ガールズバンドとのやかましい日常   作:紅葉064

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お盆明けてまた忙しくなるそうです。どのくらいのペースで投稿できるのやら···


ご褒美

zzzzzz

 

真っ暗なトンネルの中で俺は寝ている。

 

「井戸原君」

 

俺を呼ぶ声がする。目を開けると奥沢がそこにいた。

 

「んあ?」

 

「そろそろ見えるよ」

 

それを聞いて思いっきり顔を歪める。

 

「そんな顔しないの」

 

「だってよー」

 

その瞬間、視界が開けた。8月28日、夏休みが終わる数日前。俺たちは

 

「「海だー!!↑↑↑」」

 

「海だぁ···↓↓↓」

 

海に来ていた。そりゃ俺のテンションも下がるよ。海の何がいいのさ。

 

 

 

~~

バスを降りた途端やっぱり来た。潮の香り。あ、うん。ダメだ。

 

「おええぇぇぇ」

 

奥沢が背中さすってくれる。ありがとう。でもまじで気持ち悪い。吐きはしないけどこれなら吐いた方が絶対に楽だ。

 

「去年もこんなことあったような」

 

「あったようなじゃなくてそうだよ。うっぷ」

 

「あーもー行くよ。そろそろやばいみたいだから」

 

「すまん」

 

「私反対肩貸すよ」

 

「両手に花」

 

「浮気」

 

「一夫多妻」

 

誰が言ったか知らんがつっこむ気力はもうなかった。

 

 

 

~~

「落ち着いた?」

 

「もう大丈夫。ありがとう2人とも」

 

今年は去年のビーチではなく弦巻家所有のプライベートビーチ。まぁ去年のホテルは弦巻家運営だったけど。

 

「なんでほとんどの人間は海なんか行きたがるんだ」

 

「井戸原君は海に入る以前の問題だからね」

 

「しばらくいればなれるけど。絶対に入りたくはない」

 

「そもそもどうして嫌いなの?」

 

「うーん。あんまし覚えてないけど最初来た時に合わなかったんだろうな。多分」

 

「そんなもん?」

 

「そんなもん。っていうか2人ともそろそろ行ったら?待ってるだろうし」

 

「そうだね。後でちゃんと井戸原君も来なよ」

 

「へいへい」

 

 

 

~~

落ち着いたので外に出てきたのだがやっぱり慣れない。そんな中、倉田がすごい呆れた目で見てきた。

 

「先輩、やっぱりですか」

 

「うるせぇよ」

 

「やっぱりってー?」

 

「うん。先輩って海苦手だから中学生の時の部活の夏合宿は必ず2日目からの参加だったんだよね」

 

「そんなんだー。ところで広町の水着どうですかー?」

 

「さっきまでの話と一切関係ないな。あーうん。似合ってる似合ってる」

 

「すごい投げやり感」

 

「海に来て外でいつもの先輩が見れるわけないよ」

 

「余計なこと言うな。というか今更聞くが何しに来た」

 

「あ、そうだ。なんで突然海に来たんですか?」

 

「そういや言ってなかったな。一切お前らには関係ないけど。まぁ簡単に言えば戸山と北沢が課題終わらせたからだな」

 

「かすみさんが?」

 

「おい。全員揃って『何を言ってるんだこいつは』と言いたげな顔をするな。俺だって戸山に課題ちゃんと終わらせたからご褒美ちょうだいと言われた時は同じような反応をしたが」

 

「······」

 

「倉田、お前今すごい微妙な顔してるぞ」

 

「知ってます」

 

「まぁそのご褒美に反応したのは弦巻なんだがな」

 

 

 

~~

一通り遊んで(俺は遊んでない)ホテルへ戻る。今回は2泊3日なので結構時間がある。

 

「しっかしプライベートビーチでホテルってどういうことだ?プライベートなのに」

 

「確かにそうだね」

 

隣の奥沢が苦笑いをしている。

 

「それはまさに今回のようなことを想定してのことです」

 

「うお!」

 

びっくりしたー。気配殺して近づくのやめて欲しい。

 

「申し訳ございません」

 

なんで考えてることわかるのー?

 

「お夕食の準備までしばらくかかるのでゆっくりお待ちください」

 

「じゃあ風呂にでも入るかな」

 

部屋に戻り準備をして浴場へ向かう。が、

 

「············」

 

普通に言葉が出てこない。去年よりもこっちの方が規模がでかい。

 

「なんだろう。こんなものを独り占めしていいのだろうか」

 

とか思ったが、

 

「ま、いっか」

 

考えることをやめた。

 

「ふいー。いい湯加減」

 

そして俺しかいない風呂をこれでもかと満喫し、自覚するほど満面の笑みで出た。

 

「コーヒー牛乳は···飯前だからやめとくか」

 

しばらくして声が聞こえてきた。

 

「あ、出てたんだ」

 

「丸山先輩髪まだ濡れてますよ。ちゃんと乾かさなかったでしょう。風邪引く上に傷んでいいことないですよ」

 

そして流れるように丁寧に髪を拭いてあげる。他の数人が羨ましそうに見ており、何人かがニヤニヤしていることには気が付かなかった。

 

 

 

~~

そして飯の時間がやってくる。予想通り豪華なものだった。

 

「わー!美味しそー!」

 

「こんなに豪華なの私が食べてもいいのかな?」

 

「シロー。また悪いところ出てるよ」

 

「市ヶ谷」

 

「何?」

 

「お前こっちな」

 

「なんでさ」

 

「なんでも」

 

「お前これ食べたら仕事だからな」

 

「は?」

 

「夏休み中に修学旅行関係の書類手伝えって言ったよな?」

 

「言った」

 

「お前了承したよな?」

 

「した」

 

「1度でもやったか?」

 

「·········やってません」

 

「という訳だ。俺他にもやることあったから半分くらい残ってんだよ」

 

「まじか」

 

「ご馳走様。そんなわけで先始めてるから」

 

「早っ!」

 

後に市ヶ谷も食べ終わったので2人で進める。

 

「ところで井戸原って修学旅行楽しみなのか?」

 

「楽しみだけど正確には帰ってきたら後だな」

 

「あと?」

 

「後輩がどんな顔してるか」

 

「ああ···」

 

市ヶ谷は遠い目をして納得した。

 

「会長たちいない時地獄だったもんな。たった2人いないだけでこうなるんだって」

 

「いい性格してるのな」

 

「どーも」

 

~夜10時~

「終わったー」

 

「これで残りは何も考えずに遊べるな」

 

「お疲れ様です」

 

終わってくつろぎ始めると声がかかった。

 

「会長に氷川先輩。どうしたんですか?」

 

「これをどうぞ」

 

そう言って飲み物を手渡してきた。

 

「あ。ありがとうございます」

 

「2人とも今年は修学旅行なんですね」

 

「そうですね」

 

「また大変になります」

 

2人とも遠い目をした。これは先輩たちも経験したようだ。出来れば思い出したくないのか、話を切り上げようと

 

「そろそろ寝ましょうか」

 

「そうですね」

 

思い出したくないのは俺達も同じだ。来年またあるけど。

 

「ではおやすみなさい」

 

「はい」

 

部屋に戻った俺は、簡単なファイル整理だけ済ませて眠りについた。




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