最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐番外編その2です。
メディカル・サスペンションで怪我を治すことが出来たウォーズマンだったが、親友を守れなかったことに責任を感じてふさぎ込んでしまう。その状態を何とか解消しようとするキン肉マン達だったがなかなか改善しない。そんな中、テリーがウォーズマンを励ますことに失敗した矢先にブロッケンジュニアが現れ、逃げていった彼を追いかけていった。その時、空は厚い雲に覆われ始めていた…


番外編 その2「俺は、お前に”報復”する」

公園

 

(ザァァァ…)

 

河川敷近くの公園も、例外なく雨が降っていた。大雨で湿った地面から漂うむせ返るような土と草のにおいと湿気からくる霧が公園全体を包み込み、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

そんな場所に一つ、霧に紛れて建物が一つ現れた。それはどこにでもある屋根付きのベンチだったが、幻想的な雰囲気も相まって特別な場所へと変貌していた。さながら、霧の海に揺蕩う一つの「宮殿」のようであった。

 

「あっ、雨が…」

「傘…持ってこなかったな」

 

そんな宮殿に一人、ポツンと座る王子様がいた。表情が見えないクールな王子様は、いま雨の存在に気づいたようだ。

どうやら考え事をして気づいていなかったらしい。

 

「…ブロ」

 

降りしきる雨の中、逝ってしまった親友のことを想うウォーズマン。目には涙が浮かび、自分が感じている責任を噛みしめていた。すれ違いが生じているのが何とも歯がゆい。

 

(コツ…コツ…)

 

その時、彼の正面から足音が聞こえてきた。これはブーツの足音だろうか?

 

「よう、随分と降って来たな」

 

そう言って誰かが建物の中に入って来た。ブロッケンジュニアだ。

どうやら雨の中、傘も持たずにここへ来たようだ。ずぶ濡れで、息が切れていないところを見ると気にせずに歩いてきたのだろうか。

 

「まさか夕立に合うとは思わなかった…傘ァ持ってくりゃよかったな」

 

薄く笑うブロッケン。そう言ってウォーズマンの対面のベンチに無造作に座った。

帽子や服からしたたり落ちる雫が、雨の強さを物語っている。

 

「…ブロッケン」

 

そう言って彼の方を睨むウォーズマン。

ベンチに座って相対する二人。しかし、先ほどのテリーマンのようにフランキーな雰囲気ではない。

敵対する勢力が睨み合っている…まさに対峙しているというのが相応しかった。

 

「お前も俺に、何か言いに来たのか?」

 

「ああ。ちょいと世間話をな…」

 

「だったら他を当たってくれないか。今はそんな気分じゃない」

 

そっぽを向いてつっけんどんな態度をとるウォーズマン。しかしそれもお構いなしといった様子でブロッケンは言葉を返す。

 

「なんだ、時間がないってのか?」

「落ち込む時間(ヒマ)はあるくせによぉ」

 

そう言ってニヤリと笑い、ブロッケンはウォーズマンを揶揄する。

その時、ウォーズマンの開いていた手がギュッと握りしめられた。

 

「…なんだと?」

 

少しイラついた様子でブロッケンの方を向くウォーズマン。そんな様子を見て楽しんでいるのか、彼は意地悪な笑みを浮かべて彼に言葉を畳みかける。

 

「勝負に負けたくらいでいちいち落ち込みやがってよぉ。こんなんじゃ勝てる試合も勝てねぇぜ」

「アイドル超人としても務まるのか…甚だ疑問だな」

 

(ガタッ!)

 

ブロッケンがそう言った瞬間、ウォーズマンは立ち上がった。もう我慢ならんと、ブロッケンに対して言い返す。

 

「うるさい!もう放って…」

 

「まあ待てよ。俺は別にお前を茶化しに来たわけじゃ…」

 

「うるさいって言ってるだろ!今はお前と…」

 

「おい!…いいから聞けよ」

 

「……」

 

ブロッケンの制止に口を閉ざすウォーズマン。不服そうな態度で自分が座っていたベンチに腰を下ろす。

 

「…それで?」

 

そう言ってブロッケンの方を見るウォーズマン。その様子を一瞥し、ブロッケンは顎に手を置いて足を組み、口を開く。

 

「…お前、前に言ってたよな」

 

「…何を?」

 

「“報復はねぇ”ってさ」

 

(ギラリ…)

 

「…えっ?」

 

「残虐超人は相手を絶ってぇにぶっ殺すから、報復はねぇんだって」

「言ってたよな…」

 

「…何が言いたい」

 

ウォーズマンが怪訝な表情をした次の瞬間

 

(ジャキィン!)

 

空気が切り裂かれる音がした。物を断たんとする音が公園中を駆け巡る。

それと同時にウォーズマンは建物の外へと放り出された。

 

「うわ…」

「な、なにをするんだいきなり!」

 

たまらずブロッケンに対して怒りをぶつけるウォーズマン。

自分の頬から流れる液体に気が付く。ブロッケンが彼に向かって手刀を放ったのだ。

傷は浅かったが、威力は強い。直に当たればひとたまりもないだろう。

 

「……」(ニヤリ)

 

そんな彼を一瞥すると、ブロッケンは無言のまま彼に向かって走ってくる。

 

(ブウン!)

 

そして手刀の射程距離に入ると、ウォーズマンの方へ手刀を連続で放っていく。

 

(ブン!ブウンッ!!)

 

「うわ…」

 

「どうした!さっきからへっぴり腰で避けやがってよぉ!」

「負けちまったからって報復がねぇわけじゃねぇんだぞ!!」

 

「ま、待ってくれ!お、俺はもう…」

「俺はもうお前たちに刃を向けるつもりはないんだ!どうして俺を襲うんだ!!」

 

困惑した表情でブロッケンに言葉を投げかけるウォーズマン。

しかし、ブロッケン自体はそれを意に介さぬようで

 

「うぬぼれんじゃねぇ!あいつらはもう許してるのかもしれねぇが」

「俺はまだ許したわけじゃねぇ!一時的にとはいえ、お前は正義超人を裏切っているわけだからな!」

 

恨み言をウォーズマンに向かってぶつける。

空が若干薄暗くなっているので、そう言ったブロッケンの表情は見えない。ただでさえ軍帽で隠されているのだから、暗くなれば表情が見えなくなるのは当然のことだった。

 

(ギィンッ!!ジャキィンッ!!)

 

降りしきる雨の中、ブロッケンの一方的な猛攻が続く。

 

(グウゥゥン…)

 

次の瞬間、ウォーズマンの頭上にブロッケンの手刀が現れた。

 

「ッ!!」

 

(ギィンッ!!)

 

「くっ…」

 

ウォーズマンは反射的に腕で彼の手刀をなんとか受け止める。

しばらく交差した後で、ブロッケンは反撃を回避するために素早く手刀を収めた。

 

「……」

「……」

 

雨の中、再び対峙する2人。

それからすぐに、ニヤリと笑いながらブロッケンが口を開く。

 

「…へへ、何とか受け止めやがったか」

「そりゃそうだな…アタマ破壊されちゃあ、おめぇはおしめぇだもんな」

 

へへへ…と笑いながらブロッケンが腕を振り上げようとした。

その時だった。

 

(プシィッ!!)

 

とつぜん腕から出血するブロッケン。出血の仕方からして、まるで何かに斬られたような血の出方だった。

 

「!!」

 

一瞬目を見開き、驚いた様子のブロッケンだったが、すぐに表情を元に戻し、ウォーズマンの方を向く。

 

「…へぇ、切れ味が良いじゃねぇか」

 

「ど、どうして出血を…」

 

どうやらウォーズマンの方はよくわかっていなかったようだ。呆気にとられた表情でブロッケンの様子を見ている。

 

「俺の真似事か?親父の指導の賜物ってやつだな」

「来いよ!そのお前が習ったっていう“ベルリンの赤い雨”を、俺が見てやろうじゃねぇか!」

 

「ちっ…!」

 

再びウォーズマンに向かってくるブロッケン。それを見たウォーズマンはまず彼の手刀を封じようと組み合いへと持ち込んだ。

 

(ガシィッ!!)

 

降りしきる雨の中手と手が組み合う2人。ウォーズマンは手刀を出させまいと自分の手に力を入れる。

 

(ギリ…ギリ…)

 

「…ふん」

 

しかし、握力に定評のあるブロッケン。これを鼻であしらうと彼の握っている力よりもさらに大きな力で握り返した。

 

(ギリギリギリッ!!)

 

「ぐあああああっ!!」

 

痛みのあまり絶叫するウォーズマン。ブロッケンの握力は頭蓋骨すら破壊してしまうのだ、彼が感じている痛みは想像以上のものだろう。

 

「…へへ、何考えてんだ。俺の握力は正義超人で一番強いってのはわかってたことだろうに」

 

そう言って組んでいた手を放すブロッケン。

そこから息つく暇もなく、ブロッケンはウォーズマンの脇腹に手刀を入れた。

 

(ブウン!!)

 

脇腹に近づく手刀に気づき、ウォーズマンは体を横に逸らせて手刀を素早く回避する。

 

「させるか…!!」

 

(ガシィッ!!)

 

「!!」

 

それから何とか手刀を受け止め、ブロッケンの手刀を逆に左手で掴み、彼の行動を一時的に封じた。

 

(ガシィッ!!)

 

「!?」

 

そして自身の上半身を右にねじり、空いている右手でブロッケンのみぞおちに拳を一気に打ち込んだ。

 

(ドゴォッ!!)

 

「ぐぁぁっ…!」

 

みぞおちへの打撃をもろに受け、狼狽するブロッケン。

しかしウォーズマンは攻撃の手を緩めない。

そのまま彼の背後に回り込み、自身の足をブロッケンの足に食い込ませた。

 

「!!」

 

敵の足に自分の足を食い込ませ、上半身を前のめりに固めて、その体勢で一気に上半身を地面へ叩きつける技…

ウォーズマンの十八番、パロ・スペシャルである。

 

「はあ…はあ…」

「…ブロッケン、俺はお前の技を使わない(・・・・)

「手刀を使わずに、お前を地面に叩きつけてやるぜッ!!」

 

ウォーズマンはそう叫んで、いつものように上半身を地面へ叩きつけようとした。

が…

 

(グッ…ググッ…)

 

「ッ!?」

 

動かない。腕・足を固定したままブロッケンの上半身を地面に叩きつけようとしているのに、彼の上半身は微動だにしない。

 

(ど、どういうことだ…?ブロッケンの上半身が全く動かない…)

 

ウォーズマンが焦っていると、下の方から小さな笑い声が聞こえてきた。

 

「へへへ…」

 

「何がおかしい!!」

 

その笑い声が癪に障ったのか、ウォーズマンはブロッケンに怒りをぶつける。

その怒りの声に対して静!!!いながら、彼は口を開く。

 

「…なんてことはねぇ」

「おめぇ、前にこの技を放ったとき、バッファローマンに外されたことがあったよなァ」

 

「…なにがいいたい?」

 

訳が分からないといった様子でブロッケンに聞き返すウォーズマン。

まだ依然としてパロ・スペシャルの体勢のままだ。

 

「へへ…!!」

「わかってねぇ…わかってねぇんだよ…!!」

「おめぇ…自分の技のことがなんにもわかってねぇ…!」

 

ブロッケンはニヤリと笑いながらウォーズマンの方へ頭を向けて言い放つ。

 

「なんだと!!」

 

ムキになりながら上半身を叩きつけるために力を入れるウォーズマン。

しかし、ブロッケンの上半身はビクともしない。まるで地面に対してこの技を掛けているかのようだった。

 

「教えてやるぜッ!!おめぇがなんでバッファローマンに“パロ・スペシャル”を外されたのか!!」

「それはな…!!」

 

「こういうことだぜーっ!!!」

 

(バキボキゴキィッ!!)

 

「な、なんだ…?この音は…」

 

突然下の方から聞こえてくる異音。しかし、どこかで聞いたような音だった。

果たして、この音の正体は一体何なのか?

 

                  -続く-

 

 

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