ガールズバンドとのやかましい日常   作:紅葉064

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2日目でございます。


パレットにはない色

朝起きてロビーへ降りると既に何人かいた。

 

「おっはよー」

 

「朝から元気ですね日菜先輩」

 

「おはよう···」

 

「おはようございます。俺が悪かったのでむくれないでください」

 

「あ、井戸原君起きてきた」

 

「あら、すごい寝癖ね」

 

「丸山先輩、白鷺先輩おはようございます。そんなにですか?」

 

「ええ。それはもう」

 

「別に朝食べてからでもいいと思ったんですけど」

 

「そうね。そろそろみんな降りてくるでしょうし」

 

白鷺先輩の言ったように続々と起きてきた。朝食を食べたあと、色々準備しようと思って部屋に戻ると何故か丸山先輩まで着いてきて

 

「昨日髪拭いてくれたお礼に寝癖直してあげる」

 

と、ドヤ顔で言ってきた。めんどくさいのでもう任せた。

 

「終わったよ」

 

ボーッとされるがままになっていると呼ばれたので我に返って鏡を見ると以外にもちゃんと整っていた。なんかいつもと違う気もするがまぁいいか。

 

「ふふん。どう?私だってこのくらいのことはできるんだからね」

 

「そうみたいですね。正直あんまり期待してませんでした」

 

「どうして君はいつもそんなに辛口なの!?」

 

「いつもの自分を思い返してみればいいと思います」

 

「うう~~」

 

「でもありがとうございます」

 

パァァァ✧

 

「どういたしまして!」

 

なんだろう。ちょろすぎて不安になってきた。

 

「ところで」

 

「うん?」

 

「アイドルが男と部屋で2人きりってどうなんですか?」

 

今気づいた。これは本当。

その言葉に顔が赤くなっていく。

 

「あう~~」プシュー

 

なんか変な動きしだした。どんな想像してんだこの人は。

 

「うん!井戸原君なら大丈夫!」

 

「なんの根拠にもなっていませんが。あと、着替えたいんでそろそろ出てって貰っていいですか?」

 

 

 

~~

井戸原君の一言に顔を熱くしながら部屋を出ると千聖ちゃんがいた。

 

「彩ちゃん。プライベートビーチで良かったわね」

 

「うん」

 

「いくら井戸原君のことが好きだからってアイドルなんだから自重しなきゃいけないわよ?」

 

「好き?誰が······誰を?」

 

千聖ちゃんが何故か驚いた顔をしている。

 

「自覚なかったのね····。彩ちゃんが井戸原君をよ」

 

「私が、井戸原君を?」

 

よくよく考えてみれば学校では生徒会同士で有咲ちゃんとよく話しているのを見るけどなんだかその度モヤモヤしていた。この間私が珍しくからかって反撃されてキスされるかと思ってドキドキしてちょっと期待して私も普通の女の子になるのかなって考えたけどそんなこと思いもしなかった。

 

「私は···井戸原君が、好き···」

 

自覚した途端。うずくまってしばらく顔をあげることが出来なかった。

 

彼女はなかなかにキケンな思考を持っていたようだ。

 

 

 

~~

部屋の扉を開けるが誰もいない。

 

「なんか会話が聞こえたような気がしたけど」

 

まあ誰もいないのだから気がしただけだろう。そんなことを考えながら下へ降りるともう全員いた。

 

「あ、来た」

 

「遅いよ」

 

「ねえねえ。今日はどうするの?」

 

「うーんそうだなぁ···うちの事務所にお土産せがまれたし買い物でも行くか」

 

「わーい」

 

「い、井戸原君」

 

「その···一緒に······い、行かない?」

 

丸山先輩が誘ってきた。しかし

 

「それはアウトでは?」

 

アイドルが男と2人で買い物とかバレたら只事では無いだろう。

 

「大丈夫!ちゃんと変装するから!」

 

そういう問題か?

 

「心配しなくても大丈夫よ。彩ちゃんの変装服は私が選んだものだから」

 

「それなら安心ですがその言い方だといつもの変装がちゃんとしたものではないという風に聞こえるんですが」

 

「あはは~···」

 

「そうだね~」

 

今井先輩が話に入ってきた。

 

「いくらか前に私に『芸能人オーラバリバリ出るお忍びコーデ教えて』って言ってきたくらいだからね」

 

それはつまりバレたいと言うことなのだろうか。いや、そんなんめんどくさいじゃんと思いながら、

 

「ええ···」スっ

 

「ひ、引かれた!千聖ちゃん!井戸原君に1歩引かれた!」

 

するとそれを諭すように

 

「彩ちゃん。それが嫌なら井戸原君の前でなくてもちゃんとした変装しましょうね」

 

「うん···」

 

ん?俺の前じゃなくてもってどゆこと?それについて聞こうと思ったが

 

「おい井戸原。早くしないと時間なくなるぞ」

 

邪魔がはいった。まぁ仕方あるまい。行くとするか。

 

「じゃあ行きましょうか」

 

「うん!」

 

 

 

~~

「いやー楽しいね!」

 

「そうっすね。それにしても···」

 

俺は周囲を見渡す。

 

「意外とバレないもんですね」

 

そして丸山先輩の手元に目を落とす。

 

「ところでそれ、重くないんですか?」

 

その手にはさっきまでに買ったものが入った袋を持っている。見るからにキツそうだ。なんかちょっと息上がってるし。手がすっごいプルプルしてるし

 

「うん。ちょっと重いけど大丈夫」

 

いや、どう見てもちょっとじゃないし大丈夫そうでもない。

 

その強情さに呆れながら荷物を奪い取った。

 

「あ!」

 

一瞬にして取られたのに驚きながらこちらを見て···顔を膨らませ奪い返しに来た。

 

「返してよ!大丈夫だって言ってるのに!」

 

「いや無理でしょう」

 

尚も諦めずに向かってくる先輩を見てあることに気がついた。

 

「あの、そんなに激しく動くと······」

 

「隙あり!」

 

と言って奪い返したのだが次の瞬間、

 

「ねぇ、あれ彩ちゃんじゃない?」

 

「嘘!パスパレの!?」

 

凍りついた。うん。これは非常にまずい事態だ。だってそこらから

 

「じゃあ隣にいるのって彼氏?」

 

とか聞こえてくる。このままじゃ俺や先輩だけでなくパスパレ自体に大ダメージが行きかねない。仕方ない。即興でどうにかするしかない。

 

「彩姉だから言ったのに。姉ちゃんにしとけって」

 

「???」

 

先輩が疑問符を浮かべているが無視して続けよう。

 

「アイドルなんだからそのへんも気をつけなきゃ。知らない人からすればいくら従兄弟だからって彼氏にしか見えないんだから」

 

「!うん。ごめんね」

 

どうやら俺の意図を汲み取ってくれたらしい。

 

「起こったことは仕方ないから。ほら行こ。まだ買うものあるんでしょ?これだけ買っときながら何を買うのか知らないけど」

 

そうしてその場を後にした······のだが、誰かが着いてきている。

 

「ねぇい」

 

「しっ」

 

多分まだ疑ってるんだろう。めんどくさいから通報しておこう。別に関係がどうあろうと不審者摘発したってなんの問題もない。

そして数分後にやってきた警察に連れてかれた。ざまあみろ。

 

 

 

~~

「うう···ごめんね」

 

「いやもう終わったんでいいですよ」

 

「そんな訳には···あっ!じゃああそこのクレープ奢る!」

 

「そんな訳には」

 

「いいから」

 

譲る気はないのか···。この強情さはいいのか悪いのか。でも今はお言葉に甘えておこう。

 

「じゃあ俺はチョコカスタードの白桃トッピングで」

 

「いいよー。私はベリーミックスにしよ♪」

 

そして俺たちはクレープを食べながら次の場所へ向かう。

 

「ん~美味しぃ」

 

のだが、ときどきチラチラ俺のを見てくる。そんなに食べたいのか。

 

「食べます?」

 

「だ、大丈夫だよ!」

 

「でも食べたいんですよね?後悔しません?」

 

「···もらう。いじわる···」

 

最後の言葉は聞こえなかったみたい。

 

「私のもいいよ」

 

交換して食べようとするが、あることに気がついた。

 

(こ、これって間接キスじゃない!?)

 

「井戸原君!ちょっとま···」

 

時すでに遅し。蓮は一口食べた後だった。

 

「こういうのもいいな。ん?食べないんですか?」

 

「た、食べるよ!いただきまーす」パク

 

「どうですか?」

 

「お、美味しいよ」

 

「それは良かったです」

 

(うう~。恥ずかしすぎて味なんてわかんないよ///)

 

 

 

 

~~

「これで終わりですか?」

 

「うん。あとは井戸原君のだね」

 

「?俺なら終わってますけど」

 

「いつの間に!?」

 

「ああ、やっぱり気づいてなかったんですね」

 

まぁ予想はしてた。

 

「それにそろそろいい時間なので戻りましょ」

 

「うんそうだね」ドン

 

「あっ」

 

「あ!」

 

急いでいて気づかなかったのだろう。通行人の1人がぶつかってバランスを崩した。しかも運の悪いことに石階段の手前。ダメだと思ったその瞬間。腕を捕まれ引っ張られ体の行き着いた先は、

 

「丸山先輩、大丈夫ですか?怪我ないですか?」

 

「っ~~~~!///···うん」

 

彼の腕の中だった。嬉しいけど恥ずかしい。私の顔は自覚できるほど真っ赤だと思う。

 

「ほんとに大丈夫ですか?」ズイ

 

(ち、近い///)

 

その後、ぶつかった人は丁寧に謝ってくれた。幸い怪我はなかったので余計なトラブルはなく別れた。

 

彼は、私を色眼鏡で見ない。私を私として見てくれる。少し無愛想で、毒舌で、でもかわいくて。優しくて、誰かに寄り添える。そんな君が、私は好き。

 

「井戸原君」

 

「なんですか?」

 

でも、この気持ちは今はまだ閉まっておこう。

 

「ありがとう」

 

そして、いつか必ず伝えよう。

 

 

 

~~

「井戸原君」

 

そう呼びかけてくる。

 

「なんですか?」

 

そして彼女は

 

「ありがとう」

 

その言葉と共にアイドルじゃない。彼女自身の笑顔を見せた。鮮やかに、花のように。

 

「それは反則だと思う···」

 

聞こえないように呟いた。俺に見せた彼女の笑顔を、とても可愛いと思ってしまった。

 




合流後

「あら彩ちゃんご機嫌ね。何かいいことでもあったの?」

「あ、千聖ちゃん。うん、でもね秘密」

「ふふ。それなら仕方ないわね」
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