決戦の日、俺達は部長の城の地下にある巨大魔方陣に集合していた。
アーシアはいつものシスター服。ゼノヴィアは例の戦闘服。後のメンバーは学園の夏服だ。
俺もなんか戦闘服考えようかな...
正直制服ってあんまり動きやすかないんだよな。気になるほどでもないけど。
「次期当主として恥じない戦いをしなさい。眷属の皆さんもですよ?」
「頑張って、リアス姉様!」
部長の家族が激励を送ってくれる。
俺はアーシアの手を握った。
「頑張ろうな、アーシア」
「はい!」
アーシアは笑顔でそう返してくれる。
前回の戦いは不安でいっぱいといった感じだったが、アーシアも強くなったなぁ、感慨深いぜ。
黒歌との戦いの時も、アーシアのお陰で部長達はダメージを負わなかったし。
魔方陣で転移する。
ついた先はテーブルだらけの場所だった。
見覚えがある。アーシアとの初デートの場所でもある...思い出のショッピングモールだ。
「ここって...」
「あぁ、俺達の初デートの地が舞台らしいな...まぁいつも一緒に来てるけど」
「そうですね...」
時間にすれば数ヶ月なのだが、内容が如何せん濃すぎてはるか昔のように感じる...
俺とアーシアはぎゅっと身を寄せあった。
「ちょっと...今から戦いなのよ?」
部長が頭を痛そうにしている...
木場も苦笑い。
「.....バカップルすぎて緊張感が出ません」
小猫ちゃんにまで言われた。
うっせぇわい!俺達なりのリラックス法じゃい!
「でも、なんかこれを見ると心が落ち着きますね...」
ギャー助...お前の精神安定に繋がるなら良かったぜ。
というか、みんなの緊張をほぐしてるし最適解なのでは?ならこれからもずっとアーシアとイチャイチャしよ。そうに違いない。
「.......呆れてるだけです」
「小猫ちゃん、今日もキレッキレだね」
元気そうで何よりです。
などと喋っているとグレイフィアさんからアナウンスが入った。
今回もグレイフィアさんが審判らしい。
俺達の本陣は二階の東側、会長達の本陣が一階の西側だそうだ。
結構範囲がアバウトだな...プロモーションしやすいのか?
「今回は特別ルールがございます。本陣にある資料をご確認下さい。フェニックスの涙は両チーム一つづつ支給されます。作戦タイムは30分です。この時間内の相手との接触は禁止されています。」
俺達はフードコートで作戦会議を始めた。
「今回の特別ルール、バトルフィールドを破壊し尽くさないこと...やっぱりこう来るわけね」
「....私や副部長、イッセーにとってはかなり不利な戦場だな。思いきった攻撃ができん」
ゼノヴィアが言った。
「確かに...俺なんか
「イッセーさん!大丈夫ですよ!」
アーシア...何が大丈夫なんだい?
でもアーシアが大丈夫って言ってるし大丈夫だな!うむ!
「私もだ。デュランダルでの攻撃は考えて打たなければ...」
「ギャスパーの眼も使用禁止よ。まだ完全に使いこなせていないから、ゲームの進行に影響を与える可能性がある以上容認できないとの事よ...アザゼル印の
なんというか...俺達がごり押しで勝てないようにあからさまに規制がかけられてるな。
まぁそれを乗り越えて勝てって話なんだろうけど。
観客が望んでいるのは破壊による虐殺ではなくて、手に汗握る緊迫した頭脳戦、熱い戦いだ。
話し合いが続く中、木場が立体駐車場の視察をしてくると言って出ていった。まぁ間違いなく戦いになる場所だしな...
「ギャスパーもコウモリになってデパートの各所を飛んで頂戴。序盤はこちらに状況を逐一報告してほしいの。」
「り...了解です!」
色々と話し合いながら一応のゲームプランが整った。
残り15分との事で、5分前までリラックスタイムだ。
俺、アーシア、ゼノヴィアの三人でハンバーガーショップの前で喋っている。
俺は中に入って、ドリンクを勝手に注いで飲んだ。
バーガーショップのバイトなんてしたこともないからちょっとわくわくした。ポテトもつまんでやったぜ。うめぇ。
アーシアもやってみたいと楽しそうにしていた。非常に可愛い。
アーシアがゼノヴィアにも飲み物を注いであげている。
アーシアとゼノヴィアが仲いいから必然的にこのメンバーで絡む事が多くなって来たんだよなぁ...
まぁこれはこれで悪くない。アーシアも楽しそうだし、ゼノヴィアも話せばいい奴だし。ちょっと脳筋臭がする所も地味に意見が合う。
まぁアーシアとのイチャイチャを邪魔される時もなきにしもあらずだが、ゼノヴィアもそこら辺はわかってるのか割りと空気読んでくれるし...
「イッセー。お互い不自由な戦いになりそうだが、なんとかやってやろう」
「ん?おう、頑張ろうぜ。アーシアも、終盤戦で頼りにしてるからな?」
「はい!任せて下さい!」
フンフンとアーシアが気合いを入れている。可愛い。
ほんとはずっとアーシアの護衛をしたいが、俺の役割は兵士。一番槍で突っ込まないとなんだよなぁ...
「アーシア...抱きしめていいか?」
「?...いいですよ?」
アーシアがハグしてくれる。
俺の胸の中から熱い力が沸いてくる...
ちなみに現在の歴代のアーシア教侵食率は20%だ。こっわ...スピードが早すぎる。
まぁアーシアが可愛いから仕方ないね。
まぁそういうわけで、こうしてアーシアと触れあっていると洗脳済みの先代達が信仰の力で俺を強化してくれるのだ...ちなみに俺が一番アーシアを信仰してるので俺が一番自分を強化してる形になるが。
俺はこれを便宜上、アーシニウムエネルギーと名付けている。
原作の乳パワーみたいなもんだ。多分違う。
でも、これを使いこなしたら俺はもっと強くなれる気がする...!
ただし、ドライグの精神が少し削れるので注意が必要だ...
「ありがとう!これで充分にアーシアの力を貰えた!」
「...?」
アーシアは不思議そうだ。
「イッセー、君はどこに向かっているんだ...?」
俺の力の増大を感じたのかゼノヴィアにそう言われた。俺が知りたい。
『んおぉぉぉぉぉん!やめてくれえぇぇぇ!お前だけがバカなのは我慢できる...!だが過去の赤龍帝まで汚さないくれぇぇぇえ!!!』
すまないドライグ...でも!この力を十全に扱えれば俺は!最強の赤龍帝にきっとなれる!!
『相棒!!俺は赤き龍なんだ!!誇り高き二天龍なんだぁぁ!!』
ごめんって...でも
わかってくれ...申し訳ないとは思ってるよ。
俺だってこれでもそこそこバトル好きだし、気持ちはわかるけど...
でもアーシアが可愛いんだから仕方ないだろ!!?
『........俺もアーシア教に入ればわかるのだろうか』
そう語るドライグの声はどこまでも切なかった...
────────────────────────
時間になり、俺達は再び集合した。
グレイフィアさんから、三時間の短期決戦であることがアナウンスされる。
「さっきの指示と変わらないわ。イッセーは小猫と一緒に、祐斗はゼノヴィアと一緒に行動して頂戴。ギャスパーはコウモリになって監視と報告。戦いが進んでいけば私と朱乃とアーシアでイッセー側のルートを通って進むわ!」
「木場、切れ味優先で短剣作ってくれないか?」
「いいけどどうして?」
「いや、俺が譲渡すれば匙のラインも切れるかなって...アスカロン持ってるのが一番確実なんだが、ゼノヴィアに渡すだろ?」
「なるほどね、じゃあこれをどうぞ。」
木場に剣を貰った。
「サンキューな!」
かくして俺達は出動した。
作戦としては、俺が女王になるべく進行する事を読んでいると考えて、逆に俺を囮にして木場達が主戦力として敵本陣を攻める...との事だ。
「イッセーさん!頑張ってください!いっぱい怪我しても絶対私が治しますから!!」
「ありがとうアーシア!!!絶対勝ってやるぞ!!!」
俺が怪我するのはアーシアの中で確定なのね...
小猫ちゃんと定期的に前方を探りながらゆっくりと進行していく。
小猫ちゃんは自分の力を使うつもりらしい。
やっぱりどうしても部長の役にたちたいと覚悟を決めたそうだ。
「まぁ、小猫ちゃんがもし暴走しても、絶対止めてみせるからさ、大船に乗ったつもりでドンと構えてくれよ!」
俺がそう言うと
「....イッセー先輩の船だなんて、アーシア先輩の分しか席がなさそうですね」
「それは否定できないかもしれない...」
「....でも、ありがとうございます」
と言っていた。決意は固いようで安心だ。きっと小猫ちゃんなら問題なく力を使える。
「....まっすぐ来てる者が二人」
小猫ちゃんは仙術を使って、気を探っていた。流石は猫魈...
「....後10分ほどで会敵します」
いよいよ準備しとくべきだな...俺は
『Boost!』
「....!上から来ます!」
小猫ちゃんが叫ぶ。
天井から、匙がターザンみたいに飛んで来た。
匙に女が一人引っ付いている。
「兵藤か!まずは一撃!!」
匙が俺に勢いそのままに蹴りを入れてくる。
「ぐっっ!!」
俺は籠手でガードしたが、少し飛ばされる。
まぁすぐに体勢は立て直したけど。
「匙!序盤から来てくれたな!行くぞ!!」
『Count Down!1 Minutes!』
匙とやるなら
よく見ると匙の
2つのラインが俺に繋がり片方は俺の
確か血液を吸ってるんだったか...?
あんまり悠長にしてると失血で体力を削られるな...
『リアス・グレモリーさまの僧侶一名、リタイア』
「やられたのは恐らくギャスパー君だよ」
匙がニヤリと笑う。
「ギャスパー君を不審な動きで誘って、食糧品売場にてニンニク攻撃してやったのさ...」
「よくもギャスパーを!この野郎...行くぞ!」
匙もこちらに距離を詰めてくる。
俺は匙の蹴りを籠手で受け止めて、逆に匙の腹を殴ろうとするが、籠手がラインで引っ張られて上手く踏ん張れず微妙なパンチになってしまった。
くっそ...わかっちゃいたが俺って対人戦の経験が薄いな!匙の方が上手だ!
俺が再び匙を攻撃しようとすると、ラインがライトに伸びていった。
突如閃光が巻き起こる。
俺は眼を瞑ったが少し遅く、視界が持っていかれた...
腹にパンチが入る。ぐっっっでも俺は腹への攻撃なら今まで何度も食らって来てるぜ!!内臓が破裂した事だってあるんだ!!このぐらい!!
視界が少し回復した時点で見えたのは俺の顔面を殴ろうとする匙であった。
俺は拳を籠手で防ぐ。
少し下がった所で時間が来た。
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』
「ぐっっっ!!!」
威力自体はそんなに無いが、体内に深く衝撃が行き渡る...!
良く見れば匙の心臓にラインが繋がっていた。
「命を削った一撃って所か...?」
「あぁそうだ。魔力の低い俺が火力を出すにはこれしかなかった。文字通り命懸けだぜ...兵藤、俺はお前を...赤龍帝を絶対に倒してみせる...!!」
すごい覚悟だ...でも、負けるわけにはいかない!
アーシアと合流しなきゃならんからな!!
そうしてる間に子猫ちゃんが敵を倒していた。
仙術を使って気の源泉にダメージを与えたそうだ。改めて聞くと怖すぎ...
「....匙先輩、ごめんなさい。」
そういって兵士の子は消えていった。
『ソーナ・シトリー様の兵士一名、リタイア』
「....イッセー先輩、加勢します。」
小猫ちゃんがそう言う。
「悪い、小猫ちゃん。ここで共闘なんて匙に対して恥ずかしすぎて顔向けできなくなっちまう...あいつは命をかけて俺を取りに来てる。それに答えるのが友達ってもんだ!!」
「ありがとう、兵藤...いくぞ!!」
俺は匙の腹を殴る。
「ガッッッッッ!!!」
怯んだ匙に蹴りを入れようとするが、地面に伸ばしたラインを引っ張り回避した。すぐに俺の腕に別のラインを伸ばし、逆側を俺の足元に張り付ける。
ぐっ!!匙から離れてるのに強度が強い!!
『Boost!Boost!Boost!Boost!』
俺はなんとか引きちぎったが、その頃には匙が全力の魔力をこちらに飛ばしていた。
回避できない!!なら!!
俺は後ろに体重をかけながら右手でドラゴンショットを作り出し、譲渡無しでぶつける。匙の魔力弾が打ち勝ち、俺に飛んで来る。
しかし威力はそいだので、左手で魔力弾を殴る。
左手がじくじくと痛む...
強い意志が籠っている一撃...
俺は再び匙に接近して顔面を殴る。
匙はすぐに立て直し、俺の腹の装甲を蹴る。
今度は俺が横腹を蹴る。
殴る。蹴る。殴られる。蹴る。蹴る。蹴られる。
匙はラインを防御に使いながらもなんとか立っていた。
既に腕も足もボロボロだ。根性だけで立っている...
『厄介な奴だな...』
あぁ。根性だけで立つ奴は、どこまでも立ち上がってくる...
『それに、一撃一撃に恐ろしいほどに決意が籠っている...響くだろう?相棒、こういう奴はこちらが決定的な一撃をぶつけなければ勝てんぞ...』
あの時の、最後のヴァーリの拳のように...意識を、精神を折る一撃が必要だ...
「....勝つんだっ!今日俺は...!お前を倒して夢の一歩を掴む!!」
匙は俺に再び...愚直なまでに襲い掛かる。
正直、避ける事はできる。
だけど避けない。ここで避けたら負けたのと一緒だ。
これは精神の戦いだ、だから逃げない!
匙は殴りかかり、俺は顔面を匙の鼻に打ち付ける。
「がっっっ!!!ぶっ!!」
匙の鼻から鮮血が舞う。
たたらを踏みながら、俺の足元にラインを引いて、それを引っ張って戻ってくる。
匙が俺の腹に蹴りを入れる。
「....ぐっ!!」
俺はそれを受け止めて、匙の腹を撃ち抜く。
「ごばっっっっ!!!がっ....!!」
匙は崩れ落ちた。
しかし、まだ消えない...こいつはまだ戦えるから。
よろよろと立ち上がり、俺の方へと歩いていく...
「.....俺は....お前....を......」
匙は俺の元まで歩いてきて、俺の顔面に拳をぶつける。もうほとんど威力はない。
「匙.....お前は良くやったよ」
俺は匙への敬意を込めて、匙の顔面を殴り地面へと叩きつけた。
「ソーナ・シトリー様の兵士一名、リタイア」
「...........」
俺は数瞬立ち尽くした...
匙...お前はすごい奴だ。
正直パワーの差は歴然だったが、そんなもの感じさせないくらいの気迫と根性だった。何度も立ち上がってきて、正直恐ろしかった。
攻撃を受けた箇所から鈍い痛みが響く...
「あぁ...これ、切らないと」
俺は木場に貰った短剣の切れ味に力を譲渡して、ラインを切断した。
血液が飛び散る...
ラインは儚く消えていった。
アドレナリンが収まってきて感じるのはふらつき。
貧血の症状だ。視界が暗く、耳鳴りがする...
「匙....すまん、でも、俺は負けるわけにはいかない。」
匙の決死の作戦を予め知っていて、それを無惨に切り捨てる事に若干の不快感を感じた。
ズルいやつだ、俺は。
でも...アーシアが反転でダメージを受ける可能性がある以上、ここで止まるわけにはいかないんだ...
俺がアーシアを守る。