遅刻した日の放課後はバイトしてた。受付をしているのだが誰も来ないのでカウンターで話し込んでいた。
「それにしても井戸原、今日何回怒られた」
「うっせぇ市ヶ谷。覚えてねぇよ」
「何をしたんですかいったい···」
「寝れなかったんだから遅刻したって仕方ないだろ。おかげで一限から寝ちまったし」
「へえ遅刻に授業中の居眠りですか」
その声に俺は凍りついた。
やっべ知らないうちに風紀委員いた!
「いったいどういうことか説明して頂けますか?」
ヤバイヤバイヤバイ!絶対怒られる!
「清掃終わったよー」
!助かった!
「また後で聞きますからね」
助かってなかった。なんでこんな時だけバイト夜まで入れちまうんだろ。
この後練習を終えた氷川先輩にこってり絞られた。寝坊した理由は絶対に言わなかった。言えるわけないじゃんあんなこと···。
~~
土曜日、RASの面々はお礼のために市ヶ谷の家の蔵を訪れていた。
「こちら手土産です」
「ありがとう」
「でも本当に良かったよー」
「ご迷惑お掛けしました」
「良かったねレイ」
「うん。でも半分は井戸原君のおかげでもあるんだ」
「どういうことだ?」
「実はパレオ捜しに行った先に蓮がいたんだ。口開くまで気づかなかったけどな」
「へぇーそうなんだ」
「すげーのはこっからだぜ。パレオのやつ帰り際によ、キスしたんだぜ。蓮の頬に」
「ええ!?」
「やるね」
「その時に麻弥さんが言ったのってこういうことかって思った。すげぇなパレオ」
「············」
「パレオ?」
「パレオちゃん?」
よく見ると彼女は顔を真っ赤にして手で覆っていた。
「私はなんてことをしてしまったのでしょう」
「恥ずかしいならやらなければ良かったじゃない」
「後悔はしていませんが私嫌われてませんよね!?チュチュ様!!」
「知らないわよ」
「まぁそれはないと思うけど」
その時市ヶ谷はひとつの可能性を思いついた。
「それってどれくらい前だ?」
「確か4日前です」
市ヶ谷の予想は当たった。
「だから遅刻したのか」
~~
そしてとうとう予選が終了した。この後は順位発表。上位2位が決勝へ進める。
「どう?井戸原」
「面白いことになったっすよ。でもどうします?これ」
「そうだなぁ」
発表翌日
「それで、どうするの?」
普通ならばチュチュのこの発言は出てこない。しかしこの言葉を口にした理由は、
「決勝に進む方をどうやって決めるの?」
順位が1位 Roselia そしてなんと同率でRASとポピパが2位となったのだ。しかしこの結果を受けてまりなさん達が下した結論は
「決勝には···両バンドとも出てもらいます!」
そう決勝は3バンドでの三つ巴としたのだ。
~~
その後、何故か揃った。全バンドが。祝福するために。俺は奥沢と話していた。
「さすがに35人も集まるとけっこうやかましいな」
「そうだねでもいいんじゃない?こういう時くらい」
「そうだな。あ、俺ちょっとお手洗い行ってくる」
「分かった」
この時、俺は最悪の状況に陥ることになる。
「あれ?これなんだろう?」
戸山が何かを見つけた。
「おたえ、これギターケースだよ」
「本当だ。誰のだろう」
「開けてみよう!」
「いやダメだろ!」
「見るだけ見るだけ」
躊躇なく開けた。
そこに入っていたのは
「これなんのギターだろう?ねえおたえ」
「なんだろうね。レイ、これわかる?」
「どうしたの?はなちゃん······!」
「レイ?」
「これって······チュチュこれみて」
「これは、HORIZONⅢ!?しかもこのカラーは!」
「やっぱりそうだよね。これを使ってるのはたった1人···LOTUS。エンドロールのギター&ボーカル」
「あれ?まだ何か入ってる。これって歌詞?」
「これは···エンドロールの代表的な曲のですね」
うわぁーやったー。片すの忘れてた。最悪しかもなんか近づいてる気がする。
「LOTUSは確か日本語ではすを意味します」
あ、これダメなやつだ。
「蓮ってどこかで···」
奥沢!やめて!思い出さないで!
「あ、そういえば井戸原君のれんって確かはすって書くはずです」
その時、チュチュと目があってしまった。
「あ」
その瞬間俺は走り出した。
「蓮くん、焼肉奢るわよ」
さすがと言うべきか白鷺先輩が瞬時に俺を止めに来た。俺は一瞬止まったがその誘惑を振り切って外へ飛び出した。
「残念」
「パレオ!行きなさい!」
「はいチュチュ様!!」
「香澄!行ってこい!」
「おー!」
「私もー」
「日菜も行って!」
「はーい!」
「こころ!はぐみ!捕まえてきて」
「捕まえればいいのね!分かったわ!」
「行ってくるねみーくん!」
「シロ行くよ!」
「ええ!?透子ちゃん!」
この時、俺が一番最初に思ったこと、それは
「今日バイトじゃなくて良かった」
だった。
~~
5時間後
lll_ _ ) ずるずる
俺は捕まって引きずられながら戻ってきた。まぁどの道荷物とギター取りに来なきゃ行けなかったけど。
「遅かったね」
「あの人数と人選はおかしいだろ。途中で黒服まで加わってたぞ。それでもなおこの時間逃げ回ったことを褒めて欲しいよ」
「その話は置いておいて、井戸原君。あなたがエンドロールのLOTUSなのよね?」
「··············」
「黙秘ですか」
「おい、言わねえとパレオにキスされたことばらすぞ」
「マッスーさん!?」
「もうばらしてんじゃねえか!」
「「「どういうこと(ですか)?」」」
恐いよ御三方。
「その話は後で聞くとしてどうして解散したのかしら」
「え?」
俺はその意味がわからなかった。
「誰がですか?」
「あなた達よ」
「してないですよ。公開せずに活動休止しただけで解散なんてしてないですよ」
「あっさり認めたね」
「だってはかなきゃ解放してくれねぇじゃん」
「でもなぜ?」
「1人、いなくなったんです。3人でもって意見もあったんですけど、俺たちは4人でエンドロールだからって」
俺は暗くなりながら話していく。
「ごめんなさい。そんなつもりじゃ」
その瞬間俺は表情を明るくして続けた。
「だから海外進学して卒業して戻って来るまで準備期間にしようってことでまとまりまして」
「え?」
せめてもの仕返しである。
「騙したのですか!?」
「勝手に勘違いしただけじゃないですかー」
へらへら笑ってそうかえす。
ゲシッ
蹴られた。え?ちょっと待って激しくない!?しかも多い!
「待って待って!暴力反対!イテッ、ちょま、ごめん!ごめんて!俺が悪かったから!」
ようやく止まった。
「じゃあ許すかわりにひとつお願いするわ」
「わかりましたよ」
「それならあなたの声を聞かせて。FUTURE WORLD FESで通用するあなたの歌を」
「え?」
「何をしているの?早くして」
「あの、それだけでいいんですか?」
「ええ」
それなら仕方ない。
「じゃあチューニングするんで待ってて下さい」
そう言って始めるが
「なんでチューニングでそんな切ない音出すの。どれだけやりたくないの」
その言葉を無視して問う。
「何がいいですか」
「じゃあ···」
~~
「美咲ちゃん」
「花音先輩」
「井戸原君があんなにすごい人だったなんて知らなかったね」
「そうですね。でもあたしは彼の歌を聞いたことあるので今更そんなに驚かないと思いますけど」
その後歌い始めたが見事に裏切られた。1年前のカラオケの時とは全く違う。ギターひとつで彼はこんなにも変わるのかと驚いた。
すごい。その一言に尽きた。それしか出てこなかった。
~~
「ふぅ。満足しましたか」
「ええありがとう」
「じゃあ俺はこれで」
「だめだよ。キスについて教えて貰わなきゃ」
忘れてて欲しかった。俺はその後2時間ほど質問攻めにされた。足が痛え。
次ででガールズバンドチャレンジが終わる予定。