ある晴れた日。今日は特に依頼も受けないと決めていた。つまり休みである。朝はいつもの時間に起きて食堂に行けばいつもの日常があった。その中でいつもではないことといえば、俺がゆっくりしているというところだろう。
「珍しいね~。レンがその格好してるなんて」
「リサさんおはようございます。まぁたまには休まないと怒られますからね」
「1回マスターから外出禁止命令出たもんね」
「はい···」
「でもたまにはのんびりしなよー」
「ありがとうございます」
~~
ほとんどが出ていったあと、俺も出かける準備をする。
「あら?レン、出かけるの?」
「ココロか。ちょっと買い物にな」
「ならわたしも行くわ」
「······なんでだよ」
「だって1人で行ったら買い物以外のこともしてなかなか帰ってこないじゃない」
「うっ」
確かにその自覚はある。でも、
「お前も休みだろ?だったら部屋でゴロゴロしてれば···」
「それを今出かけようとしているレンが言うの?」
~~
「やっぱり1人より2人の方が楽しいわよ」
負けました。完全に言いくるめられました。あの後もいろいろと抵抗はしたけどダメでした。
「それに···」
「?」
「レンが帰ってこないのは不安なんだもの」
それはずるいと思う。
「はぁ···わかったよ」
次の瞬間には笑顔になったと思ったら
「じゃあはい!」
と手を差し出してきた。
「ん」
手を軽く握ってその上に乗せる。
「違うわよ!」
違うのか。
「レンがどっか行かないように!」
手を繋げと。恥ずかしいと思って無視していたら「ん!ん!」と大きく手を降り出したので、
「もう好きにしてくれ···」
と根負けしてその手を握った。俺弱すぎると思った。それと同時にココロも女の子なんだと、その手の小ささから思った。
~~
「レンは何を買おうとしているの?」
「んーと。服と本と消耗品」
「普通にお買い物なのね」
「そう言ったろ」
「何から買いに行くの?」
「とりあえず本。かさばらないからな」
「レン」
「何?」
「それなら今通り過ぎたわよ」
「うっそ!マジかよ…」
少し戻ってちょっと落ち込みながら店内に入る。
「幸先悪ぃ」
「元気出してレン」
「そうだな。せっかくの休みだもんな」
「そうよ」
「んじゃあ探すか」
「わたしも手伝うわ」
「悪いな。多分そこの棚のどこかにあるだろうから」
「任せて!」
その後、俺は探していた本は見つけたのだが、ココロは…難航しているようでまだ探していたいる。
「レーンー。見つからないー」
「大丈夫大丈夫。ありがとう。あった」
「私そこもちゃんと見たのに!」
「なんでだろうな」
そのあとは服を買いに行く。
俺はそこであれよあれよとココロに着せ替え人形にされていた。ただ公爵令嬢なだけあってセンスはいいので特に言うことは無いのだが。
「次はこれよ!」
「あー、うん」
~~
結局何着も買ってしまった。その後の買い物がとにかく大変だった。疲れたので喫茶店に入る。ココロが頬を膨らませて可愛く睨んでくる。
「買い物だけって言ったはずよ」
「文句のひとつも言わずに付き合ってくれたお礼だよ。好きな物頼め」
「···なら仕方ないわね」
こうしてまったりとお茶をして帰る。
これで俺の休日も平和に終わ
「きゃ!」
らなかった。ココロがさらわれた。
「公爵令嬢なら人質にとれば金が大量に手に入る···」
やっぱり目的は金か。目の前で攫われた。追わない理由はない。なぜなら···
「俺の仲間をどこへ連れていくつもりだ?」
「なっ!」
「離してもらおうか」
「ふざけるな!」
男は剣を取り出し斬りかかってくる。だが当たるわけがない。遅い。予備動作がデカい。何よりこいつからはなんの恐怖もわかない。俺は膝を顔面に喰らわせ、放り出されたココロをお姫様抱っこで受け止める。
「最後の最後で最悪なことが起きたが助けられて良かった」
「もう///」
顔を赤くし呟いたその言葉は聞こえなかった。
~~
そのあとは男を騎士団に引き渡した。あとはお任せだ。
「しっかしまたお前かよ」
「仕方ないだろう?君に関することは私の担当だと定着してしまったのだから。だが相変わらずよく巻き込まれるものだな」
「昔よりは減っただろう」
「そうなのだがな」
彼女レイナ。騎士団に所属し、俺が事件に巻き込まれる度にやってくる。もはや見飽きた。ここ数年は親の顔よりも見ている。
「そうだ。今度一緒に飲みにでも行かないか?互いに吐き出したいこともあるだろうから」
「断る」
「えー?いいじゃないか」
そう言って彼女は俺の腕に抱きついてくる。さらにその体を押し付けてくる。羨ましいと思うか?確かに彼女は美人だ。その証拠にほかの騎士団の人や周りの男達が睨んでくる。知らねーよ。騎士団にいるのような女性は男勝りなイメージが強いが彼女もまた例外じゃない。男にはもちろん女性からもモテる。彼女に憧れる人も多く、部下からもしたわれている。そして俺は仕事以外で彼女を見たことがない。仕事しかしてないのではと思うほどに。だから結婚は愚か恋人の1人も
「いった!」
「なんか失礼なこと考えなかったか?」
「んなこたねーよ」
「そうか。ところでいつ飲みに行く?」
「その話まだ終わってないのかよ。行かないって言ったろ。絡み酒になるやつの相手をしてる暇は俺にはないんだよ」
「それ、酔ってる私とは痛くないって言ってないか?」
「そうだが」
「じゃあ酔ってない私とはいてもいいと」
「あーまぁそうだな」
パァァァ
「まぁどうせ騎士団としてのお前としか会わないし」
「·········」バシッ
「なんで!?」
なんかまた叩かれたし。
「自分で考えるんだな」プイッ
「わかんねーよっていうかさっさと離れろ!さっきからこいつの爪が腕にくい込んで痛いんだよ」
「こいつ?」
レイナが顔を動かすと頬を膨らませて腕にしがみつくココロがいた。
「攫った?」
「たたっ斬るぞ」
「冗談だ。見る限り彼女が被害者だろう?」
「ああ」
「少し話を聞かせて貰ってもいいかい?」
だがココロは「シャー!」とレイナを威嚇する。猫か。何をそんなに警戒しとるんだ。
「レン」
「何?」
「この人と話をするからどっか行ってて」
「イエスマム」
あまりの剣幕に、言うことを聞くしかなかった。
~~
「さて、レイナと言ったわね?どういうつもり?」
「そっちこそなんだ?随分と警戒しているようだが」
「当たり前でしょ?レンを他の女に取られる訳にはいかないわ」
「それはわたしも同じだ」
「でもあなたは恋愛対象として見られていないようだけど」
「そんなことでは終わらせない。必ず振り向かせてみせる」
「あらそう。頑張ってね。それじゃあ私はレンがどこかに行かないように手を繋いで帰るから」
またねーと煽るように去っていく。
「レーンー」
「終わったのか。何話してたんだ?」
「そういうことは聞かないのが普通よ」
「あ、はい」
本当はこっそり一部始終を聞いており、内心「女は怖い」と思っていた。
「それじゃあ帰りましょ。はい」
「はいはい」
ちょと呆れながらも楽しそうにココロの手を握るレンを、レイナはただ見ることしか出来なかった。
~~
翌朝、朝起きて下に降りると一斉に見られた。
「何?」
「これどういうこと?」
「は?」
見せられたのは今朝の新聞そこにはココロとの買い物の写真とともに、『GBPの公爵令嬢と最強パーティーリーダーの熱愛!?』という大きな見出しがあった。
「ちょっと急用ができたから行ってくるわ」
「レンー。程々にねー」
「·········善処します」
「それはダメなやつなんじゃない?」
そうして向かった先は新聞社。
「邪魔するぞ」
「おやレンさん。どうなさいました?」
「今朝の新聞の記事書いたのはどいつだ?」
「すぐ呼びますのでお待ちください」
数分後。
「おまたせしました」
「あ!噂のレンさんじゃないっスか」
「お前か」
「はい!よくかけてるでしょう?自分としては今までで1番の記事っスよ!」
「あの写真は?」
「はい!昨日たまたま見つけたもんで撮りました!こっちもなかなかなものでしょう?」
「そうか···盗撮した上に根も葉もない憶測を勝手に広めるたぁいい度胸してんなぁ?」
「え?おふたりって付き合って···」
「ねぇよ」
「!?」サァァァ
ようやく事の重大さに気づいたらしい。
俺は震えるそいつの肩をつかみ、
「少し、話をしようか」
笑った。その日は朝から悲鳴が聞こえたらしい。
~~
「ただいま」
「おかえりー。どうだった?」
「ココロと付き合ってることを全面的に否定してきました。ついでに記者もノしてきました」
と言ったらそこにいた約9割にフルボッコにされた。なんで?
ちなみに記者の彼はその翌日から半月ほど出社拒否になったらしい。
「やりすぎたかなぁ」
「だから言ったのに···」
珍しく長くなった。
番外編限定キャラ:レイナ 17歳
まだ10代にして実力、頭脳ともに優れた後の幹部、もしくは団長候補。レンがGBPに入る前に出会い、それ以降ずっと彼女がレンの巻き込まれた事件等の対応をしている。あまりに巻き込まれる頻度が多いためマッチポンプを疑ったが治安維持という名目で監視をしていたが、一緒にいるうちに監視がレンといるための名目になってしまった。周りからは手の届かない場所にいる人という認識をされているが、部屋などはかわいいもので溢れている。レンよりも1つ年上のどこにでもいる恋する乙女。ココロを敵視している。レンがGBPに特例で入ることになった時、それを知った人のうち、彼女だけが(女子ばかりだから)必死で止めた。