「ぬぅ~~~~~~」
冬休みに入って数日。俺はバイト先のCiRCLEのカウンターで唸っていた。
「どうしたの?蓮くん」
「再始動後に出すアルバムの曲作り。3ヶ月に1曲のペースで作ってる」
「へぇー」
「それでお前はさっきから何をしてんだ」
かれこれ1時間は悩んでいる俺を眺めていた戸山に問いかける。
「え?蓮くんを見てる」
「答えとしちゃ間違ってはないけど俺が聞きたいのはなんで見てるのかってことだよ」
「真剣に悩んでいる蓮くんが珍しいから」
「あーそう」
「井戸原くん」
「ん?」
「てい」ビシッ
「あいてっ!」
顔をあげるとデコピンがとんできた。思ったよりも威力が強く、額を抑えてうずくまった俺に声をかけてくる。
「もう3時間もそんななんだから休憩しなよ」
「わかったから次からデコピンはやめてくれ。思ったよりも痛いぞ奥沢」
「はいはい」
「で、なんだよ」
まだ額を抑えながら聞く。
「ん。これ」
手渡してきたのはカフェオレだった。
「ああ。ありがとう」
「ちゃんと寝なよ。くまできてるよ」
そう言ってハロハピの面々と共に去っていった。
「隠したはずなんだけどなあ」
「いやぁ、愛だねえ」
その言葉と共に何かがのしかかってきた。
「今井先輩顎痛い。あとここカウンターだから出て」
「蓮って絶対に重いって言わないのすごいと思う」
「そんなことよりなんですか愛って」
「だってさっき美咲がくまできてるって言ったでしょ?隠してるのに」
「はい」
「そんなのずっと見てなきゃ分かんないよ」
「そう···ですか」
「愛されてるねーこのこの」
「今井先輩」
「なぁに?」
「重かったです」
「あ!言ったなこの~~!」
「ちょ!やめてください!」
今井先輩が頭を思いっきり掻き回してくる。でもそれは唐突に止まった。
「前にね、美咲が言ってたの。蓮の独り言を聞いたって」
独り言?なんだ?
「こう言ってたんだって。『そろそろ、バレるのも時間の問題か』って」
聞かれていたとは思わなかった。
「何がとは聞かないけど別の理由があるんじゃないかって。それを聞いたあとなんか蓮の顔がくらいような気がして構っちゃった」
「自分では普通にしてたと思うんですけどねぇ」
「うん。あたしは普通に見えてたよ。でも美咲がそう言うからだんだんそう見えてきちゃって。やっぱり愛だね」
「そこに帰ってくるのかよ」
「まあ無理しちゃだめだぞー」
「わかりましたよ。はい行った行った」
なぜだかこれで終わらないような気がした。
「あの、先輩」
次は倉田だった。
「次から次へと」
「あ、すみません」
「別に謝らなくていいよ。で?倉田は何?」
「それが、後輩のマネージャーから先輩に練習見て欲しいと頼まれて。連絡がつかないから私のところに···」
「あの顧問······。まあいいわ。で、いつ?」
「それがその·········3日後で」
「アホか!急すぎんだろ!!」
あまりに身勝手すぎて怒鳴ってしまった。
「はぁ。後輩は悪くないからな。でもあいつには焼肉奢らせよう。倉田は?」
「私も行く予定です」
「1人よかいいか」
「じゃあよろしくお願いしますね」
「おーう」
4連続の嵐が過ぎ去り俺は作詞を再開した。すると自分でいいと思う歌詞がするすると出てくる。さっきまでの会話でリラックスできたからだと思うが邪魔されたような気もするので感謝するには少し複雑だった。