アーシアしか勝たん   作:min-can

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第22話。 再会します、神父!

 数日経った。

 連日、俺、木場、匙、小猫ちゃん、アーシアの5人で夕方にエクスカリバーを捜索している。

 神父の格好で夕方徘徊しまくって襲われる機会を待っているのだ。

 なんでアーシアがいるかって?

 俺がアーシアにこれ以上嘘つけないからだ。

 毎日のようにアーシアに嘘をついて自分は他の奴らと外に出掛けるなんて、どれだけ高尚な理由があってももう耐えられない。

 アーシアの少し寂しそうな顔を見た瞬間に俺は懺悔してしまった。

 

 部長にこの作戦がバレる可能性とアーシアの笑顔なら、一瞬でアーシアに軍配が上がるのは当然の帰結だ。

 そしてホントの事を話せばアーシアが着いて行きたいというのは必然で、それはもうこうなるだろうというわけだ。

 絶対にアーシアは傷つけさせるわけにはいかない。アーシアを守る為なら俺はなんだってやる。

 

 というわけで、肉壁を増やす為に匙に連絡した。木場の生い立ちを説明してやれば、匙も熱く感動しながら、手伝ってくれる事を約束した。暑苦しい...

 すまん匙、アーシアと比べたらお前のケツとか心底どうでもいいから肉壁頼むぜ...第一肉壁は俺がやるからさ...

 

「よっし!いい機会だ!ちょっと俺の話も聞いてくれ!共同戦線張るなら俺の事も知ってくれよ!」

 

 匙は告白する。

 

「俺の目標は!ソーナ会長とデキちゃった結婚することだ!でもな、デキちゃった結婚ってモテない奴にとってみたらハードル高いんだぜ?でも、俺はいつかそれを乗り越えてやってみせるんだ...」

 

「匙...お前...!」

 

 この前覗きの事アーシアの前でばらした野郎のセリフとは思えないぜ!最低だ!

 でも、お前の熱意だけは買ってやれる...!

 

「匙...デキちゃった結婚への憧れ...わかる...わかるぞ...!すごくわかる...でもだ!俺はそれを敢えて否定してやる!!!」

 

 俺は突き付けてやった。

 

「なんだと!?俺の夢をバカにするのか!!?」

 

 匙が叫ぶ。

 

「違うな。それは素晴らしい夢だ。男の夢をバカにする男など居てたまるか...だけどな、俺は少し視野を広げてやりたいんだ...確かに、そういった行為は背徳感による興奮を生む。しかし、だがしかしだ...!俺は敢えて合法的に、きちんと結婚してからのそういった行為にこそ真理が隠されていると思っている...!!」

 

「どういう事だよ...」

 

「俺はアーシアと交際している...しかしアーシアは敬虔なクリスチャンだ。婚前交渉について厳しいのは知ってるだろ?だから俺はアーシアとは結婚するまでそういった行為をするつもりはない...!アーシアを悲しませたくないからな!それでだ...俺は思うんだよ...しっかりと交際して、結婚して...長い年月の間心を寄り添わせたその先にある光景...辛く、苦しいだろう...アーシアに手を出さないのは死ぬほど苦しい戦いになるだろうさ...!でも!それを乗り越える事で!試練を乗り越えた真の男になった事によって見られるその頂の景色は...!いったい...どれだけ美しいんだろうな...」

 

「なっ...!兵藤...!お前...!!!そんなにも...そこまで見据えて...俺は...俺は...!目先の快楽に憧れて...!」

 

「いいや匙!それもまた覇道だ!!俺はどちらもありだと思ってる...!ただ...そう、俺の夢も知って貰いたかっただけなんだ...これはあくまで思想の一つ...お前がそれに準ずる必要は全くない...でも他人の思想は人を変える事もある...現に俺もちょっとデキちゃった婚に惹かれている...」

 

「ばか野郎!兵藤!!お前!それは誘惑だ!!登り始めた山を転がり落ちるつもりか...!戻れ!兵藤!!」

 

「はっ!すまん匙。俺は取り返しのつかない事をする所だった...!」

 

「いいんだ兵藤。確かにデキちゃった婚に憧れる気持ちに変わりはないが、視野が広がった気がする。ありがとう兵藤。俺は、目の前しか見ていなかった。世界はこんなに広いというのに...」

 

「いいんだ匙、共に...共に戦おう...別の道を行く戦友よ!」

 

「あぁ!」

 

 俺は匙とがっしり握手する。

 ちなみにアーシアとそういう事をする機会は全然狙ってる。すまん匙、あれは嘘だ。

 

「......なかなか来ないから何をしてるのかと思ったら...」

 

「こ...小猫ちゃん...!?」

 

「....さっきから全部聞こえてましたよイッセー先輩...随分楽しそうでしたね...」

 

「ひっ...!」

 

 小猫ちゃんから殺意が見える...

 

「....死んでください」

 

 小猫ちゃんのボディブローが突き刺さる。

 

「ごっっっっ...!」

 

 ちょっと体浮いたんですけど...!!?

 

「....祐斗先輩が大変な時に変な事してる罰です。しばらく苦しんで下さい。」

 

「兵藤ぉおおお!!!」

 

「....会長の兵士さん。イッセー先輩を運んで下さい。」

 

「わ...わかったよ...」

 

 俺は匙に背負われながら集合場所に向かった。

 その日も聖剣は見つからなかった...

 

 ────────────────────────

 

「最近難しい顔ばっかだなイッセー。」

 

 元浜が話しかけてきた。

 

「そりゃ俺にも考えることがいっぱいあるんだよ。」

 

「あれか?部員の誰を調教してやろうかって...」

 

「お前なぁ...俺がアーシア一筋なのわかってんだろ?いい加減にしないと怒るぜ?」

 

「はっ。怒ってみろよ。と言いたい所だが、お前結構変わったよな。あれだけ可愛い部員が居たらてっきりハーレムを作ってやるぜ!!とか言うもんだとばかり」

 

「あぁ...まぁあれだ。人を好きになったら変わるってやつだよ」

 

「けっ!リア充自慢に付き合う暇はねぇよ!ボケが!」

 

「所でイッセー、例のボウリングとカラオケをする会どうするんだ?」

 

 俺はこいつらに頼まれて(主に元浜)アーシア、桐生、木場、小猫ちゃんと休日を半日使って遊び倒す計画を立てていたのだ。アーシアもそういった施設はまだ行ったことないはずだからきっと楽しいだろう。

 

「皆来るよ。きっとな...」

 

 木場もきっと大丈夫だ。あいつなら乗り越えられる。

 俺は知ってるからな。

 

「うぉおお!アーシアちゃんと塔城小猫ちゃん!テンション上がるぜぇぇぇ!!」

 

 松田が叫ぶ。

 すると松田の頭を叩く奴がいた。桐生だった。

 

「悪かったわね、私も行くことになって」

 

「ふっ、お前は所詮アーシアちゃんのオプションだ。メガネ属性は元浜で間に合っている...」

 

「ちょっとやめてよ、属性が穢れるわ?」

 

「こいつ!元浜のメガネは女子の体のサイズを正確に数値化できる特殊なものなんだぞ!お前とは違うんだ!」

 

 松田がそう叫ぶと、桐生はニヤリと笑った。

 

「まさか、その能力が元浜だけの物だとでも言うつもり?」

 

 そう呟いた桐生は俺の股間を見てきた。

 

「ふぅん、なるほどなるほど...?ふふふ、私のメガネは男子のアレを数値化できるのよ...?長さから太さまでね...?」

 

 そういやそんな能力持ってたな...

 こいつやべぇ奴だったわ。忘れてた...

 

「大きすぎても小さすぎても女性は困るけど...ふふふ、良かったわねアーシア、充分満足できると思うわよ...?アーシア体の大きさ的にもちょうどいい感じかもね」

 

 ボンとアーシアは赤くなった。

 

「おい!アーシアに変な事教えるなって!」

 

「えぇ...?もう遅いかなぁ...ね?アーシア~?」

 

「あぅあぅ...」

 

 アーシアが真っ赤だ...こいつまじで何を吹き込んでいるんだ...?俺は怖くなってきた。

 

 ────────────────────────

 

 その日の放課後も神父の格好でお散歩していた。

 しかし今日も無為に時間が過ぎていく...

 

「くっそ、今日も収穫なしか...」

 

 実は結構本気で手伝ってくれている匙。わかってたけど普通にいい奴だわ。

 覗き暴露の件は今回のお手伝いで帳消しだ。むしろプラスである。

 

「....祐斗先輩」

 

 小猫ちゃんと木場が立ち止まる。

 何事かと考えた所で俺も認識する。

 殺気が近づいてきている...!

 

「上だ!」

 

 匙が叫ぶ。

 木場が魔剣を取り出してフリードの一撃を防いだ。

 

「クソ神父...!」

 

「その声はあの時のクソ悪魔かぁ?これまた珍妙な再会でござんすねぇ!こうなりゃあの時の借り返してやっから覚悟しといてくだちゃいな!!けどまずはお前だな!イケメンくぅん!!」

 

 といって木場と斬り合う。

 俺達は神父の服を脱ぎ捨てた。

 

「あっれ~?そこにいるのはアーシアちゃ~んじゃありませんか~??あれあれ~?まさか悪魔になっちゃったんですかぃ?ケケケ流石は魔女さんですなぁ~!」

 

「おいテメェ!!」

 

 俺はブーステッド・ギアを起動する。

 

『Boost!』

 

 ぐっ...ぶん殴ってやりたいけど、あくまで木場の弔い合戦だ。俺は準備だけして待機する。

 

「伸びろ!」

 

 匙の手元のトカゲのような神器(セイクリッド・ギア)から黒く細い触手のような舌が飛んでいった。

 

「ウゼェな!!」

 

 フリードが聖剣で払おうとするが、触手は下に曲がってフリードの右足に張り付いてグルグル巻き付いた。

 フリードも剣で斬ろうとするが、すり抜けてしまった。

 

「そいつはお前には斬れないぜ!木場!こいつはもう逃げられねぇ!思う存分やっちまえ!」

 

 やっぱり匙を連れてきて正解だったな...

 匙のの神器(セイクリッド・ギア)はすごく有能だ。

 

「助かる...よ!」

 

 木場とフリードは何度も斬り合う。お互いスピードタイプだ。どんどん剣戟は加速する。

 

「ハイハイハイハイ!やりますなぁ!でも、俺様の持ってるエクスカリバーちゃんはそんじゃそこらの魔剣ちゃんじゃあ勝てやせんぜ!!」

 

「ぐっ!」

 

 木場の魔剣が折れた。再び新しい剣を作って戦う。

 

「へぇ...色んな魔剣が作れるんざんすねぇ?もしかいして魔剣創造(ソード・バース)ってやつでございますか??わーぉレア神器(セイクリッド・ギア)!なかなか楽しませてくれるじゃあーりませんか!!」

 

 木場の剣は数度刃を交える度に砕け散る...

 それを何度か繰り返した所でフリードが聖剣に纏わせるオーラを強くさせて、木場の剣を一撃で砕くとすぐに二撃目に入る。体勢が悪くなった木場は辛うじて避けているだけだ。

 

 俺は急いで二人の間に入ってフリードに不意打ちを決めようとしたが、避けて下がられてしまった。

 

「イッセー君!」

 

「今危なかっただろ...!悪いが勝手に使わせてもらうぜ?」

 

『Transfer!』

 

 俺は木場に力を譲渡する。

 

「貰った以上は使うしかないね...魔剣創造(ソード・バース)!!!」

 

 周囲一帯から刃が生えてくる。さながら針地獄だ。

 木場はそれらを足場にしながら高速で動き回る。

 

 フリードは襲いかかる剣を破壊するのに手間取っている。しかし目だけはしっかり木場を認識していた。

 

「クハハ!いいねいいねぇ!でもさぁ!!俺様のエクスカリバーは天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)!速さ勝負じゃ負けないんだよッ!」

 

 フリードは魔剣を砕き尽くし、木場と再び剣戟を演じる。しかし相性が悪い...先ほどと同じ展開になる。

 

「じゃあね!!悪魔く~ん!!」

 

 フリードが木場の体勢が崩れた所で斬りかかろうとする。

 

「やらせるか!」

 

 匙がラインを引っ張ってフリードの体勢を崩す。

 同時にラインは光輝く...

 吸収能力だ!

 

「...これは...俺様の力が流れていく...!」

 

「どうだ!これが俺の神器(セイクリッド・ギア)黒い龍脈(アブソープション・ライン)!!こいつに繋がれた以上、お前はもう終わりだぜ!ぶっ倒れるまでお前の力を吸ってやる!!」

 

「匙!流石だぜ!!そのまま吸い倒せ!」

 

「おぅ兵藤!やってやらぁ!!」

 

「...ドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)...あぁ!めんどくせぇ事この上ねぇな!!」

 

「木場!とりあえずこいつはぶっ倒そう!こいつをこのまま放置してたら会長とかにまで害がありそうだ!!一気に叩くぞ!」

 

 匙がそう叫ぶ。

 木場は不本意そうだが...頭は理解しているはずだ...

 

「.....ここで君を始末するのには同意するよ。奪われた聖剣はまだある。そっちに期待する事にしよう。」

 

 俺も参戦準備で構えを取る。

 木場が止めを刺そうとすると...

 

「ほう、魔剣創造(ソード・バース)か。使い手の技量しだいでは大きな力を発揮する神器(セイクリッド・ギア)だ。」

 

「....バルパーのじぃさんか...」

 

 フリードがそう呟く。

 

「まさか...バルパー・ガリレイ!!!」

 

 それを聞いて木場は激昂する。

 本当の敵が目の前に現れたんだもんな...

 

「いかにも。私がバルパー・ガリレイだ。...フリードなんだこの様は」

 

「じいさん!この訳わからんベロが邪魔で逃げられねぇんスよ!」

 

「ふん。まだまだ聖剣の扱いが不十分ではないか。お前に渡した因子をもっと有効活用してくれたまえ。体に流れる因子を聖剣の刀身に込めるのだよ」

 

 まずい、逃げられる。そう思った俺はフリードの元へ駆け寄る。

 

「なるほどざんすな!...おらよ!!」

 

 ラインを切断してフリードは解放された。

 

「行かせるか!!」

 

「おうおうクソ悪魔君、リベンジマッチだなぁ!!」

 

 俺が殴りかかろうとしたときに...

 

「逃がさん!」

 

「ぬぅわあぁ!!」

 

 凄まじいスピードで何かが飛んで来て、フリードとの衝突のエネルギーで俺は吹き飛んでしまった。

 

「ヤッホー、イッセー君。大丈夫?」

 

 イリナがいた。

 

「ん...あぁ...なんとか...」

 

 俺はでんぐり返しの状態でそう返した。

 アーシアが駆け寄って俺に回復してくれる。

 

「フリード・セルゼン、バルパー・ガリレイ。反逆の徒め。神の名の元に断罪してくれる!」

 

「めんどくせぇ!!そうは問屋が卸しませんぜ!ここは退かせていただきやすよん!おらよ!じゃあな!教会と悪魔のクソども!」

 

 フリードが光の球を地面に叩きつけると、眩い光が辺りを包み込み、視界が潰れた。

 視力が回復する頃には逃げられていた。

 

「追うぞイリナ」 「うん!」

 

 聖剣コンビが駆け出す。

 

「僕も追わせてもらう!!」

 

 木場も駆け出した...

 取り残された俺達は戦闘態勢を解いて、一息ついた。

 これからどうするか相談することしばらく...

 

「力の流れが不規則になっていると思ったら...」

 

「これは、困ったものね」

 

 後ろから声が聞こえる。

 俺は気付いてしまった。

 この後の展開に...

 

 ────────────────────────

 

「...エクスカリバー破壊ってあなたたちね...」

 

 部長はひどく呆れた様子であった。

 

「サジ、あなたはこんなにも勝手な事をしていたのですね?困った子です...」

 

「うぅ...すみません会長...」

 

 匙の顔色は真っ青越えて真っ白だ。

 

「祐斗はそのバルパーを追ったのね?」

 

「はい、教会の二人と一緒だと思います。」

 

「そう...全く...小猫?どうしてこんなことを?」

 

「....祐斗先輩が居なくなるのは嫌です...」

 

 小猫ちゃんの言葉に部長は困惑するようであった...

 まぁ小猫ちゃんはあんまりそういう事しそうなタイプに見えないもんな...

 

「まぁ過ぎた事を言っても仕方ないわね。ただ貴方達がやったことは、かなりの大事になってもおかしくなかったのよ?」

 

「すみません...」「はい...」「はいぃ...」

 

 アーシアは初めての部長からのお叱りでかなりショックなようだ...

 ごめんアーシア、俺が言わなきゃ関わらなかったのにね...

 

 向こうからおしりを叩く音がする。音だけ聞いても結構なダメージだ...

 後でアーシアに治してあげるよう伝えるか...

 

「うわぁぁあん!ごめんなさいごめんなさい!許して下さい!!」

 

 パァン!パァン!

 一撃一撃に恐ろしい威力が込められている...

 あいつ...罰が終わる頃にはお尻が無くなってるんじゃないのか...?

 

「全く...使い魔を祐斗の捜索に出させたから、発見しだい部員全員で迎えにいくわよ?そこからの事はその場で決めるわ。」

 

「「「はい...」」」

 

「さて、イッセー。罰は何がいいかしら?お尻はもう叩いたものね...?そう言えば、ふふっ...こんな物があったわね...」

 

 部長が手に取ったのは球体だ。俺は知っている。例の術式の球だ...しかし少し違うぞ...?

 

「これはいつもの物の次世代型よ?そろそろイッセーもあれに慣れて来たと思うし、最大負荷が倍の物を用意してあげたわ?」

 

「待ってください部長。おかしいですよ部長。ここは普通お尻叩きとかそういう罰でしょう?おかしいですよ部長...?前から思ってましたけどいったい俺にどんな恨みがあると言うんですか...?」

 

「いいえ?可愛い下僕に少しでも強くなってほしいという私の優しい優しい思いやりよ?まぁ強いて言うなら...毎日のようにアーシアとのイチャイチャを見せられるこちらの気持ちにもなってみなさいという所かしら...?」

 

「ひぃ!じゃあ改善できないじゃないですか...!」

 

「改善しなさいよ...まぁいいわ。今日はこれを着けて帰宅なさい?」

 

 え?俺...もしかして死ぬ?

 

「イッセーさん...!あの...部長さん!私も悪いことをしましたから!私にも罰を下さい!!」

 

「そうね...じゃあ............してあげなさい?」

 

 部長はアーシアに耳打ちする。

 アーシアがかぁっと赤くなった。

 いったい何をすると言うのだ...

 お兄さんは心配だよ...

 

「じゃあいくわよイッセー。」

 

「待ってくださ....おっっっっっっっっも!!!!え?ちょっと!!!無理です!!!立てません!!!!」

 

「勿論神器(セイクリッド・ギア)は使用禁止よ?頑張りなさい?」

 

 部長は去っていった。アーシアも部長に連れていかれた。

 

 俺の苦悶の声と匙の絶叫だけが響く...

 なんだこの地獄...

 

「んぎぎぎぎぎぎ...!」

 

 俺はなんとか立とうとするが、腰を上げきる前に地面に墜ちる...

 体がミシミシいってる...!これ...!ちょっとぉ!!?

 前のやつはなんだかんだ動く事はできたじゃん!え?適切な負荷ってのの定義も新しくなってます?

 明らかに過重ですけど...?

 俺は芋虫のように這って少しづつ動いていた。

 

 しばらくすると匙がこっちに来た。

 

「俺さ、お前ん所の部長はなんだかんだ優しいと思ってたんだけどさ...ちょっと認識改めるわ。じゃあな...頑張ってくれ!兵藤!」

 

 それだけ言い放って帰ってしまった。

 

 匙ぃいいいいい!!!あいつぅぅぅぅぅ!!!

 この恨み絶対に忘れてやらねぇ!!!

 くっそ...!やってやらぁぁぁぁあ!!!!

 

 何度も何度も何度も何度も泣きそうになりながら、地面を這ったり、ハイハイしながら...俺はなんとか家に着いた。玄関にたどり着くと、術式は消えた。謎技術ェ...

 

 少し明るくなってきている...朝の5時くらいか...?

 俺は疲労がピークになっていた...あかん...もう...死ぬ...

 

 生まれたての小鹿のような足取りで何度も倒れながら玄関を開ける....

 

「っっっっっっんな!!!アーシア!!!???」

 

 そこに居たのは女神であった。

 否アーシアであった。

 メイド服を着ていた...

 

「イッセーさ...ご主人様...お帰りなさいませ!!あの...その....私!ご主人様をお癒し致します!!その...メイド...ですから...!」

 

 アーシアは恥ずかしそうに...でも頑張ってそう語りかけた。

 恥ずかしいけど一生懸命メイドになりきるアーシア可愛い

 フリルいっぱいの可愛いだけを考えた、実用性の欠片もないメイド服...

 なんだこの衝撃は...!!!!

 

 ....拝啓、リアス・グレモリー様。貴女は本当に食えないお方です。私は貴女への怨嗟をこれでもかと溜めて帰ってきたのに...そこに待っていたのは貴女からの、これ以上ないほどのご褒美だと言うのですから...

 

「さぁ...こちらに来て下さい...!イッセ...ご主人様...!」

 

 アーシアは座布団の上に正座してこちらを手招きする。

 イッセーと間違えかけるところまで含めてポイントが高すぎる...!!

 

「でも...アーシア...俺、汗とか汚れとかで...」

 

「大丈夫です...イッセーさんになら...どれだけ汚されても大丈夫ですから...」

 

 俺は鼻血を噴出した...

 アーシア...それは殺し文句だ...!!

 

 俺はふらふらとアーシアの膝のもとへと歩いていく...

 

 膝枕してもらった。

 それだけでもう...満たされた。

 

「アーシア...」

 

「はい、ご主人様...よく頑張りましたね...」

 

 アーシアが俺の頭を撫でてくれる...

 

「うぅ...俺頑張った...頑張った...」

 

「はい!ご主人様は頑張りました!」

 

 アーシアの笑顔が見える...

 あっ...聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)で回復もしてくれている...

 疲れが...痛みが引いていくようだ...

 

 本来ならアーシアの膝枕など大興奮なのだが...

 

「ごめん...アーシア...寝ちゃっていいかな...?」

 

「はい、ずっとこうしていてあげますから!」

 

 圧倒的安心感と母性と癒しに包まれて、俺は眠ってしまった...

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