※今回も後書きに捕捉があります。物語にはあまり関係ない内容ですので、見ても見なくても大丈夫です。
―スタジアム 場内―
「
ブシュ―ッ!!!
ブロッケンがそう叫ぶや否や、リング上は強い衝撃と煙の渦に包まれた。
「な…なんじゃ!?」
「くそ…前が見えないぞ!」
「2人はどうなったんだッ!?」
「お…おい見ろ!」テリーは語気を強めてリングを指さした。
キン肉マン達が見た先、そこには
右手に煙を
リングロープにもたれかかり、息を切らしているウォーズマンの姿があった。
「スクリュードライバー」は破られたのである。
「ぜえ…ぜえ…」
「おおっ!!ブロッケンのやつ」
「ウォーズマンの"スクリュードライバー"を破りおった!!」
キン肉マンがそう言うとすぐに、スタジアム内に歓声が沸き起こった。
「いいぞブロッケン!よくやったーッ!!」
「…へっ」
「少しは、やるようだな」
ブロッケンマンは腕組みをしながらリングの外で薄く笑っていた。
「うっ!?」
「な…なにがあったんだ…」
リングロープにもたれかかり、状況を確認しようとするウォーズマン。
「どうして俺がリングロープに…」
「おいおい"残虐"はこの世で一番強ええんじゃあなかったのか?」
ただ、その試みは前方に現れた「彼」によって遮断されてしまったようだ。
「ブ…ブロッケン!!」
「残念だったなウォーズマン、どうやら俺の「
「…どういうことだ」
狼狽するウォーズマンに対し、ブロッケンはニヤリと笑うと、先ほどはなった技について説明を始めた。
「ウォーズマン、なぜチェーンソーが物を切る力があるのか、わかるか?」
「なに」
「元来、チェーンソーってのは小さい刃が多数ついていて、そいつを高速で動かすことで切れ味が増すんだ」
「最初、止まっているときは豆腐も切れねえが、少しずつ早くなることで大木すら切れるようになるのさ…」
「なるほど…そういうことか」
「どういうことじゃ?ロビン」首をかしげるキン肉マン。
「ブロッケンは"スクリュードライバー"を"斬った"のさ」
「斬った…?」キン肉マン同様、首をかしげるテリーマン。
「いや、正確には"削った"というのが正しいか」
「どっちなんじゃロビン!"斬った"とか"削った"とか紛らわしいわい!」
割と複雑さが混じった説明のせいか訳が分からなくなり、ロビンに対して感情的に叫ぶキン肉マン。
「まぁ待て、何せ一瞬のことだったからどう説明していいかわからないんだ」
「うーん…そうだな」
ロビンは少しばかり考えた後、先ほどブロッケンが出した技について説明し始めた。
「テリーマン、キン肉マン"スクリュードライバー"は一体どうやって出していると思う?」
「えっ…?」
突然のロビンマスクが出した問いに対して困惑する二人。
「ど、どうやってって…」
「回転しながらこう"バ―ッ!"と突っ込んでいくんではないのか?」
「そうだな。確かにスクリュードライバーはそんな感じの技だ」
「ただ、私が言いたいのは技の出る"しくみ"だ」
「要はどういった方法で技が出るのか、ということだな」
「技の出るしくみ?」
顎を手に当てて首をかしげるテリー。
「ああもう焦すない!いったい何が言いたいんじゃ?」
ロビンの言いたいことが全く分からず、感情的になるキン肉マン。
テリーの方は何となくロビンの言いたいことがわかってきたというような感じだったが、キン肉マンの方は何が言いたいのかよくわからず、ロビンに感情をぶつけているというような感じだった。
そんなキン肉マン達に対してロビンは自分の腕を組み、説明を始めた。
「簡単なことだぜ、キン肉マン。スクリュードライバーがなぜあんなに威力が大きいのか、という事について考えればいいんだ」
「本来、スクリュードライバーというのは回転している間、中は非常に大きな圧力となっている」
「それを守るための"何か"が必要となってくるわけだが…」
「…そうか!回転そのものだッ!」
「そうだテリー。回転そのものだ」
「回転させることによって、彼の周りを纏っている空気中に中の強力な圧力を守るための"膜"を作り出し、大きな威力を維持できるようにする」
「こうすれば回転中に空気圧が抜けて威力が半減することはなくなり、そのままの威力で相手に必殺技をぶつけることが出来る」
「突っ込むときの見た目に対するインパクトが大きいから、どうしてもベアクローや回転そのものに目が行きがちだが、この技の本質はそこじゃない」
「"圧力"がスクリュードライバーの重要なキーワードになっているんだ」
「なるほど…圧力か。それなら大きな威力が出せるのもうなずけるな」
「じゃがロビン、スクリュードライバーの原理とブロッケンが技を破ったことと何の関係があるんじゃ?」
「ブロッケンは削ったんだよ。その"膜"を」
「削った?」
「つまりブロッケンは一瞬で自分の中に内在している超人パワーを出し、手刀の速さを弾丸並みに引き上げ、スクリュードライバーの外部に生じていた膜の圧力より大きくしたところで」
「先ほどの技を放ち、スクリュードライバーの外側に纏っている膜の側面に風穴を開けた」
「当然、中にあった高圧力の空気は外に吹き出してしまう」
「よって、スクリュードライバーの威力も弱まってしまうってことさ」
「当然、そうなってしまえば中にいる超人はひとたまりもない」
「空気圧に押されて勢いよく地面に叩きつけられてしまうだろう」
「そうか…つまりブロッケンはスクリュードライバーの持つ空気の膜を」
「自分の得意分野である手刀によって削った、ということじゃな」
「そういうことだ」
「さすがじゃのうブロッケン!アイツもより強くなるために争奪戦後も修行を積んでおったということか!」
「それにしてもブロッケンの奴、一体いつの間にあんな技を…」
リングに立つブロッケンを見つめるキン肉マン達。
彼も彼なりに、必死で強くなろうと努力していたのだ。
ブロッケンをここまで動かしているのは王位争奪戦の最後まで筋肉アタルの元にいられなかったことに対する悔恨の念か、それとも父を超えるべく、より強くありたいとする彼自身の向上心なのかはわからない。
しかし、彼がウォーズマンの最大火力のスクリュードライバーを破ったことは紛れもない事実であり、彼自身も正義超人として間違いなく成長していることは言うまでもなかった。
「いいぞブロッケン!スクリュードライバーを破ることが出来たな!!」
「大手柄だぞッ!!」
ブロッケンの成長に賞賛の言葉をかけるラーメンマン。
その言葉に対してブロッケンも小さくうなずき、彼の称賛に応えた。
「…くそっ!」
「い…いったいそんな技いつ…」
ウォーズマンはリングロープにもたれかかりながら彼の方を見上げ、にらみつけた。
「強くなるために修行してたのはお前だけじゃねえ…ってことだ」
「俺だって…負けるわけにはいかねぇんだよ!」
「…くっ!」
「いくぞ!今度はこっちの番だぜッ!!」
ブロッケンは雄々しくそう言い放つと、まだ状況を把握しきれていない彼に対して走り出し、猛攻を仕掛けた。
「くっ…!」
この戦いが始まってからウォーズマンは初めて額に汗をにじませた。
「なめるなよ…!」
彼は絡まっていたリングロープをほどき、もう一度彼にベアクローをお見舞いしようと彼の元へ駆け出した。
この状況を早く打開しようと焦ったウォーズマン。ブロッケンの向かってくる手刀とは逆の方向へベアクローを差し向け、彼の攻撃に対するリズムを崩そうとしている。
キィンッ!カアンッ!
しかし、ウォーズマンが右にベアクローを向けたかと思えば左に回り込み、彼の懐へもぐりこんで手刀を一発お見舞いする。逆になればその逆をブロッケンは突いていった。
そこには、先ほどのようなただベアクローの猛攻を受けるだけの彼の姿はない。
形勢逆転の
「おお、すごいぞ!ブロッケンがウォーズマンを翻弄している!!」
「ええぞブロッケン!このまま裏切り者たちを倒してしまえーいッ!!」
キン肉マンがそう彼を鼓舞した瞬間、彼は攻撃の手を止めた。
「…?」
突然とった彼の行動を不思議そうに見るロビンたち。
「ど、どうしたんじゃブロッケン」
「うっせぇぞキン肉マン!俺に指図するんじゃあねえ!」
「な…何じゃと?」
突如として、キン肉マンに反論するように叫ぶブロッケン。
何やら不穏な空気が場内に流れ込もうとしていた…
-続く-
~補足~
「スクリュードライバーの中」
スクリュードライバーの中が高い気圧で囲まれており、外部で回転する際に生じる膜によって威力が維持されているというのは本編で述べたとおりだが、なぜ中にいるウォーズマンは全く平気でいられるのかと言うと、それはスクリュードライバーの中心部が「台風の目」になっているからである。
台風というのは低気圧が発達して反時計回りに回転して渦を作り起こるものだが、その際に台風の目が発生し、中心部分だけが晴れるといったことが起こる。
スクリュードライバーもそれと同じで、ウォーズマンが回転した際に「スクリュードライバーの目」が発生し、中心部のみ何も起こらない。
詳細はわからないが恐らくスクリュードライバーを放つ際に「台風の目」のようなものが起きているようだ。