「もしかして蓮君?」
そう言われて俺は身体が震えた。俺を「蓮君」と呼ぶ人はそう多くないししかも女性の声。この声はよく知っている。今絶対会いたくない人のうちの1人だ。振り向いては行けないと思いそのまま逃げようとするが
ガシッ
「逃がさないよー」
ダメだった。
「君は都合が悪くなるといつも逃げ出すからね。捕まえるのが大変なんだよ。それはそうとして蓮くん。少し、お話しようか」
そう言われて俺は顔を青くしながら頷くしかなかった。
しかも「あなた達もどう?私に聞きたいこととかあるでしょ?」というもんだから余計に逃げられなくなった。途中から人が増えたせいでもう完全に諦めた。
~~
その後予定はなかったが羽沢の店へ行くことになった。ちなみに代金は全額俺持ちになった。仕方ないけど。店に入ると見知らぬ女性と一緒にいたせいか羽沢が目を丸くしていた。
「で、なんの用ですか中津さん」
「みんな急にごめんね。初めまして、私は中津 梨恵。これでも声優やってまーす」
「いや無視しないでくださいよ」
「それと井戸原君にどんな関係があるんですか?」
うーん聞くだろうとは思ったけど聞いて欲しくなかったなー奥沢ぁ。
「うーん。彼もね、うちの事務所にいたのよ」
「えーー!?」×20
「それが突然いなくなっちゃって。律儀にその時収録していたものは最後までやってあったし、事務所にある私物は全部置いてあったからそのうち戻って来るのはわかってたんだけど···」
「だったらほっといて下さいよ」
「ち、千聖ちゃんは知ってた!?」
「落ち着いて彩ちゃん。最初に見た時はどうしてこんなところにいるのかと思ったけど」
「前に映画で共演しましたもんね。見た目変えてたからバレてないと思ったんだけどなー」
「うふふ、私の目は誤魔化せないわよ」
そう言って笑顔を浮かべた。
怖ぇ···
「あ、あの」
「なあに?」
「中津さんは確かNFOのキャラクターボイスもやってましたよね?」
「え?そうなのりんりん」
「そうだよー。あ、やってる?MFO」
「は、はい。実は」
「あ!あこもやってます!」
「そっかそっかー。じゃあちょうどいいかもね」
その言葉に俺を含め全員が頭にハテナを浮かべる。
「蓮くんさっき何の用かって聞いたね」
「ええ」
「実はね、この間社長のところに電話がきたの。どこだと思う?」
「どこってそんなの分かるわけ···」
うんちょっと待て。さっきこの人ちょうどいいとか言ったな。ってことは
「もしかして···」
「その通り。MFOの制作会社でーす」
「うわ」
「2人はさあMFOのなかで良くも悪くも一番反響の大きかったイベントって覚えてる?」
「え、えっと確か『災厄をもたらす王の降臨』だったと思います」
「正解。あれはねーストーリーはいいんだけどその後のクエストがすごいんだよね」
「イベントボスの龍帝ディストグレイヴは1パーティー限定クエストなのにレイドボス並の強さだったもん。あことりんりんは頑張って2人で倒しました!」
「すごいっすね」
「ソロで倒した君が何言ってるの」
その言葉に俺は目を逸らした。
「ど、どうやって」
「や、ドラゴンキラースキル持ちの装備で固めたら行けるのではという安易な考えで······そんな目で見んでください」
なんかすごい呆れたような目で見られた。
「でね、ネタバレすると今度その後第2弾のイベントをやるらしいんだけどディストグレイヴのCVをやってるのが蓮くんなんだよ」
「それで帰ってこいと」
「だって社長が誰でもいいから見つけたら連れて来てって私たち全員に言うんだもん」
「出来れば嫌です」
「なんでー」
「自分が何やったか自覚あるんで合わせる顔がないです」
「井戸原君」
「何奥沢」
「悪いことした自覚があるならむしろちゃんと会って謝った方がいいんじゃない?」
ドスッ
「うぐっ」
「それにもう高校生なんだからそんな子供みたいなこと言わないの」
グスッ
「ごはっ」
耳とこころが痛い···
「みんな俺に厳しくない?」
「全面的に井戸原君が悪いと思う」
「それ言われたら何も言えない」
「でも······」
「言い訳しかしない井戸原君はあたしは嫌いかな」
チーン lll_ _ )
今日一効いた
「わかりましたよ。行けばいいんでしょ」
「わーいみんなありがとー。今日は奢りだよ。蓮くんの」
「最初からそうじゃないすか」
「じゃあ蓮くん。明日の放課後事務所来てね」
~~
数日後、生徒会室。
lll_ _ )
「おーい大丈夫か?」
「大丈夫なわけあるかー」
「この土日に何があったんだよ」
「島原さんに」
「それも事務所の?」
「そう。買い物1日付き合わされて夜はオシャレなレストランで食事をしながら·········延々とお説教」
「うわぁ」
「まだ残ってるからな。こんなのまだ序の口だわ」
俺は遠い目をして、高校卒業したら絶対に復帰しようと思った。
次はバレンタインかなー多分