アーシアしか勝たん   作:min-can

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第71話。 現れました、サマエル!

 俺達はレストランから出るが、一切人影がない...こりゃ俺達だけがぶちこまれたパターンだな。

 ロビーまで行ってようやく二人居た。

 まぁ曹操とゲオルグなんですけど...

 その瞬間、俺の頭に危険信号が立ち上る!

 アーシグルナル・コール!!

 俺はすぐにアーシアの前に立つと、アーシアの方に魔力弾が飛んで来た。

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

 

 俺が魔力弾を弾き飛ばそうとすると、オーフィスが更に俺の前に立って魔力弾を消し去った。

 

「アーシアたん、バンザイ....やはりよくわからない」

 

 オーフィスは首を傾げている。

 まじでアーシア教加入するつもりなんですか?オーフィスさん...

 

「ありがとうオーフィス...」「ありがとうございます!!」

 

 曹操がこちらに近づいてくる。

 

「やぁ、久しいな赤龍帝、それにアザゼル総督。京都以来だ。いきなりの挨拶をさせてもらった。先日のデュランダルのお返しだ」

 

「曹操...」

 

「この間のバアル戦、いい試合だったじゃないか。禁手化(バランス・ブレイカー)の鎧を纏った者同士の壮絶な殴り合い。戦闘が好きな者からすれば聞いただけで達してしまいそうな戦いだ。それに...ククッ、君の神器(セイクリッド・ギア)はどうなっているんだい?亜種という訳でもないのに、本当に面白いね」

 

「そうかよ...」

 

「それで?またこんなフィールドを別空間に作ってまで俺達を転移させた理由はなんだ?どうせろくでもないことなんだろう?」

 

 アザゼル先生が尋ねた。

 

「やぁオーフィス。ヴァーリとどこかに出かけたと思ったら、こっちにいるとは。少々虚を突かれたよ」

 

 アザゼル先生はフル無視かい...

 

「にゃはは、こっちも驚いたにゃ。てっきりヴァーリの方に向かったと思ったんだけどねー」

 

「あっちには別動隊を送っている。今頃よろしくやってるんじゃないか?」

 

 よくわからず困惑している俺達に 、ルフェイが説明をしてくれる。

 オーフィスが何者かによって狙われている事に気付いたヴァーリチームは、オーフィスを守る為にオトリ作戦を決行して偽物のオーフィスを連れて外出、本物のオーフィスは本人の希望もあって俺達の所に連れてきた、ということだ。

 

「ヴァーリの事だから、オーフィスをただ囮にするだけってのはないだろうと思っていた。オーフィスが二天龍に興味を持っていたのも知っていたから、もしやと思って二手に別れて奇襲する事にしたんだ。そうすれば見事、俺はオーフィスと対面できたと」

 

 曹操が語る。まずいな...サマエルがある以上、余計な事をすれば即座に死にかねない。

 

「曹操、我を狙う?」

 

「あぁ、オーフィス。俺達にはオーフィスが必要だが、今のあなたは必要ではないと判断した」

 

「わからない。けど、我、曹操に負けない」

 

「そうだろうな。あなたはあまりに強すぎる。正面からじゃどうやっても勝てないだろうね」

 

 曹操は困った困ったといった様子だった。

 

 すると突然、黒歌とルフェイの足元の魔方陣が生まれた。

 魔方陣の中心にフェンリルが立つと、光の奔流が辺りを包む。それが終わる頃に魔方陣に立っていたのはヴァーリだった。

 

「ご苦労だった、黒歌、ルフェイ。面と向かって会うのは久しいな、曹操」

 

「ヴァーリ、これはまた驚きの召喚だ」

 

「曹操がこちらに赴く事もある程度予想はしていた。さて、お前との決着をつけようか。しかし、ゲオルグと二人だけとは随分と余裕だな」

 

「俺とゲオルグの二人だけで十分と踏んだだけだよ、ヴァーリ」

 

「強気なものだな。例の『龍喰者(ドラゴン・イーター)』なる奥の手を有しているからか?大方、英雄派が作り出した、龍殺しに特化した神器(セイクリッド・ギア)所有者か、新たな神滅具(ロンギヌス)と踏んでいるんだが」

 

「違うなヴァーリ。『龍喰者(ドラゴン・イーター)』は現存する存在に俺達がつけたコードネームみたいなものさ。聖書に記されし神によって既に作られていた」

 

「曹操、やるのか?」

 

 ゲオルグが言葉を発した。

 

「あぁ、頃合いだ。無限の龍神に二天龍がいる。これ以上ない組み合わせだ。呼ぼう、地獄の釜の蓋を開けるときだ」

 

 曹操がそう言うと、ゲオルグが巨大な魔方陣を起動する。直後、恐ろしいほどのプレッシャーが襲いかかる...

 

『...この気配は、ドラゴンだけに向けられた圧倒的なまでの悪意!!』

 

 ドライグが声を震わせる。

 魔方陣から十字架に磔にされている、大量の拘束具をつけられた気持ちの悪い存在が現れた。

 上半身はグルグルで血涙を流す堕天使、下半身は蛇のおぞましい姿だ。

 カチカチと歯が震えてしまう...

 こんなに恐ろしいのか...!感じるのは圧倒的なまでの死の予感。アーシアが俺に抱きついてくれる。

 それでも恐怖は拭いきれない。

 

「オオオオオオオオオオオオォォォォ...」

 

 サマエルが血反吐と唾液を撒き散らしながら叫んでいる...

 

「こいつは...なんてものを!コキュートスの封印を解いたのか!!」

 

 アザゼル先生が叫ぶ。

 

「曰く、神の毒。曰く、神の悪意。エデンにいた者に知恵の実の食わせた禁忌の存在。いまは亡き聖書の神の呪いが未だ渦巻く原初の罪。『龍喰者(ドラゴン・イーター)』サマエル。蛇とドラゴンを嫌った神の悪意を一身に受けた天使でありドラゴンさ」

 

 聖書においてアダムとイブに知恵の実を食わせた存在があれだ...

 唯一故に本来はあり得ないはずの神の悪意。その呪いを一身に受けたサマエルはまさに究極の龍殺しと化している。

 

 説明を受けた皆も恐ろしさを理解したようだ...

 話を聞けばどんなバカでも、どれだけやべぇやつかはわかるもんな。聡明な皆ならもっとだろう...

 

「ハーデスの野郎は何を考えてやがる!!...まさかっ!!」

 

「そう、ハーデス殿と交渉してね。何重もの制限を設けた上で彼の召喚を許可してもらったのさ」

 

「...野郎!ゼウスが各勢力との協力体制に入ったのがそんなに気にくわなかったのかよっ!!」

 

 先生は激怒している。当然だな、こんな裏切りが許されてたまるか...

 

「というわけで、アザゼル殿、ヴァーリ、赤龍帝、彼の持つ呪いはドラゴンを確実に食らい殺す。君の持つアスカロンなんか彼に比べれば爪楊枝だ」

 

「喰らえ」

 

 曹操が指示すると、ギリギリ認識できるほどの高速でサマエルの口から黒い触手が伸びた。

 目の前に立っているオーフィスを飲み込む。

 俺はすぐにアーシアを抱いて、後ろに下がる。

 俺自身も不味いが、アーシアもかなりの龍と関係を持ってる!下手したら影響を受けるかもしれない!

 

「オーフィス!大丈夫か!!」

 

 声をかけるが返事は一切ない。

 

「祐斗!斬って!!」

 

 部長の指示に従って木場が斬りかかるが、聖魔剣は触手に当たった部分を消失させてしまう。

 何度やっても同じ結果だ。

 

『Half Dimension!!』

 

 ヴァーリが白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を起動すると、半減する空間を作り出した。

 俺もあらゆるものを倍化させる空間とか作れるのかな...

 って、そんな事考えてる暇は無かったな。

 やはりヴァーリの攻撃も意味を成さない。

 

「消滅の魔力なら!!」

 

 部長の魔力も意味を成さない。

 ぶっちゃけサマエルの触手は、それこそ『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』でも斬れるか怪しいだろうな...

 

 ゴクリゴクリと飲み込む音が鳴り、何かがオーフィスの方からサマエルの方へと流れていく...

 

 俺も一応攻撃するか...?アーシニウムエネルギーなら、あるいは...!

 

「待てイッセー!お前はそのまま控えていろ!絶対にあれに近づくなよ!!最初に退避したお前の選択は正しい。それよりサマエル以外の事を考えろ!!」

 

 アザゼル先生が叫ぶ。要するに曹操との戦いに備えろって事だな。

 

「アーシア、許可くれ!」

 

「はい!許可します!!」

 

 守護者のプロモーションに成りたいが、あれは大量にエネルギーを消費するし、一度変化すると丸1日はプロモーションが出来なくなる!今後を考えると今はバイデントまでだ!!

 

山吹に爆ぜし二叉成駒(ブロンディッシュ・バースト・バイデント)!!」

 

 黄金のオーラが立ち上る。

 俺が戦闘準備をしている間にゼノヴィアが素早く飛び出し、デュランダルをサマエルの方に振り払うが、曹操に斬り防がれる。

 

「またキミは開幕からいい攻撃をしてくれるな。だが、二度はいかないさ」

 

「絶妙なタイミングで放ったつもりだったが、私の開幕デュランダルはわかりやすいのか?」

 

 正直、分かりやすいと思います。オーラ駄々盛れですし...気持ちはすっごくわかるけどね!

 

 ヴァーリも鎧を纏う。

 

「相手はサマエルに上位神滅具(ロンギヌス)所有者二人。不足はないな」

 

 ヴァーリが不敵に笑う。先生は鎧を着ずに戦闘態勢だ。アーシアにファーブニルとの契約を渡しちゃったからな。

 戦力ダウンと見るべきかアップと見るべきか...

 でも、あの時のようにファーブニルのオーラを纏ったパワーアップがあると考えると案外プラス説はある。

 鎧無くても先生強いもん。

 ファーブニルそのものを呼び出せる点もアーシアはポイントが高い。

 問題は今出せばサマエルの餌食という点ですね。

 

「このメンツだと流石に俺も力を出さないと危ないな。何せハーデスからは一度しかサマエルの使用を許可してもらってないんだ。ここで決めないと俺達の計画は頓挫する。ゲオルグ!サマエルの制御を頼む。俺はこいつらを相手にしよう」

 

「わかった」

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

 曹操がそう呟くと、槍が眩い光を放ち、背中に輝く輪っかが現れて、七つの球体が曹操を囲むように現れた。

 

「これが俺の『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手化(バランス・ブレイカー)、『|極夜なる天輪聖王の輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン》』。まぁまだ未完成だけどね」

 

「亜種の禁手化(バランス・ブレイカー)か!自分が転輪聖王とでも言いたげだな!」

 

「俺の場合は転輪聖王の転をあえて天として発現させた。そっちの方が格好いいだろう?」

 

 何を言ってるのかさっぱりわからない...

 

「気を付けろよ、あの禁手化(バランス・ブレイカー)は『七宝』と呼ばれる力を有していて、神器(セイクリッド・ギア)としての能力が七つある。あの球体一つ一つに能力が付与されているわけだ」

 

 知ってる。何度か思い出そうと頑張ったんだけど3つしか思い出せてない。純粋なパワーを持つ球、攻撃を流す球、女性の異能を封じる球の三つだ。

 正直これだけ時間がたって、三つ覚えてるだけ上等と言いたいが、全く情報が足りない。

 

「ヴァーリ!何種類知ってるんだ!?」

 

「3だ。空を飛ぶ物と、分身を生み出す物、破壊力に特化した物だ」

 

「こらこらヴァーリ、ネタバレは良くないな。まぁ今から残りの物を見せてあげるつもりだったから構わないけどね」

 

 よし、後たったの二種類だ!とはいえわかったからって対応できるもんでもないんだが...

 

赤龍帝の爆砕騎士(ウェルシュ・バーステッド・ナイト)!!」

 

『Change burst impact booster!!!』

 

 俺は両腕を黄金の装甲で固める。

 

「さて、さっそく一つ目だ。輪宝(チャッカラタナ)

 

 曹操がそう呟いた瞬間、球体が消え去り破壊音が響く。

 振り返るとゼノヴィアのエクス・デュランダルが破壊されていた。

 

「...!エクス・デュランダルがっ!!」

 

輪宝(チャッカラタナ)の能力は武器破壊。これに逆らえるのは相当な手練れのみだ」

 

 曹操がそう呟くと、ゼノヴィアの腹部に穴が空いて鮮血が舞う。

 

「アーシア!!」

 

「ゼノヴィアさん!!」

 

 俺が叫ぶより先にアーシアが急いでゼノヴィアに近づき、治療を開始する。

 

「ついでに輪宝を槍へと形状変化させて貫いた。今のが見えなかったとしたら、キミでは俺には勝てないな、デュランダル使い」

 

「曹操てめぇ!」

 

 俺が曹操に突撃しようとすると、曹操が俺に話しかけて来た。

 

「うーん...ねぇ赤龍帝、俺はこの場においては君をかなり警戒している。ともすればヴァーリよりもね。君ははっきり言って理解不能だ。戦って負ける気は一切しないけど、追い詰めた君が何をやらかすのかわかったもんじゃない。また、京都みたいに君を怒らせてバカみたいなパワーでサマエルの操作や空間に影響を出されても困るし、それ以外にも何か予想外の事をされるのも怖いな」

 

「急に何言ってるんだ?お前...」

 

 突然話しかけられて、梯子を外された気分になる。

 くっそ!こっちはゼノヴィアが重症負ってるんだぞ?なめた事言い出し始めやがって...!!

 

「だからここに宣言してあげよう。俺は力の行使を最小限にしてサマエルの儀式へと影響を与えず、更に言えばここにいる全員を殺さずしてこの場を御しきってみせる。特に君の逆鱗とやらには一切触れないと約束してあげようじゃないか、赤龍帝。それくらいは聖槍に選ばれた人間としてこなさないとね」

 

 曹操がニヤリと笑う。

 

「随分なめてくれるじゃないか」

 

 ヴァーリが苛立ちを見せる。そりゃそうだわ、どう考えても俺よりヴァーリや先生の方がやべぇもん。

 

「チッ...いい所突いてきやがるな曹操。これでイッセーは100%以上の力は出せなくなるだろうさ」

 

 先生が吐き捨てる。そんな事はないと言いたい所だけど、正直ボルテージが一つ下がった感覚がある事は否めない。

 くそっ!盤外戦術ってやつか?案外効くもんだな...

 

「曹操ォォォ!!」

 

 俺と木場で同時攻撃を仕掛けるが、槍でさばかれる。

 くっそ!!禁手化(バランス・ブレイク)すれば俺のバイデントの拳もまともに対応できるのかよ!!

 

『Transfer!!』

 

 肘のブースターを爆発させて、高速で飛び込む拳に曹操はきちんとタイミングを合わせて正面から槍をぶつける。

 

 ガキィィィィンと音が鳴った後、拮抗するベクトルが逸れて俺の拳はいなされた。

 

「おや?京都の時より更に固くなっているね。ヒビを入れられないとは...まぁならこうするだけなんだけどさ」

 

 曹操がそう言うと、槍を無防備な俺の腹にに突き刺そうとする。

 俺は無理やり左腕を間に挟んだ。

 

「ぐっ!!」

 

 キィィィィンと甲高い音が鳴って槍と黄金がぶつかり合い、俺は吹き飛ばされた。

 

「....いいね。想定よりいい反応をしてくれる」

 

 曹操はそんな事を呟きながら木場の剣を弾き、避け、破壊する。

 部長と朱乃さんが俺が吹き飛んで空いた隙間に攻撃を打ち込もうとする。

 

「下らない横槍はよしてくれ。女宝(イッティラタナ)

 

 二人の目の前に飛んでいった球体が輝き、それが収まると二人は手を突き出したまま困惑していた。

 

「女宝は異能を持つ女性の力を一定時間、完全に封じる。これも相当な手練れでもない限り無効化できないよ」

 

 黒歌とルフェイがサマエルとゲオルグの方に魔力や魔法による攻撃を加えようとする。

 駄目だ!そういうわかりやすいのは七宝で良いように使われる!!

 

馬宝(アッサラタナ)、任意の相手を転移させる」

 

 黒歌とルフェイが転移して、アーシアの方に向く。

 

「てめぇ!!」

 

 俺がアーシアの方に駆け寄ろうとして態勢を崩した時に視界が変化した。

 あいつ!走り出す直前の無防備な俺を二人とアーシアの間にぶちこみやがった!

 

「ぐはっっっ!!」

 

 背中に二人の攻撃が大量にぶち当たる。

 途中でなんとか後ろに腕を回してガードしたが、それでも結構なダメージを受けてしまった...!

 

「そら」

 

 腹に槍が突き刺さる。

 

「がはっっ!!!うぐっっっ!!!」

 

 腹の中が焼かれるように痛い...!!

 

「最初は予想外の反応と換装の速度で少しだけ驚いたよ。まぁそれならそれでやりようなんていくらでもあるんだよね」

 

 くっ...アーシグナル・コールが無かった時点で...いや、あぁされたら絶対に俺は間に入るしかないな。

 槍がゆっくりと抜かれて、俺は倒れこんだ。

 

「イッセーさん!!」

 

 アーシアが俺の方に駆け寄って治療してくれる。ゼノヴィアの治療は終わったのか?

 ...暖かかいオーラが俺の体中を暴れまわる激痛を抑えてくれる。

 

「うぐぐっ...ゲホッ...」

 

 まずい...全く動けない。アーシアに治療されてるとはいえ、聖のエネルギーが体を蹂躙している。

 意識がだんだん...くっそ!まだ動かないと...駄目...な...

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