最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第4話です。路地裏で作戦会議をしていたブロッケンマン達の前に突如として現れた悪魔超人アシュラマン。超人狩り作戦を阻止するべく彼らに戦いを挑むが…果たしてアシュラマンはブロッケンマン達の計画を阻止することが出来るのか?


第四話「残虐(マダー)VS悪魔(デビル)

「一体何の話をしている?」

 

路地にいたブロッケンマンたちは、ある男に声をかけられた。

 

「"超人狩り"と、聞こえたが」

 

巨大な体、青色の肌、そして鍛え抜かれた6本の腕が、暗闇から現れた。

 

悪魔6騎士の一人、そして魔界のプリンスでもあるアシュラマンだ。

 

彼は幾度となく正義超人たちの前に現れそのたびに苦戦させてきたが、とある事情により正義超人と行動を共にするようになった人物である。

 

ちなみにバッファローマンとは王位争奪編で共に「超人血盟軍」として戦った仲でもある。

 

「フン…俺たちの話を聞いていたのか」

 

「盗み聞きとは…趣味が悪いな」

 

へへへ、とブロッケンマンは笑う。

 

「カカカッ…ありがたい。あいにく、悪魔超人は批判されることが、名誉なものでな」

 

「悪魔超人?…初めて聞くなぁ」

 

不思議そうにアシュラマンの方を見るブロッケンマン。

 

屈強な見た目と他の超人とは大きく異なった見た目に惹かれたという事なのか。

 

「おいブロ、こいつはアシュラマンだぜ」

 

「"冷血、残虐、憎悪"が詰まった魔界の中でトップに君臨する」

 

「魔界のプリンス様だ…」

 

謎の男は彼に対し、まるで今までそのことを知っていたかのように、冷静に言った。

 

「ほほう、王子(プリンツ)か…」

 

「いきなりエライ奴と出会っちまったモンだ」

 

ブロッケンマンは壁に寄りかかり、腕を組みながらそう言った。

 

そのとき、何となく彼の表情は(悪い意味で)明るかった。

 

(久々に骨のありそうなやつだぜ。果たしてどれくらいの実力なのか…)

 

「説明してもらおう、"超人狩り"とは何だ?」

 

アシュラマンは語気を強めてそう言った後、彼らに詰め寄っていく。

 

…いや、詰め寄ったんじゃない。

 

アシュラマンは一歩を踏み出した瞬間、すでに自分がブロッケンマンに対して攻撃を仕掛けられる距離まで移動していた。

 

恐るべき速さ、さすが魔界のプリンスといったところか。

 

「ブロッケンマン!」

 

男が叫んだ時にはもう遅かった。

 

アシュラマンはすでに空高く舞い上がっており、彼の必殺技の一つ「阿修羅稲綱落とし(あしゅらいづなおとし)」の体制となっていた。

 

「お前らを遠くから観察していた。暗闇でもう一人のほうはよく見えなかったが、貴様はよく見えたぞ"ブロッケンマン"!」

 

怒りと憎悪が混じった声で叫ぶアシュラマン。

 

その声は路地裏全体に響き、夜の街を駆け巡った。

 

「へへへ…俺の名前を、知ってやがったのか」

 

「バッファローマンの雪辱は…俺が果たすッ!」

 

「くらえッ!阿修羅稲綱落としーッ!!!」

 

宙に浮かんでいたアシュラたちが勢いよく落ちてくる。

 

この技は、今のコンディションにはうってつけだ。「基本」縦方向に落とす技のため、技の出しにくい、路地のような狭い場所でも大ダメージを与えられる。

 

おまけにこの技は、相手の足を完全に封じて逃がさない。この技を使われたらまず、足技を繰り出すことはおろか、軽く足を動かすことすらままならないだろう。

 

…それにしても、一体どうやって彼はブロッケンマンの足を封じているのだろうか。

 

「……」

 

ブロッケンマンは目をつむり、黙っていた。

 

もはやこれまで、と覚悟を決めたのか。それとも別の策を考えているのか…。

 

するとブロッケンマンは目を見開き、アシュラマンのほうを向いた。

 

「うっ!?」

 

不気味な眼光だった。さっき見た不敵な笑みとは違い、殺気に満ちた「残虐者(マダー)」の目だった。

 

例えるなら、猛獣が獲物を見つけた時に時折見せる、鋭い眼光…といったところだろうか。

 

アシュラマンはその目を不意に見てしまったため、一瞬たじろいでしまった。

 

そしてその一瞬の隙を狙い、ブロッケンマンはアシュラマンに向けて手刀を放った。

 

切っ先は一文字。技を外すためだけに放ったようだ。

 

「うぐっ…!」

 

アシュラマンは痛みを感じた。

 

今の手刀を、太ももへもろに食らってしまったのだ。

 

彼の鍛えられた太ももから赤黒い鮮血が流れ出る。

 

アシュラマンは痛さに顔をゆがめた。不意打ちでやられたことも相まって、

精神的ダメージもあったのだろう。そんな顔のゆがめ方だった。

 

ブロッケンマンは彼の足を外し、空中から彼の腹に向けて回し蹴りを放った。

 

彼のキックがアシュラマンの腹に突き刺さる。

 

ドズッ!!

 

鈍い音が街中を突き抜ける。

 

例えるなら、ボクサーがサンドバックを叩く音…だろうか。

 

その音が聞こえたと同時にアシュラマンは壁へ激突し、それをつたって

ずり落ちるように落ちていった。

 

それに対し、ブロッケンマンは空中で回転しながらきれいに着地した。

 

そして、アシュラマンのほうを見てニヤリ、と笑うと

 

「果敢に挑みに来るから、ちゃんと俺のことを調べてきてるのかと思ったら…」

 

「とんだ思い違いだった見てぇだな。…がっかりさせるぜ」

 

「くっ…」アシュラマンは唇をかんだ。

 

「不意打ちで短期決戦を狙ったんだろうが、このブロッケンマンに不意打ちは聞かねえぜ」

 

「不意打ちは"残虐超人"の十八番(オハコ)だからなぁ…」

 

「…不意打ちの対策はできているということか」

 

「へへ、そういうことだ」ブロッケンマンは得意そうににニヤついていた。

 

その時

 

「…で?お前はどこで俺たちの情報を得たんだ?」

 

ふいに、どこからか声が聞こえた。

 

「…おい、なんだよ。戦いの邪魔をするんじゃねぇよ」

 

ブロッケンマンが声の主の方へ向かってうっとうしそうにそう言った。

 

その方角はもともと謎の男がいた場所…

 

どうやら声の主は謎の男だったようだ。

 

勝負を邪魔されたからなのかブロッケンマンの声は若干曇っていた。

 

「…?」

 

あまりに唐突な質問だったので、アシュラマンは呆然としていた。

 

「重要なことだぜ、ブロッケンマン。これは俺達の作戦にも関わってくるんだからな」

 

「聞かないわけにはいかねぇ」

 

「面倒くせぇやつ…」

 

呆れたように謎の男に対して言うブロッケンマン。

 

しかし、それを無視するように質問を続ける男。

 

「それで、どこで俺たちの情報を得たと言っているんだ」

 

「…それをなぜ言う必要がある」

 

アシュラマンは問い返した。

 

「当然だ、俺たちのことを話されては困るからな。場合によっては死んでもらうことに…」

 

すると突然、男とアシュラマンの会話を遮るように男の首に対して手刀が向けられた。

 

まぎれもなく、ブロッケンマンのものだ。

 

「お…おいブロ!お前何を…」

 

突然のことに面を食らう謎の男。たまらずブロッケンマンに対して怒りの言葉をぶつけた。

 

「へへへ…余計な言葉は慎めよ」

 

「そんなことどうだっていいじゃねえか、ここに強ええ奴がいて、そいつが俺に挑戦してきている…」

 

「それだけで十分、戦う理由にはなるはずだぜ」

 

「うっ…」

 

男はブロッケンマンの言葉にたじろいだ。

 

勝負を邪魔された不快感から来ているのか、ブロッケンマンの顔はいつも以上にギラついていた。

 

その気になれば、仲間でも躊躇なく始末してしまいそうな…

 

そんな表情だった。

 

「…随分と強気だな」

 

男とブロッケンマンの会話に割りこむように話しかけたアシュラマン。

 

その言葉に対しブロッケンマンが切り返す。

 

「性分なんだ。…ま、目ぇ瞑ってくれや」

 

「残虐超人は、好戦的だからな。死に場所を探してるのかもしれねぇぜ…」

 

「そうか…」

 

「そんなに死にたいのなら…そうさせてやる!!」

 

そう言うと、アシュラマンは猛然とブロッケンマンに向かっていき

 

「竜巻地獄ッ!!」

 

6本の大きな腕を振りかぶり、ブロッケンマンに向けて、何かを投げた。

 

(…なんだ?投てき技か?)

 

ブロッケンマンが不思議に思っていると

 

「ブロッケンマン逃げろーっ!」

 

「そいつは阿修羅バスターを放つつもりだーっ!!」

 

突如謎の男からのアドバイス(?)が彼の耳を突き抜けた。

 

(阿修羅バスター…?なんだぁそりゃ)

 

「竜巻だっ!!奴は風を起こしたんだーっ!!」

 

(竜巻…?)

 

「もう遅い」

 

すると彼の体は勢いよく上昇し、屋根が見えるほどまで上がった。

 

「なにぃ…」

 

ガシィッ!!

 

それからすぐ、彼は全身を何かでつかまれたような感触を感じた。

 

「!!」

 

アシュラマンだ。彼がブロッケンマンをつかんだのだ。

 

腕に2本、足に2本、そして頭を支えるのに2本。

 

また、彼は何となく自分の視点が逆転していることに気づいた。

 

本来頭の上にあるはずの月が、足の下にある。ブロッケンマンにとっては何とも奇妙な感覚になっている事だろう。

 

「ブロッケンマーンッ!!」男は悲痛に叫んだ。

 

「残念だったな。今までの奴は簡単に倒せたのかもしれんが…」

 

「この私の技"改良・阿修羅バスター"は簡単には外せんぞ」

 

「くっ…」

 

ブロッケンマンは、少なくともこの場面の中で始めて顔をゆがめた。

 

「抜け…出せねぇ…?」

 

「改良・阿修羅バスター」を一言で表すなら、"完璧"だ。

 

先ほども言ったとおり、かけられる側の腕、足、頭の3つが見事に彼の腕で固められている。

 

これと同じ技にキン肉マンの必殺技の一つである「キン肉バスター」と呼ばれる伝説の技があるが、そいつはかける側の位置を逆転させることで返すことが出来たりと、少し頭をひねれば割りと外せる方法がある。ただし、この技はバスターと似てはいるものの、決して誰にも外せない。

 

以前、彼がまだ「正義超人」と対立していたころに、正義超人の一人、ジェロニモに対してこの技を放ったことがあった。

 

その技を受けた際に、彼は腕・足が千切れ、おまけにアシュラマン特有のメットの突起物で頭を貫かれるという凄惨な事態となった。

 

抜け出せないうえに、凶器攻撃もできるというまさに一石二鳥の技なのである。

 

まさに完璧。もう抜け出せない。ブロッケンマンは彼の技を確実に食らってしまうのだろう。

 

「そうだ。抜け出せない」

 

「阿修羅バスターは数々の相手と戦い、そのたびに弱点を克服してきた究極の技なのだ」

 

「そうやすやすと破ることが出来ると思うなよ」

 

空中で冷静、かつ沈着にそういうアシュラマン。

 

このまま彼の阿修羅バスターが決まれば間違いなくブロッケンマンはやられてしまう。

 

勝負が決まる…ブロッケンマンは息子に会うことなく勝敗が決するのである。

 

「へへへ…」

 

しかし、当のブロッケンマンは笑っていた。自分の状況が分かっていない…というよりも、相手を見下したかのような笑い方だった。

 

「きさま…何がおかしい!」

 

アシュラマンは落ちながら彼に怒鳴った。

 

王子(プリンツ)…お前、俺の息子は知ってるか?」

 

「えっ…?」

 

ブロッケンマンからの突然の質問にたじろぐアシュラマン。

 

「…なぜ言う必要がある、これから倒されるお前に」

 

しかし、あくまで冷静沈着にアシュラマンはブロッケンマンに対してそう切り返した。

 

「聞いてるんだぜ…答えねえか」

 

「…ちっ」

 

不満そうに舌打ちをするとアシュラマンはブロッケンマンの質問に答えた。

 

「…知っている、貴様の息子は、ブロッケンJrだッ!」

 

「かつて共に超人血盟軍として戦った、戦友(とも)だ!」

 

「ほう…アイツ、そんなモンにまで入ってやがったのか」

 

「お前とは似ても似つかぬ、正義の心を持った情熱にあふれる男だッ!」

 

「……」

 

ある程度アシュラマンの怒りに任せた答えに聞き入っていたブロッケンマン。

 

そこから少し考えたようなそぶりを見せると、アシュラマンに

 

「なるほど…」

 

「よしわかった、それでいい」

 

「何っ!?」

 

「情報は十分だといったんだ。用済みだぜ、王子(プリンツ)…」

 

余裕のある表情でアシュラマンの説明に対しそう答えた。

 

空中でアシュラマンにバスターをかけられているブロッケンマンであったが、その表情はまるで怯えてない。

 

むしろ、ここの状況を楽しんでいるようにも見える。

 

「きさま…自分の状況が分かっているのか?」

 

「お前は上空へと打ち上げられ、決して逃れられない"改良・阿修羅バスター"をかけられる」

 

「…死ぬことになるんだぞ、それなのになぜ」

 

「甘めぇな」

 

ブロッケンマンはそう言った後ニヤリと笑い、

 

「死ぬことになるのは…」

 

「てめぇのほうだッ!」

 

するとブロッケンマンは自分の足と頭に決められていたアシュラマンの腕を外し、そこからいとも簡単に抜け出した。

 

「なにっ!?」

 

そして彼の横腹に足を引っかけ、ブロッケンマン、自身の両手の手刀を自分の胸の前で交差させた。

 

なにかを放つつもりである。

 

「見せてやろうッ!これがブロッケン一族の秘刀…」

 

 

「"-元祖-ベルリンの赤い雨"だッ!!」

 

 

ズブッ!!

 

大きな掛け声とともに、肉の切れる音がした。

 

その音は「スパッ」でも「ズバッ!」でもない、とても鈍い音…

 

「血なまぐさい音」が路地を突き抜け、大通りにまで響いた。

 

それからすぐ、3人がいた路地には、赤い雨が降った。

 

…アシュラマンの敗北が、確実なものとなった。

 

「両の手刀を前に交差し、一気に切りつける…」

 

「これが本当の"ベルリンの赤い雨"だ!」

 

空中でそう言い放った後、ブロッケンマンはバランスをとって地上へと舞い降りた。

 

少し遅れて、アシュラマンも空中から落ちてきた。

 

巨大なキャンバスに「(×)(ペケ)の文字」をこしらえて…

 

「へへへ…」

 

「今回はいい出来だな…いい×(ペケ)の形になってるぜ」

 

「けどよ…」

 

「……」

 

訝しげに彼の倒れた姿を見るブロッケンマン。

 

最初は満足そうだった彼の顔は徐々に曇っていった。

 

「ブロッケンマーンッ!」

 

遠くから見ていた謎の男がブロッケンマンの元へ走ってきた。

 

それからしばらく息を整えたのち、彼に歓喜が混じった声で話し始めた。

 

「おい、ブロッケンマン。お前…」

 

「お前…本当に強いな」

 

嬉しいため息をついた。

 

嬉々とした表情でブロッケンマンを見る男。

 

しかし、ブロッケンマンは黙っていた。

 

「ブ…ブロッケンマン?」

 

強敵であるアシュラマンを圧倒し、かつ相棒から激励の言葉をもらったのに。

 

彼の顔は、まるでまな板の上に乗せられたコイを見るかのように、暗い表情で遠くを見つめていた。

 

「…何でもねぇ」

 

「久々に大きいヤツを切っちまったんで、ちょいと刃が欠けちまった。

…研ぎなおしに行こうぜ」

 

「あ、ああ…そうだな…」

 

一方的に謎の男に対して話を切り上げるとブロッケンマンは去っていった。

 

それを追うように謎の男も続いた。

 

しかし、男は彼についていく前に男の様子を遠めから確認した。

 

そして、彼が起き上がってこないのを確認すると、その場から離れた。

 

その時、ブロッケンマンは去り際、倒れているアシュラマンに対し

 

「へへっ…じゃあな、プリンツ」

 

と、後ろ手を上げ、振り向くこともなく吐き捨てるように倒れているアシュラマンを揶揄するように去っていった。

 

それからすぐ、彼の後ろからうめき声のようなものが聞こえた。

 

「…くっ!」

 

言うまでもなく、アシュラマンである。

 

彼はその言葉に反応し、アシュラマンは起き上がろうとしていた。

 

しかし、起き上がろうとしたものの深手を負っているためうまく立ち上がれない。

 

また、話すだけの体力がないのだろう。声がかすれ、まともにしゃべることが出来ないのである。

 

「ま…まて…まだ…勝負は…」

 

そんな状況の中、アシュラマンは必死に彼らを呼び止めようとした。

 

だが、無駄だった。

 

アシュラマンの呼びかけも聞こえないくらい、もう彼らは遠くへと行ってしまっていた。

 

「く…くそ…」

 

手がかりが掴めずに倒れるのを悔しく思いながら、彼は去っていく二人を見つめていた…。

 

その時だった。

 

ブロッケンマンの隣にいた謎の男。

 

その男の頭の部分が、車のヘッドライトに反射し、光った。

 

「ヘ…ヘルメット…?」

 

アシュラマンは意識が遠のいていく中、男の正体に気付きかけていた。

 

「あ…アイツは…」

 

「アイツは…まさかっ…!」

 

しかし、アシュラマンの意識はそこで途絶えた。

 

雪辱を果たせなかった悔しさと、早くキン肉マン達にこのことを伝えたいもどかしさが交錯する中で

 

彼は徐々に意識を失っていった…。

 

                 -続く-

 




|-補足-
 今回の話に出てきたブロッケンマンの必殺技である「-元祖-ベルリンの赤い雨」はジョジョの一部に出てきた稲妻十字空裂刃(サンダークロススプリットアタック)のようなイメージです。
 もしよかったら参考に後書きを見ながら小説を見ていただけると幸いです。
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