アーシアしか勝たん   作:min-can

72 / 82
第72話。 語ります、アルビオン!

 目を覚まし半身を起き上がらせると、ベッド上にいた。

 

「イッセーさん!良かった!!目を覚ましました!!」

 

 アーシアが涙を湛えながら俺に抱きつく。

 

「ありがとうアーシア。もう大丈夫」

 

 アーシアを抱き返して、頭を撫でて上げれば落ち着いてくれた。

 

「皆は無事なのか?」

 

「はい、怪我をした方はたくさんいましたけど、皆さん命に別状はありません!」

 

「そっか、良かった。他の皆はもう治したのか?」

 

「はい、ヴァーリさん以外の皆さんはもう起きていらっしゃいます。イッセーさんだけ治療してもなかなか起きて下さらなかったので...」

 

「そうか...俺につきっきりで看病してくれたんだな?ありがとうアーシア」

 

 ヴァーリはサマエルの毒だろうな。流石にアーシアでもどうしようもないだろう。

 

「イッセーさんが起きてくださって良かったです!その...実は今」

 

 アーシアが何かを俺に話そうとした所でドアが開く音がした。

 

「よぉイッセー、ようやく目が覚めたか。まぁ聖槍のオーラを体内に注入されたんだ。殺さないように手加減されたにしても、結構危なかったんだぜ?」

 

「アザゼル先生!その...今はどういう」

 

「あぁ順を追って説明してやる。まずはお前が気絶してからだな」

 

 俺がやられた後に、アザゼル先生とヴァーリで攻撃するも、今度は先生が刺されてダウン。ヴァーリの魔力攻撃が七宝で黒歌に直撃して黒歌もダウン。更にヴァーリはサマエルの毒をくらってダウン。といった感じでまさに完封されたらしい。一応今回の戦いで使われた他の球の力も教えてもらった。

 

 そして、曹操の目的はサマエルの毒によってオーフィスの力を分割して奪い取り、傀儡とできる新たなオーフィスを作り出す事で、それを見事に完遂した曹操とゲオルグは逃走。

 その際に死神(グリムリッパー)の一団とジークフリートが呼び出されてしまったらしい。目的はこちらに残っている方のオーフィスの回収だそうだ。

 よって今はホテルの中層の階層一つを丸々結界で覆って陣地にして立てこもっているそうだ。

 

「ま、ようするに俺達の勝利条件は全員無事でオーフィスと共にこの空間から逃げるという事になるな。ったく...ガキがなめたことしてくれやがるぜ」

 

 アザゼル先生が吐き捨てる。見事に原作みたいにしてやられちゃったわけだな。

 

「あぁそうだ、お前が起きたら連れてくるようにヴァーリに言われてたんだ」

 

「俺をですか?」

 

「あぁ、アーシアも一緒にな。起きて早々悪いが来てもらえるか?」

 

「はい...」

 

 俺達はアザゼル先生に連れられて、ヴァーリの元へと来た。

 

「ぐっ...すまないな、兵藤...一誠...来てもらって助かるよ」

 

 ヴァーリは脂汗を浮かべながら俺に話しかける。

 

「おいヴァーリ!大丈夫かよ!」

 

「...無事とは言えないな。...ほら、アルビオン...兵藤一誠が来たぞ...」

 

『...赤龍帝。頼みがある...その...私の歴代の一部がだな、お前を連れてこいと...連れてくればヴァーリの苦しみを緩和できるとうるさいのだ...』

 

「そうなのか...?」

 

『初めまして赤龍帝...いえ、教祖様!私、アーシア教アルビオン支部のリーダーを勤めている者でございます』

 

「はい?」

 

 アルビオンの宝玉が輝いたと思ったらやべぇ奴が話し始めた。ついにそっちまで侵略しちゃってたか...

 

『...アルビオン...お前!!』

 

 ドライグが声を震わせる。

 

『ドライグ...私も...私の歴代も手遅れだったんだ...うぅ...おぉぉぉぉん!!』

 

『すまない!!うちのバカがすまない!!俺だけならまだしもお前にまで!!!うぉぉぉぉん!!』

 

 二天龍の慟哭が響く...

 なんだこの惨状は...

 

『どうかお願いします。現白龍皇は危険な状態なのです。お力をお貸し下さい!』

 

 アーシア教アルビオン支部リーダーの切実な声が聞こえる。

 

「貸すって言ったってどうすればいいんだ?」

 

『お恥ずかしながら、我々はアーシア教を名乗っておきながら偉大なるアーシニウムエネルギーの生成ができないのです。しかし、かのエネルギーさえあれば、呪いに蝕まれるだけの現状に変化を起こせると我々は確信しています!!』

 

「と言うと?」

 

『聖女様を媒介として、例のエネルギーをこちらに流して頂けませんか?それでなんとかなるはずです』

 

 えぇ?まぁやるだけやってみるけどさ...

 

「アーシア...今から俺が流すエネルギーを込めながらヴァーリを治癒してくれないか?」

 

「や...やってみます!」

 

 俺はアーシアにアーシニウムエネルギーを注ぎ込む。

 

「...うっ...ふ...んん...イッセーさん、これ...!」

 

 アーシアから艶かしい声が漏れ出す。

 

「ど、どうしたアーシア!!」

 

「体が、変なんです...熱くなって、イッセーさんの事が...あぅ...」

 

 アーシアがピクピクと震え始める。

 何か緊急事態か!?急いでアーシニウムエネルギーを吐き出させないと!!

 俺は心配になってアーシアの肩を掴んだ。

 

「ひぅ!」

 

「アーシア!!早くヴァーリにそのエネルギーを流して治療を施すんだ!!」

 

「は...はい!」

 

 ふにゃりとしながらもアーシアは神器(セイクリッド・ギア)を起動する。

 いつもは緑のオーラなのに、今は黄金のオーラになっていた。

 

『うぐっ!!なんだ...この気色の悪いエネルギーは!!こんな物で!!うぅっ!!ぬぉおおお!!やめてくれぇぇぇ!!!』

 

 アルビオンがうめき、宝玉から黄金の輝きが漏れ出す。

 

『これが!アーシニウムエネルギー!!これならば!!はぁぁぁぁあぁあ!!』

 

 支部リーダーが叫ぶ。後ろからも数人分の叫び声が聞こえる。まだ人数は少ないのかな?まぁ一人生まれたらもはや時間の問題だろうけど。

 

『聖女様バンザイ!アーシアたんバンザイ!!』

 

『やめろぉぉぉお!!お前達がそれを言うなぁぁ!!』

 

 アルビオンは叫ぶ。

 ヴァーリの体を黄金のオーラが包んでいく...

 やがて、オーラはヴァーリの体へと染み込んでいき、やがて無くなった。

 

「これは...体が少し軽い。それに、魔力で少しづつだが呪いを打ち消せるようになっただと...?」

 

 ヴァーリが呟く。

 

『ありがとうございます!!聖女様!教祖様!!このご恩は必ずやいつか!!それでは私達は作業に戻ります!!』

 

 宝玉は輝きを失った。歴代白龍皇のアーシア教メンバーよ...お前達の祈り、アーシアにも届いたぞ。

 

「はふぅ...」

 

 アーシアが俺の方に倒れこむ。

 

「アーシア、大丈夫か?」

 

「はぃ...でも、少し腰が抜けてしまって...しばらくイッセーさんに掴まっていてもいいですか?」

 

「それくらいいくらでもしてくれ!お疲れ様、アーシア」

 

「ありがとうございます...イッセーさんイッセーさん...はふ...」

 

 そしてアーシアは俺の腕の中で、俺にすりすりと身を寄せる。可愛い...

 ちょっと様子がおかしいけど、甘えてくれるアーシアが可愛いからしばらく堪能させてもらおう。

 特に嫌な感じもしないし、しばらくすれば落ち着くだろう。

 

『はぁ!はぁ!!なんだ...なんなんだこの惨状は!!く...くるちぃ!!』

 

『ふっ!うぅっ!はぁはぁ!!アルビオン!!すまないぃ!!俺が!!うちのバカが!!』

 

 今度は二天龍が大いに苦しみ出した。

 

「二人とも!薬を!!」

 

 元凶たる俺が二人の宝玉に多めに薬をぶちこむ。

 

『うっ...心がスッとして...』『ふぅ...いつもの薬か...やっぱり効くなぁ!』

 

 落ち着いてくれた...良かった良かった。流石は二天龍。今度から薬漬けドラゴンって呼ぼうかな、まじで呼んだら二人の心が死にそうだけど。

 しばらくの沈黙の後、アルビオンが語り始めた。

 

『....なぁドライグよ...私は最初お前を憐れんでいた。変な宿主を引いてしまったなと、私の宿主は過去最高と言っても過言ではないのにざまぁないと...』

 

 アルビオンが語りだす。

 

『そして次にお前を恨んだ。勝手に鱗を金色に変えて気持ち悪くなったお前をライバルと認めたくなくなったし、その頃から私の中の歴代が数人挙動不審になり始めた。そして結果はアーシア教アルビオン支部が作られる始末...私は精神を病み、お前を呪った』

 

『アルビオン...』

 

『だが、違ったのだなドライグ。お前が...お前こそが誰よりも被害者だったんだ』

 

『アルビオン!!わかってるくれるのか!!』

 

『あぁ...私がすべきだった事はお前を呪う事ではなかった。お前と苦しみを分かち合う事だったのだ!!辛かっただろうなぁ、鱗をついには全部金に変えられてしまって...私もさっき黄金のオーラを無理やり出させられたよ、それだけでもこんなにも嫌な気持ちになるというのに...』

 

『おぉアルビオン!!この辛さに優劣などあるものかっ!!俺達は誇り高き二天龍なんだ!こんな...こんな侮辱を受けていいはずが...!!でも...俺の相棒はどこまでいっても相棒なんだ!!嫌いじゃないのが余計に腹立たしい!!』

 

『そうか...板挟みで辛かったんだなドライグ。なぁ...もう少し...いや、少しと言わず互いの傷が癒えるまで語り明かさないか?もうお前を見ていられないんだ。同じアーシア教被害者だからこそ、二天龍だからこそできる話もあるだろう!!』

 

『...ありがとうアルビオン!!俺は...俺は!!ファーブニルにも!オーフィスにもアーシア教だのなんだのと言われて!!もう龍に俺の味方はいないのだとばかり!!うぉぉぉん!!』

 

『ファーブニルにオーフィスまでだと...それは辛かったなぁ!さぁ、私の方に来るんだドライグ!こちらはまだほんの数人しかアーシア教がいない。話をするならば、お前の中よりは安心できるはずだ...』

 

『うぐっ...ありがとうアルビオン...理解者とは...良いものだな』

 

『そうだなドライグ...俺達は世界で唯一。二天龍だからな』

 

 二匹は宝玉の中へと意識を沈めていった。

 

「これは...サマエルの毒に変化が起きた時点で衝撃なのに、まさかこんな事が起こるとは...二天龍の和解と見ていいのか?だとしたら教科書に載るレベルの大事件なんだが...これは...どう記録すればいいんだ?」

 

 アザゼル先生が呟く。一文だけでいいんじゃないでしょうか?そんな、俺のせいで精神を病んだ二匹が慰め合ってとか書かれたらたまらん。

 

「なんだ...まぁ、ひとまず少し楽になったよ。ありがとう兵藤一誠...アルビオンについては思うところもあるが...」

 

 ヴァーリに話しかけられる。

 

「それはすみません...」

 

「まぁいいじゃねぇか!イッセーとアーシアの摩訶不思議パワーは遂に二天龍すらもあそこまで変えたってこった!まじで龍殺しじゃあないが、龍特効の精神攻撃兵器かなんかなのか?恐ろしい奴だなお前は...にしてもアーシア教はもう新勢力と言っても過言じゃねぇな。二天龍、ファーブニル、オーフィスって、他人が聞いたら卒倒する面子だぜ全く...」

 

「俺を入れるのはやめて欲しいんだが」

 

 ヴァーリが呟く。完治って感じでは断じてないけど、だいぶ楽になったっぽいな。

 まだまだ顔色は悪いけど立ちやがったし。

 ....俺にはできない芸当だろうな。アーシニウムエネルギーが潤沢とはいえ、流石にサマエルの毒は駄目だろう。魔力という贄がバカみたいな量あるヴァーリだからこそだな。

 

「あん?どうせお前の歴代も時間の問題だろうさ。アーシア教の感染力をなめるなよ?それによぉ、あの貧弱だったイッセーが今やここまで強くなったんだぜ?アーシア教、強さに貪欲なお前なら一考の余地はあるだろ」

 

「先生はなんでそこまでアーシア教を拡大させようとしてるんですか!」

 

「その方が面白そうだからな!考えるのは止めた!ドラゴンの一大勢力を作ってくれよ!!んで世界を征服するんだ!!俺も入っていいか?」

 

 アザゼル先生まで壊れだした。まぁこの人はノリで言ってるだけでまじでやり始めたらすぐに止めると思うけど。

 

「ふむ...確かに赤龍帝にできる事が白龍皇にできない道理はないな」

 

「なっ!アーシアは死んでも渡さねぇぞ!」

 

「バカ言うな、いらん」

 

 いらんはいらんで失礼なやつだな!!

 

「イッセーさん...私はイッセーさんじゃなきゃヤです...!イッセーさんイッセーさん...」

 

「アーシア!俺もアーシアじゃなきゃ嫌だぞ!...というか、本当にちょっと様子が変だぞ?大丈夫かアーシア?」

 

「はい?...大丈夫ですよ?確かにちょっと体がポカポカして、イッセーさんと離れたくない気分ですけど...」

 

「あー...あれじゃねぇのか?イッセーのアーシアへの思いの塊であるアーシニウムエネルギーを直接注入されたから、一時的にアーシアもイッセーへの感情の抑えが効かなくなってるんじゃないか?」

 

「なるほど...」

 

 確かにこれはアーシアが最上級に俺に甘えて来る時みたいだ。アーシアが人様の前でここまで甘える事はまずないもんな。

 

「赤龍帝、いる?」

 

 オーフィスが室内に入ってきた。

 

「オーフィス、俺に用か?」

 

 オーフィスはコクりと頷くと部屋を出ていった。

 俺も付いていく事にする。勿論アーシアもべったりくっついたままだ。これはこれで最高に可愛いけど、そろそろ元の調子を取り戻して欲しいな...まぁ原因俺なんですけど。

 オーフィスは人の居ない所を見つけると、そこで俺達の方を向き直った。

 

「我、今の力、全盛期の二天龍より二回りくらいしか強くない。とても弱くなった」

 

「そ...そうなのか。残念だったな...」

 

 突然なんの話だろうか?

 

「とても残念。...赤龍帝、イッセーと呼んでよい?」

 

「え?あぁ勿論!」

 

「アーシア、イッセー。我、もう力無くなった。グレートレッドも倒せない。次元の狭間に帰ることも叶わない。我、これからどうすればいい?」

 

 そうか、もうオーフィスは願いを叶えられないんだな...そう思うと少しあれだな...

 

「なら...私達と一緒に暮らしませんか?」

 

 アーシアが言う。

 

「何故?」

 

「何故って、ここ数日間オーフィスさんと過ごして、オーフィスさんの事が好きになりました!オーフィスさんに行く宛てがないのなら、私達と一緒にいて欲しいです!まだまだオーフィスさんとしたい事だってあるんですよ?」

 

「...そうだな、もう英雄派の連中と付き合う理由もないだろうし、アーシアも俺も歓迎するからさ、どうだ?」

 

「それ、何かお得?」

 

「そりゃあお前!俺とアーシアの生活を特等席で見れるんだから、俺達の進化の秘訣とやらがわかるかもしれないぜ?」

 

「もうそれ、わかっても仕方がない。でも、イッセーとアーシアと一緒に暮らすのも、悪くないかもしれない」

 

「あぁ!俺達もうなんだかんだお前の事大好きだからさ、家族と思って一緒にいてくれよ」

 

 たった一週間くらいしか一緒に過ごしていないんだが...なんか放っておけないというか、俺とアーシアの間にぬるりと入ってきたというか...まぁ家族は些か急な気もするけど、でもまだ一緒に居たいと思ってしまった。多分アーシアも同じ...いや、アーシアは特に懐かれてたしもっとかもしれないな...

 

「...家族...我、それ知らない。けど、イッセーとアーシアと一緒に居るの、嫌じゃない。これからよろしく」

 

「おう!」「はい!」

 

 こんな追い詰められているタイミングだが、二天龍の和解だのオーフィスと暮らす事が決まったりだの、色々と事態が動いてしまった...

 だからこそ、俄然頑張るしかなくなった...よし!ここからが正念場だ!!絶対に生き残ってやる!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。