アーシアしか勝たん   作:min-can

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第79話。 倒します、英雄派!

 木場がジークフリートと戦っている間、他のメンツは戦わなかった。いや、戦えなかったと言う方が正しいか。

 ジークフリートの振るう魔剣の暴風でそれどころじゃなかったのだ。

 それを真正面から全て避けきった木場の異常さがよくわかるな...

 

 今ようやくアーシアが三人の治療を終えて、帰って来た木場の治療を始めた。

 

「匙...大丈夫か?」

 

「兵藤...情けない所見せちまったな...」

 

「バカ野郎!あの糞野郎共から子供達を守りきったんだろうが!お前は...シトリー眷属の皆は立派にやりきってみせた!」

 

「...そうだな。だけど...やっぱり悔しいぜ...俺にもお前みたいな力があればって...そう思っちまう」

 

「...なら、一緒に強くなろうぜ。今まではライバル眷属同士だからやってなかったけどよ、この戦いが終わったら模擬戦とかいっぱいやろう!」

 

「...あぁ!すぐに追い付いてやるよ...!」

 

「おう!っと...そろそろ行かなきゃか?」

 

「...そうだな。ここはお前達に託す!子供達は任せてくれ!!」

 

 匙と拳をぶつける。

 部長と副会長との話し合いで、シトリー眷属の皆は子供達の脱出に専念する事となったのだ。

 メンツ的にはグレモリーの方がこの場面では戦闘に適しているので、脳筋バトルができるように子供達の避難をしてくれるとありがたい。

 悔しいとは思うが、シトリー眷属の分も俺達が返せばいい。

 

 といった所でゲオルグが転移してきた。

 

「すまない、少し遅れた。ヴリトラの炎の解呪に思ったより時間がかかってしまったのだ...と、ジークフリートはどうした?」

 

「ジークフリートなら倒したよ」

 

 木場が言う。

 

「....そうか...英雄派の正規メンバーがやられ続きか。グレモリー眷属に関わると根こそぎ全滅しかねないな...」

 

「あんな奴に負ける時点でたかが知れてたってだけだろうが」

 

 ヘラクレスが嘲笑うような顔をする。

 敵ながら、仲間をなんとも思わない発言に皆ついつい顔をしかめてしまう。

 

「さて、そろそろ私もやらせて貰おうか。祐斗にばかりいいところを取られてしまっていては、騎士の名が泣いてしまう」

 

 ゼノヴィアがデュランダルから布を取り払う。

 エクス・デュランダルの完成形だ。一つ足りなかった前回よりも完成した今の方が遥かに強力なはずだ。

 

「こっちもいいのを貰って来たんだから!」

 

 イリナが剣を抜き出す。木場が驚いたような表情をしていた。

 

「そうよ!これは木場君の聖魔剣から作り出された量産型の聖魔剣なの!木場君の聖魔剣ほど多様で強くはないけど、天使が持つ分には十分だわ!」

 

 イリナとゼノヴィアはジャンヌの方に剣を向ける。

 

「あらあら、それじゃあ私も参戦しようかしら。先ほどの業魔人(カオス・ドライブ)とやら、彼らも使えると見ていいでしょうから」

 

「三人も相手してくれるんだ。おもしろいわ!禁手化(バランス・ブレイク)!」

 

 ジャンヌが背後に聖剣によって作り出されたドラゴンを出現させる。

 

「このエクス・デュランダルは7つに分かれたエクスカリバーの能力を全て付加されている。使いこなせば更なる強さを手に入れられるだろうが...そうだ、この前イッセーにいい言葉を教わったんだ。私はいわゆる脳筋という奴でな。テクニックには疎いんだ...だから今は破壊のエクスカリバーとデュランダルのパワーで十分だ!」

 

 ゼノヴィアがエクス・デュランダルを振るうと、凄まじい破壊が撒き散らされた。

 ひえっ...めっちゃ威力上がっていらっしゃる...

 

 木場が嫌そうな目でゼノヴィアを見る。頑張って君がテクニックを教えてあげて...俺はそれを横目にゼノヴィアを脳筋の園へと誘い続けるけど...

 

「ついてらっしゃい!悪魔に天使に堕天使だなんて!私はモテモテね!」

 

 ジャンヌ達はどこかへ行ってしまった。

 あの三人を一人で相手取るってすげぇ自信だよな...

 俺はそんな事できる自信無いです。

 

 などと考えていると、アーシアが俺を治療し始めた。

 

「アーシア?」

 

「イッセーさん...また戦うんですよね...?なら、私に今できるのは少しでもイッセーさんの力を高める事なので...」

 

「...ありがとう」

 

 まぁバレバレよね。正直すごくありがたい。

 曹操と戦うなら、少しでも力が高まってる方がいいに決まってるからな...

 

 アーシアを抱きしめる。アーシアも抱き返しながら治療してくれる。

 はぁ...ハグしながらの治癒はまた何とも言いがたい幸福感を与えてくれる...

 

「なぜ、あのバスを狙った?というよりなぜ首都リリスに居るんだい?」

 

 木場がゲオルグに話しかけていた。

 

「見学だよ。曹操があの超巨大魔獣がどこまで攻め込む事ができるかその目で見たいと言い出してね。まぁ首都にはほとんどダメージを与えられなかったようだが...まぁそこは素直にルシファー眷属とそこのバカップルに称賛を贈ろう」

 

「バカップル言うな!!」

 

「...その体勢で言っても無理があると思うが...」

 

「イッセー君少し静かにしてくれないかな?...じゃあなんでバスを狙ったんだい?」

 

 木場がプチギレしてた。怖...

 

「あぁ...偶然だよ。ヴリトラの匙元士郎とシトリー眷属が乗っていたんだ。お互い顔を知っているんだから、自然と相対する事になるのは当然だろう?」

 

「俺が煽った面もあるぜ?偶然あのヴリトラに出会ったんだ。魔獣の見学だけじゃ物足りなくなってよ、ガキ狙われたくなきゃ戦えって言ってやったんだよ」

 

「英雄派は異形との戦いを望む英雄の集まりだと聞いていたが...どうやらただの外道が居たようだ」

 

 そう言いながら、一人の男が降り立った。

 黄金の獅子を引き連れた男。

 

「サイラオーグさん!」

 

「この前ぶりだな、兵藤一誠、アーシア・アルジェントも。相変わらずのようで安心したよ。...素晴らしい一撃だった。遠くからでも肌が震えたぞ...お前達のあの一撃は冥界に希望を取り戻させたのだ!大いに誇れ!」

 

「....ありがとうございます!!」

 

「あっ...ありがとうございます...」

 

 サイラオーグさんにそう言って貰えると、なんだか心が震えるようだ。

 まぁほとんど龍神二人の力だから俺の功績じゃないんだけど...それでもサイラオーグさんに誉められると素直に嬉しい。

 

「さて、俺がライバルと認めた者達にあれほどの物を見せられたのだ。滾って仕方がない!英雄ヘラクレスの魂を継ぎし者よ、俺が相手になろう!」

 

「バアル家の次期当主か。知ってるぜ?滅びの魔力が特色の大王バアル家で、滅びを持たずに生まれた無能な次期当主。悪魔の癖に肉弾戦しかできないって言うじゃねぇか。ハハハ、そんな訳のわからねぇ悪魔なんざ初めて聞いたぜ!」

 

 ヘラクレスが煽る。

 すると、サイラオーグさんから漲っていた闘気が落ち着きを取り戻した。

 

「...どうやら俺は勘違いをしたようだ。貴様のような弱小な輩が英雄の筈がない」

 

 ヘラクレスの額に青筋が浮かび上がる。

 

「へっ、赤龍帝と殴打戦を繰り広げたらしいじゃねぇか。だせぇな!悪魔って言えば魔力だ。魔力による超常現象こそが悪魔だと言っていい。それが一切ない赤龍帝とあんたは何なんだろうな?」

 

 ヘラクレスはひたすらに煽っていく。

 ...なんか、三下ムーブが凄すぎるよ...そこまで来るとむしろ煽りとして失敗してるって...

 

「元祖ヘラクレスが倒したというネメアの獅子の神器(セイクリッド・ギア)を手に入れているって言うじゃねぇか。皮肉だな、俺に会うなんてよ!」

 

「...貴様ごときには獅子の衣は使わん。どう見てもお前が赤龍帝より強いとは思えん」

 

「ハハハ!俺の神器(セイクリッド・ギア)で爆破できねぇ物はねぇんだよ!あんたが御大層な闘気に包まれてたって関係ねぇんだよ!」

 

 ヘラクレスがサイラオーグさんの腕を掴み爆発させた。

 表面が爆ぜて血が少し吹き出す。

 

「....こんな物か」

 

「言ってくれるじゃねぇか!じゃあこれでどうよ!」

 

 ヘラクレスは地面を殴りまくって、サイラオーグさんを爆撃で包み込む。

 

「ハハッ!ほら見たことか!これだから魔力もねぇ悪魔は出来損ないだってんだよ!まだちょっとはある赤龍帝のがマシなんじゃねぇか?」

 

「...奴が強いのは認めるが、他人を使った比較に何か意味があるのか?」

 

「....!!?舐めんなクソがっ!!!」

 

 ヘラクレスが直接サイラオーグさんを殴ろうとするが、先にサイラオーグさんの拳が腹に突き刺さった。

 

 その場で跪き、大量の血反吐を吐き出す。完全に内臓が逝ったな、あの出血量は内臓ぐちゃぐちゃシェイクコースだ...

 

「どうした。お前がバカにした赤龍帝の山吹の鎧は、この殴打で傷一つ付かなかったぞ?」

 

「....ぐぐぐ...ふざけるなぁ!!クソ悪魔ごときがぁぁ!!ただの打撃ごときでこの俺がぁ!!」

 

 ヘラクレスは禁手化(バランス・ブレイク)して、身体中から大量のミサイルを発射する。

 無数のミサイルは周囲を破壊し尽くしていく。

 こちらにも飛んで来たので、アーシアを抱えて避ける。

 サイラオーグさんは全部殴って弾いてるけど。

 

 ミサイルの一発が子供達の方に飛ぶが、ロスヴァイセさんが防御魔方陣で受け止めていた。

 

「新しい防御魔法です。私の戦車の特性を活かす為に故郷で強力な防御魔法を覚えて来ました。特性を活かしつつ魔法を使えば禁手化のミサイルでも余裕で受け止められるようです。ヘラクレス、貴方の攻撃はもう私には効きませんよ。この十倍でも防ぎきってみせましょう!」

 

 ロスヴァイセさんが高らかに叫ぶ。

 あの時負けたのは二日酔いだったからじゃないの?とは口が裂けても言えない。

 一瞬ロスヴァイセさんに睨まれた気が...怖...

 

 サイラオーグさんは容赦なくヘラクレスを殴っていく。

 ヘラクレスはたたらを踏むと、ポケットをまさぐり注射器を取り出した。

 

「クソッタレ!!」

 

 毒づきながら注射器を首元に当てるが、手は動かさなかった。

 

「どうした、使わないのか?使いたければ使えばいいだろう。それで強くなったとしても、俺はそれを越えるだけだ」

 

 ヘラクレスは悔しさに顔を歪ませ、涙すら湛える。

 

「ちくしょぉおおおおおお!!!」

 

 大声で叫んで、注射器を捨てると、サイラオーグさんに殴りかかった。

 

「最後の最後で英雄としての誇りを取り戻したか。悪くない。...だが、これで果てるがいいッ!!」

 

 サイラオーグさんが腹部にもう一撃ぶちこむと、ヘラクレスは意識を完全に刈り取られた。

 

 ゲオルグがこちらを見て呟く。

 

「強い...これが現若手悪魔か。バアルのサイラオーグ、リアス・グレモリー率いるグレモリー眷属。まさか先日会ったばかりでここまで力を増して来るとは...赤龍帝も何があったのか理解できないが、あれほどの一撃を放った...この調子ではそこの猫又やヴァンパイアも得ている情報通りとはいかないか?」

 

 ゲオルグに視線を向けられたギャスパーは表情を青ざめさせていた。

 

「...ギャスパーどうかしたの?」

 

 部長が尋ねる。

 すると、ギャスパーはポロポロと涙を流し始めた。

 

「...すみません、皆さん。...僕、グレゴリの研究施設に行っても...強くなれなかったんです!!」

 

 ギャスパーの告白に皆が驚いていた。いや、そんな短時間で成長できると思ってるのもどうかと思いますぜ...ちょっとうちの眷属がインフレしすぎなだけで...それにギャスパーには内なる力があるからな...

 

「皆さんのお役に立ちたかったから...強くなりたかったのに!...今のままではこれ以上は強くなれないってグレゴリの方に言われて...僕は...僕はグレモリー眷属の恥なんです...っ!!」

 

「...そうなのか...つまらんな。他の眷属は皆何かしら驚異的な変化をしていると言うのに、君はグレモリー唯一の汚点という訳だ、興味が削がれた」

 

「....っ!!うぅ...」

 

「お前っ!!」

 

 このっ...!ギャスパーはすげぇ奴なのに!!闇の力さえ引き出せばお前なんか目じゃねぇくらいの力持ってるんだ!

 なのにギャスパーをバカにして、挙げ句汚点だと!!

 ギャスパーがその言葉でどれだけ傷つくと思ってるんだ!!

 くっそ...でも俺にできる事...いや、あるか?

 やってみる価値はあるはずだ。

 今ギャスパーは悔しくて涙を流してる。今の所レーティングゲームでは軒並み即退場で、あいつが誰より悔しがってたのは知ってる!

 それになんだかんだ後輩だからな。

 先輩として、次のステージへと羽ばたく手助けくらいはしてやれるはずだ。

 俺はギャスパーに近づいて小声で語りかける。

 

「ギャスパー悔しいか?」

 

「えぐっ....はい!悔しい...ですぅ...ぐすっ...!」

 

「あの野郎を見返してやりたいか?自分の力を解き放つ覚悟はあるか...?」

 

「イッセー先輩...?...いえ、見返してやりたいです!!グレモリーの汚点だなんて...言われて悔しくないわけないじゃないですか!!」

 

「なら、気張れよ。俺が手伝ってやる」

 

「...え?」

 

 俺は禁手化(バランス・ブレイク)して、ギャスパーに手を当てる。

 

『Transfer!!』

 

 ギャスパーの内なる力に譲渡する。

 

「な...にを...~~~!!?」

 

 ギャスパーの体から闇が漏れだす。

 やがて闇がギャスパーを包み込んだ。

 

『...赤龍帝、随分乱暴な事をしてくれるね』

 

「悪いな。でも見てたなら分かるだろう?お前をバカにしたあいつに目にもの見せてやってくれないか?」

 

『...いいよ。僕もさっきの言葉は到底許容できないからね』

 

 ギャスパーを包む闇がゲオルグの方へと飛んで行き、ゲオルグの魔方陣も霧も食い尽くす。

 

「なんだこれは!!...!赤龍帝!!貴様何をした!!」

 

「ギャスパーの力を少しだけ目覚めさせたんだよ。これがお前がバカにしたギャスパーの力だ。よぉく心と体に刻み付けろ」

 

「なんだ...!くそっ!!神器(セイクリッド・ギア)でも魔力でもない!!俺の魔法も霧も全て消される...!!なんなのだこれはぁぁぁぁ!!!」

 

 ゲオルグは闇に包まれて、飲み込まれていった。

 転移魔法陣が起動できたかどうかはわからないが、重症は間違いないだろう。

 

 ギャスパーはそれを見ると意識を手放した。

 俺は受け止めてやる。

 

「イッセー!貴方ギャスパーに何をしたの!!」

 

 部長が俺に詰め寄ってくる。

 

「ギャスパーの中に眠っている力に譲渡の力で働きかけました。ギャスパーがバカにされてるのがどうしても我慢出来なかったんです...」

 

「そんなことが...じゃああれがギャスパーの本来の力だと言うの...?」

 

「はい。一度だけ見たことがあったんです。ギャスパーと二人で修行している時に、ほんの一瞬でしたけどさっきみたいな闇が漏れだして...」

 

 なんかポンポン嘘が出る自分がちょっと嫌になるぜ...

 

「なんで報告しなかったの!!」

 

「普通に生きる分には呼ぶ起こすべきでないと思いました。でも、あの悔しそうな顔を見て...強くなりたいと願うギャスパーの目を見て、ギャスパー自身にあいつをやらせるべきだって...ならあの力しかないって、そう思ったんです...」

 

「そう...この子について、ヴァンパイアに訊かなければならない事が色々出来たわね。...イッセー、これからはそういう事はきちんと報告なさい。...こんなにギャスパーに無理をさせて、起きたらちゃんと謝るのよ?」

 

「それははい。勿論です」

 

「全く...いつもの事だけど、ここ数日はいつも以上にイッセーに振り回されるわね...」

 

「すみません...」

 

 部長はギャスパーを抱き寄せた。

 ちょっと悪い事をしたとは思うけど、ギャスパー...お前は誰よりすごい奴なんだって皆に知って貰いたかったんだ...やっぱりお前は凄かったぜギャスパー。

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