ガールズバンドとのやかましい日常   作:紅葉064

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しがらみの決着 ~後編~

翌日から全員集まるまでの間、暇だろって言って真一郎のやつ毎晩俺の使っている部屋に来ては無駄話をして戻っていった。確かに暇ではあるけど毎晩来ることはないだろうよ。

そんなことがありながらも全員が揃ったため、呼び出された。出来れば頼んだことが無意味になりますように。

 

「おはよー」

 

「これで全員揃ったな」

 

どうやら食堂に来たのは俺が最後だったらしい。俺の声にそこにいた全員がこっちを向く。あらゆる方向から敵意や嫉妬を分かりやすく感じる。

 

(少しは隠せよ)

 

とは思ったもののまあ無理だろうなとも思った。

 

「さて、今回呼び出した用件だが......」

 

じいちゃんの声に視線が俺から外れる。

 

「来年の3月を持ってわしの椅子を空けることにした」

 

誰も驚いた顔はしない。さすがに予想はついていたようだ。

 

「よってわしの後継を決めようと思っている」

 

その言葉にこの場の数人の目が輝いた気がした。

 

「それは......」

 

辺り一帯の空気が期待と不安で埋め尽くさせる。じいちゃんが指名したのは......

 

「蓮、お前だ」

 

正面に座っている俺だった。全ての視線が俺に向く。安堵、納得が多い中、怒りと嫉妬も多少あり、中でもふたつの視線が際立つ。俺は微動だにせずただ静かにじいちゃんの目を見ていた。

 

「俺は......「ちょっと待って!!」

 

俺の言葉は遮られた。遮ったのは叔母だった。

 

「蓮はまだ高校生よ?務まるわけがないじゃない。お父さん」

 

「だから卒業してからという話だ」

 

「だとしても若すぎるわ!もっと社会を知っている私たちの誰かがやるべきよ」

 

その言葉を擁護するように俺にだけは椅子を渡したくない親族たちが同意を示す。

 

「それに親父、蓮は相模から逃げた兄貴の子だぜ?どう考えたって同じことになるに決まってる」

 

真一郎の父親である叔父がそう続ける。

 

「蓮。わしはお前を指名したが、望むのであれば譲渡しても構わん」

 

じいちゃんの言葉で2人に笑みが浮かぶ。

 

「そうよ蓮。あなたはまだ若いんだからそんなに背負わなくたっていいの」

 

「そうだ。こういう事は大人に任せればいいんだ」

 

叔父と叔母が少し必死にそう言ってくる。だが、

 

「ふ、ふふ」

 

「な、何?」

 

叔母がたじろぐが気にしない。

 

「はっはっはっはっは!!」

 

笑いすぎて腹筋が痛い。呼吸を整え、嘲笑込めて言い放った。

 

「任せなければ、どうなっても知らないってか?」

 

2人の顔に驚愕、そして焦りが浮かぶ。

 

「な、なんの事だ?」

 

「それは2人が1番知ってるだろ?やってみろよ。やれるもんならな」

 

俺の言葉に顔を見合わせ、電話をかけ、すぐに切った。

 

「後悔しない事ね」

 

「それはこっちのセリフだよ。どうせかけ直ってこないんだから」

 

そう言った瞬間に俺に電話がかかってきた。相手を見て笑みを浮かべる。

 

「ナイスタイミング。もしもし?」

 

『襲撃者をすべて捉えました』

 

叔父と叔母は理解が出来ていないようだ。

 

「いったい何だって言うんだ?」

 

叔父の声に反応したのはかけてきた本人ではなかった。

 

『その声......貴様らどういうことだ!!話が違う!合図でガキども始末するだけのはずだろ!こんなヤツらの相手するなんざ聞いてないぞ!』

 

「な、何を言ってるの?あなたたちなら奪って蓮に目にものを見せれると思っていたのに」

 

『それが出来なかったからとっ捕まったんだろうが!ふざけんな!!』

 

『情報提供ありがとうございました』

 

「いや、俺はただ利用しただけなので例を言うのはこっちです。ありがとうございます。では」

 

「蓮!一体どういうこと!?」

 

叔母がヒステリックに叫ぶ。だが俺は反応せずに笑いながら呟いた。

 

「さすが弦巻家」

 

その言葉に全員が驚愕した。そうしながらも叔父は食ってかかる。

 

「弦巻だと?何が起こった!?」

 

心底呆れながらもばかにするように俺は言った。

 

「ほんと救いようがねえな。俺一人を見つけるのにこれだけの時間をかけて、俺を引きずり下ろすことばかりに気をとられて襲撃させた中に弦巻家の令嬢がいるとも知らずに。ほんと哀れ。」

 

「黙れ」

 

「まぁ、みんなの前で喋っちまったんだからもう椅子は手に入らない。残念だったな」

 

「黙れぇ!!」

 

煽りすぎたのか頭に血が昇った叔父はテーブルのナイフをつかみ襲いかかってきた。しかし俺はそれを払い、料理を散らかさないように投げ飛ばした。

 

「くそ.......そうだ。真一郎、真一郎!お前なら何とかしてくれるだろう?」

 

「悪いけどお父さん。僕は今日限りで縁を切らせてもらいます」

 

その言葉をとどめに叔父は何も喋らなくなった。叔母は少し前から既に喋らなくなっていた。それを見届け、警察官をやっている親族の方を向き、さすがに仕事してくれるよね?とプレッシャーをかけた。

 

 

 

~~

翌日。結局叔父叔母の件が夜までかかってしまい、話の続きは今日に持ち越された。

 

「では、蓮は真一郎へ譲渡するということでいいんだな?」

 

「いやいや待って待って。なんで?蓮がやりたくないだけでしょ?」

 

「その通り。でもお前の方が向いてると思ってるのも嘘じゃない。何より、貸しいちだろ?」

 

「やられた」

 

じゃ、そういうことで帰りますか。

 

「お帰りの準備はできています」

 

「さすが西端。これでやっと...」

 

「告白できる?」

 

その瞬間。俺の中で全てが固まり、錆び付いたおもちゃのように振り返る。誰か油さして。?嘘です。うおーい西端、油さし取りに行かなくていいから。

 

「ふぅ......なんの事だ?」

 

「隠さなくていいよ。全部知ってるから」

 

仕返しにしてはたちが悪い。

 

「蓮」

 

「何?じいちゃん」

 

「上手くいったら連れてこい」

 

「そんなこったろうと思った」

 

でも、いつかはやらなきゃいけなかった。こっちの始末もつける時か。

俺は確認だけとって、38本のメッセージを送り、1本の電話をかけた。

 

 

 

~~

「ところで、いつまで使用人の格好をしているつもりだ?仁」

 

「え!?」

 

「やっぱり気づかれてたのか」

 

「仁さん!」

 

相模 仁。じいちゃんの長男で俺の父親。ずっと姿をくらましていた。俺は知っていた。

 

「じいちゃん、いつから知ってたの?」

 

「うちに来た時からだ」

 

「最初からだね」

 

まあ何はともあれ色々と解決したわけだしあとはどうにかなるでしょ。

そう思いながら両親の方を見ると母さんの顔が父さんに近づくのを見て俺から起こることを瞬時に把握し、二人の間に割って入った。セーフ。

 

「駄目だとは言わないから部屋は変えろ」

 

疲れたからさすがに帰るか。そんなわけで

 

「じゃ、俺先帰るから」

 

こうしてまた西端の送りで帰路を辿った。

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