ガールズバンドとのやかましい日常   作:紅葉064

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さぁシリアスな空気になってまいりました。(シリアスに似合わないテンション)




俺は音楽室でヴァイオリンをかまえ、弾き始める。昔はやっていたのだが、あることをきっかけにやめてしまった。その後も偶に弾いている。最近は音楽室を使っていいよと言われているので弾いていたが、噂になってしまいあらゆる生徒が探し始めた。俺も巻き込まれたがそれが俺なので見つかるはずもなく。まぁもうしばらくは見つからないだろう。そう思っていた。

誰か入ってきたことにも気付かずに弾き続ける。

 

「イっ···くん?」

 

その言葉を聞いて、俺は演奏を止め、顔を上げた。聞こえるはずはないのに、聞こえた。そして俺は後悔する。止めてはいけなかったと。

 

「イっくん···なんだよね?」

 

”イっくん”。俺をそう呼ぶのは過去にたった1人。信じない。信じたくない。でも、これが現実だ。その人物は、白金先輩。彼女は、涙を浮かべ、俺を抱き締めた。

 

「良かった···無事でよかった」

 

 

 

~~

白金先輩が井戸原くんを”イっくん”と呼んだ。どういうことなのかと思ったけどそんな考えはすぐに吹き飛んだ。なぜなら白金先輩が井戸原くんに抱きついたから。でも彼はすぐにそれを振りほどいて飛び退いた。

 

「イっくん?」

 

初めて見た。その時の彼の目は、酷く怯えていた。

 

「······で」

 

「なんで···俺は、あなたを裏切ったのに!!」

 

「裏切った?」

 

「井戸原さん。どういうことですか?」

 

ハッと息を呑む声。無意識に言ったらしい。彼はすぐにヴァイオリンをしまい、あたし達を乱暴に押しのけて出ていこうとする。

 

「待ちなさい!さっきの質問に答えてください」

 

「···アンタには関係ないだろ」

 

これ以上踏み込んでくるなと言わんばかりの冷たい声だった。出ていった彼の背中をこころでさえも追いかけることは出来なかった。

 

 

 

~~

「白金さん。説明していただけますか?」

 

「はい。私は、小さい頃からピアノのコンクールに出ていました。ただ、ピアノだけではなくヴァイオリンとのデュオででいたのですが、それを弾いていたのが」

 

「井戸原さんという訳ですね」

 

「多分、そうだと思います。ですが、私が小学6年生のコンクールの日、彼は来ませんでした」

 

「え!?」

 

「裏切ったってそういうことかよ。最低じゃねぇか」

 

確かに行いは最低と言わざる負えないけど、さっきの無事でよかったという言葉と結びつかない。

 

「皆さんもう下校時間なので帰りましょう。白金さん私達も練習があるので行きましょう」

 

「はい···」

 

 

 

~~

「ストップ。燐子。どうしたの?あまり集中できていないようだけど」

 

「すみません」

 

「りんりん大丈夫?」

 

「やはり気になるのですね。井戸原さんのこと」

 

「どういうこと?」

 

「実は···」かくかくしかじか

 

さっきあったことを話す。

 

「そんなことが···」

 

「裏切ったって、確かにそこだけ聞けば嫌な感じはするけど何となく蓮ぽくない感じがするよね」

 

「責められるのは怖いものですからね」

 

「ううん。あたしは逆だと思うんだよね」

 

 

 

~~

俺は校門を出て早歩きで駅へ向かう。

なんで。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!なんで今なんだよ!なんで今まで気が付かなかった!あの子には、彼女には会いたくないと思っていた。でも既に会っていた。互いが互いに気付かぬままここまで来た。俺はもう、どうすればいいか分からない。




21話のラストを回収。確か21話の『花より団子より』だったはず
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