俺は今謎のカプセルにぶちこまれている。
廊下で出会ったアザゼル先生が俺の側に来たと思ったら、俺に何かしたのだ。
気がつけばここに入っていた。多分眠らせる魔法とかそんなのだ...
カプセルを叩こうにも身体が全く動かない...
口だけは動くのでアザゼル先生に文句を言う!
「何をする気ですか先生!!事によっちゃ訴えますよ!!」
「ちょっと試したい事があったんだが、実験材料が足りなくてよ...リアスに聞いたらイッセーなら良いって言われたんだ」
「あの人そういう所あるなほんと!!俺はこれでもたった一人の兵士なのに!!もう少し大事にしてくれてもいいじゃないですか!!」
「あ?兵士なんてゲームじゃ
「俺は犠牲になること前提ですか!!教え子に慈悲の心とかないのか!!?あんたの所の堕天使で良いじゃねぇか!!」
「やだよ。なんでうちの戦力で実験せにゃならんのだ、実験ってのはなぁ、丈夫な龍でやるって相場が決まってるんだよ。ってかまじでもう実験始めるから、じゃあな!達者でな!」
「死にたくないぃぃぃ!!アーシアぁぁぁぁ!!」
爆発が起こる...
............
「ゲホッ!ゴホッ...!...とりあえず死にはしなかったか...くっそ...関わりたくなかったのに、回避不能の実験とかどうすりゃ避けられるんだ...」
辺りを見渡すとカプセルが壊れていて、部屋は爆発の影響でぐちゃぐちゃになっていた...
アザゼル先生は既にいないので、結構な時間が経ったのかもしれない...
あの野郎...いくら堕天使のボスだからってやっていいことと悪い事があるだろうが...
俺はなんとか起き上がって部室に向かう...
アザゼル先生にも文句が言いたいが、俺は何より部長に文句を言いたい...
部室に向かって歩いていると、何やら騒がしい声が聞こえた...
運動場の方だ...
「わっしょい!わっしょい!わっしょい!わっしょい!」
『言いたい事があるんだよ!』『なになに?』
『やっぱりアーシア可愛いよ!』『なになに?』
『好き好き大好きやっぱ好き!』『なになに?』
『やっと見つけたお姫様!』『なになに?』
『俺が生まれて来た理由!』『なになに?』
『それは、アーシアに出会うため!』『なになに?』
『俺と、一緒に人生歩もう世界で一番愛してる!!』『なになに?』
『あ、い、し、て、る~~!!!!』
どこにあったのかわからない大きな神輿を背負った数十人の俺を囲んで数百人の俺がガチ恋口上していた...
神輿の頂上のデカイ椅子にはアーシアが乗っていて涙目で揺れに耐えている...!
「な....なんだ...これは...!」
俺はあまりにもあんまりな状況に動く事ができない...
いや!アーシアが怖がってる!!俺が助けに行かずにどうするんだ!!
「アーシアぁぁぁ!!!」
俺は悪魔の翼でアーシアの元にたどり着いた...
「ひっ!」
アーシアに怖がられた...あっ...死のう...
「イ...イッセーさんですか...?」
「そうだ...!本物のイッセーだよ!!」
「...イッセーさん!!わぁぁあん怖かったです!!」
「アーシア!!」
俺達は抱き合う。
「おい俺!!!アーシアたんに抱きついてるんじゃねぇ!!!ぶち殺すぞ!!!」
下の俺に怒鳴られた。
声は広がり、やがて罵倒は俺全体に広がっていった...
一旦アーシアを連れて逃げるしかねぇ!!
俺は翼を生やして飛び去る。
うわぁあ!大量の俺が地面を走って追いかけてくる...!!ゾンビ映画かよ!!
俺を足場にした俺を足場にした俺といった感じで俺が俺に迫ってくる...!!!
なんだこれ怖い!!!怖い!!!
「おっ!イッセー!目が覚めたか!」
気がつくとアザゼル先生が俺の横を飛んでいた。
「目が覚めたかじゃないですよ!!何したんだあんた!!」
「詳しくは後で説明してやる!今は逃げるんだ!!」
────────────────────────
現在、遠回りで迂回して旧校舎に戻った俺達はアザゼル先生が即座に旧校舎に結界を貼ることで立て籠っている。
最初は張り付く俺をアザゼル先生が結界の中からプチプチ潰していたんだが、学習した俺は現在学園中に散らばってアーシアが結界から出てくる時を待って潜んでいるらしい...
意味がわからない。
今は部室で緊急会議が開かれている。
「学園中、イッセーだらけよ」
部長がため息をつく。
部員皆で双眼鏡を使って新校舎を見ると、大量の俺がこちらを双眼鏡で見ていた。
「イッセーを覗く時、イッセーもまたこちらを覗いているのだ...」
アザゼル先生が呟く。
「つまんない事言わないで下さい!!あんたが原因でしょうが!!いったい何しやがったんだ!!」
アーシアは大量の俺に追いかけ回されて、神輿に担がれて、大量の俺にコールされ続けて軽くトラウマになってしまったようだ...
一瞬だけ追いかけられた俺ですら怖かったもん...
今は俺に抱きついてようやく落ち着いてきた所だ...
「いやー、ドッペルゲンガーの実験中に暴走してな。実験体のイッセーが増えた。ま、すぐ学園を覆う結界を発生させたし、アーシアがここにいる以上外には出ないだろ。被害は最小限だ」
「アーシアが心的外傷を負ってますけど!!?大体こんなに大量の俺どうするんですか...」
「そりゃ全員殺すしかねぇだろ。安心しろ、一定以上のダメージを受ければ煙になって消えるから、スプラッタにはならねぇよ」
「それで...何人くらいに増えたんですか...」
「まぁざっと300人かな!」
『300人!!?』
ここにいる全員が驚いた。
なんだその数は...
アザゼル先生が小さな魔方陣を展開して、タッチパネルのように操作する。
それが終わるとこう言った。
「とりあえず今学校にいる生徒は全員眠らせておいた。その上で小規模な結界を張っておいたから、まぁドッペルイッセーが多少暴れたり、俺達の攻撃の流れ弾を少々食らってもダメージにはならねぇよ」
そして先生は、まるで演説者のように大振りなジェスチャーで俺達にこう言ってきた。
「ま!体のいいサンドバックが出来たと思って楽しもうぜ!」
「...そうですね」
「小猫ちゃん!?」
「確かに最近のイッセーのいちゃつきは目に余る物があるものね...」
「部長!!?」
「あらあら...少し血が騒ぎますわね...うふふ」
「朱乃さん!?」
「仲睦まじいのは良いことだが、それはそれとしてこちらも少々思うところはあるな」
「ゼノヴィア...」
「僕は...イッセー先輩がたくさんは流石に気持ち悪いです...」
「ギャスパー...地味に一番傷付いたぞ...」
「ひぃぃ!すみません!!!」
「イッセー君は一人だけでいいもんね。何人ものイッセー君にアーシアさんとイチャイチャされたらこちらの身が持たないよ」
「私は本物のイッセーさんとしかしません!」
アーシアが顔を少し赤くしながら堂々と言ってのける。
アーシア...嬉しいけどそういうことじゃないよ...
「皆...そんな風に思ってたのか...」
俺は悲しくなってきた...
普通に俺が悪いけど。
「俺も内心イライラしてたからな...ちょっとだけ暴れさせて貰おうかな...」
アザゼル先生がコキコキと肩を鳴らす。
「あんただけは言うんじゃねぇよ!!わざと暴走させたんじゃねぇだろうな!!」
「あ?んなことするわけねぇだろが」
もう先生の事信じてられないよ...
そこから始まったのは...俺の虐殺劇だった...
────────────────────────
俺達は運動場でアーシアを囲むように円を作って、アーシアを餌に俺をおびき寄せた...
みんなの魔力が、剣が、拳が、俺を惨殺していく...
いや、煙になるだけなんだが...
俺も
何が悲しくて自分で自分を殺さなければならないんだ...
「おっと手が滑った」
アザゼル先生が俺に攻撃してくる。痛い。
「.....」
まず間違いなく故意だが...
もしもがあるかもしれない...
我慢だ我慢...
「おーっとっとぉ!また滑ったぁ!」
「痛っっった!!先生!!流石に無理がありますよ!!」
「うるせぇ独身に見せつけやがって!なまじイッセーを殴ってるから本物もやりたくなったんだよ!ちょっとぐらい発散させやがれ!」
「モテモテなんだから堕天使で可愛い子見繕えばいいでしょうが!」
俺は先生に殴りかかる。
もう限界だ!!
俺は先生と殴り合いの喧嘩を始める。
流石に本気でやりはしないけど流石に痛い目にあって貰わないと了承できない!!
「ちょっとイッセー!アザゼル!穴を開けたら!!」
「あそこに隙間ができてるぞ!!」
「アーシアたんを奪還しろ!!!」
『おぉおおおおおお!!!!!』
まずい!こんなことしてる暇はなかった!!
「ぬぉっ!!抑えきれない!!!」
腐っても俺のドッペルゲンガー...
サイラオーグさんとかに使ったら世界征服できそうだな...
「おらぁああああ!!!」
俺は全力で俺に掴みかかっているドッペルゲンガーを殴り飛ばそうとするが...
くっそ!一定のダメージで煙になるから一人吹き飛ばして巻き込むみたいな事ができねぇ!!
「アーシアたん!!捕まえた!!」
ドッペルゲンガーの一人がアーシアの手を握った!
「アーシア!!」
「いや!助けて下さいイッセーさぁん!!」
なんか俺がアーシアに拒否されている風景はちょっと心に来るものがある。
アーシアが既に三人に捕まっている...!ドッペルゲンガーの触り方は無駄に紳士的だが...
「俺のアーシアを離せ!!」
急いで三人を殴り殺してアーシアを抱き抱えブースターで素早く飛び去る。
「イッセーさぁん...グスン...」
「ごめんアーシア...先生がどれだけちょっかいかけてきたって無視すれば良かったんだよな...」
「いえ...助けてくれましたから...」
下を見ると皆が俺に飲み込まれていた...
あっ皆が集まった俺を吹き飛ばしてこっちに飛んで来た...
俺に踏まれたのかちょっとボロボロだ...
「いくら
「すみません...」
「ほら、運動場の分全員殺しといたから許してくれや」
この人仕事できるから怒るに怒りきれないよね...
グレゴリの皆さんの苦労がわかるな。
...いや、やっぱり初めからやれやと、俺はそう言いたい。
「結構な数殺ったけどまだ足りないだろうな...残りの小賢しいイッセーはどうしてくれようか...」
アザゼル先生は顎に手を当てて考える...
「現状イッセーを釣れるのはアーシアだけだものね...」
「これ以上アーシアを俺に触られたくありません!!」
「...わかってはいるけど混乱するわね...」
「イッセーさんとドッペルさんは全然違います!イッセーさんは私の事をちゃんと考えてくれます!あんな強引なことはしません!...後ドッペルさん達より触り方が少しだけエッチです...」
うっ...ちゃんと違いをわかってくれるのを喜べばいいのか、エッチだと言われたのを反省すべきなのか...
「.......」
部長は呆れた顔をしている...
なんか色々すみません...
「そうだなぁ...今の陣形で出てこないってことは、かなり辛抱強い連中が残ってるんだろう...そうだ!俺にいい考えがあるぜ...」
アザゼル先生が嫌な予感をさせる笑顔になった。
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『シ...シスターアイドル、アーシア・アルジェントでーす...!!き...今日は私の初ライブに来てくださってありがとうございましゅ!!い...一生懸命...歌いますので...き...聞いてください!!』
アーシアがフリフリのシスター服っぽいアイドル衣装を身に纏い、どこからともなく現れたアイドルっぽい舞台で挨拶をする...カンペをガン見しながら。
「あ...アザゼル先生...俺、今日貴方にそろそろ殺意を持ちそうだったんですけど...こ...こんな...こんな素晴らしい光景が広がるなんて...!」
「だろ?俺は教え子の事を何よりも考えてるんだぜ?お前にとってはこの景色は何よりも素晴らしいだろう?」
「先生!!!」
俺は先生に抱きつく...
「はぐらかされてるわよイッセー...」
「ほら、混ざってこいよイッセー。最高のライブにしようぜ!」
「はい!!」
俺は最前列に立つ。
続々と俺も集まってきた...
間違いなく残りの俺全員が揃っただろう。
アーシアのライブを聞きに来ないならもう俺じゃねぇ!
曲が流れ始める...
アーシアがどうしようどうしようと慌てている。何歌うかとか一切決めてないもんね。でも慌てている様も最高に尊い...
「よっしゃいくぞ──ー!!!」
『タイガー!ファイヤー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージぁあああああ!!!』
大爆発が巻き起こる...!
「グハッ...な...何が...!」
かなり吹き飛ばされてしまった...
俺が辺りを見渡すと、死屍累々といった様子だった...
たった数人の俺を残して俺は全滅していたのだ...
「フハハハハハ!アーシアのライブは俺がジャックした!アーシアを解放して欲しかったら俺を倒すんだな!!」
気がつけばアーシアは棒にくくりつけられていた。
なんてやつだ!!最低だよ先生!!
それだけはやっちゃ駄目なやつだろ!!
「おのれ先生!!裏切ったな!!...今度という今度は許さねぇ!!行くぞお前達!!アーシアを助けるんだ!!」
『おぉ!!!』
俺達は突撃する。
「はっ!イッセーが何人束になったって脅威にはならねぇよ!」
そういうと、アザゼル先生は光のビームを何発も発射する。
それを俺達は辛うじて避けていく...
しかし、どうしても避けられない面子が出てくるが、消えかけてもなお果敢に少しでも前へと進もうとする...
ボロボロになりながらも少しづつ前に前に...!
「アーシアを助けるんだ!!」
「あの悪逆非道のクズを引きずり下ろせ!!」
「一発ぶちこんでやれ!!」
『おおおおお!!!』
突如俺達を淡い光が包み込む...
「...私を助けて下さい!」
アーシアがそう言った。
俺達の身体中に力が漲る...!
果敢に攻め込むがそれでも、一際大きい光線が俺達を消し去ろうと近づいてくる...
くっそ!ここまでか...!
突如2つの人影が俺達の前に現れる。
「木場!ゼノヴィア!!」
「...なぜだかわからないけど、体が動いてしまったよ」
「私もだ。なぜか助けなければと思ってしまった」
他の皆も俺達の側に駆け寄ってくれる!
「よーく考えれば、やっぱりアザゼル先生が元凶ですわ」
「....たまには先生にもお灸を据えましょう。充分発散出来たしね」
「ぼ...僕も協力しますぅ!!」
「みんなぁ...!!」
俺は泣きそうになった...!!
「さぁ、行くわよ皆!アザゼルを打ち倒しましょう!!」
部長が鼓舞する!!
『おおおおお!!!』
「あいつら、手を結びやがったぞ!こ...この俺が!こんな所で!!ぎゃあああああ!!!」
アザゼル先生は悪の親玉らしい断末魔を発して、俺達に捕まった。
────────────────────────
「イッセーさん...」
解放されたアーシアが俺に抱きつく...
「アーシア...皆も頑張ったんだ。確かに強引だったり、怖かったりしたかもしれないけど、アーシアの事を思ってる気持ちは皆一緒なんだ。だから...労ってやってくれないか?」
「はい...皆さん助けて下さってありがとうございます!!」
アーシアの満面の笑みを見て満足したのか、俺のドッペルゲンガー達は大きく頷きながら消えていった...
「チッ。大勢で俺をいじめやがって」
顔に絆創膏をたくさんつけた先生が涙目で毒づく。
「少しは反省しなさいな、先生」
部長に言われてアザゼル先生はぐぅの音も出ないといった様子だった...
「それにしても大変な事になってたなぁ...」
疲れた...
けどまぁ、アイドルアーシアが最高に可愛いかったので今日はもうなんでもいいや...
先生には賠償として衣装を貰った。もうこれだけで許せる。
家でアーシアに着てもらって、いっぱい楽しませて貰おう...
ちなみにその後、アザゼル先生が生徒皆の記憶を消したが、全て消すわけにはいかないようで、俺が双眼鏡でどこかを覗いていただとか、運動場で大暴れして迷惑をかけたみたいな変な認識が残ってしまって俺はしばらく白い目で見られた。
解せぬ...