あの日からもう1週間がたった。あれからヴァイオリンの音は聞いていない。もう噂は聞かなくなった。井戸原くんは一応学校には来ているけど授業が終わるたびすぐに出ていってしまう。会わないようにしているのがわかりやすく見てとれる。今はお昼休みだけどどこでご飯を食べているのか見当もつかない。
「市ヶ谷さん」
「どうした?」
「生徒会ってどんな感じ?」
「全然見ないな。なんというか…すごく気まずい。井戸原は仕事はしてるみたいだけどな。偶に机にUSBが置いてある」
「あんなことがあってもそういうのはちゃんとやるんだね··」
「あと氷川先輩から聞いたけどRoseliaがCiRCLEで練習する時は井戸原のアルバイトが入ってないって」
「よっぽど会いたくないんだね」
「奥沢さん。帰りに話聞いてみてよ。ほんとに、居心地悪くて···」
「うん、わかった」
~~
「井戸原くん」
「ん?何?」
うわぁ〜やっぱピリピリしてるなー
「今日一緒に帰らない?」
「······ああ」
この流れを見たクラスメイトは奥沢が猛者に思えた。
その帰り道、
「ねぇ井戸原くん」
「何も話すつもりは無いぞ」
「うっ」
話を聞き出そうとしたが開口一番道を絶たれた。でも諦めない燐子先輩のこともそうだけど、あたし自身が知りたい。
「ねぇ。教えて。昔の井戸原くんに何があったのか」
「俺が氷川先輩に言ったこと覚えてないのか?関係ないだろ」
「うん、でもあたしは知りたい。昔の事だけじゃなくて井戸原くん自身の事」
「折れるつもりは···ないんだな」
「·········」
「·········」
「はぁ。わかった、話してやるよ。その前に、どこまで聞いた?」
「発表会に来なかったってことだけ」
「情報が少ないな」
「そりゃあねぇ」
「そうだな。あれは発表会の前日······」
~~
「············」
その話を聞いて、あたしは言葉が出なくなった。その時の気持ちは分からないけど、何となく理解はできた。
「でもそれは······謝れば許して貰えるんじゃ」
「それはそうかもしれない」
「じゃあ······」
「でも許してもらおうなんて思ってない。俺には謝る権利も、許してもらう資格も持ってない」
「井戸原くん···」
「悪いな。何か食って帰るか」
「······うん」
あたしはそれ以上何も言えなかった。
~~
「···っていうことでして」
「そんなことが···」
「なんて言うか、悪いことしたな。最低って言ったことを謝りたい」
「どうしますか?白金さん」
「その······ごめんなさい」
「なぜ謝るのですか?」
「私、実は知っていたんです。あの日、イっくんが来なかった理由を」
これ書きながら俺は蓮の過去をいくつ用意してるんだろうって思い始めた。