聖剣の統合まで時は遡る。
「バルパー・ガリレイ。僕は聖剣計画の生き残りだ。いや、正確には悪魔に転生して生き永らえた。」
「ほう?計画の生き残りか...数奇なものだな?こんな極東の地で出会うとは縁を感じるな。ふふふ」
バルパーは語り始めた。
「私はな。聖剣が好きなのだよ。しかし、私には聖剣使いの適性がなかった。絶望したよ...私がどれだけ聖剣を渇望していたのか...貴様らにはわかるまい。」
「しかし、使えないからこそ、使える者を人工的に作り出す研究に没頭するようになった。そして聖剣を使うのに必要な因子があることに気付いた私は、聖剣を使うに足り得ない人間から因子を抽出し、集める事を思い付いた...」
「なるほど。読めたぞ?聖剣使いが祝福の際体に入れられるのは...」
ゼノヴィアが呟く。
「そうだ。結晶化した聖なる因子だとも。」
「同志たちを殺して、因子を抜き出していたと言いたいのか...?」
木場が殺気を込めて尋ねる。
「そうだとも。この結晶はその時の物だぞ?3つほど使ったがね。これが最後の1つだ。」
「俺以外のやつは因子に耐えられずに、死んじまったけどな!ケケケそう考えると俺様ってマジすげー!!」
「バルパー・ガリレイ...貴様は自分の私利私欲の為にどれだけの命を...」
「ふん。それだけ言うのならこの結晶はくれてやる。既に量産体制は整っているのだ。今さらこんなもの1つ不要だとも」
木場は地面を転がった因子結晶を手に取った。
愛おしそうに、懐かしそうに...悲しそうに...
木場は涙を流していた。
その時、結晶が光を発する。それに合わせて地面から光が漏れでて、人のような形となった。
「この戦場に漂う様々な力の因子が球体から魂を解き放ったのですね...」
朱乃さんが語る。
「僕は...!僕はずっと思っていたんだ!僕よりも生きたかった子がいたのに!僕よりも夢を持った子がいたのに!僕だけが生きて良いのかって!」
霊魂が木場に何かを語りかける。
木場にはそれが伝わったのか、涙がこぼれ続ける...
木場と周囲の霊魂は聖歌を歌い出す。
彼等が辛い研究所での生活で持っていた唯一の希望...唯一の生きる糧...
それが聖歌であった。
本来聖歌を聞けば悪魔はダメージを受けるが、この歌はただただ、全ての者に届いた...
木場はやがて、決心したように立ち上がる。
「悪魔として生きる事が主の、僕の願いだった。でもエクスカリバーへの恨みだけは忘れられなかった。同志の無念を晴らさなければと...でも...そうじゃなかった。同志達が望んでいたのはそんな事じゃなかった...僕が...僕だけでも生き残る事だった!」
木場の体から力が溢れる...
怨嗟を越えた男の姿がそこにはあった。
「でも、終わりじゃない。バルパー・ガリレイ。あなたが消えない限り、この怨嗟は他の者へと続いていく...だから...僕は貴方を倒してみせる!!」
皆の応援する声が聞こえる...
そうだ。僕は一人じゃない...
仲間がいるんだ!!
「僕は剣になる。」
「
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フリードと木場は剣戟を重ねる。
しかし、木場の剣はもう折れない。
同志達の...仲間たちの想いが彼に力を与える。
フリードも負けじと聖剣の権能を活用し、形を変え、速度を上げ、刀身を隠す...
しかし木場はそれでもなおフリードを完全に圧倒する。
「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。デュランタル!!」
横から本物の現存する聖剣たるデュランタルをもって乱入したゼノヴィアによる一撃は、フリードの聖剣を吹き飛ばし、砕き、その姿を露にさせる。
木場はエクスカリバーの伸びた刀身が砕けてしまった事実に一瞬惚けるフリードに向かって、剣を振り下ろす。
フリードもエクスカリバー本体で防御しようとするが、エクスカリバーは無惨にも砕け散った。剣はそのままフリードの横腹を抉り斬る。
「見ていてくれたかい?僕らの力はエクスカリバーを越えたよ...」
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「聖魔剣だと...!あり得ない!反発し合う二つの要素が混じり合うなんてありえないのだ...!」
「バルパー・ガリレイ。お前はもう終わりだ。」
木場はバルパーへと剣を向ける。
「...そうかわかったぞ!聖と魔!それらを司る存在のバランスが大きく崩れているなら説明はつく!つまり魔王だけでなく神も...!」
バルパーは突然、光の槍を受けて一瞬で死んでしまった。
「バルパー。お前は優秀だ。神の不在...最大の禁忌までたどり着くとはな...だから死ぬんだ。」
「まて...今なんと言った!!?」
ゼノヴィアが激昂する。
「あ?しまった...口が滑ってしまったか...フフ...だがよい!どうせ冥土の土産になるのだ。いいか?かつての大戦で神は死んだのさ!」
「そ...そんな事あるわけが...ならば、神の愛は...」
「そんなもの既にないわ。ただまぁ、ミカエルが上手く「システム」を運用しているようだ。最低限システムさえ起動していれば祝福も、悪魔祓いもなんとか機能するからな...」
「そんな...」
ゼノヴィアは呆然としてしまう...
「俺は戦争がしたいんだ...それぞれの長が死んで、どこの勢力も弱腰よ。アザゼルすら戦争はしないと言う始末...!もはや戦争はこれくらい派手にやらかしてやらないと発生しないのだ...お前たちの首を土産にィ!俺だけでも大戦の続きをしてやるよ!!さぁ誰からでもいいぞ?死にたい奴はかかってこい!!!」
コカビエルが力を解放する。
圧倒的な絶望がそこにあった...
敵うわけない...心のどこかがそう思ってしまう...
「うぉおおおおおおおお!!!アーシアぁあああああ!!!愛してるぞぉおおおおおお!!!!」
イッセーの声が響きわたる...
赤き光が放出され、莫大なオーラが拡散される...
「イッセー君...君も至ったんだね...
先ほどまでの重苦しい雰囲気は、不思議と彼の愛の告白で消えてしまった。
「全く...イッセーったら...」
僕らは苦笑してしまった
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俺はヴァーリに地面に下ろしてもらった。
というか、ある程度高度が下がった所で放り投げられた。
アーシアが駆け寄って来てくれる...
かっこいいこと言いながら結局負けるなんてな...
ダサいことこの上ないな...
「イッセーさん!私...ちゃんと見てました!!イッセーさんがコカビエルさんと戦っている所...!ちゃんと見ましたから!!」
アーシアが泣きながら言ってくれる...
「ボロボロに負けたけどな...」
「でも...かっこよかったです」
アーシアが微笑みながらそんなことを言ってくれる...
「....ありがとう。」
俺は恥ずかしくてアーシアから顔を逸らした。
逸らした先ではヴァーリがコカビエルを淡々と追い詰めていた...
『Devide!』『Devide!』『Devide!』
あぁ...くっそ...やっぱ強えぇなぁ...ヴァーリ...
かっこいいな...あんな風に...勝ちたいな...
ヴァーリの拳がコカビエルの腹部を貫いた。
コカビエルは沈黙する...
意識を失ったコカビエルを担いでいるヴァーリは、フリードも回収しようとこちらに歩き出す...
アーシアが俺の事を抱き締めてくれる...
無言で通りすぎた...
『無視か?白いの』
ドライグがそう言った。
『起きていたのか、赤いの』
『折角あったのにこの状況ではな』
『あぁ。そんなフラフラの貴様とやっても楽しくないわ』
『間違いないな。まぁ、いずれ戦う運命だ。こういうこともあるだろう』
『あぁ、ではな』
『あぁ』
因縁の二天龍は、数度言葉を交わして黙ってしまった。
「じゃあね、赤龍帝。今度会うときはもう少しマシになってることを期待するよ。」
「ん...あぁ、白龍皇。時間かかるかもだけど待っててくれ...」
「ふっ...」
ヴァーリは飛んでいってしまった。
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アーシアのお陰でなんとか立てるようなった俺は木場と話に行った。
「良かったな、木場。聖魔剣だなんてすげぇじゃん...」
「イッセーくん、僕は...」
「しっかり過去に折り合いつけれたんだろ?なら俺から言えるのはおめでとう!それだけだ」
「うん...」
「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。」
「部長、僕は...皆に...何よりも命の恩人であるあなたを裏切ってしまいました...お詫びする言葉が...」
「いいのよ。あなたが帰ってきてくれた。それだけで充分だわ。あなたの同志たちの想い、無為にしてはだめよ?」
「部長...僕はここに再び誓います。あなたの騎士として、あなたと仲間達を終生お守りします。」
「ええ、ありがとう。」
麗しい主従関係が繰り広げられる。
なんとか、全部うまく行って良かった。
木場が帰って来てくれたことも素直に嬉しい。
それに、俺もついに
「それにしても、イッセー...あなたはもう...なんというか...」
部長に呆れられている。
「はは、結界の外にまで響いていたんじゃないかな?君の愛の告白は...」
「はぅ...」
アーシアが顔を赤くしている。
「俺も誓ったんだ。お前のように、アーシアをずっと守る存在になるってな。だから...まぁ、一緒に頑張ろうぜ!」
俺が拳を突き出すと、木場もそれに合わせてくれた。
「それじゃ、祐斗。勝手な事をした罰よ?お尻叩き1000回ね?」
木場のお尻は死んでいた。かわいそうに...
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コカビエルの事件から数日後、部室にゼノヴィアが座っていた。
「やぁ赤龍帝。」
「よぉ...悪魔になったんだな...」
「あぁ...神が居ないと知ってしまったのでね、破れかぶれで転生した。騎士の駒を頂いたよ。で、この学園にも編入させてもらった。よろしくね、イッセーくん♪」
「は?」
「イリナの真似をしたのだが、うまくいかないものだな」
「そりゃキャラが違いすぎるだろ...」
流石にキャラに乖離がありすぎて厳しいぜ...
ありのままのがいいですよ?特に君みたいな子は。
「まぁ、これから仲間なんだろ?ちょっと一回いざこざもあったけど、水に流してこれからは仲間としてよろしく頼むぜ。」
「そうだ。仲間。私は悪魔だ。...これで良かったのか?うん?だが神が居ないのなら、私の人生は...しかし...むむ」
一人で悩み始めた...
俺との会話はどこへいったんだ...
「そういやイリナは帰ったのか?」
「ん?あぁ、私のを合わせた聖剣5本とバルパーの遺体を持って本部に帰ったよ。」
「そうか...まぁあいつは知らないんだもんな。」
俺とアーシアはちょっと俺のせいでコカビエルとの話し合いを全然聞いていなかったから、後で部長から説明された。アーシアはやっぱり相当ショックだったようだ...頑張って慰めたがその日は浮かない感じだった。
「そうだね。イリナは幸せだよ。私は神の不在を理由に上げたらすぐに異端扱いだ。簡単に教会から追い出されてしまった。」
「教会は今回の事で、悪魔側に堕天使の動きについて不透明だから連絡を取り合いたいと打診してきたそうよ?」
部長が話に入ってくる。
「そうなんですか?」
いよいよ三勢力の同盟が近いというわけだ...
「今回の事は堕天使の総督アザゼルから真相が伝わってきたわ。といってもコカビエルの単独犯です、なので罰として永久冷凍しました。で終わりだけどね」
「白い龍を介入させて、自分達の問題を自分達で納めた形になっているからね」
「近いうちに三大勢力の長同士で会合が開かれるらしいわ。私も今回の事件の参考人として招かれてしまったの」
「胃が痛くなりそうな役回りですね。俺なら絶対やりたくないです」
「あら?勿論あなたも連れていくわよ?なんならあなたが報告するかしら?」
「勘弁してくださいよ!」
「あはは...」
ふと、ゼノヴィアの視線が俺の隣のアーシアに移る。
「アーシア・アルジェント。君に謝罪しよう。赤龍帝が居なければ君に見当違いの発言をする所だった。君を傷つける所だったよ」
「いえ...イッセーさんが守ってくれましたから...それに私は今の生活にとても満足しているんです。大切な人もできました...悪魔ですけど、この出会いにはとっても感謝してるんです!」
「そうか...これでクリスチャンで神の不在を知ったのは私達二人だけというわけだ。異端視か...あの視線はなかなか堪えるものがある...君も辛かったろう」
「いえ...もう過ぎたことですから...」
「そうか...では、私は失礼するよ。まだまだこの学校について知らねばならないことが多すぎる...」
「あ、あの!今度の休日皆で遊びに行くんです!ゼノヴィアさんも一緒に如何ですか?」
「今度機会があればね。今回は興が乗らないかな...ただ....今度私に学校を案内してくれないか?」
「はい!」
アーシアが笑顔で答える。まぁ原作みたいに仲良くなってくれることを期待しよう。
ゼノヴィアは去っていった。
「さ、ようやく全員がまた揃ったのだから、部活動も再開よ!」
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無事、全員揃って休日に皆で遊ぶことになった。
アーシアも、こんな大人数で遊んだ事はないようで楽しそうだ。可愛い。ボウリングでガーターになって落ち込むアーシアも、初めてのストライクを俺に嬉しそうに報告してくれたアーシアも、ボールを重そうにふらふら運ぶアーシアも最高に可愛かった...
可愛いよアーシア...
今はカラオケボックスに居るのだが小猫ちゃんは食べてばっか。でもわかるよ。カラオケの料理ってチープでジャンクで美味しいよね。木場は優雅にコーヒー。君はこんな所でも優雅でかつそれが映えるんだから素直に尊敬するよ。アーシアは楽しそうに手拍子。可愛い。可愛すぎる。
歌ってるのはバカ3と桐生だけだ...
なんなら俺も手拍子アーシアが可愛くてあんまり歌えてねぇ。見るのに集中したいんだ俺は...
半分歌ってねぇな...カラオケってなんだっけ?
しかも、今日のアーシアはゴスロリ衣装なのだ!桐生プレゼンツ!悔しいが俺は奴に称賛の嵐を起こさざるを得ない...
可愛いよアーシア...褒めたら嬉しそうにしてくれた。
是非、今度は二人きりの時に着てくれ...
匙も誘ったが、「異性交遊を禁止されている」と泣く泣く断っていた。あいつなんだかんだ生徒会メンバーにモテてるんだよな...完全に囲い込まれておる。
アーシアが恐る恐るタンバリンに手を出している様を見ていると、木場が隣に座ってきた。
「どうした?」
「うん...君に一言だけお礼が言いたかったんだ。ありがとう。」
「よせよ、俺なんか大したことしてないって、お礼なら部長とか小猫ちゃんにしとけって」
「イッセー君...」
「ほら、お前も歌えよ!ドラグ・ソボールの主題歌くらいは歌えるだろ?せっかくだし一緒に歌おうぜ?」
「わかったよ...」
木場も楽しそうにしてくれてた。
皆で楽しく遊べる...
こんな日常を守れる力が欲しい...
俺は、もっともっと強くなってやる...!