アーシアしか勝たん   作:min-can

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第68話。 襲来します、オーフィス!

 合宿が始まって数日経った頃だった。

 最近は序盤の詰め込みが過剰だったお陰で、予定に若干の余裕が見えてきたので、少しは自由時間が出来た。

 俺ってYDKだったんだね...じゃあ最初からやれという話ですね。

 

「リアス、明日この家にとある訪問者を呼ぶ予定だ。了承を貰いたい」

 

 さっき突然訪問してきたアザゼル先生が部長に尋ねる。

 

「...随分突然なのね」

 

「あぁ、ちょっとな...お前達はその訪問者に確実に不満を漏らす。いや、殺意すら抱きかねないだろうな。だが、それを承知の上で迎えて貰いたいんだ」

 

 オーフィスですね。まぁ正直悪感情は俺にはない。なんというか...龍神って感じの存在よね。

 だがまぁ、明日ちょっと大事な用事があるので勘弁して欲しいのが内心なんだが...

 

「正体については今言ってもしょうがない部分があってな...明日の朝会えばわかる。特にイッセーに...いや、ドライグに聞きたい事があるみたいでな。俺の願いとしては決して攻撃を加えないで欲しいんだ。ただ、それだけだ。話だけ聞いてくれればそれでいい。上手く行けば情勢が変化する大きな出会いになるかもしれない。俺も明日の朝、もう一度来る。だから...頼む」

 

 アザゼル先生は真剣な表情でこちらに頭を下げる。

 そこにいつものおちゃらけた雰囲気は無い。

 だからこそ、皆は受け入れることにしたのだった。

 

 ────────────────────────

 

 次の日の朝、チャイムが鳴った。

 現れたのはゴスロリ衣装のやべぇ女。

 そう、やはりオーフィス。

 

「久しい、ドライグ」

 

 ドライグが勝手に神器(セイクリッド・ギア)を起動した。

 

『...あぁ、そうだな』

 

 龍二人は短い挨拶を交わす。

 皆は戦闘体勢に入る。アーシアも俺にしがみついている。ん?そのまましがみつくのかと思ったら視界を隠された。

 あぁ、見るなって事ね...可愛いか!!

 

「ほらほら!昨夜言っただろ!攻撃は無しだ!こいつもお前らに危害は加えねぇ!やったとしても俺達じゃ束になっても勝てやしないっての!」

 

「あの...オーフィスさん。もう少し肌の露出を押さえて貰えると非常に助かります」

 

「何故?」

 

「このままじゃまともにお話もできないので」

 

「そんなの初めて聞いた」

 

「それでもお願いします」

 

「....わかった」

 

 それから少し...アーシアが手を離すと、普通のゴスロリ衣装を身に纏ったオーフィスが居た。

 

「これでよい?」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 ふと周りを見渡すと皆がまじかこいつらといった様子であった。

 

「お前らはお前らでその反応はどうなんだ...?攻撃するなとは言ったが普通そこまで受け入れるかよ...てかもっと驚けや」

 

 アザゼル先生に言われた。

 

「だって、先生があれだけ真剣に念を入れて言ってきたんですから、相当やべぇ奴が来るのはわかってましたし...先生が自ら連れてくる以上は身の危険はないと思っていいでしょうから」

 

「私もイッセーさんが敵視していない以上は...」

 

「.....おう、そうか...」

 

 アザゼル先生は呟く。

 

「....それにしたって非常識だわ!同盟にとって重要となっているこの町にオーフィスを入れるなんて!この町を警備する者達も騙して入れたって事よね!?どうしてそこまで...!」

 

 部長はようやく調子を取り戻すと怒りを示す。まぁ当然の意見だわな。

 アザゼル先生は黙って部長を見つめ返す。

 

「....このオーフィス訪問には、同盟崩壊の危機を背負ってでもやる価値があると...そう思っているのという事かしら?」

 

「そうだ。俺はこいつをここに招き入れる為に色々な物を現在進行形で騙している。だが、こいつの願いはもしかしたら、禍の団(カオス・ブリゲード)の存在自体を揺るがすほどの物になるかもしれないんだ。...改めてお前達に謝り、願う。こいつの話だけでも聞いてやってくれないだろうか?」

 

 先生が再び俺達に頭を下げる。

 皆も渋々といった様子で受け入れる。

 

「それで、上にあげてお茶でも出せばいいのかしら?オーフィスだけなの?例のヴァーリチームは?」

 

 部長がそう尋ねると玄関前で金色の魔法陣が光りはじめた。

 そこから現れたのはルフェイと小さくなった(大型犬サイズ)フェンリルだった。くっそ...ちょっと可愛いな...お手して欲しい...

 などと考えていたら吠えられた。ごめんよ可愛いなんて思って...

 

「ごきげんよう皆さん!ルフェイ・ペンドラゴンです。京都ではお世話になりました。こちらフェンリルちゃんです!」

 

 更にもう1つ魔法陣が展開すると、黒歌が現れた。

 

「おひさ~白音!元気にしてたかにゃ?」

 

 小猫ちゃんはムッとしている。

 黒歌はずけずけと入っていく...

 おいおい、部長の了承くらいは受けんかい...

 アーシアが俺をぎゅっと抱き締めて黒歌を警戒している。

 可愛い。

 

 ────────────────────────

 

 VIPルームで対面する俺達とオーフィス+ヴァーリチーム。

 俺はソファーのど真ん中、オーフィスの真ん前に座らさせられているにも関わらず、単語帳をペラペラさせられている。

 どういう事だってばよ...

 

 朱乃さんがお茶を配ってくれて、オーフィスはど真ん中に鎮座し、ルフェイは礼儀正しくお茶を飲み、黒歌はお茶請けを食べまくり、フェンリルはルフェイの側で眠っている。

 

 対するこちらは部長がお茶を飲み、俺は単語帳、アーシアは定期的にあーんと言って俺の口にお菓子を入れてくれる...好き...

 

 対して、後ろの皆はかなりの警戒態勢だ。

 小猫ちゃんはギャスパーとどっかに行ってしまった。まぁお姉さんと居たくないんだろうね。

 

 にしても全く頭には入らない...こういう根性論は勉強に当てはまらないと思うんだ。

 え?普段サボっていて、ギリギリならばある程度有効?ぐぅの音も出ないですね。黙って頑張ります...

 しかも、ドライグが神器(セイクリッド・ギア)起動するから単語帳が持ち辛い...!!

 

「......」

 

 オーフィスは無言で俺を見つめ続ける...

 

「あの...イッセーさんにどんなご用なのでしょうか?」

 

 アーシアがオーフィスに尋ねる。

 

「ドライグ、天龍やめる?」

 

『なんだと?どういう事だ...』

 

「宿主の人間、今までと違う成長している。我、とても不思議。いままでの天龍と違う。ヴァーリも同じ。不思議。とても不思議」

 

 駄目だ...それ以上喋られるとドライグの精神にダメージが...まぁいいか別に。

 

「シャルバとの戦い、バアルとの戦い。ドライグ、違う進化した。鎧、金色になった。そんなの初めて。我知らない。絶対おかしい」

 

 アザゼル先生が少し吹き出した。

 

「だから、訊きたい。ドライグ、何になる?」

 

『.....わからん。俺はこいつの意思によって勝手に変えられただけだ。だがまぁ...少しは...ほんの少しはそれでもいいのかもしれんと...思いつつあるんだ...!うっ...はぁはぁ...』

 

「ドライグ!!落ち着くんだ!!」

 

 俺は点滴を緊急注入する。

 

『はぁはぁ...助かった相棒...』

 

 多分俺が原因だと思うんですけど。

 

「二天龍、我を無限、グレートレッドを夢幻として、『覇』の力を呪文に混ぜた。ドライグ、なぜ覇王になろうとした?」

 

『....力を求めた結果だろうな。その末に俺は滅ぼされたのだ』

 

「我、『覇』わからない。禍の団の者達、『覇』を求める。わからない。グレートレッドも『覇』ではない。我も『覇』ではない」

 

『お前達のように最初から強い存在には覇の理なぞ、理解できるはずもない。お前達は存在からして別次元なんだろうさ。オーフィスよ、次元の狭間から抜け出てこの世界に現れたお前は、この世界で何を得て、なぜ故郷に戻りたいと思ったのだ?』

 

「質問、我もしたい。ドライグ、なぜ違う存在になろうとする?『覇』、捨てる?その先に何がある?」

 

『.......』

 

「ドライグ、ファーブニルになる?」

 

『なるわけないだろう!!俺のどこがファーブニルなんだ!言ってみろ!!』

 

「金色」

 

『うぅ...はぁはぁ...ふぅ...ふぅ...はぁ...ふぅぅぅ.......いいや!俺はファーブニルにはならん。もしも相棒が何かになると言うのならば...そこの女を護る存在とやらだろうさ。それが相棒の意思だからな』

 

 ドライグが持ち直したぞ!!

 

「そこの女?...お前?」

 

「はっ...はい!」

 

 アーシアがオーフィスに指さされてびくりとする。

 

「そこの女、ドライグの番?」

 

『俺のではない。相棒のだ!!本当に勘弁してくれ...』

 

「ドライグの所有者、番...金色...。わかった、そこの女、ドライグ変えた」

 

「私...ですか?」

 

『正確には、相棒とこの娘の愛とやらだ。正直俺にもついていけてないんだ。頼むから俺にその件は訊かないでくれ...』

 

 ドライグが情けない声を出す。

 

「ドライグの所有者、女、なぜドライグ変えた?どうやって?」

 

「どうやってって...わからないけど...アーシアが大好きで、アーシアを護りたいって必死で頑張って来たから?」

 

「?....よくわからない。でも、我、見ていたい。ドライグの所有者と番の女、もっと見たい。知りたい」

 

 オーフィスが俺達をじぃっと見つめる。

 先生が俺の肩に手を置く。

 

「てなわけで、数日間だけこいつらをここに置いてくれないか?オーフィスはお前達を見ていたいんだとよ。そこに何の理由があるかまではわからないが、見るぐらいならいいだろう?」

 

「俺は構わないですけど、皆は大丈夫なんですか?なんなら俺とアーシアは自分の家に帰りましょうか?」

 

「いえ、何かあってはいけないもの。ここで面倒を見れないのならお断りするしかないのだから、あなた達の好きなようになさい?」

 

「アーシアは大丈夫か?」

 

「はい...イッセーさんと一緒なら大丈夫です!」

 

 アーシアがニッコリしてくれる。俺はアーシアを撫でる。

 

「じゃあ決まりだな。ただでさえお前は勉強しなきゃなのに更に負担をかけて悪いが、これはチャンスなんだ。どうか頼む...!」

 

「はい!それに...ここまで皆に協力してもらっている以上本気で勉強して受けますけど、本当に最悪の場合再受験すればいいんですから、オーフィスの方が重要度高いですよ」

 

「すまない...特にアーシア。イッセーが勉強してる以上、オーフィスの興味はお前に向かうかもしれん。なんとか頑張ってくれ」

 

「いえ、何となくですけれど...大丈夫な気がしますから!きっと仲良くしてみせます!」

 

 アーシアさん...めちゃくちゃ肝が座ってらっしゃる...

 

「あ...あの!この間のバアル戦!感動しちゃいました!差し支えなければお二人の写真を撮ってもいいですか!?」

 

 話が纏まった所でルフェイがそんな事を言い出す。

 

「え?俺はいいけど...アーシアは?」

 

「はい...ちょっと恥ずかしいですけど、大丈夫ですよ?」

 

「やった!それじゃあこう...お互いに抱き締め合って貰って...えぇとほっぺたもくっつけてくれますか?そうです!じゃあ行きます!はいチーズ!」

 

 パシャリと音が鳴った。

 

「ありがとうございます!」

 

「はは...喜んで貰えてなによりです」

 

 バアル戦以降、俺とアーシアのカップルに対するファンレターが増えた。

 なんだかんだでアーシアのファンにも受け入れて貰えたようで良かったです。

 ガチ恋勢も意外に寛容だったとかなんとか...あれだけの戦いをできる男になら任せられるという事らしい。

 ただまぁ、俺のファンとアーシアのファンでは客層が違いすぎていざこざがあったりなかったりするそうだが...

 

 ────────────────────────

 

 俺はみんなと勉強している...

 たまに木場や朱乃さんから突発的な問題が来るけど、かなり答えられるようになってきた...

 

 黒歌はたまに小猫ちゃんにちょっかいかけつつ、適当に過ごしている。

 ルフェイは基本的にいい子なので、フェンリルと遊んだりしつつも、落ち着いて過ごしていらっしゃる。

 

 オーフィスは今アーシアと一緒にお菓子を食べている。

 仲良くなりすぎでは?確かに、一切敵意ないし悪い子じゃないと思うから優しくしてあげてとは言っておいたけど...

 未だに禍の団(カオス・ブリゲード)のシンボルであることは変わらないのに既にマスコット的位置に立っていらっしゃる。

 恐るべし順応能力...いや恐るべしアーシアの包容力...

 

 昼間は問題ないんだ。黙って俺をじぃっと見つめたり、アーシアにポツポツと質問したり、アーシアに口元を拭かれたり...龍神の威厳よ何処...

 

 問題は夜なのだ...

 オーフィスさん、俺とアーシアの眠る部屋に潜り込んで来るのだ!

 そして...

 

「二人、交尾する?」

 

 とか訊いてくる!!俺達はその度に慌てて眠れなくなる予定だったんだけどなぁ...

 2日目にはもう間に挟んで川の字で眠る事になってしまった。いやオーフィスさん馴染みすぎでは?

 なんか...本当にある意味子供っぽいから、ちょっと保護欲みたいな物が...いや、戦ったら瞬殺なんですけどね。

 特にアーシアがすごい。もう抱きついて眠ってる。当たり前のように受け入れるオーフィスもオーフィスだけど...

 そこは俺の席なのに!!ちくしょう!!!!

 まぁなんか、子供が出来たらこんな感じなのかもなとちょっと考えてしまう。

 それにオーフィスがアーシアに予想以上に懐いてくれているのは...なんだが結構鼻が高い思いだった。

 

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