目が覚めると、いつもの天井が見えた。
「病院か...」
案外体はスッキリしている...
勝ったん...だよな?
横を見るとサイラオーグさんが寝ていた。
自分で言うのもなんだが、かなりぐちゃぐちゃに殴り合ったはずだが、やっぱり冥界の医療は進んでるのだろうか...?
いや、アーシアが治療したのかも...
あれだけの戦いをしたにしては体が軽いし。
「....!イッセーさん!おはようございます!!」
アーシアが扉を開けて走って俺に突撃してくる。
「ぐふっ!アーシアおはよう。...どれくらい寝てた?」
「半日くらいです!」
「そっか...アーシアが治してくれたのか?サイラオーグさんも?」
「はい、病院に着いたらすぐに」
「そっか、ありがとうアーシア。戦いでもアーシアにはいっぱい助けて貰ったな」
「お礼なんて言わないでください。私達はこれからもずっと支えあっていくんですから」
アーシアはにこりと笑ってくれる。
「そうだな!俺とアーシアは最高のパートナーだからな!」
「はい!」
ぎゅっと抱きしめる。
はぁ好き...好き好き...
「全く...起きて早々見せつけてくれるじゃないか」
「サ、サイラオーグさん!おはようございます!」
「あぁ、それにしても、あれだけの戦いをしたのにもうほとんど怪我の面影もないとは...体力は戻っていないようだが。君の力なんだろう?全く...リアスを羨ましく感じてしまいそうだ」
「そんな...私なんて...」
「いいや、誇っていいともアーシア・アルジェント。君は間違いなくグレモリー眷属における重要人物だ。おまけにそれを守るのが赤龍帝なんだからな。そこらの奴らじゃ立ち向かう事も出来んだろうさ。フッ...それにしても、こんなにも充実した負けは初めてかもしれん...」
「俺も...最高の気分でした。アーシアと共に、貴方を打ち倒せて...これほどの歓喜はないです」
「言ってくれるじゃないか。だがまぁ、俺もお前達と戦えて最高だった...今でもまだ昂りが収まらないようだ...」
「俺もですよ」
本当に、今でも手が震えるようだ...あれほどの戦いが今後あるだろうかと思えるほどの一戦だった。
「失礼するよ」
紅髪の男が入室してきた。
「サ...サーゼクス様!?」
「こんにちわ、兵藤君、サイラオーグ。本当にいい試合だった。私も強くそう思うし、上役も全員満足していたよ。若手組の将来が楽しみになる一戦だった」
「ありがとうございます...」
「さて、兵藤君。君に話があるんだ。サイラオーグ、しばし彼と話をしていいだろうか?」
「俺はかまいません。...席を外しましょうか?」
「いや、構わないよ。アルジェントくん。君も同席で構わない。君達二人を離れ離れにさせて、恨まれては困るからね」
サーゼクス様はクスリと笑いながらそう言った。
「サーゼクス様!ご冗談はお辞め下さい!!」
俺はついつっこんでしまう。
「ハハ...朝刊で話題になっていたよ?冥界一のバカップル誕生か?ってね。天龍の巫女と山吹の龍帝くん?」
「て...天龍の巫女ですか...?」
アーシアが恥ずかしそうにしている。
「あぁ...またドライグが病んでしまうな...ごめんよドライグ。わかってる。色々終わったらちゃんとお話するから...」
『.....あぁ...』
「話を戻そうか...兵藤君。君に昇格の話があるんだ」
「昇格...ですか?」
「正確に言うと君と木場くんと朱乃くんだが。ここまで君達はたくさんのテロリストの攻撃を防いでくれた。三大勢力の会談テロ、旧魔王派のテロ、神のロキですら退けた。そして先の京都での一件と今回の試合で完全に決定がなされた。近いうちに君達三人は階級が上がるだろう。おめでとう。これは異例であり、昨今では稀な昇格だ」
「でも俺...昇格は...」
「大方、アーシア・アルジェントと共に生きられればそれで良いとでも考えているのだろう?受けろ、兵藤一誠。お前は...いや、今回は君は評価が足りなかったようだが、お前達二人はそこで収まっていい存在じゃない。それに、階級が上がるのもそう悪い事ではないぞ?アーシア・アルジェントを守る時に、地位が必要になる時が来るやもしれんだろうしな」
サイラオーグさんに言われる。
「そう言われると確かに...」
そういう考えはしたことがなかったが、充分あり得る話なのか...
「そ...それでは、謹んでお受け致します」
「うむ。詳細は改めてそちらに連絡するよ。会場の設置やらなんやら、諸々の事柄も進めなければならないからね」
そう言い残して魔王様は去っていった。
「おめでとうございます!イッセーさん!」
アーシアが我が事のように喜んでくれる。
「ありがとう。まぁまだ合格が決まった訳じゃないだろうけど...悪魔の勉強ちょっと疎かになってるし」
「明日から一緒に勉強しましょう!」
「アーシア!わかった!明日からいっぱい勉強する!!」
アーシアとならいっぱい頑張れるぞ!
「まぁ安心しろ、昇格試験は落ちたとしてもまた受け直せる。なんなら少しだけなら俺が面倒見てやってもいいぞ?」
「それはありがたいですけど、流石にサイラオーグさんに悪いですよ...」
それからしばらく俺達は談笑して、ドクターさんの最終確認の検査を終えると退院した。
冥界の朝刊を見ると、まじで天龍の巫女とか山吹の龍帝、金龍帝などのワードが並んでいてびっくりした...
一個だけキス龍帝と書いていたのは見なかった事にした。
にしてもやっぱりすごい注目度なんだな...
これからはアーシアと俺のペアでオファーとか来るのだろうか...などと妄想してしまう。
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その日の夜、俺はドライグに少しでもストレスを吐き出して貰うために話し合いの時間を設けた。
流石に今までのも重なって限界が近いみたいだからな...
「よし、ドライグ。腹割って話そうぜ」
『あぁ...とはいえ、何をどう言ったものか...』
「俺はカウンセラーでもなんでもないからな。とはいえ、ドライグの精神に多大な負担かけてるのはわかってるから、なんとかはしたいんだが...」
『......頭ではわかっているのだ...お前が力を求めて、行き着いた先があれなのだと。これがお前の...ブーステッド・ギアの新しい可能性なのだと理解は出来るんだ。だが...だが、赤は俺が俺である証明なんだ。許せない気持ちと、相棒が進む道を見たい気持ちで板挟みなんだよ...』
「そっか...辛いよな。ごめんよ、元凶が何を言ってもしょうがないかもしれないけど、これでもドライグには感謝してるし、大切な相棒なんだと思ってるんだ...俺が選んだ道を進むのを助けてくれたのもドライグで、道を開いてくれたのもドライグだ。だから、蔑ろにしたい訳じゃないのだけはわかって欲しい。いや、結果的になってるのは否定できないけど」
『お前の気持ちは、きちんと俺の中に流れて来ている。お前がそれを本心で言ってることぐらいわかる。すまんな...俺の精神がこんなにも脆弱なのが悪いんだ。二天龍として名を轟かせたこの俺が、こんなにも脆いとは知らなんだ...』
「そんな悲しいこと言うなよドライグ。お前だけが悪いなんてあるものか。俺達は少なくとも死ぬまで一心同体なんだから、少しくらい俺に頼ってくれてもいいんだぜ?というかこの件に関しちゃほんとに俺が悪いし...」
『いいや、お前は気にしなくていい。お前の道を行ってくれ。新しい力も、莫大なエネルギーの消費という点さえ克服できればかなりいい塩梅だ。後は俺の心の問題なんだ...』
「ドライグ...」
『少しだけ心が軽くなった。ただ、できればカウンセラーの調達はお願いしたい...』
「そりゃもう!明日にでもアザゼル先生に聞いてみるよ!一番のカウンセラー見つけて貰うから!」
『頼んだ...』
ドライグ...着々と追い詰められているな...
どうにかしてあげたいんだが、やはり二天龍の和解くらいのビックイベントじゃないと対症療法にしかならないのかもなぁ。
まぁしょうがない...明日、いの一番にカウンセラーをお願いしに行こう。
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今日は学園祭。
やる気あるクラスなら早朝から最終準備だろうが、俺達オカ研は昨日の深夜のうちに終わらせているので普通に登校している。
「イッセーさん!今日は楽しみですね」
「そうだな!アーシアのウェイトレス姿撮影するためにばっちりカメラ準備したからな!いっぱい写真取らせてくれよ?」
「はい!イッセーさんのお写真も取らせて下さいね?」
「俺?俺はいいだろ...」
恥ずかしいから勘弁してほしい...
「でも...私もイッセーさんのお写真欲しいです...」
「はい!いっぱい撮られます!!何枚でも撮ってください!!」
「おいイッセー!学園祭に彼女無しで挑む俺達の気持ちとかちょっとは考えねぇのか!!」
「そうだそうだ!!せめて俺達がいない所でやってくれ!!」
「なんだよ、教室じゃ一緒なんだから別登校で良くないかって言ってるのに拒否してるのはお前らだろうが...自己防衛しろよ自己防衛」
「嫌だね!お前のアーシアちゃんとわかっていても毎朝美少女に挨拶される喜びは捨てられない!!」
「そうだそうだ!むしろアーシアさんだけ残してお前は消えてくれ!!」
「お前らにアーシア預けたらアーシアが汚されるわ!」
「言ったなイッセー!!このっ!!」
頭を叩こうとしてきたので軽くあしらった。
「くそぅ...イッセーが冷たい...」
「しょうがないさ。あいつは裏切り者だからな...俺達なんざ興味ないんだ...」
「間違っちゃいないがそこまでは言ってねぇ...」
などと喋ってる間に学校に着いてしまった。
朝の時間に教室で点呼したら、後は自由時間みたいなもんだ。
一応クラスの出し物もあるんだが、まぁ桐生がかなり張り切ってしっかり役割分担その他諸々してくれたのでわりと余裕はある。
学校行事に関して有能すぎん?
俺とアーシアがずっと一緒に居られるように調整もしたとも言われた。
そういう所が憎めないんだよなぁ...
アーシアがあれだけ弄られてもなんだかんだ友達でいるのも納得だ。
まずはオカ研での仕事だ。
ぶっちゃけオカ研の仕事は激務だ...
大量に人が来るのはわかりきってるし、人数も少ないし...
まぁやるしかないんだが。
今はアーシアが廊下で列整理をしている。一生懸命声を出していて可愛い。
あっ!あいつアーシアがあんなに頑張ってるのに無視しやがったな...
殺気を向けてやれば大人しく列に並んだ。それでいいんだよ阿呆め...
「イッセーくん。アーシアさんの事見たいのはわかったからこっちを手伝ってよ」
木場が呆れた様子でこちらに呼び掛ける。
「すまん木場!10秒だけと思ってたんだけどずっと見てしまってた...」
「それじゃあ僕は喫茶店の方に戻るから、仕掛けのことはよろしくね」
「了解、ありがとう。そっちも頑張ってくれよ」
俺はお化け屋敷のフランケンシュタインのメイクをして持ち場に着く。
「わー!」
俺が飛び出しても、
「........あぁ兵藤...」
みたいな感じでスルーされる。
多分他の部員が驚かすのを期待してたんだろう。
だってギャスパーの所ではキャーキャー歓声が上がっているもの。
いやいいんだけどさ...せめて驚いて欲しいんだが...
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お化け屋敷の仕事を交代して、今はチケット販売の仕事をしている。
とはいえそれも完売して今は増産中なのだが...
大量にコピーされたチケットをチョキチョキハサミで切って一枚のチケットにしていく。
まぁこういう作業嫌いじゃないし、接客よかはるかにマシだ。
なんだ...兵藤かよって落胆の目はもう見たくない!!結構精神にくる!!
「よぉイッセー、大盛況だな」
「アザゼル先生。こんな所に来てどうしたんですか?」
「ん?あぁ、ドライグのカウンセラーが見つかったからよ。それの報告に来たんだ」
「ほんとですか先生!ありがとうございます!!良かったなドライグ!!」
『...あぁ...』
「ったく...俺は面白れぇからいいけどよ、あんまりドライグ泣かすんじゃねぇぞ?これでも世界に二匹しかいない天龍なんだからな...俺達が苦労させられた時とはえらい違いだぜ...」
アルビオンとの和解が成されれば、それが一番手っ取り早いんだろうけど、そうならない可能性も充分あるからな...
ここまでドライグが追い込まれた以上、カウンセラーは必須だろう。
「てなわけでまた今度連絡先教えるから、イッセー。しっかり面倒見てやれよ?」
「はい!悪気が無くても自分が原因なのはわかってるんでちゃんとします!」
それを聞くとアザゼル先生は去っていった。
「よし...チケット販売頑張るか...」
チケットの増産が終わった俺は再びチケット売場へと動き出した。
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仕事も一段落して、今は休憩時間でアーシアと色々な店を回っている。
さっきクレープを購入したので一緒に食べ歩き中だ。
「おっ...アーシア、クリーム付いてるぞ」
アーシアの口元のクリームを取ってあげる。
「あっ!すみません!私ったら...」
「アーシアいっつも食べ方綺麗だから珍しいな。いや可愛いから全然いいんだけど」
「ちょっと難しいです...」
「確かに、クレープって形崩れやすいし大きいから食べ辛いよな。大体こういう学園祭の出店だと簡単で食べやすいサイズなんだけど、妙に本格的だからな...」
「そうなんですか」
「そんなもんだと思うぞ?...そうだ、今度のデートは食べ歩きできそうな所に行ってみるか」
「行きたいです!」
「うし、よさげな所探しとくよ」
はぁ、こういうなんでもない会話が幸せだ...
その後も、お化け屋敷ではアーシアが俺にしがみついて非常に可愛かったし、脱出ゲームでうんうん唸るアーシアも、射的で景品が取れて喜ぶアーシアも、どれも素晴らしかった...
写真もいっぱい撮ったので、アーシアルバムVol.15が埋まってしまうな...
断腸の思いで厳選してるのに結構な量になってしまう...
休憩時間が終わると、再びお仕事地獄の始まりだ。
とはいえ、あっという間に時間は過ぎ去り、後夜祭の時間となってしまった...
ほとんど仕事してた気がするんですけど...なんか思ってた学園祭と違う!
部活と教室両立するとこんなにしんどいのか...
今は後夜祭に参加して、キャンプファイヤーを囲んでオクラホマミキサーだ!
アーシアと踊るのは最高に楽しかったが、アーシアが他の奴と踊るのは嫉妬心ががが...
などと考えていたが、アーシアはとても楽しそうなのでそんな事を考えるのは野暮だな、俺も素直にダンスを楽しもう。
前世ではやるわけねぇ!と思ってたけど、素直になれば存外楽しいもんだな。
名も知らぬ女子にちょっと嫌な顔された時は辛くなっちゃったけど...
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無事、学園祭は終了した。
なんだかんだ楽しい学園祭だった。
アーシアも非常に満足しているようで良かった。
アーシアの写真もいっぱい撮れたし、思い出もいっぱい出来た。
来年もまた、アーシアと学園祭を楽しむ為にも頑張らないとだ!!