最後の残虐   作:ぴえろー

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最期の残虐、最終話です。最後までご愛読いただきありがとうございました。初登校ではありましたが無事完走できたこと、心よりお礼申し上げます。
では、本編をどうぞ。

~あらすじ~
 正義超人と残虐超人との戦いは最後、父であるブロッケンマンの自殺により幕を閉じた。キン肉マンをはじめとした正義超人たちはブロッケンマンの形見である軍帽を引っ提げて、仲間たちが療養している病院へと直行する。
それから何日か経って、何とかウォーズマンとラーメンマンの二人はメディカル・サスペンションという医療器具によって回復の兆しを見せていたが、ブロッケンの方は体の方は比較的軽症であったものの、どこかやるせない思いがあるようで、それを心配したロビンはブロッケンと話をしに彼のいる病院の屋上へと向かうことにした。




最終話「天と地の決意」(エピローグ)

病院 屋上

 

「…ブロッケン」

 

「……」

「…ああ、アンタか、ロビン」

 

一準の沈黙ののち、後ろを振り返るブロッケン。

何か考え事をしていたようだ。

 

「ウォーズマンの調子はどうだ?」

 

そう聞くブロッケンにロビンは下を向きながら首を横に振ってこたえる。

 

「…いや、まだ目を覚まさない」

「…ラーメンマンもな」

 

「…そうか」

 

「どうやらお互い、突貫をした時のダメージが予想外に大きかったらしくてな。…超人とはいえ、回復にかなり時間がかかるそうだ」

 

「……」

「…まあでも、2人は治療を受けてりゃ助かるんだ」

「気長に待てば、また一緒に戦えるさ」

 

「…ブロッケン」

 

それは…とロビンが言いかけたその時、

ブロッケンが静かに口を開いた。

 

「…俺さ、前に観光旅行であのスタジアムに行ったとき」

「ラーメンマンに聞いたんだよ。“親父の最期はどうだったのか”って」

「そしたらそん時はラーメンマン、黙っちまってさ。…多分、あん時はなんて返せばいいかわからなかったんだと思う」

 

「……」

 

「でも、実際に2人が戦っていた時」

「なんというか…生き生きしてたんだ。2人の表情が」

「まるで今までの付き物が落ちたようにさ…」

 

「…そういえば」

 

何かを思い出したのか、ロビンは遠くを見つめながら静かに語りだす。

 

「確かに、最初は葛藤していたラーメンマンも、途中からは迷いなく攻撃を仕掛けていた」

「自分が元残虐超人としての負い目がなくなった…ということなんだろうか」

 

「えっ、ラーメンマンのやつそんなことをロビンに言ってたのか?」

 

意外そうな表情でロビンに尋ねるブロッケン。

そんな彼にロビンは薄く笑いながら質問を返す。

 

「…師匠も弟子に言えない悩みがあるってものさ」

「まあ、このことはラーメンマンに内緒だぞ」

 

「ああ。わかった」

 

「…話を戻すぜ」

 

ブロッケンは話をいったん戻した後、言葉を続ける。

 

「多分だけど、親父たちはあの戦いにそれなりの未練があって戦ってたんじゃねぇのか…って思うんだ」

「そしてそれが…」

 

「それが…あの戦いで吹っ切れた」

「全力を出し、その上で勝負することができたから…」

 

そういうロビンに彼は静かに頷き、言葉を続ける。

 

「ああ。だから親父は、躊躇なく死を選んだ」

「親父が“最後の残虐”として未練なく超人墓場へと逝けた。…ってことなんじゃないかって思うんだ」

 

「…自分の子供の成長も見れたからってこともあって…てことか」

 

「…そういうこと、だと思う」

 

そう言って、少し迷いのある形で彼の言葉に同意するブロッケン。

彼らの結論があくまで予想の域を出ないのは、当人たちではないからということもあるのだろうが…とりあえず、そう結論付けた。

それが、残虐超人2人に直接関係のある、屋上の2人が出した結論であった。

 

「……」

 

「……」

 

2人の間に沈黙が流れる。

屋上に吹く真昼の風はほんのり暖かく、傷ついた2人の体を優しく包み込んでいた。

 

「…ブロッケン。それはそうと、少し提案があるんだが」

 

「ん、なんだ?随分と唐突だな」

 

疑問に思う彼を横目に、ロビンは説明を始めた。

 

「あいつらが入っているカプセル…どうやら“メディカル・サスペンション”というらしいんだが」

「私たちもそれに入らないか?…ということだ」

「正義超人の調印式も近い。…王位争奪戦からそこまで時間が経ってない上での連戦だったから、休憩をした方がいいと思ってな」

「今回の戦いではお互いが傷つきすぎた。…どうかな?」

 

彼の言葉を受けてしばらく黙り込むブロッケン。

少し考えると、彼は顔を上げて静かにうなづいた。

 

「…そうだな。確かにちょっと動きすぎたしな」

「しばらくの間、休ませてもらうよ」

 

「そうか。…いい判断だと思う」

「では、行こう」

 

そう言って彼らは病院の屋上を後にした。

この後、彼らが病院に設置されていたメディカル・サスペンションに他のアイドル超人ともども入り、近く行われる決戦に備えたのは、本編で示されている通りである。

 

一方そのころ、超人墓場では…

 

(タッタッタッ…)

 

超人ハンターの一人が超人閻魔の元へと急ぎの伝達をしに彼のいる場所へと走っていた。

様子から察するに何かしら急ぎの用事のようである。

 

(バァンッ!!)

 

勢いよく扉を開けるハンター。

それからのどが張り裂けんばかりの大声で叫ぶ。

 

「閻魔様ッ!!一大事です!!」

 

「ああ、おまえか」

「うるさいぞ…急ぎの用事とはいえ、ドアはしずかに…」

 

「そんなことを言っている場合ではありませんぞ!完璧超人界を揺るがしかねない一大事でありますのに!!」

 

「…ほう?」

 

超人ハンターの言葉を受けて、彼は片眉を上げた。

どうやら彼は、予想外のことが起こると片眉を上げる癖があるらしい。

 

「閻魔様ッ!!お聞きになられましたか!!」

「どうやら正義・悪魔・完璧の3種族で…」

 

「…ああ、聞いておる。近々不可侵の調印式が行われるのであろう?」

「まったく、完狩(ネプチューンマン)のやつも随分と偉くなったものだな」

「我々を差し置いて完璧超人の代表を名乗るとは…図々しいにもほどがあるぞ」

 

「全くです。閻魔様をはじめとした完璧超人がまだいらっしゃるというのに」

「ですから…」

 

そう言う彼に閻魔は手を前に出して静止した。

彼には彼なりの提案があるようだ。

 

「まあ待て、皆まで言うな。ちゃんと策は考えておる」

「だから、こうして身支度も整えてきた」

 

「おお…!そのお姿は…!」

 

驚く超人ハンターの視線の先には…

剣道で使う武具、完成された肉体、そして、憤りに満ちた血走った眼差しがあった。

ストロングザ武道、ここに降臨である。

 

「…ストロングザ武道、この名を使うのは、一体いつぶりやら」

 

「し、しかし…!」

「そのお姿になった、ということはまさか…閻魔様直々に向かわれるのですか?」

 

「無論だ。我々と戦わずして完璧超人を制したと思われたくはないからな」

「必ずや、調印式を中止させて見せよう」

 

「はっ!では、ご案内のためにご同行させていただきます!!」

「ああ。頼むぞ」

 

(……)

(…確かに)

(確かに、私はこの調印式を阻止するために現場へと向かっている)

(だが、私が戦いを行う理由はもう一つあるのだ)

 

超人閻魔は自分の手をじっと見つめた。

そして再び手を握ると、頭の中でブロッケンマンのことを思い出す。

 

(…私は、知りたくなった)

(ブロッケンマン…あの男を変えた“友情”とやらが、一体どのようなものなのかを)

 

閻魔は顔を上げ、天井をじっと見つめた後、そっと目を閉じる。

 

(そして、残虐超人を打ち破った正義超人とやらの実力を…この体で試したくなった)

(聞けば“あの男”も、正義超人たちの持つ友情の前に敗れ去っていると聞く。…それならば)

 

そして目をカッと開き、決意を新たにする。

 

(試す価値は、十分にある!!)

 

「閻魔様、お急ぎください!もうすぐ調印式が行われます!」

 

「ああ、わかった」

 

「いま行くぞ」

 

そう言ってドアを開き、超人ハンターの後に続いた超人閻魔。

この後、正義超人主催で行われた調印式にストロングザ武道として登場し、数多の敵と戦うことになるのは本編で語られている通りである。

 

こうして、ブロッケンマンの本当の死により、ブロッケン、超人閻魔共に新たな道を歩み始めた。

この決意が、後の完璧超人と正義超人の2種間での一大決戦になることも知らずに、今はお互いがやるべきことにまい進するのだった。

 

そして…超人閻魔、もといザ・マンは

3種族で調印された不可侵条約を破棄するべく、仲間たちと共に「完璧・ 無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)」を結成し、正義超人たちの前に牙をむくことになるのである。

 

                   -終わり-

 

 

 

 

 


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