし、ブロッケンの様子を鑑みたのか、超人閻魔は超人ハンターたちに銃を収めるよう命令した。

 

(スッ…)

 

それと同時に彼らも銃を収め、何とか事態は事なきを得た。

 

「ブロッケンジュニア…お前はこやつの息子であったな」

「いいだろう。言葉を許そう」

 

そう言って無表情のまま彼に進言することを許可した超人閻魔。

 

「頼みが…あるんだ」

「父を…親父をどうか、見逃してはくれないだろうか…」

 

言葉が途切れ途切れになりながらも、彼の発する威圧感に耐えながら懇願するブロッケン。

 

「…ほう」

 

「図々しいことは承知の上だッ…!でも親父を…どうか親父たちをこの世界にとどまらせてはくれねぇか!!」

「親父たちは全力で戦ったんだッ!純粋な残虐超人として、俺たち正義超人に立ち向かってきたんだッ!!」

「親父だって…!」

 

しかし、ブロッケンの必死の懇願は彼のあざ笑いによって一蹴されてしまう。

 

「ふふ…なかなかに面白いことを言う」

「お前の父親を生かすため、この閻魔に約束を破れと…そういいたいのだな」

「泣かせる話ではないか。実に模範的な親子愛だ」

 

しかし、そう言った彼の表情は無に等しかった。まるで、その類の懇願は聞き飽きたとでも言いたげなように。

 

「しかし、だ」

「すまぬが今回に関して、私はこの一件を譲ることはできぬ」

 

超人閻魔は表情を崩さぬまま言葉を続ける。

 

「確かに、いま私がこやつらと交わした約束を破棄し、この場から立ち去ることは容易い」

「だが、この戦いはあくまで正義超人と残虐超人のどちらが強者か、正義超人が王位を継ぐに相応しいかを決めるための戦いであったのだ。…けっきょく勝者も敗者も何の影響も受けなかったというのは」

「そうは問屋が卸さぬというもの…今までやってきたこの勝負に、一体何の意味があったのかということになる」

「裁判を執り行うにおいて最も重要なのは平等…機会を等しく与え、結果次第でそれ相応の報償や罰を与える」

「こと今回に限っても、それは例外ではない。お前に父親を思う心があろうとなかろうと、私はこの男を超人墓場へと連れていく」

「それだけは、どうしても外すことができぬのだ。…それが決まりであるが故にな」

 

そう言って全く譲る気配のない超人閻魔。

裁判を行い、白黒はっきりつけ、それを結果として受け止めなければならないというのは何とも閻魔らしいと言えばらしい考え方だといえる。

彼も彼なりに自身の仕事を全うしようとしているのだ。互いに意見がぶつかってしまうことも十分にあり得ることだった。

 

「ぐっ…」

 

彼の言動に表情をゆがめるブロッケン。

重々しい見た目も相まって、彼の言葉一つ一つに重みがあった。

こんな感じで交渉がやや停滞し、話し合いには時間がかかるかと思われた、次の瞬間。

議論は突如、終わりを迎える。

 

「へへへ…」

 

何があったか突然笑いだすブロッケンマン。いったい何があったのか?

 

「超人閻魔…来やがったな」

 

どうやら彼は朦朧とする意識の中、いま超人閻魔の存在に気づいたのである。

閻魔の姿を見るや否や、彼は突然表情を穏やかにし、しばらく口を閉ざした。

 

「……」

「…息子よ」

 

「えっ…」

 

「じゃ…あ…な」

 

そう言うと彼は、自分の手刀を首筋に向け…

 

(ズバッ!!!)

 

(ブシィッ!!)

 

「……」

 

「…えっ?」

 

斬った。自分の体を、自分の手刀で。

首筋から勢いよくあふれ出た血液。それと同時に彼の中にある意識がとぎれ、体が動かなくなってしまった。

ブロッケンマンは…死んでしまったのだ。

 

突然のことで呆気にとられる正義超人たち。しかしその瞬間(とき)も、すぐに解かれた。

 

「親父!親父――ッ!!!」

 

我に返った息子は開口一番、父親に向けて張り詰めたような大声で叫んだ。

 

「ッ!!」

 

ブロッケンの声と同時に素早くブロッケンマンの元へと走り出したロビン。

それからすぐに彼の体を抱き上げると脈を確認したが…

 

「……」

 

下を向き、静かに首を振った。

 

「…だめだ。もう…死んでいる」

 

「そ…そんな…!」

 

(バッ!!)

 

抱きかかえた体をロビンから奪うように父親を抱きかかえたブロッケン。

それからすぐに彼は耳を心臓の位置に押し当て、心臓が動いているかどうかを確認する。

 

「……」

「…!!」

 

しかし、彼の心臓はもう動いていなかった。ブロッケンのつけた傷と、それに加えて彼が首筋に付けた傷が致命傷となり、出血多量となってしまったのだ。

 

「くっ…!ううっ…うっ…」

 

彼は父の胸に顔を押し当てたまま泣いた。それが、自分の父が死んだことを自身が確信した証拠だった。

 

「……」

 

「ブロッケンマン!!お前…なんてことを…!!」

 

「……」

 

下を向いて沈黙する者、自殺した理由がわからず感情的な言葉をぶつける者…

様々な形で正義超人は彼の死を悲しんだ。

 

「……」

 

その姿を見つめる超人閻魔。

すると彼は静かに歩きだしブロッケンのそばに立つと、ブロッケンマンの死体に触れようとした。

 

「ッ!!」

 

触ろうとした彼の手を見るや否や、ブロッケンは勢いよく彼の腕をはじき返した。

 

「触るんじゃねぇ!!」

 

(バシィッ!!)

 

「……」

 

はじき返されたことに無表情の超人閻魔。まるでそれが来ることをあらかじめ予想していたような表情だった。

 

「てめぇ…一体何のつもりだ!アンタがこの戦いをけしかけておいて、いまさら弔おうだなんて虫が良すぎるぜ!!」

「親父は俺たちで弔う!アンタになんて絶対に渡すもんか!!」

 

「……」

 

彼が発した怒りの言葉に、無表情という名の返答を返す超人閻魔。

それからすぐ、彼は軽いため息をつくと、静かな口調で正義超人たちに言い放った。

 

「いや、私にはその亡骸を回収する義務がある。…ブロッケンマンに頼まれているからな」

 

「えっ…?」

 

超人閻魔の言葉を聞き、呆然とする正義超人たち。

無理もない。いきなりブロッケンマンの亡骸を敵であるはずの超人閻魔に回収させるということを聞けば、誰だって耳を疑う。

しかし、言葉を聞いてすぐに思い直るブロッケン。怒りに任せ、感情的な言葉を言い放つ。

 

「で…デタラメを言うんじゃねぇ!!いったいなんだって親父がお前に死体を回収させようってんだ!!」

 

「デタラメではない。私は確かに頼まれたのだ」

「かつてこの男が戦った、この場所でな」

 

「えっ…?」

 

超人閻魔は約一週間前、ウォーズマンとブロッケンマンが再開してからすぐのことを思い出していた。

彼の脳内にその時の情景が思い出される…

 

―スタジアム 場内―

 

スタジアムの中は相変わらず閑散としていた。誰一人客が来ないのだから至極当然のことではあるのだが。

そのスタジアムの中に3人。一人は寝ており、あと2人はスタジアムの真ん中で対面になって腕を組み、胡坐をかいて座っていた。

超人閻魔とブロッケンマンである。

どうやら彼は超人ハンターを利用し、閻魔をここに呼び寄せたらしい。

一体どうやって呼び出したのだろうか。

 

「……」

 

「…へへ、悪りぃな。わざわざ呼び出しちまって」

 

「……」

 

ブロッケンマンの言葉を受け沈黙という返答をする超人閻魔。

表情から察するにけっこう不機嫌な様子である。

夜ということもあってか、いきなり呼び出されたことに少しばかり怒っているのだろう。

そんな彼を尻目に、彼は言葉を続ける。

 

「なんてことはねぇよ。10分くらいで済む」

「俺だって長話はごめんだからな。早くしねぇとアイツが起きちまう」

 

「…なんだ、話とは」

 

「…折り入って頼みがある」

 

超人閻魔がそう言うと、ブロッケンマンは表情を変え、彼の方へ視線をまっすぐに向けた。

 

「俺が、ウォーズマンの罪を被る…」

「それでウォーズマンの刑期、チャラにはならねぇだろうか」

 

「ふむ…?」

 

彼がウォーズマンの刑期を引き受けるという頼みを受けて、顎に手を当てて聞く超人閻魔。

片眉を上げたところを見ると、彼のこの頼みは閻魔にとってかなり意外だったようだ。

ブロッケンマンは言葉を続ける。

 

「無理は承知だ。…だが、俺はどうしてもこの目的を果たさなくちゃならねぇ」

「なにか、超人墓場のルールの中にそういった類のものがありはしねぇだろうか」

 

「……」

 

彼の言葉を受け、下を向いて考え込む超人閻魔。

それからしばらくすると、何かを思いついたのか視線をブロッケンマンの方へ戻し、説明を始めた。

 

「…ああ、確かに超人墓場の規則で、亡者の罪を肩代わりすることもできなくはない」

「だが、仮に刑期を分けあったとしても私たちや受刑者自身に何の利益もない。名ばかりのルールだったから、ここ数百年間ただの一度も適用したことなどなかったが…」

 

そう言うと彼は何かに気づいたのか、顎をさすりながら訝し気な表情で彼に疑問をぶつける。

 

「なんだ、ブロッケンマン…いやに言動に違和感があるな」

「まさか、正義超人との戦いを前に怖気づいたのではあるまいな?」

 

しかし、彼は閻魔の是非に対し、首を振って否定した。

 

「違う。俺は別に怖気づいたわけじゃねぇ」

「ただ…」

 

何かを言いかけて下を向いてしまったブロッケンマン。

しびれを切らしたのか超人閻魔が身を乗り出して早く答えるよう急かした。

 

「ただ…なんだ?」

 

「あの男を、ウォーズマンを生かしてぇだけだ」

 

「…なぜだ?」

 

超人閻魔の疑問に彼は表情を変えず、上を向いた。

 

「…俺はもう、この世界に未練はねぇ」

 

「…なんだと?」

 

彼の意外な一言に訝し気な表情をする超人閻魔。

その表情を保ったまま言葉を続ける。

 

「おかしいではないか。確かお前はラーメンマンへの復讐のためにこの世界へと来たのではなかったのか」

 

「ああ。確かに超人墓場から現世へ戻れるということを聞いた時にはそう思った」

「けど、しばらくしてから俺は考えた。本当は別に復讐したいなんて思ってねぇんじゃねぇのかって」

 

「……」

 

超人閻魔は黙って聞いていた。

彼が何を言いたいのかということを理解したい…そんな様子だった。

 

「俺はもう、現世に帰って息子の成長が見られればそれでいいんじゃねぇのか…ってな」

「復讐なんざ一介の理由(たてまえ)にすぎねぇ。ほんとうはただ、息子の成長を見たかっただけだったんじゃねえか…って、考え始めたんだ」

「けど、言っちまった以上引っ込めることはできねぇ。…俺はどうしたらいいのかわからなかった」

「一体どうやって、このことを誰かに伝えりゃいいのか…ってな」

 

「そうか…」

 

一息ついて、ブロッケンマンはさらに説明を続ける。

 

「そんな時だった…俺がアイツの刑期を被ろうと思ったのは」

「思えば、俺は元々息子に会うことすら許されず、アイツに脱走ということを提案されるまではまるでそのことを考えるまでには至らなかった」

「けど、アイツはその活路を見出してくれた。…できれば何か、その恩に報いたい」

「そん時に、俺は超人墓場の刑期について考え始めてな。もしかしたら、超人墓場に刑期譲渡のルールがあるかもしれねぇと思い至った」

「だからアンタに、そういった類のルールがあるのかどうかってのを聞こうと思って、ここに来てもらったってわけだ」

 

「…なるほど、“親友”のために自分は罪をかぶりたい…」

「だから、あやつの刑期をブロッケンマン、お前が引き受けると…そう言いたいのだな?」

 

「ああ、そういうことだぜ」

 

「……」

 

超人閻魔はしばらく考えていた。

この男の決断を自分はどう受け止めるべきか?そもそも、このルールを適用すべきなのか?様々な疑問と腑に落ちない部分を頭の中で整理していた。

何分か経った頃だろうか。超人閻魔は閉じていた口を開き、彼に向けて自分が考えていることを口に出した。

 

「よかろう。ルールの適用を認める」

「この戦いが終わればお前の魂はこの世から消え、ウォーズマンの刑期を背負った状態で超人墓場へ送還しよう」

 

「…ああ、頼むぜ」

 

そう言ったブロッケンマンの表情は険しさの中にも、どこか安心したような様子だった。

しかし、超人閻魔の方は少し腑に落ちない部分があったようで、彼はブロッケンマンに対し訝し気な表情で話し始めた。

 

「だがブロッケンマンよ…一つ聞かせてはくれぬか」

 

「なんだ?」

 

「友人のために刑期を自分が引き受ける、ということはわかった」

「だが…親友のためにわざわざ刑期を背負うというのは訳が分からない」

「なぜそこまでしてあの男を庇う?その“親友”とやらはそこまで大事なものなのか?」

 

超人閻魔はまっすぐな目で彼に疑問をぶつけた。

これは彼が完璧超人であるが故の、友情に対する疑問ということなのか。

彼の質問を受けて、ブロッケンマンは表情を変えず、一瞬の間沈黙した。

そしてまっすぐ視線を超人閻魔の方を向けると、静かに語りだした。

 

「…アイツは、狂人と言われたこの俺を躊躇なく “親友”と言ってくれた」

「今までのやつは俺の姿を見るなり逃げたり後ろから石を投げつけて来たりしてたんだ。…けど、アイツは俺の正体を知ってもなお友達でいようとした」

「だから単純に、嬉しかったのさ。俺みてぇな超人でも、親しくしてくれる超人がいたってのがな」

「親友が大事なのかどうかは、正直俺にもわからねぇ。けど…」

「アイツは間違いなく俺の親友だ。俺の苦しみを理解し、分かち合おうとしてくれた仲間だ」

「だから、アイツの苦しみも…俺が背負う」

 

「……」

 

ブロッケンマンは一息つくと超人閻魔に視点を戻し、さらに説明を続ける。

 

「アイツはまだ若い。きっと、現世に置いてきた仲間たちがいるだろう」

「だからアイツには、俺よりもそいつらのために生きていてほしい」

「これが、俺にできる最初で最後の恩返しだぜ…」

 

「……」

 

彼の言葉を受けてしばらく黙っている超人閻魔。

一体何を考えているのだろう。しばらく顎に手を置き、険しい表情を崩すことなく考え込んでいた。

それからしばらく経ち、彼は顎から手を離すと、無表情のまま彼に向けて落ち着いた言動で語りかけた。

 

「…そうか。相分かった」

「お前の言葉、しかと心に刻ませてもらおう」

 

今までに彼が言ったことをまとめると、ブロッケンマンは超人閻魔に戦いを強いられる前から、彼は死ぬことを決めていたようだ。それと同時に、自分は親友であるウォーズマンの刑期を背負い、超人墓場へ行くこととしていた。

そう考えた理由として、自分がウォーズマンを想ってのことであるということと、現在も生きているであろうウォーズマンの仲間たちのためにも自分が罪を被ろうとしたからということである。

 一見するとこの行動はブロッケンマンが年配であるが故の行動にも見えなくもないが、彼は決してそんな理由でウォーズマンの刑期を背負おうとしたのではなく、彼自身がウォーズマンに対し、純粋に生き延びてほしい。そしてその命を、自分のためではなく生きている他の仲間たちのために使ってほしい。というブロッケンマンの意図があったのだ。

それが、不器用な彼なりにできる最初で最後の恩返しなのだということと信じて…

 

「…と、いうわけだ」

 

ひとしきり回想の説明を終え、一息つく超人閻魔。

しかし、すぐに彼はまた説明をし始めた。

 

「そう、伝えられていたのだ。だから私はここに来た」

「この男の最期と、心構えが如何ほどのものかを見届けにな」

 

「…親父」

 

「これで、信じてくれるか?私はこやつに言われ、死体を回収に来た」

「自分の最期と同時に、このスタジアムへと来てくれ…とな」

 

「………」

 

じっと父の死体を眺めるブロッケン。

父の体はまだ死んで間もないからなのか、まだ少しばかり体のぬくもりが残っていた。

 

(…親父は、ウォーズマンを自分の命に代えてでも守ろうとした)

(もしかしたら、親父にも正義超人としての思いが芽生え始めていたってことなのか?)

 

(……)

(…そうか)

(わかったよ、親父)

 

「…わかったよ。アンタに親父の体、渡すことにするよ」

 

そういうとブロッケンは顔を上げ、父親の死体を彼に渡し、彼に父の弔いを託した。

 

「…そうか。わかった」

「この超人閻魔。命に代えてでもこの男を超人墓場へと連れていくことを誓おう」

 

そう言ってしばらくの間ブロッケンマンの遺体を見ていた超人閻魔。

すると、何かに気が付いたのか視線をブロッケンの方へ戻し、一つ、疑問を投げかけた。

 

「…ブロッケンよ、一つ良いか?」

 

「…なんだ?」

 

「…私は、完璧超人だ。仲間意識という感情はあまり芽生えたことがない」

「それは残虐超人も例に漏れない。本来ならば友情とは程遠い一族であったはずなのだが…」

「一体何が、この男を変えたというのだ?」

 

「…んなもんわかるかよ、俺はあの2人じゃねぇし」

 

疑問をぶつける超人閻魔に対し、顔を横にそらして答えるブロッケン。

しかし、すぐに向きを戻すとまっすぐな目でこう返答した。

 

「…けど、親父とウォーズマンは間違いなく親友だった。信頼していたから、親父は自らを犠牲にして超人墓場へ帰ることにした」

「それだけは、事実だと思うぜ」

 

「…そうか」

 

そういいながら超人閻魔は表情を変えず頷き、後ろを向いた。

どうやら、用事が済んだので超人墓場へと帰るようである。

 

「行くぞ、ものども」

 

そう言うとスタジアムに隠れていたのか6人ほどの超人ハンターたちが彼を取り囲むような陣形を取った。

それを見ると、彼はどこからか異次元空間を取り出し、ブロッケンマンを優しく抱き上げた。

それを見て手伝おうとする超人ハンターたち。しかし、超人閻魔はそれを断り、

 

「…かまわん。こやつは私が運ぶ」

 

静かに、そう言った。

 

「では…」

 

そう言って去ろうとした次の瞬間、彼は突然立ち止まった。

何かを思い出したのだろうか?

 

「…ああ、そうだ」

 

そう呟くと、彼はブロッケンの方へと歩いて行き、彼の前に立ち止まった。

 

「ブロッケンとやら、これを渡してくれとお前の父に頼まれていた」

 

すると超人閻魔はブロッケンマンの被っていた軍帽を外し、彼に渡す。

 

「…親父の、帽子」

 

「実家の帽子掛けにでも掛けておいてくれとのことだ。くれぐれも穴の一つでも開けないように…とな」

 

「…へっ、相変わらずだな」

「わかったよ。帽子掛けにでも掛けておいて、大事に保管すると伝えておいてくれ」

 

「…わかった」

 

「では、さらばだ」

 

そう言い、超人閻魔は異次元空間の中に消えていった。

徐々に消えていく彼らの姿と、自分の父を静かに見つめるブロッケン。

その表情は父との別れを惜しむというよりも、どこか達観したような、何かに気づいたような表情だった。

 

「…………」

「…あばよ、親父(ファーター)

 

とにもかくにも、これで正義超人と残虐超人との勝負は終わった。

キン肉マンをはじめとした正義超人たちはいろいろ積もる思いがありながらも、落ち着いた様子でスタジアムを後にした。

父親が残した、唯一の形見を引っ提げて…

 

               ―次回、最終回―

 

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