※今回の試合において適用されているリングについて少しばかり説明を入れておきました。もしよろしかったら本編を見る前に見ていただくと幸いです。
-スタジアムー 場内-
「行ってこーい!ラーメンマン!ブロッケーンッ!!」
カアンッ!
観客や実況者がいない静かな静かなスタジアムの中で、試合開始のゴングがキン肉マンによって鳴らされた。
お互いの様々な思惑が渦巻く中、待ちに待った因縁の死闘が今、始まった。
ゴングが鳴ると同時に金網リングの中に入っていた4人が一斉に臨戦態勢となり、ウォーズマン、ブロッケンJrが後方、ブロッケンマンとラーメンマンが前方に陣取り、見た目的にはブロッケンマンとラーメンマンのシングルマッチのような形となっており、序盤から何が起こるかわからない試合展開を見せていた。
金網もリングの一部に空間が出来ており、逃げられるスペースがあるものの、それもかえって不気味だった。
「へへへ…お前たちはこの"金網デスマッチ"で戦う事を後悔することになるだろうぜ」
ニヤリ、と笑うブロッケンマン。
しかし、その言葉を受けたラーメンマンは毅然とした表情で彼の言葉に含まれた邪念を振り払った。
「…何が仕掛けてあるのか知らんが」
「この私、ラーメンマンはもう金網など恐れてはいない!」
「いくぞッ!!」
ラーメンマンはブロッケンマンのいる方向へと駆け出し、自身の体を大きく飛躍させた。
「レッグ・ラリアートーッ!!」
ラーメンマンが放ったこの技は彼を代表する必殺技の一つ「レッグ・ラリアート」
「7人の悪魔超人編」から使われ続けている彼の必殺技である。
まるで白鳥のごとく優美で、かつカモシカのように緊密な筋肉を持つ彼の足がブロッケンマンの後ろにいるウォーズマンの首元に襲い掛かった。
どうやらブロッケンマンは瞬時に体を動かし、レッグラリア―トを躱したようだ。
しかし、このままでは後ろにいるウォーズマンが技を受けることになってしまう。
しかし、技を受ける当の本人はいつものように読み取れぬ表情でその場に佇んでいる。
超人博士と呼ばれるラーメンマンがいきなり必殺技を出したことを笑っているのか、それとも何か別の機会をうかがっているのか…
「……」(コーホー…)
ピカッ!
その時、ウォーズマンの目が光った。
ガシィッ!!
ラーメンマンのレッグラリアートがブロッケンマンの腹に突き刺さるか刺さらないかの瞬間、ウォーズマンは「なぜか」ラーメンマンの体を抱えていた。
「なに…」
「甘いぜラーメンマン…そんな伸び切った足技じゃあ俺をとらえられない…」
「ジェット・ライナーッ!!」
ウォーズマンは飛び込んできたラーメンマンをキャッチし、飛び込んできた威力を利用して、自分の反対側にある壁(金網)に彼を投げた。
「させるかっ!!」
しかしラーメンマンは持ち前の身軽さで投げられた反動を見事に切り返し、金網がある方へと自身の足を向け、再び大きく跳躍した。
「金網を利用してジャンプした!!」
「フライング・レッグラリアートかッ!!」
金網の反発を利用した、矢のごとく放たれた蹴りが再びウォーズマンに襲い掛かる。
ラーメンマン、今度は掴まれないように後ろから蹴りを入れる作戦に出た。
「おお!なんという完成された蹴りじゃ!これならアイツも避けられんわい!」
「しかも蹴った方向は奴の死角!これは入ったぞ!」
テリーは確信をもってそう叫んだ。
しかし、そんな彼らの評価をよそに、リングの外で見ていたブロッケンマンは不敵に笑っていた。|
まるでその技が来るのが分かっていたかのように…
「フッ…甘いな」
すると突然、ブロッケンマンは走り出し、ラーメンマンの懐へもぐりこんだ。
「なに…」
「今だッ!!」
「"元祖 ―ベルリンの赤い雨―"!!」
ズブッ!!
彼がアシュラマンを倒した必殺技を、ラーメンマンに向けて放った。
「!!」
ラーメンマンはいきなり現れたブロッケンに驚き、
それと同時に、彼の右肩に強い激痛が走った。
「ぐわあああああっ!!」
ラーメンマンは痛みに耐えきれず、悲鳴を上げた。
彼の肩には「
リングの上に滴り落ち、紅い絨毯を作っていく彼の糸。その糸は徐々に編み込まれ、リング上に敷かれていく。
「ラーメンマーンッ!!」
友の凄惨な姿に耐えきれず、テリーマンは悲痛の叫び声をあげた。
「ヒャーッハハハ!!こいつはいいや!まるであの時と一緒だぜ!!」
「おめえはその技を放つとき、一瞬だが跳躍した際にタイムラグがあるのさ!」
「相変わらず弱点を克服できてねえなあ…ラーメンマン」
ブロッケンマンが彼の必殺技を知っているということは、恐らくレッグ・ラリアートを総帥時代から使っているという事だろう。
ブロッケンマンは倒れている仇人に対し見下ろすような形でニヤリと笑いながら説明を続ける。
「なぜ俺が"金網デスマッチ"にしたのか!それはラーメンマンのジャンプ力を利用するためだぜ!」
「この金網は普通のと比べて少し柔らかくしてあるのさ。だから弾力性と金網を引っ張ることのできる長さが長くなる!」
「当然、弾む力が大きければ滞空時間が長くなる!お前に攻撃できる時間も長くなるってわけよ!!」
「だが、入りは甘かったか…完全な"
「うぐぐ…」
ラーメンマンは傷口を覆いながら苦悶の表情を浮かべていた。
ブロッケンマンが「金網デスマッチ」を考案した理由。それはラーメンマンの跳躍力を逆手に取るためだった。
ということは、金網とリングとの間に多少の空間があるのも単に自分たちが逃げるためではなく、ラーメンマンの跳躍力の関係からちょうど残虐超人陣営が掴むことのできる距離を調節するための空間であったという事なのか。
もしそれが理由として当てはまるなら最初、ラーメンマンの必殺技に対してウォーズマンが迷いなく対処できた理由もうなづける。
これからは彼の足技が炸裂するたびにどちらか二人がうまいように切り返す、といったことが可能になった。
これで彼の足技…少なくともレッグ・ラリア―トは使えなくなった。
正義超人チーム、早くもピンチである。
「くそーっ!ラーメンマンの身軽さを逆手に取られるとは!」
キン肉マン達が悔しそうにしている中で、ブロッケンマンは余裕の笑みを浮かべていた。
(へっ、これが総帥と呼ばれた超人の力だってのか…)
(俺も少し、買いかぶりすぎたかな…)
「ブロッケンマン!!」突然、ウォーズマンが叫んだ。
「ッ!?」驚いたブロッケンマン。
彼が後ろを向いたと同時に息子であるジュニアが彼の首筋に手刀を当てて立っていた。
「忘れちゃいけねえ…ラーメンマンにはこの俺が付いているんだ」
「もう指一本触れさせねえ!この俺、ブロッケンJrがお前らの相手をするッ!!」
雄々しく、そして気高くそう言ったブロッケンJr。
だが息子がそう言い放ったにもかかわらず、父の返答は冷たいものだった。
「くく…威勢がいいな、バカ息子」
「俺の虚を突いたからってもうご満悦か?」
その時、ブロッケンの頬に何かがかすった。
ウォーズマンの「ベアクロー」だ。
どうやらブロッケンが攻撃を仕掛けていたとき、すでに彼の背後に回り込んでいたようだ。
「!!」
ブロッケンは目を見開いた。頬から滴り落ちる血が小さな滝を作っている。
「忘れちゃいけねえな、この試合は「タッグバトル」なんだぜ…」
「正義超人でも雑魚にすぎねえお前が、俺たち2人の相手をしようなんざ100年早えんだよ」
ヘへへ、とブロッケンマンは不敵に笑う。
それと同時に、ウォーズマン独特の呼吸音が聞こえた。
(コーホー…)
「くそ…なんて速さだ」ブロッケンはたじろいだ。
「おいおい…なんて速さだ。今までのウォーズマンとは違うぞ」
「見る限りではマッハが出ているな、…なんて奴だ」
「あんな速さ、師匠である私も見たことがない…!」
「そういえば前に、アイツがバッファローマンと戦った時、光の矢となって突っ込んでいったことがあったな」
テリーは顎に手を当てながら今の状況を分析していた。
テリーマンの言う「光の矢となって突っ込んでいった」というのは「7人の悪魔超人編」においてバッファローマンとウォーズマンが田園コロシアムで戦っていた際、ウォーズマンがベアクローとスクリュードライバーを駆使して放った最後の大技である。
その際に彼が言い放った「100万×100万…」のくだりは多くのファンの間で語り草となっている。
「つまりアイツは、常にアレくらいの速度、そしてパワーを繰り出すことが出来るくらいに成長したということになるのか…!」
「狙いをつけられるくらいの、技に対する精度も上がってなぁ…」
キン肉マンとロビンの2人の会話にブロッケンマンが補足をするように言う。
いつの間にか、彼はすでにウォーズマンの後ろへと避難していた。
一体彼らはいつ立ち位置を変えているのだろうか。
「少なくとも、今のウォーズマンは王位争奪戦の時の2倍、いや10倍くらいの実力に跳ね上がっているだろうぜ」
「野郎、俺がスカウトした後も修行を積んでやがったな…」
「なんだと…」そこにいた正義超人たちは彼の言葉に戦慄した。
いままで一緒に戦ってきた仲間が敵となって今、自分たちに襲い掛かってきていることもそうだが、なによりも…
なによりも、絶望的に強くなって襲い掛かってきていることが、彼らにとっては恐ろしかった。
そんな彼らをよそにウォーズマンはブロッケンに向かって走り出し、ベアクローの猛攻を加える。
ブロッケンは何とか手刀ではじき返すが、またすぐに別の方向からベアクローが飛んで来る、の繰り返し。
キィン!キィン!
「ぐぐ…」
あまりの猛攻の激しさにブロッケン、逃げ出せない。
最初は弾き返せていた攻撃も、彼の疲弊により徐々にガード一辺倒になっていく。
「ブロッケン!奴は30分しか戦えん!なんとしてでも奴の攻撃に耐えて時間を稼ぐんじゃーっ!!」
防戦一方のブロッケンに対し、アドバイスするように叫ぶキン肉マン。
「た…耐えろったって」
「攻撃が早すぎて防ぎきれない…!」
あまりの攻撃の速さにたじろぐブロッケン。
このままではウォーズマンの体力が切れる前に、ブロッケンの体力の方が限界を迎えそうな状況であった。
その一方で、ウォーズマンの表情は全く変わっていない。
ロボ超人だから疲弊しない…わけではない。彼は間違いなく成長しているのだ。
「フン…俺を見くびるんじゃない」
「あの時の…マンモスマンにやられた時の俺とは違うんだ」
「俺はお前たちがのうのうと観光旅行をしている間、あらゆる修行をしてきた…」
彼の脳裏に今までの修行風景が思い描かれる。
「あの時の俺と同じだと思ったら」
「大間違いだぜっ!!」
唯一自分の素顔を隠すことができ、同時に自分の象徴でもあった「マスク」。それを王位争奪戦の最中、不意打ちとはいえマンモスマンに壊された彼はこれまでにない屈辱を味わった。
彼は必死で修業を積んだ。今までの数倍、いや数十倍の修行を積んだ。
マスクを壊された時と同じ時期に行っていた竹をよける修行の非ではない、もっと凄惨で、筆舌には尽くしがたい壮絶な修行を行っていた。
その時の彼の眼は少なくとも「正気の沙汰ではな」かった。「敗北」という屈辱を受け、何かに
屈辱を味わった後のハングリー精神は、時として大きな「依存性」をもたらす。
そう「二度とあんな屈辱を味わいたくない」という思いに固執するようになるのだ。
そんな修行を積んだ彼は、とある一つの結論に至った。
「"友情"は強い…だったら」
「だったらそれを上回るくらいの"残虐"があればいいんだッ!!」
友情を上回る「残虐」。「オモイヤリ+ヤサシサ=ユウジョウ」を上回る残虐。
それがブロッケンマンと出会い、かつ彼と共に行動をする過程の中で出た結論というのだろうか。
「てやっ!」
ウォーズマンはついに防ぎ続けるブロッケンの腕をはじき、彼をマットに倒れさせた。
「うわ…」
力が抜けたのかブロッケンはすぐに立つことが出来ず、まごついている。
それを見届けると、ウォーズマンはすぐにブロッケンから離れた。
そして腰をかがめ、ファイティングポーズをとる。
「来るぞ…!」一同は息をのんだ。
「もうあんな屈辱は味わいたくない…!」
「狙った
「スクリュードライバーッ!!!」
ウォーズマンは最大火力の「スクリュードライバー」を放ってきた。
ものすごい横回転、まるで竜巻が襲ってくるかのごとく。
「ブロッケーンッ!!!」
しかし、技を受ける当の本人はそれを見るや否や、ニヤリと笑った。
「くっ、確かにすげえ…」
「だが、俺にだって秘策はあるんだぜ!!」
向かってくる竜巻と相対したブロッケン。そして彼も手刀を前に向け、彼なりのファイティングポーズをとる。
するとどうしたことか。
ブワアアアア…
ブロッケンが手刀をウォーズマンに向けた瞬間、彼に向けている右腕が突如、赤色に光り始めた。
「な…何だあれはっ!?」
ロビンマスクがブロッケンの方を指さし、叫んだ。
「目には目を…歯には歯を」
「回転には…回転だーっ!!!」
「
-続く-
リングの構成について
「金網デスマッチ」
リングの周りを文字通り金網で囲った特設リング。今回の試合においてブロッケンマン率いる残虐超人陣営が独自に用意した。このリングは「夢の超人タッグ編」の時のように有刺鉄線が付いているわけでもなく、ビッグファイト戦のときみたいな通常仕様の金網とは違い、蚊帳みたいな形で囲ってあるリングである。
どうやらブロッケンマンは金網の素材自体にもこだわっていたようで、通常の金網よりも網の部分を少し柔らかくしてあるようだ。
また、囲われた部分と中にあるリングとの間に約1メートルほどの空間があるのだが、この空間は何を目的として作られたかという事までは今のところわかっていない。