あれからまた数日が経った。
その間俺は、魔力の修行と翼の利用の修行に明け暮れていた。
どちらもアーシアを助けるためには使えて損はないはずだしな。
まぁ羽は
魔力に関しては成果は見えづらいが、翼はある程度馴れてきた。今ならフルで倍化からのゴットバードとかできると思う...ぜってぇ痛てぇだろうな...
などといって過ごしている間にも仕事は舞い込む物で、遂にその時が来たのだ...
転移した先は灯りがついておらず、人の気配もなかった。
確か、ここで例のはぐれエクソシストと出会うんだよなぁ...
まずい...アーシアはどの時点で助け出せばいいんだ?
教会でってのは論外だ。アーシアが死ぬところなんて見たら俺は自分が許せない。
なんの為に彼の体を奪ってまで生き延びているのかわからなくなる。
今ここで助けるか...?
それともアーシアがレイナーレに連れていかれる、あのベンチ付近だろうか。
ここで助けるには堕天使が集まって来ているという、オカ研の意見を無視して、複数の堕天使及びエクソシストと皆を巻き込んで戦う流れになってしまう。
俺はそれでもいいけど、他のメンバーと軋轢が生まれてしまうかもしれないな...
主の命令をガン無視するわけだし...
その点次の機会なら、レイナーレ一人ぶっ潰せば解決だし、確かあの時はアーシアは教会から逃げていたはずだからアーシア保護の名目も誤魔化しは効くか...?
うん、やはりここは次の機会に回そう...
一目惚れした相手を助けたいってのにずいぶん計算高くて自分で自分が嫌になる...
やっぱり俺では"兵藤一誠"にはなれないな...
彼なら無鉄砲に突貫するだろう。
良し悪しはおいて...
ただまぁ少なくとも今はまだ、修行の貯金があるから多少のムリは通せる...ライザー編以降は無理だろうけど...
儚いな、俺の3年間...
なんて考えている間にリビングに到着した。死体を弄んだ残骸が壁に張り付いている。
はぐれ悪魔とか殺してきたし、今さら殺生についてどうこう言うつもりはないけれど、やっぱりこれは酷いな...
「ブーステッド・ギア」
『Boost!』
俺は力を貯め始める。
「んーんー!こんな所に悪魔くんがいるではあーりませんかー!」
フリードが現れた。
変な歌歌ってるな...
『Boost!』
「俺の名はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織の末端でござい。あぁ~俺が自己紹介したからってお前はしなくていいよ?どうせ数秒後には死んでるんだから。てかそれ神器?神器ちゃんですかぁ!?全く...悪魔ごときが神器を持っちゃってからに調子にのって...そんなんだからすぐ死んじゃうんざんすよ~?」
『Boost!』
なんか...疲れるやつだな...
喋るの面倒だし無視でいいか...
「あらあら、無視!?無視ですか!?おいおいおい悪魔ちゃんに無視されるなんてこんな経験初めてでござんすよ~!?俺、寂しい...!やっぱどうでもいいや!今から死ぬんだしな!!ぶっころちゃんですよ~~!!」
フリードは剣の柄と拳銃を抜いた。
「どっちがいい?ねぇどっちがいい?剣でプスプスグリグリ刺されたい?それとも弾丸で身体中を末端から撃ち抜かれたい?ねぇどっち?答えた方でやってやるよ!!」
『Boost!』
「あ?あー...じゃあ剣で。」
「了解、了解、了解で~っす!ってなわけでドーン!」
うわこいつ銃使いやがった!
避けるけどさ...
「なぁ~にびっくりした顔してるんですかぃ?クソ悪魔のお前が剣って言ったなら銃使うのが当たり前ざんすよ~?てか避けんなよクソ悪魔。黙って撃たれて死にやがれクソが!」
『Boost!』
「おらおらおら!!」
何度か撃ち込まれる弾丸全て籠手で弾いた。
良くやったな俺...一発でも当たれば大ダメージだってのに...
「てめぇ!それじゃ俺が気持ち良くなれないだろうがよぉ!動いてんじゃねぇぜぇ!!?」
『Boost!』
「やめてください!」
聞き覚えのある天使の美声が響いた。
俺はクソ神父と視線をそちらに向けた。
「アーシア...」
「おんや、助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。結界ちゃんはもう張り終わったんですかなぁ?」
「ひっ...きゃぁぁぁぁ!!」
アーシアが遺体を見て叫んでいた。しまった...先に消し飛ばしとけば良かったな...
アーシアごめんよ、気が利かない男で...
「かわいい悲鳴をどうもですねぇ!よーく見るんですのことよ?これが悪魔に魅入られた者の末路ちゃんですからねぇ!」
「そ...そんな...」
アーシアがこちらを見た。涙目のアーシアも可愛いよ。泣かせたフリードは許さんけど...
「フリード神父...その人は...」
「人?ハハハ、違う違う違ーう!こいつは悪魔くんですぜぇ?」
「イッセーさんが...悪魔...?」
「なになに?キミたち知り合い?悪魔とシスターの許されざる恋とかそういうの?マジ?やばくね?
ってかさ...悪魔と人間は相容れないんだよね~ん。特に悪魔と教会関係者なんてさ!てなわけでアーシアちゃんこんなクソ悪魔はさっさと記憶からデリデリして、ばいちゃーしましょうねぇ!?」
神父が再び構えを取る。
俺も構える。
すると間にアーシアが飛び込んだ。
「おいおい...マジかー?アーシアたん、キミィ、何してるかわかってんのー?おい?」
「...はい。フリード神父、お願いです。この方を見逃して下さい」
「アーシア...」
「おいおい、バカ言ってんじゃねーでございますですことよ?オマエ、悪魔はクソだって教会で散々習ったでしょーが!頭にウジでも湧いてんじゃねぇか!?」
「悪魔にだって、いい人はいます!」
「いねぇよボケがっ!!」
「キャッ!」
アーシアが拳銃で横なぎにぶっ叩かれた。
頭が沸騰する。
「堕天使のおねーさんからキミは絶対殺さないように言われてるけどねぇ。ちょっとムカつきマックスなんで強○まがいの事してもいいですかねぇ?それぐらいしないと俺の心がイタイイタイで癒せないぜぇ...」
「おい...」
「あ?なんだよクソ悪魔くぅん?」
「おい...お前...お前お前お前お前ぇぇ!!!」
『Dragon Booster!!』
『Boost!Boost!Boost!Boost!』
「なんだ?お前?やる気かよ?お?やるか?」
「アーシアの顔を殴ったなお前...殺すぞ!!!」
「殺されるのはお前だっつーの!!おら!死ね!」
剣を振るってくる。
俺はそれより早く奴の顔面を殴り抜いた。
「ぎょぺぇぇぇええええ!!!!」
壁に穴が空いて隣の部屋まで吹き飛んだ。
俺はゆっくりと吹き飛んだ奴の元へと歩いていく...
やつの襟袖を掴んで引き上げる、叩きつける。
「ぐえぇぇぇ!!」
「おいお前、大概にしろよ?...お前自分が何やったのかわかってんのか?おい...」
アーシアを傷つけるなどあってはならない...
許さない。許さない。
「ぐぅ...こ...の...クソ悪魔...が...」
俺はもう一度地面に叩きつける
「おい...お前...」
「やめてください!イッセーさん!もう大丈夫ですから!」
「アーシア...」
アーシアが俺の腕にしがみついてきた。
「でも...こいつはアーシアの事を...」
「はい...でも大丈夫です...もう充分ですから...これ以上は死んでしまいます...」
アーシアが
気絶しているから、治療したとてすぐに起き上がる事はないだろう。
『Reset』
「...アーシアすまん...俺...ついかっとなって...」
「いいえ...イッセーさんが私の事を思ってそうしてくれたって事はわかってますから...」
アーシアが微笑んでくれる。
「アーシア...」
まずい...ようやく思考回路が正常に回りだした...ああああああどうしよう...アーシアに嫌われたか...?
そうでなくても、暴力的なやつだとは思われたよな...ああああ...
「イッセーさんは、悪魔だったんですね...」
「うん...黙っててごめん...」
「いえ、気にしてませんよ?それにさっきも言いましたけど、イッセーさんのお陰で悪魔にもいい人が居るって知ることができました!」
「そっ...か...」
「はい...あの...イッセーさん、私...これからどうしたらいいのでしょうか...私...私...」
アーシアが沈痛な面持ちを浮かべる
「アーシア...その...」
「あら?どうやらもう終わってしまったようね」
後ろから声が聞こえる
「部長...」
「転送した先にはぐれのエクソシストが居るとの情報を掴んだから急いで来たものの...また随分派手に暴れて...まったく...」
「すみません...」
「...ッ!部長、この家に堕天使らしき者たちが複数近づいていますわ。このままではこちらが不利になりかねません」
「そう、ならイッセーを回収しだい、本拠地に帰還するわ。ジャンプ準備を」
「はい」
朱乃さんが詠唱をはじめた。
「部長、そのジャンプってアーシアを...この子を同伴させることはできないんですよね?」
「.....そうよ。魔方陣を移動できるのは悪魔だけ。おまけにこの魔方陣は私の眷属以外ジャンプできないわ。」
「...すみません部長。俺、自分で脱出します。アーシアを置いていけません。」
「イッセー時間がないわ。わがまま言わないで。こっちへ来るのよ?あなただけ置いていけるわけないでしょう?あなた一人のわがままで私達全員を危険に晒すつもり...?」
「イッセーさん...」
「すみません部長。眷属として最低な事言ってるのはわかってます。でも俺、無理です...アーシアが堕天使の教会でどんな扱いをされるのか心配でなりません。奴らの元に返せません。」
「イッセー、あなたねぇ!」
部長が怒りを露にする。
でも俺だって引けない。
部長の目から視線を離さない。
「...あぁもう!祐斗!イッセーについてあげて。私達は脱出するわ!...イッセー、お説教は後にするわ。あなたが言ったのだから、責任を持って必ずやり遂げるのよ。後でしっかり罰を受けてもらうから。わかったわね?」
「はい!」
「まったくイッセー君...こういう事はこれっきりにするんだよ?」
「ごめん木場...皆さんすみません!後で煮るなり焼くなり好きにしてください!だから...だから今だけは失礼します!」
『Boost!』
倍化を始める。ある程度貯まったら木場と自分自身に譲渡して8割強化をするつもりだ。
「イッセー君飛べるのかい?」
「あぁ...精密には動けないけど、普通に飛ぶ分には問題ない!」
「そうか...じゃあ、行くよ!」
木場と共にリビングの窓から飛び立つ。
「アーシア!これから結構なスピードで飛ぶから、しっかり目と口閉じて俺にしがみつけよ!」
「はっはい~~~!!」
全速力で飛行する。
「おい!あそこから悪魔が飛び出して来たぞ!!」
堕天使の声がする。
「やっぱり見つかってしまったようだね...」
「あぁ...」
ドライグ...最悪の場合だが、俺の腕を喰わせるって言ったらすぐに
『一度きり、30秒だけだ。それならば今すぐにでも叶えてやろう?やるのか?』
いや、すぐにできるならまだ大丈夫だ。
俺達は全力で飛ぶ。木場がたまに後ろに魔剣で攻撃してくれているようだ。
「木場ぁ!倍化が充分貯まった!譲渡するぞ!」
「あぁ...!」
『Transfer!」
俺達二人は一気に加速する。
俺は更に倍化も始める。
堕天使はやがて見えなくなった...
「ふぅ...うまく撒けたようだね?」
「あぁ...ありがとう、木場...助かったよ...」
「あの様子だと僕の付き添いはいらなかったかな?」
「そんなわけあるか!お前が牽制してくれたから俺は安心して倍化に集中できたんだ!」
「それなら良かったよ。...まぁ部長が叱ると言っていたから細かい事は言わないけれど...あまり皆を困らせる物ではないよ?」
木場が困ったように微笑んでいた。
「本当に面目ない...」
「うん、それじゃあ戻ろうか。」
「あぁ...アーシア?大丈夫か?」
「うぅ~...は...はいぃ...なんとか大丈夫れす...」
「ごめんなアーシア、結界なんて張れないから、一応しっかり固定してたつもりだったんだけど...」
「いえ...もう大丈夫ですから...」
アーシアが微笑んでくれる。
「ごめんなアーシア、その...お前の意見を聞かずに勝手に連れ出しちまった...その、良かったか?教会に居たかったり...したか...?」
「...いえ...私....私、あの教会に戻りたくありません...人を殺すような所へは戻りたくないです...」
「.....そっか。じゃあ一度、俺達の本拠地に向かうけど、大丈夫か?」
「はい!一緒に行きます!」
俺達は三人でオカ研の部室へと向かった。