ガールズバンドとのやかましい日常   作:紅葉064

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卒業式 ~一つのエピローグ~ 中編

「お待たせしました」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

「「............」」

 

沈黙が永く感じる。でも時間に換算すれば数秒だっただろう。

 

「ねぇ井戸原くん。わたしたちが出会ってからの2年間、色々あったよね」

 

「最初の夏には海にも行きました」

 

「かなりグロッキーになってたね。秋には体育祭と文化祭もあって、よく倒れてたね」

 

「その度に怒られました。冬は初詣でばったり会いましたね」

 

「一緒に来てたお友達は大丈夫だった?」

 

「後日ラーメンで許させました」

 

思い出話はまだ続く。

 

「えぇ...。気を取り直して、学年が上がって春にはお花見したね」

 

「倉田がガチガチになってました」

 

「そういえば井戸原くんはましろちゃんに嫌われてるの?」

 

「俺だけ扱いがひどいだけで嫌われてはないですよ。好かれてもないですけど。夏は...本当に嫌いになりそうでした」

 

「あれはごめんね。あとは井戸原くん音信不通」

 

「その節はご迷惑おかけしました」

 

「大丈夫だよ。それで今年も海に行ったよね」

 

「俺は相変わらず沈んでましたけど」

 

「次の日にはそこのお祭りにも行ったね」

 

「楽しかったですね。あと、怪我がなくて本当に良かったです」

 

「うん。ありがとう。わたしの最後の、井戸原くんにとっては2回目の文化祭。無理しなくて偉かったよ」

 

「子供扱いしないでください。と言っても無理やり休まされた感じですけど。まぁ婦警のコスプレには驚きましたが...」

 

「逆襲された......。あ、子供扱いと言えば井戸原くんの私への本音が聞けて嬉しかったな」

 

「それは忘れてください」

 

「それは無理かなぁ」

 

「「..............................」」

 

再びの沈黙。

 

「思い返して見ると本当に色々あったよね」

 

「色々ありましたね。でも、まだ増えていきますよ。きっと」

 

「うん。......今までのどんなことも特別な思い出。でもね」

 

「?」

 

「井戸原くんとの思い出はどれも違う意味で愛おしくて、もっと特別なの」

 

「ねぇ......」

 

この時、わたしは手が震えてることに気づいた。

 

(言わなきゃ。言うって決めたんだ)

 

「井戸原くん」

 

「はい」

 

「わたしねキミのことが好き。大好きなの」

 

知っていた。知らないふりをしていた。でももう、退路は絶たれた。

 

「本当はこんなのじゃ収まらない。でも、わたしにこれ以上の言葉は見つけられないの」

 

俺は黙って、彼女の瞳を見つめたまま次の言葉を待つ。

 

「キミに出会って、わたしの生活はすごく色付いた。全部キミのおかげだよ。わたしが、初めて好きになった人。だからね、これはわたしのわがまま。井戸原くん......」

 

その時、風が吹き込んだ。カーテンが大きく捲れ上がり、桜が舞い込む。それは彼女の背中を押すように。それは、全て仕組まれていたかのように。

 

「私だけを見て!わたしとずっと、一緒にいてください!」

 

そう。全て、仕組まれていたかのように

 

「ごめんなさい。それは、できません」

 

風は、ぴたりと止んだ。




本日2本目。当初は前編・後編で終わるつもりでしたが、主観的になにか違う気がしたので急遽3本立てにしました。ごめんなさい。
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