ブロッケンマンがアシュラマンと戦っている間、キン肉マンをはじめとした正義超人たちはブロッケンマンを探すために田園調布にあるキン肉マンの家で作戦会議を行っていた。長い議論の末、ようやく各々の役割分担が決まり、彼らはそれを実行に移そうとしていた。しかし、どうやらその結論に不満を持つ超人が一人いるみたいで…
ブロッケンマンがアシュラマンと戦っていたころ…
~キン肉マンの家~
彼らはブロッケンマンを見つけるため、見つける係とスタジアムの見張りの係りの二手に分かれて行動しようとしていた。
しかしその矢先、正義超人たちはほんの些細なことで言い争いをしてしまうのだ。
それは、ロビンがそれぞれの配役を決め、それを決定しようとしていた時だった…
「よし。じゃあみんな、それぞれの配役に…」
とりあえず配役が決まり、いったん会議を閉めようとしたロビン。
しかし、それと同時にある人物の手が上がった。
「おい、ちょっと待てよ」
ブロッケンJrだ。
「ん、どうしたブロッケン」
不意を突かれたのか不思議そうに彼を見るロビンマスク。
周りも同様に同じような表情をしていた。
「……」
いや、ラーメンマンは違った。彼は無表情のまま腕を組み、胡坐をかいている。
しいて言うなら若干眉をひそめた表情のまま座っていた。
まずいぞ、と言いたげな表情にも見える。
「どうしたもこうしたもねえよ」
「何でラーメンマンが見回りの係にいねえんだ」
「!!」
そこにいた全員は目を見開いた。
「実力から言ったら、どう見たってラーメンマンのほうが上じゃねえか」
ブロッケンはロビンに詰め寄った。
どうやら彼は、ラーメンマンが比較的実力のある超人が行くブロッケンマン捜索隊の中に入れていないことが少し気に食わなかったらしい。
自分の師匠に当たる人物が過小評価されている。ブロッケンは恐らくそう感じたのだろう。
※役割分担の詳細については第3話「明と暗」を参照。
「そ…そうじゃのう。そういえば…」
人差し指で頬をかきながらそういうキン肉マン。
「おいロビン、これはいったいどういうことなんだ?」
「……」
ロビンは黙っている。
「ど…どうしたんじゃロビン、はよ答えんかい」
キン肉マンはロビンに早く理由を言うように催促した。
しかし、今の雰囲気から恐らく、彼に対して何を言っても納得してもらえないように感じたのか、ロビンは少し困惑したような表情で押し黙っていた。
「まさか、いまさら嫉妬してるわけじゃねえだろうな」
困惑するロビンに詰め寄るブロッケン。
彼の言動から、かなり感情的になっているのがよくわかる。
「お…おいブロッケン、口に気をつけろ!」
「言って良いことと悪いことがあるぞ!」
そういってブロッケンを静止するテリーマン。
田園調布にあるキン肉マンの家の中は明らかに不穏な空気が漂い始めていた。
「悪いこと?俺が言ったことのどこが悪りぃってんだ!」
「どう見たってラーメンマンを親父と会わせたくねぇって感じじゃねえか!」
「どうせ手柄を横取りしようって腹なんだろ!バラクーダんときの…」
「いい加減にしないかーっ!!」
テリーはブロッケンの頬をグーで殴った。
その衝撃でブロッケンはその場に倒れこんでしまった。頬は赤く腫れあがっている。
「ブロッケン、確かにお前のラーメンマンに対する言い分もわかる」
「だが!だからと言って、ロビンを侮辱していいわけじゃない!」
「ブロッケン、ロビンに謝るんだ!」
ブロッケンに対して強く叱責したテリーマン。
もともと2人とも熱血漢な性格のため、ブロッケンも殴られたことに対し激昂して、両者の間で殴り合いのけんかになるかと思われた。
しかし、テリーの行動に対する彼の行動はいたって冷静なものであった。
「…へっ、なんだよ。最終的には暴力で解決させんのかよ」
睨みつけるようにしてテリーを見つめるブロッケン。
その目には軽蔑と諦観の色が見えていた。
「!!そ…そんなつもりじゃ」
突然のブロッケンから出た言葉に対し、狼狽するテリー。
まさか彼の口からそんな言葉が出るとは思わなかったのだろう。先ほどの怒りの熱気が明らかに冷めていた。
「ああ、わかったよ。そんなに俺たちを除け者にしたいってんなら、こっちから
出てってやる!」
バンッ!
そういうと、ブロッケンはドアを勢いよく開け、キン肉マンの家を出て行ってしまった。
「ブロッケン!!」
ブロッケンを呼び戻そうとするテリーマン。
しかし彼の姿は闇に消え、どこに行ったのかもわからなくなってしまった。
「ブロッケン…」
困惑するキン肉マン達。明らかに不穏な空気である。
そして、ブロッケンがいなくなってすぐ、この男も口を開いた。
「…私も、失礼する」
「ラーメンマン!」
これ以上仲間が離脱することに耐えきれなくなったのか、キン肉マンが彼を引き留めた。
しかし引き留めも空しく、ラーメンマンは彼の手を払いのけ、
「…心配するな。少し外の空気を吸ってくるだけだ…」
ごまかしにも気分転換とも取れる言葉を吐き捨てると、ラーメンマンはキン肉マンの部屋から出ていった。
「ラーメンマン!」
そう言って、彼の後を追いかけようとするテリーマン。
しかし、それをロビンが制止した。
「いや待て、テリーマン。…私が行こう」
「ロビン…」
「…こうなったのは、私の責任だからな」
「…すまんがしばらくの間、仕事を任せても構わないか」
そう言って、事務的な対応をしようとするロビン。
しかし、自分のせいで誤解を招き、ブロッケンやラーメンマンの離脱を招いてしまった責任に対する焦りはそう簡単にぬぐいきれるものではなかったのだろう。
その焦燥や不安が混じったロビンの雰囲気は他の超人達にも何となく感じられた。
「ああ。任せとけ」
「正義超人たちにも、何人か掛け合ってみるよ」
そう言って薄く笑うテリー。その表情は彼に何と言葉をかけていいかわからないのか、引きつったような表情となっていた。
場の雰囲気は明らかに不穏そのものであった。
「…すまん」
テリーに対し、軽く頭を下げるロビン。
本当は彼自身もブロッケン達を追いかけて、ひとこと言いたい。
ただ、自分の私情を挟み、計画が共倒れになっては元も子もない。恐らく彼自身そう感じたのであろう。
テリーはブロッケンを追わず、裏方に回ることにしたのである。
「テリーマン…」
テリーとロビンの会話を横で聞いていたキン肉マン。
すると、なにかを察したのか突然キン肉マンはテリーマンと肩を組んだ。
「まあまあ!あとは私たちに任せておけぃ!私たちの力で鉄壁の守りを持つ猛者たちを連れてくるわい!」
そして明るく、屈託のない笑顔でそう言った。
「はは…まぁそう言う事だぜ。ロビン」
「俺達のことは気にせず、ブロッケン達を探してきてくれ」
呆れたような、ほっとしたようなそんな笑みを浮かべながらそう言ったテリー。
その表情には先ほどまでの不安に満ちた表情はなかった。
さっきまで暗かった周囲の空気も一瞬にして和やかにする、この性格こそ彼が仲間内で愛される所以なのかもしれない。
「わかった、ありがとう…キン肉マン、テリーマン」
ロビンは薄く笑い、キン肉マンの家から出ると、暗闇が深い夜道を颯爽と走り出した。
ここまでが、アシュラマンとブロッケンマンが戦っていた間に起きた出来事である。
この後、ロビンはブロッケンJrとラーメンマンを探すために街へ繰り出し、彼らを見つけ出すことに奔走した。
しかし、一向に2人は見つからず、ただ時間だけがむなしく過ぎていった…
-街中-
「はあ…はあ…」
肩で息をするロビン。どうやら相当走り回っていたようだ。
息を整えるためいったん彼は立ち止まり、その場に立ち尽くしてしまった。
「くそ…どこにいるんだ」
疲れているのも無理はない。彼が2人を探し始めてもうかれこれ5時間以上経過しているのだ。
いくら彼が人並み以上の超人とはいえ、長時間ぶっ続けで走り回るのは体に堪えるものがある。
「…ん?」
ロビンは膝をついてふと、上を見上げた。彼の目にライトアップされた夜の街並みが映る。
「…きれいだな」
しばらく空を見上げていると、彼はある光景に首をかしげた。
「ん?…あれは」
ビルの屋上に何かがたなびいている。
「
ビルの屋上にある看板を遮るシルエット。
見覚えのある人物だ。
「ラーメンマンッ!!」
そう叫ぶや否やロビンはそのビルに向けて走り出した。
全力で走る彼の前には冷たい夜風が強く吹きあたっていた…
-続く-