最後の残虐   作:ぴえろー

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最後の残虐第6話です。2日間のスパーリング期間を終え、ついにブロッケンマンとの決闘の日を迎えた正義超人たち。果たして彼らはブロッケンマンに勝利することが出来るのか?そして、長い間謎に包まれている”謎の男”の正体とは?


第六話「沈黙のバウト」

―スタジアム 入り口付近―

 

「来たな…」ロビンが静かに言う。

 

「ああ」ラーメンマンは静かにうなずいた。

 

ひっそりと佇み、そして不気味な妖気を纏うスタジアムにキン肉マンをはじめとした正義超人たちは悠然と立っていた。

 

「調子はどうじゃ?ラーメンマン」

 

「ああ、大丈夫だキン肉マン。特に異常はない」

 

緊張しているのか、ラーメンマンの表情は堅い。

 

ラーメンマンはこの2日間、キン肉マン達の協力の下、自分の技に磨きをかけてきた。

 

スパーリングが主な内容だったらしいが、自分たちなりにいい修業が出来たということらしい。

 

「だが…」

 

「…仕方ないさ。ブロッケンは」

 

「ここはとりあえず、我々だけでなんとかしよう」

 

テリーは半ばあきらめたような口調で、ラーメンマンにそう言った。

 

「そうだな…」

 

 スタジアムの前に立つキン肉マンをはじめとした5人の正義超人たちの中に彼の姿、ブロッケンJrの姿はなかった。

 

なぜいないのか、その理由は至極単純で

 

正義超人たちは彼を説得することが出来なかったのだ。 

 

キン肉マン達が修行をしていた2日間、彼らは何度もブロッケンに掛け合ってみたが、彼がキン肉マン達と和解することはなかった。

 

ラーメンマン自体は気にしていなかったのだが、彼自身、何か腑に落ちないところがあったのだろう。結局、そのままブロッケンマンとの決闘当日となってしまったのである。

 

「じゃがロビン、ブロッケンマンは大会のルールを好きにしてよいと言っておったが」

 

「試合方法はあれでいいんじゃな?」

 

「もちろんだ」

 

ロビンは腕を組み、うなづく。

 

「それがおそらく、最善の策だ」

 

ロビンは表情を変えずに、キン肉マンの質問に答えた。

 

彼のこの答え方は、自分の判断にかなりの自信を持っている証拠だ。おそらく、彼なりに何か確信が持てるものがあるのだろう。

 

「あと、もしもの時のためにウォーズマンにもキン肉マンの自宅で待機させている。ここにきていない正義超人たちもとりあえず、襲われることはないだろう」

 

「よし、これで準備は整ったな!」

 

「ブロッケンマンと“謎の男”よ!必ず俺たちが倒してやるぜッ!!」

 

「とはいうが…二人の姿が見えないぞ」

 

テリーが周りを見渡す。

 

たしかに、彼らはおろか、人の姿も見当たらない。

 

「なんじゃなんじゃ!アイツらのほうから呼び出しておいて!」

 

「逃げたしたんじゃないだろうな!あんだけ大掛かりなことをやっておいて!」

 

そう言って怒りをあらわにするキン肉マン。

 

しかし、その怒りもたった一人の簡単なあいさつによって抑えられた。

 

「よう」 

 

ステージの入り口からカツカツと足音を立てて出てきたのは「謎の男」

 

フードをかぶっているのか表情は口元しかわからない。

 

ただ、少なくとも…口元だけ見ただけでも笑っていることだけは確かだ。

 

「フフフ…どうやら逃げ出さずに来たようだな」

 

「その度胸だけは認めてやるぜ…」

 

「お…お前は」

 

「謎の…男」ラーメンマンは腕を組みながら呟いた。

 

ブロッケンマンの懐刀、黒い服装が何とも怪しい、あの男である。

 

今日も依然変わらず、彼の正体はわかりにくい。

 

「!!貴様があの“謎の男”かっ!」

 

「どけい!私たちはブロッケンマンと決着をつけに来たんじゃ!」

 

「ブロッケンマンの"おまけ"がしゃしゃり出てくるんじゃないわい!」

 

「……」

 

「…オマケ、か」

 

「随分となめられたもんだ。俺も“正義超人”の…アイドル超人の一人だってのにな」

 

「なんだと?」

 

「見せてやるぜ…俺の正体を!」

 

謎の男は着ていたジャケット、帽子を脱ぎ、自分の正体をキン肉マン達に明かした。

 

「ど…どういうことなんじゃこれは!!」

 

キン肉マンが悲痛にも似たような声で叫んだ。

 

肩に着けられた丸い装飾、黒光りのヘルメット、そしてなんといっても特徴的な「コーホー」という息遣い。

 

謎の男の正体はあの男だった。

 

「…説明してもらおうか」

 

 

「ウォーズマンッ!!」

 

 

テリーマンが感情をぶつけるようにそう言い放った。

 

「フフ…まったくマヌケな奴らだぜ」

 

「誰も気づかないんだもんなぁ?正体が俺だったってことによ」

 

「正直、少しばかり冷めてたんだぜ…」

 

「そんな…」キン肉マンは青ざめていた。

 

「血迷ったかウォーズマン!俺たちはキン肉マンを中心に正義超人界を守っていく約束を交わしたはずじゃあなかったのか!!」

 

ニヤリと笑うウォーズマンに対し、半ば感情的な声で問い返すテリー。

 

突然の仲間の裏切りに動揺しているのか、その叫び声もどことなくうわずっていた。

 

「クク…」(コーホー…)

 

「俺は別のものに惚れ込んだ…お前らの"友情"よりも守るべきものが出来た、という理由で納得してくれるか?」

 

「なんだと…!」

 

ウォーズマンはかつて一緒に戦った戦友に対して冷たく言い放った。

 

別のもの、とはもちろん「残虐」のことだ。彼は自分が強くなるために「氷の精神」を蘇らせた、といった感じなのだろうか。

 

「くそ…そういうことだったのか」

 

その時、どこからともなく声が聞こえた。

 

「ブ…ブロッケン!!」

 

「ウォーズマン…見損なったぜ」

 

ブロッケンの手刀とウォーズマンのベアクローが交差する。

 

「おう、隅っこでイジケてたんじゃあなかったのか?」

 

「…さっきアシュラマンがやられたという情報が入った」

 

「お前らのせいだと踏んだんでな、いじけてなんかいられねえよ」

 

「ブロッケン…」

 

彼の友情に対する情熱にキン肉マン達は笑みをこぼす。

 

しかし、その笑みも一瞬で強張ったものになった。

 

「てやっ!!」

 

ウォーズマンは邪魔だと言わんばかりに、勢いよくブロッケンの手刀をはじいた。

 

「うおっ…」

 

手刀をはじかれ、驚いたブロッケンは一歩後ずさる。

 

「ほお…"超人血盟軍"のよしみで倒しに来たってわけか」

 

「まあまあ、そう焦るなよ」

 

「ここで俺がぶっ倒されちゃあ、ここでなぜ、俺がお前らを通せんぼしているのかの説明が付かないじゃないか」

 

「…どういうことだ?」

 

「フフフ…とびっきりのエンターテイメントというやつさ」

 

「まあ、せいぜい楽しみに待っておくんだな」

 

「…とか言ってる間に、来たみたいだぜ」ウォーズマンはスタジアムの入り口を指さした。

 

彼が指をさした先には、一人の男が軍服をはためかせながら不敵な笑みを浮かべ、カツカツと音を立ててキン肉マン達の方に向かってくる。

 

ポケットに手を入れたままステージの入り口から「ゆらり」と、歩み寄ってくる影。

 

その姿、まごうことなきブロッケンマンである。

 

不気味な妖気を纏った彼の姿は、何人もの超人を葬ってきた面影のようなものが見える。

 

いったいその()はどれくらいの超人の血を吸ってきたのだろう。

 

「おう、結構たくさんいるじゃねえか」

 

「見た感じじゃあ、主力級が全員揃ってるな。ヘへへ…命知らずな奴らだぜ」

 

「…ブロッケンマン」ラーメンマンは静かに彼に呼びかける。

 

「久しぶりだなぁ、"秒の殺し屋"さんよ」

 

「…知っていたのか」

 

「ああ、ここに来る前にちょっとな」

 

「…それよりもよぉ」

 

「おい、あん時は随分とやってくれたじゃねえか。ええ?そんなに俺をぶっ殺したかったか?」

 

「……」

 

「へっ、相変わらずクールだな。お堅いこった」

 

「…地獄から戻ってきたのか」

 

「ああ。お前の温かい"血"が憎くてなぁ…!」

 

「くっ…」ラーメンマンは彼の鋭い殺気に戦慄していた。

 

その表情は相変わらず「殺人者(マダー)」と呼ぶにふさわしい。

 

「ちょっと待った」

 

彼らの会話を遮るように、ロビンが2人に話しかけた。

 

「なんだ、俺たちの"感動の再会"を邪魔すんなよ」

 

「どこが感動なんじゃ!どう見たって殺す気満々じゃろうが!!」

 

「落ち着けキン肉マン」

 

感情的になっているキン肉マンを諫めるかのように彼らとの話に割って入るロビン。

 

彼自身、早く本題に入りたいという気持ちもあるのだろう。

 

「ブロッケンマン、試合方法のことだが」

 

「ん?ああ、あれか」

 

「私たちは"タッグバトル"で決着をつけたい」

 

「相手はもちろん…」

 

「俺だ!」「私がやる」

 

ブロッケンとラーメンマンは同時に宣言した。

 

「ほほう、なるほど。"因縁の対決"ってわけだな」

 

「いいぜその勝負、受けてやるぜ…」

 

「ありがたい。それから…」

 

「んじゃ、俺たちは"特別な試合方法"で決着をつけたい」

 

「なにっ!?」

 

ブロッケンの言葉に不意を打たれたのか、ロビンが素っ頓狂な声を上げる。

 

「どういうことだ!試合方法は私たちが決めるんじゃなかったのか!!」

 

「"試合方法"はな。だが、他はお前らが決めていいとは言ってねぇよ」

 

「形式は、俺たちが決めさせてもらうぜ…」

 

「卑怯だぞ親父!!」ブロッケンが反論する。

 

「何とでも言え。俺たち"残虐超人"は手段を選ばねえ…」

 

「たとえ相手が息子だろうが関係あるか…」

 

そう言った彼の表情は明るさの中にも少し冷たさがあった。

 

「残虐超人」はこう言った表情を作るのが得意なのだろうか。

 

「ちぃ…っ!!」

 

ロビンたちは悔しそうにブロッケンマンを見つめた。

 

彼の意見を踏み倒し、自分たちの試合方法を強行する方法もあった。

 

だが、正義超人側にその選択肢は実質、あってないようなものだった。

 

彼らは戦うことに加えて別の「緊張感」を抱えていたからである。

 

自分たち自身、つまり「正義超人」の存在だ。

 

今までの話を思い返してみれば、これまでに正義超人が3人、それも主力級の超人達が倒されている。

 

もし、彼の機嫌を損ねたら、また別の誰かが襲われてしまうということもロビンたちは考えなくてはならなかった。

 

これ以上の犠牲は避けたいし、何よりもまた誰かが傷を負えば、正義超人全体の士気に関わる。

 

とりあえずここは自分たちの意見を譲り、バトルに集中することを優先しようと、彼らは考えたのだ。

 

「んじゃ、タッグバトルで試合が決まったところで」

 

「いっちょ"セッティング"と行きますかねぇ」

 

「了解した」そう言うとウォーズマンは指をパチン、と鳴らした。

 

すると突然、スタジアムが大きく揺れだした。

 

「うおっ!?」

 

「ど…どうしたんだ!!」

 

地響きが起きてしばらくすると、徐々に彼らの用意した「ステージ」とやらが見えてきた。

しばらくして地響きが収まると、彼らは、お互いの安否を確認した。

 

「お…おい!あれを見ろ!!」

 

ブロッケンが驚いた様子でスタジアムの奥にある「ステージ」を指さした。

 

金網だ。四方を有刺鉄線で囲んでおり、金網を上からかぶせたような設計になっている。

 

何というか…「蚊帳」のような感じだった。

 

「か…金網…」ラーメンマンは金網を見上げた。

 

「今日はお前ら…もとい息子とラーメンマンの2人のために、特別なステージを用意したぜ!!」

 

「どうせお前らは俺の弱点を知っている2人を戦わせてくると踏んだんでな。それ相応の対応をさせてもらった!!」

 

「へん!特別な方法っていうから何かと思えば」

 

「何の変哲もないただの金網じゃないか!驚かしやがって!」

 

「おまけに、ラーメンマンはもうとっくに金網に対する恐怖は克服しておるんじゃ!」

 

「今更金網を見せられたからって怯えたりはしないわい!」

 

「フフフ…果たしてそうかな?」ウォーズマンは不敵に笑った。

 

「なに…」

 

「ラーメンマン、いや、お前たち正義超人どもは」

 

「この"金網デスマッチ"を受けたことを後悔することになるだろうぜ…」

 

「くっ…!」

 

「行ってこぉい!ラーメンマン!ブロッケーン!!」

 

カァンッ!!

 

試合開始を告げるゴングがキン肉マンによって鳴らされた。

 

解説者も実況者もいない「沈黙のバウト」が今、始まった。

 

 

               -続く-

 

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