アザエモンが去った後、ギャスパーに匙がラインを着けての特訓が始まった。
俺やアーシアが投げるボールが視界に写った瞬間に停止する。
停止した物体はだいたい数分間完全に停止する。
停められたのが生き物なら、その意識まで停止するので停められてる間の記憶はないし、何をされても知覚されない。
まぁシンプルに強い...
一応ギャスパーよりもかなり強い奴には効かないらしいけど。
自分との距離によって停止させられる時間は変化するらしい。
あっアーシアが暴投した。可愛い。
ギャスパーは現在視界に写るもの全部を停止させているので、ふとした拍子に事故が起こる。
俺は今、頭以外停められてしまった。
俺を心配して近づいたアーシアは完全に停められてる。
これ...結構ひどい拷問とかできそうですけど...大丈夫ですか?
「どう?練習は捗っているかしら?」
部長が降りてきた。
俺達の為にサンドイッチ作ってきてくれたらしい。
アーシアほどじゃないが普通に旨い。
匙も喜んでいた。
「リアス先輩も帰ってきたし、俺はそろそろ自分の仕事に戻るぜ」
「おう、ありがとな匙。助かったわ」
「ん、おう。まぁ俺も
「えぇ、ありがとうね匙くん。」
匙は去っていた。
「さて、私も一緒に練習に付き合うわ。」
部長がそう言ったので、俺は
「あの、じゃあ俺自分の特訓に行っても良いですかね?ギャスパーの特訓に付き合うのも大事ですけど、部長がいるなら十分でしょうし、俺もっと強くなりたいんです」
「そう?ふふ、白い龍に当てられたのかしら?まぁなら、好きになさい。これも付けてあげるから」
部長が2号を起動した。
「ありがとうございまっっっっっっんん!!んぎぎぎぎ...」
俺はまともに動かない体を引きずって地面を這いだした。
少しでも強くならないと...
ヴァーリの戦いを見て、あの時俺が感じたのは憧憬であった。
あいつのように強くなりたい...
あいつに一泡吹かせてやりたい...
「イッセーさん!私も一緒に行きます!」
「アーシア!ありがとう!よっしゃ!!!んぎぎぎぎぎ!!」
俺はその時...ついに立ち上がる事ができた!
「すごいですイッセーさん!!」
アーシアが褒めてくれる...
「ぬん!んぐぐ...ふん!」
俺は一歩一歩踏みしめるように歩いていく...
5歩歩いた所で地面とキスした。
まだまだぁ!!!
「イッセー先輩...」
ギャスパーがこちらを見ていた....
────────────────────────
その日の夜、俺はギャスパーを連れて仕事に向かった。
森沢さんは男の娘フェチだったようで、大いにギャスパーを震え上がらせてしまった。
森沢さん...あんた公務員なんじゃないのか...
ショタを襲おうとするんじゃないよ...
見事にギャスパーの
........
「ギャスパー、出てきてちょうだい。無理してイッセーに連れて行かせた私が悪かったわ。」
「ふぇぇぇぇぇぇぇえん!!!」
例の部屋に閉じ籠ったギャスパーは大声で泣き喚いている...
まぁ、こいつも可哀想な奴だ。吸血鬼の名家で、こいつは化物だとネグレクトされ続けていたのだ。ギャスパーのもうひとつの姿を知らない奴からも、ハーフだの化け物だのと虐められて来た...
「ぼ...僕はこんな
まぁ、気持ちはわからないでもない。俺も兵藤一誠に憑依したとわかって暫くたった頃はベッドの中でどうしてこんな事に...
まぁ俺の場合は話の先行きがわかっていたから、動くしかないと決めれたけれど...
「困ったわ...この子をまた引きこもらせてしまうなんて、王失格ね...」
「そんな事ないですよ」
「あら、慰めてくれるのかしら?」
「まぁ、部長にはお世話になってます。部長はこれから打ち合わせですよね?俺が引き継ぎますんで、そっちに行ってください。こっちは俺に任せてくださいよ」
「....お願いするわね?」
「はい」
部長が向こうに行ったのを確認すると、俺は扉の外からギャスパーに話しかけた。
「なぁギャスパー。お前は
「......」
「俺はなんの力もないただの人間だったのにさ、
「.....先輩はどうして、前を向けたんですか?」
「あ?全然向けてなかったぜ、その当時は。死にたくなかっただけだ。でもさ...今は違う。アーシア、わかるだろ?あの子だ。あの子は俺の恋人なんだ。何に代えても守りたい大切な人だ。だから俺は頑張れる。前を向ける」
「せんぱい...」
「まぁ、お前も何か守りたいものを見つけろって事だ!それは力になる。原動力になる。仲間でもなんでもいい。少なくとも部長とか眷属の皆の事は好きだろ?」
「でも...僕じゃご迷惑をお掛けするだけで...
「俺もまともに使えてねぇんだぜ?俺のライバル、俺の対になる
「だからさ、一緒に強くなろうぜ?俺も協力するからさ。
「イッセー先輩...」
「俺の血飲むか?アザゼルも言ってたし多分
「怖いです...生きた人から直接血を吸うのは...これ以上何かが高まったらと考えると僕は...」
「大丈夫だよ、お前なら。きっとすぐなんでもできるようになるさ」
「イッセー先輩に僕の何が...!」
「わかるよ。だってお前は今日ずっと籠っていた部屋から出た。ゼノヴィアから逃げてた。
「イッセー先輩...」
ギャスパーが出てきた。
「ほらな?今お前は自分から部屋を出れた。やっぱりお前はすごいよ。俺なんか何年も体鍛えてるのに、一向に強くなってる気がしないんだぜ?」
「僕...まだ怖いですけど...もう少し頑張ってみます...イッセー先輩みたいに、頑張ってみたいです!」
「おう...一緒に頑張ろうぜ」
まぁ、ギャスパーが少しだけでも前を向けたようで良かった。
説得とかあんまり柄じゃないからな...
ちょっと恥ずかしかったけど、言いたいことは言えたし、まぁなんとかなったかな?
────────────────────────
次の日の休日、朱乃さんに呼び出された。
部活メンバーで朱乃さんだけいまいち接点がないんだよなぁ...
まぁ魔力について教わるくらいだ。
これは確か...アスカロンを貰うイベントだったか?
ヴァーリ戦、絶対に必要になるはずだ...
あっても勝てないのに、貰わない手はない...
「いらっしゃいイッセーくん」
「朱乃さん、こんにちわ」
朱乃さんは巫女服だった。
「ごめんなさいね、急に呼び出して」
「いえ、それは構わないんですけど、用件はなんですか?」
「この先に着けばわかりますから、いきましょうか?」
俺は黙ってついていく...
確か、ここが朱乃さんの家なんだっけ?
「彼が赤龍帝ですか?」
神社から声が聞こえる。そちらを見ると、黄金の12枚の羽を持つ、天使のわっかを携えた、美少年がいた。
「私はミカエル。天使の長をしております。なるほど...このオーラの質、まさしくドライグですね。懐かしい限りです」
おい、ドライグ、謝っとけよ、迷惑かけたんだろ?
『バカ言うな。こいつらが俺達の戦いに横やりをいれたのだろうが...』
絶対お前らが三すくみの大戦に横やり入れたんだけどな...まぁさすがに冗談だ。てか今さらお前が謝ったらめっちゃ困惑しそうだよな。やっぱ見たいからしてくれよ。
『貴様なぁ!』
────────────────────────
「実はあなたにこれを授けようと思いまして...」
ミカエルさんがそう言うと、宙に聖剣が浮かんでいた。
「これはゲオルギウス、聖ジョージの持っていた龍殺しの聖剣アスカロンです。特殊な儀礼を施しているので悪魔のあなたでも扱えるはずです。あなたが持つというよりはその
できるよな?ドライグ...
『当然だ。やってやろう...』
「聖剣だなんてすごくありがたいですけど、本当にこんなすごいものを貰っていいんですか?」
日本人らしく、そんな!貰えません!ムーブをかます。
「それは悪魔側へのプレゼントです。こちらも噂の聖魔剣をいくつか頂きましたし。後は...願掛けですね。私たち三勢力が歴史上唯一共闘した、二天龍の討伐。そのうち一匹を宿す神器を持つ君に、願掛けするのですよ。日本的でしょう?まぁ後は...歴代最弱の宿主と言われるあなたに補助武器をと思いまして」
これまじで思ってたけど今までの赤龍帝はどんな力持ってたんだよ...
『少なくとも、初めからお前より体はできていたし、闘気を纏ったり、魔術や魔法を使う奴もいた。まぁ単純にお前は俺なしでの戦闘能力が低すぎるんだ。そういう意味でもこの武器はいい補助になるだろうさ。まぁそれすらも俺と同化するわけだが。ククク、本当にお前は俺が居ないとダメだなぁ?相棒』
いっつもそう思ってるっての。まじで感謝してるよお前には。戦闘力的にも、精神的にも....
俺が一番大切なのはアーシアだけど、お前は間違いなく最高の相棒だ。一番頼れるぜ。
『........そうか』
ドライグはそのまま意識を沈めた。
恥ずかしいこと言っちゃったな...まぁ事実だけど。
「この剣はここで最終調整しました。各勢力のトップの皆様の術式が施されていますから、イッセー君でも触れますわ?」
俺は恐る恐る剣を掴んだ。
よし、大丈夫っぽいな。
俺はブーステッド・ギアを起動すると、剣をゆっくりと籠手に刺していく。
ドライグが黙って剣と同調してくれるので、俺はそれを取り込んでいく...
赤く光ったと思ったら、籠手から剣が生えていた。うぉお、長さが調整できる!
俺が調子に乗ってウィンウィン剣を動かしていると
ミカエル様は苦笑いしていた...
「と、時間です。そろそろ行かねば」
「あの...ミカエル様!一つ言いたいことがあったんです!会談後で構わないのでお時間いただけませんか?ほんの一瞬で終わりますから!」
「いいでしょう。それでは会談の席で」
特に朱乃さんとの話はなかった。
まぁあんまり関わりないし、堕天使のハーフ云々の話はアーシアでいっぱいいっぱいの俺には荷が重い。俺は"兵藤一誠"ではないのだから、自分で乗り越えて貰うしかないだろう...
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今日も今日とて、ギャスパーの
アーシアがボールを投げる。
俺は2号を身に纏い、ギャスパーにガクガクになりながらボールを投げる。
一球投げるだけですごい負荷だ...!
一緒に頑張ると約束した以上、この時間は俺はギャスパーと一緒に修行するぜ!
「イッセー先輩...疲れましたよぉ...!」
「バカ言うな...!まだまだやるぞ...!見ろ!この生まれたての小鹿のような俺の足を...!それでもやるんだよ!!」
「は...はぃいぃいいぃ!!」
「イッセーさん!ギャスパーくん!頑張って下さい!」
「うぉおおお!!頑張るぞギャスパー!まさかアーシアの激励を貰っておきながら頑張らないなんて事ないよなぁ!!」
俺はギャスパーを睨む。
「ひぃぃぃぃい!!!怖いですぅぅぅ!!頑張りますうぅぅぅぅ!!!」
俺達の特訓は俺が倒れるまで続いた。
いや俺が先に逝くんかい....