「お待たせしました」
「ううん、大丈夫だよ」
「「............」」
沈黙が永く感じる。でも時間に換算すれば数秒だっただろう。
「ねぇ井戸原くん。わたしたちが出会ってからの2年間、色々あったよね」
「最初の夏には海にも行きました」
「かなりグロッキーになってたね。秋には体育祭と文化祭もあって、よく倒れてたね」
「その度に怒られました。冬は初詣でばったり会いましたね」
「一緒に来てたお友達は大丈夫だった?」
「後日ラーメンで許させました」
思い出話はまだ続く。
「えぇ...。気を取り直して、学年が上がって春にはお花見したね」
「倉田がガチガチになってました」
「そういえば井戸原くんはましろちゃんに嫌われてるの?」
「俺だけ扱いがひどいだけで嫌われてはないですよ。好かれてもないですけど。夏は...本当に嫌いになりそうでした」
「あれはごめんね。あとは井戸原くん音信不通」
「その節はご迷惑おかけしました」
「大丈夫だよ。それで今年も海に行ったよね」
「俺は相変わらず沈んでましたけど」
「次の日にはそこのお祭りにも行ったね」
「楽しかったですね。あと、怪我がなくて本当に良かったです」
「うん。ありがとう。わたしの最後の、井戸原くんにとっては2回目の文化祭。無理しなくて偉かったよ」
「子供扱いしないでください。と言っても無理やり休まされた感じですけど。まぁ婦警のコスプレには驚きましたが...」
「逆襲された......。あ、子供扱いと言えば井戸原くんの私への本音が聞けて嬉しかったな」
「それは忘れてください」
「それは無理かなぁ」
「「..............................」」
再びの沈黙。
「思い返して見ると本当に色々あったよね」
「色々ありましたね。でも、まだ増えていきますよ。きっと」
「うん。......今までのどんなことも特別な思い出。でもね」
「?」
「井戸原くんとの思い出はどれも違う意味で愛おしくて、もっと特別なの」
「ねぇ......」
この時、わたしは手が震えてることに気づいた。
(言わなきゃ。言うって決めたんだ)
「井戸原くん」
「はい」
「わたしねキミのことが好き。大好きなの」
知っていた。知らないふりをしていた。でももう、退路は絶たれた。
「本当はこんなのじゃ収まらない。でも、わたしにこれ以上の言葉は見つけられないの」
俺は黙って、彼女の瞳を見つめたまま次の言葉を待つ。
「キミに出会って、わたしの生活はすごく色付いた。全部キミのおかげだよ。わたしが、初めて好きになった人。だからね、これはわたしのわがまま。井戸原くん......」
その時、風が吹き込んだ。カーテンが大きく捲れ上がり、桜が舞い込む。それは彼女の背中を押すように。それは、全て仕組まれていたかのように。
「私だけを見て!わたしとずっと、一緒にいてください!」
そう。全て、仕組まれていたかのように
「ごめんなさい。それは、できません」
風は、ぴたりと止んだ。
本日2本目。当初は前編・後編で終わるつもりでしたが、主観的になにか違う気がしたので急遽3本立てにしました。ごめんなさい。